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11章
83話「触れ合う肉体と心」
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フィンが天上界に飛び立ったとランスロットに届いた頃、アレスの高熱は未だにアレスの身体を蝕んでいた。元々熱が出るという事はそれだけ身体の中にある細菌を熱で排出している事から出るのはそれだけ身体に細菌が潜んでいる証拠でもあった。
アレスが本来そこまで免疫力が低い訳ではないので、この闇の瘴気がそれだけ身体に害を及ぼしたのだという事であろうとランスロットは考えていた。そして、アレスの寝ているテントにて騎士団の動きやラオンの動きを把握していたランスロットはある日の夜。
「んっ……」
「まだ高いな。少し体力も低下しているだろうし……試しに飲ませてみるか」
ランスロットはハルウッドがエリッド達から高熱時に飲ませるといいと言われている果実を使った水を貰ってきて届けてくれていたのを手に取る。そして、口に含んでそのままアレスの唇に自分の唇を押し当てて口移しで飲ませていく。
ゴクゴクと飲んでいくアレスに微笑みを浮かべながら、その口移しを何回か繰り返して水を全部飲ませる。幸いな事に水分を求めてくれているのであれば、まだ比較的に薬も効きやすいのもある。
呼吸も落ち着きを取り戻し、汗も次第に落ち着きを見せ始めていると静かに眠り続けているアレスに配慮してテントを出て行こうとランスロットは立ち上がった……つもりだった。ランスロットのマントをアレスは弱々しく握り締めて起きていたのである。
「アレス、落ち着いて寝れないだろう?」
「大丈夫……ランスロット、お願いがあるの……」
「どうした?」
「お話を聞かせて……ランスロットの小さい頃のお話……」
「俺の小さい頃のか?」
「子守唄代わりに聞きたいな……」
「なら少し話してあげよう」
アレスの寝ている横に座ってアレスの手を両手で握り締めてから、ランスロットは自分の幼少時の頃の話を静かに話し始める。アレスはその話を聞きながらまた微睡に包まれていくのを感じ取っていく。
アレスがその内眠ってしまったのをランスロットは確認すると、そっとアレスの身体に毛布を掛けてやって身体が冷えない様にしてから立ち上がる。アレスが飲む為の水を取りに行っていた間もアレスは静かに眠り続けていた。
ラオンの部隊は段々と後退していくのを確認して、ロゼットとルーディルの部隊に本陣の守りを任せて、ガルドとエリッド達にラオンの部隊を攻撃する役目を与える事にしたランスロットはすぐに指示を飛ばす。だが、予想外の事が起きたのである。
「ラオンの部隊が撤退している……だと?」
「はい。それもかなり素早い動きで元々いた異界へと引き上げているのが確認出来ました。ガルドとエリッド達が追撃していますが、そこまで戦力も残されてないらしく撤収を阻止は出来ないだろうと」
ハルウッドからの報告を聞いていたランスロットは一度ラオンの本陣がある方角を見つめて瞳を細める。ラオンの方に何かイレギュラーが起こったのだろうかと考えてみるが、これで一時的にでもティクスに迫る脅威は遠ざかったというべき事も理解する。
ランスロットは各部隊に本陣に戻り、ラオンの部隊の撤収が最終的に確認が取れたら、自分達も本国であるティクスに帰国する事を告げる。これにより一時的に戦闘状態は解除される事となり、騎士達は本国に帰れる事に歓喜を見せる。
アレスの体調も次第に落ち着きも見せている事もあって、フィンが戻る頃には回復もしているだろうと思われていた。そして、ラオンの部隊は全軍が異界へ引き上げて、異界への門は閉じられてラオン軍は撤収したのが確認された。
「少し呆気なくも感じるが、取り敢えずはティクス国に戻れるだけでもありがたいな」
「そうだな。でもよ、ラオンがどうしていきなり撤収なんてしたんだろうな? 何かの策でもあんのかねぇ?」
「それも考えられなくはありませんが、まずは本国に戻り全軍の疲労を回復させてから戦力の回復を計らなくてはなりません。それも考えるとあまり私達の収穫はないと言ってもいいでしょう」
「ランスロット様のお考えではラオンの背後にいる異世界の魔王であるバルキットの存在が何か起こした、とお考えの様です。そもそも異世界の魔王がこのガハランド大陸に何故来たのかも気にはなりますが」
ローレンス達の会話は色々と感情が込められてはいるものの、全員が当面の休息がまともに取れる事に少なからず喜びを見せていたのは事実だ。結果的に収穫の少なさは仕方ないが、それでも近隣諸国のカナディルダ国・ティールズ国・アベリオ国の援軍はかなり助かったのも事実である。
これにより、近隣諸国へ働き掛けてきたロックの頑張りが今後は実を結ぶ日も近いと言えるだろう。全軍が徐々に本国へと帰国する為に撤収の準備をし始めるとランスロットはアレスの様子を見にテント内部に入るとアレスは丁度着替えている途中だった。
「あ、すまない……」
「大丈夫だよ。上着着るだけだから」
「体調はどうだ? 熱は下がっている様だが」
「うん、この程度ならティクスに戻るまでは持つと思う。なんとか一時的だとしても終わって良かったね」
「そうとも言えないんだ」
「どうかしたの?」
「ラオンの動きはあまりにも突然過ぎる。何か裏がある様にしか思えなくてな」
ランスロットの言葉にアレスも静かに考えてみる。確かに今回のラオンの撤収には乱れもなく、迷いもなく、潔かった。
それが何故か気になってしまうのは分からなくもない。だが、今は現実を見れば騎士達を始めとする仲間達は帰国出来る喜びで士気が高まっている。
それを、何か裏があると言って水を差す様な事をこの目の前にいるランスロットはしないだろうとアレスは信じている。そして、簡易ベッドから立ち上がったアレスはランスロットの目の前に立って見上げると両腕をランスロットの腰に絡める。
「アレス?」
「真面目なランスロットの事も好きだけれど、少し力を抜いたランスロットの事も好き。今は皆の為にも笑顔を見せてあげて」
「……アレスには敵わないな。いつだって、俺の肩の力を抜かせてくれる」
「ふふっ、伊達に補佐騎士をしている訳じゃないからね? それに、聖女としてもランスロットの事を補佐するのは私の特権だよ」
アレスのブルーの髪の毛をそっと撫でながらランスロットの心は穏やかに包まれていく。そして、アレスの存在こそがランスロットの力でもあり、光でもあるのは紛れもない真実である。
ロゼットとルーディルの部隊を先頭に、エリッドとガルド達の部隊が最後尾を、その陣形でランスロット達は一路ティクスへと帰国する。ガルベルドやティールズ国の騎士団長と、アベリオ国の騎士団長も同行してティクスへと向かう。
ティクスに全軍が帰国するとアレスは聖女としての立場を使ってランスロットの補佐をしようとしたが、ローレンスとハルウッドに付き添われて屋敷に帰された。まだ体調が思わしくないのも懸念されていたが妊娠している身でもある為に、これ以上無理はさせれないとの事でランスロットの命でアレスは休ませる事にしたのである。
当然、アレスが素直に言う事を聞くとは思っていないランスロットの先手もあった。アレスに屋敷で栄養のある料理を沢山作って欲しい、とお願いしていたのである。
「アレス嬢が大人しく帰るとは思いませんでしたが、料理をお願いしていたのであれば納得ですね」
「それも、ランスロット様のお願いとあればお断りされる事のないお願いでもありますから。流石はランスロット様ですね」
「アレスの趣味をアルフォッド達から聞かなかったら言えなかったがな。そもそも、アレスの事を婚約者の俺より知っている時点で嫉妬するが」
「アルフォッドやオルベ、リディルが知っているのも頷ける事です。あの子達、事あるごとに集まって話し込んでいたのを知っている騎士達もいましたから。本当にアレス嬢を慕っているからこそ、お互いの事を話し合っていたというべきでしょうか」
ハルウッドのフォローもあってランスロットの嫉妬は一応の静まりを見せる。城にて大まかな仕事を終えたランスロットは下城して屋敷へと帰宅する。
ドアを開けてエントランスに入るといい香りのする事にランスロットは微笑みを隠せない。城から下がる前にフィンも屋敷の方に戻っているとの報告もあったので、祖母とアレスが一緒に料理をしているのだろうと思うと心が安らぐのを感じていた。
「戻りました」
「あ、お帰りなさいランスロット! 見て! お婆様の直伝のパイの包み焼き! お爺様が大好きだったんだって!」
「アレスが飲み込みが早いからつい昔の料理を教えてしまいたくなってしまいました。ランスロットも着替えてきて一緒に食べましょう」
「はい。アレス、あまりはしゃぐなよ?」
「うっ、気を付けます」
ランスロットは鎧を脱ぎに自室に入って着替えを済ませていく。鎧を脱いだ身体は軽くてリラックスも出来た。
シルバーの髪の毛を軽くブラシで整えていると、グルルッと腹の虫が音を立てる。空腹を知らせるその音にランスロットは苦笑しながら、手際よく髪の毛を整えて食堂に向かった。
食堂では湯気の立っている栄養豊富な料理が待っていた。アレスとフィンも既に椅子に座って待ってくれている。
ランスロットはフィンとアレスの間に座り、目の前に並ぶ料理に微笑みを浮かべていた。取り分けし始めるフィンとアレスはランスロットに沢山食べやすい様に少量ずつ取り分けてくれて、品数が豊富なのが良かった。ランスロットの取り皿に並ぶ色々な料理を見て、ランスロットの胃は完璧に臨戦態勢になっていく。
「頂いてもいいかな?」
「どうぞ、しっかりお食べなさい」
「うんっ。沢山食べてねランスロット」
「ありがとう」
ランスロットの手が動いて料理を食べ始める。味付けも殆どがランスロットの好みで統一されており、これはフィンとアレスの手腕だと思えた。
気付けばランスロットの皿は空になっており、ランスロット自身も余程の空腹だったのもあって平らげてもまだ足りなかったらしい。フィンがクスクス笑いながらアレスがキョトンとしているのを見て説明し始める。
「アレスは知らないかもしれませんが、ランスロット位の年齢になるとこの味付けだと食が進むんですよ。だから、ランスロットも遠慮しないで沢山食べて下さいね」
「助かります。携帯食料ばっかりだったのがこうして目の前に美味しそうな料理があるとつい手が止まらない。味付けも俺の好きな味付けですし」
「そうなんだね。お婆様、またお料理教えてくれますか? 私もランスロットの為にもっとお料理頑張りたいです」
「えぇ、いいですよ。私も料理は好きですから。でも、ランスロットもですけれど、アレス、貴女もしっかり食べてお腹の子供に栄養を送るのですよ? お腹の子供は貴女からしか栄養が貰えないんですから」
フィンの言葉にアレスも出来るだけの料理を食べ始める。こうしてアレスとフィンとの家族として過ごす食事を堪能したランスロットも今日はよく寝れそうだ、と考えて料理を平らげていったのであった――――。
アレスが本来そこまで免疫力が低い訳ではないので、この闇の瘴気がそれだけ身体に害を及ぼしたのだという事であろうとランスロットは考えていた。そして、アレスの寝ているテントにて騎士団の動きやラオンの動きを把握していたランスロットはある日の夜。
「んっ……」
「まだ高いな。少し体力も低下しているだろうし……試しに飲ませてみるか」
ランスロットはハルウッドがエリッド達から高熱時に飲ませるといいと言われている果実を使った水を貰ってきて届けてくれていたのを手に取る。そして、口に含んでそのままアレスの唇に自分の唇を押し当てて口移しで飲ませていく。
ゴクゴクと飲んでいくアレスに微笑みを浮かべながら、その口移しを何回か繰り返して水を全部飲ませる。幸いな事に水分を求めてくれているのであれば、まだ比較的に薬も効きやすいのもある。
呼吸も落ち着きを取り戻し、汗も次第に落ち着きを見せ始めていると静かに眠り続けているアレスに配慮してテントを出て行こうとランスロットは立ち上がった……つもりだった。ランスロットのマントをアレスは弱々しく握り締めて起きていたのである。
「アレス、落ち着いて寝れないだろう?」
「大丈夫……ランスロット、お願いがあるの……」
「どうした?」
「お話を聞かせて……ランスロットの小さい頃のお話……」
「俺の小さい頃のか?」
「子守唄代わりに聞きたいな……」
「なら少し話してあげよう」
アレスの寝ている横に座ってアレスの手を両手で握り締めてから、ランスロットは自分の幼少時の頃の話を静かに話し始める。アレスはその話を聞きながらまた微睡に包まれていくのを感じ取っていく。
アレスがその内眠ってしまったのをランスロットは確認すると、そっとアレスの身体に毛布を掛けてやって身体が冷えない様にしてから立ち上がる。アレスが飲む為の水を取りに行っていた間もアレスは静かに眠り続けていた。
ラオンの部隊は段々と後退していくのを確認して、ロゼットとルーディルの部隊に本陣の守りを任せて、ガルドとエリッド達にラオンの部隊を攻撃する役目を与える事にしたランスロットはすぐに指示を飛ばす。だが、予想外の事が起きたのである。
「ラオンの部隊が撤退している……だと?」
「はい。それもかなり素早い動きで元々いた異界へと引き上げているのが確認出来ました。ガルドとエリッド達が追撃していますが、そこまで戦力も残されてないらしく撤収を阻止は出来ないだろうと」
ハルウッドからの報告を聞いていたランスロットは一度ラオンの本陣がある方角を見つめて瞳を細める。ラオンの方に何かイレギュラーが起こったのだろうかと考えてみるが、これで一時的にでもティクスに迫る脅威は遠ざかったというべき事も理解する。
ランスロットは各部隊に本陣に戻り、ラオンの部隊の撤収が最終的に確認が取れたら、自分達も本国であるティクスに帰国する事を告げる。これにより一時的に戦闘状態は解除される事となり、騎士達は本国に帰れる事に歓喜を見せる。
アレスの体調も次第に落ち着きも見せている事もあって、フィンが戻る頃には回復もしているだろうと思われていた。そして、ラオンの部隊は全軍が異界へ引き上げて、異界への門は閉じられてラオン軍は撤収したのが確認された。
「少し呆気なくも感じるが、取り敢えずはティクス国に戻れるだけでもありがたいな」
「そうだな。でもよ、ラオンがどうしていきなり撤収なんてしたんだろうな? 何かの策でもあんのかねぇ?」
「それも考えられなくはありませんが、まずは本国に戻り全軍の疲労を回復させてから戦力の回復を計らなくてはなりません。それも考えるとあまり私達の収穫はないと言ってもいいでしょう」
「ランスロット様のお考えではラオンの背後にいる異世界の魔王であるバルキットの存在が何か起こした、とお考えの様です。そもそも異世界の魔王がこのガハランド大陸に何故来たのかも気にはなりますが」
ローレンス達の会話は色々と感情が込められてはいるものの、全員が当面の休息がまともに取れる事に少なからず喜びを見せていたのは事実だ。結果的に収穫の少なさは仕方ないが、それでも近隣諸国のカナディルダ国・ティールズ国・アベリオ国の援軍はかなり助かったのも事実である。
これにより、近隣諸国へ働き掛けてきたロックの頑張りが今後は実を結ぶ日も近いと言えるだろう。全軍が徐々に本国へと帰国する為に撤収の準備をし始めるとランスロットはアレスの様子を見にテント内部に入るとアレスは丁度着替えている途中だった。
「あ、すまない……」
「大丈夫だよ。上着着るだけだから」
「体調はどうだ? 熱は下がっている様だが」
「うん、この程度ならティクスに戻るまでは持つと思う。なんとか一時的だとしても終わって良かったね」
「そうとも言えないんだ」
「どうかしたの?」
「ラオンの動きはあまりにも突然過ぎる。何か裏がある様にしか思えなくてな」
ランスロットの言葉にアレスも静かに考えてみる。確かに今回のラオンの撤収には乱れもなく、迷いもなく、潔かった。
それが何故か気になってしまうのは分からなくもない。だが、今は現実を見れば騎士達を始めとする仲間達は帰国出来る喜びで士気が高まっている。
それを、何か裏があると言って水を差す様な事をこの目の前にいるランスロットはしないだろうとアレスは信じている。そして、簡易ベッドから立ち上がったアレスはランスロットの目の前に立って見上げると両腕をランスロットの腰に絡める。
「アレス?」
「真面目なランスロットの事も好きだけれど、少し力を抜いたランスロットの事も好き。今は皆の為にも笑顔を見せてあげて」
「……アレスには敵わないな。いつだって、俺の肩の力を抜かせてくれる」
「ふふっ、伊達に補佐騎士をしている訳じゃないからね? それに、聖女としてもランスロットの事を補佐するのは私の特権だよ」
アレスのブルーの髪の毛をそっと撫でながらランスロットの心は穏やかに包まれていく。そして、アレスの存在こそがランスロットの力でもあり、光でもあるのは紛れもない真実である。
ロゼットとルーディルの部隊を先頭に、エリッドとガルド達の部隊が最後尾を、その陣形でランスロット達は一路ティクスへと帰国する。ガルベルドやティールズ国の騎士団長と、アベリオ国の騎士団長も同行してティクスへと向かう。
ティクスに全軍が帰国するとアレスは聖女としての立場を使ってランスロットの補佐をしようとしたが、ローレンスとハルウッドに付き添われて屋敷に帰された。まだ体調が思わしくないのも懸念されていたが妊娠している身でもある為に、これ以上無理はさせれないとの事でランスロットの命でアレスは休ませる事にしたのである。
当然、アレスが素直に言う事を聞くとは思っていないランスロットの先手もあった。アレスに屋敷で栄養のある料理を沢山作って欲しい、とお願いしていたのである。
「アレス嬢が大人しく帰るとは思いませんでしたが、料理をお願いしていたのであれば納得ですね」
「それも、ランスロット様のお願いとあればお断りされる事のないお願いでもありますから。流石はランスロット様ですね」
「アレスの趣味をアルフォッド達から聞かなかったら言えなかったがな。そもそも、アレスの事を婚約者の俺より知っている時点で嫉妬するが」
「アルフォッドやオルベ、リディルが知っているのも頷ける事です。あの子達、事あるごとに集まって話し込んでいたのを知っている騎士達もいましたから。本当にアレス嬢を慕っているからこそ、お互いの事を話し合っていたというべきでしょうか」
ハルウッドのフォローもあってランスロットの嫉妬は一応の静まりを見せる。城にて大まかな仕事を終えたランスロットは下城して屋敷へと帰宅する。
ドアを開けてエントランスに入るといい香りのする事にランスロットは微笑みを隠せない。城から下がる前にフィンも屋敷の方に戻っているとの報告もあったので、祖母とアレスが一緒に料理をしているのだろうと思うと心が安らぐのを感じていた。
「戻りました」
「あ、お帰りなさいランスロット! 見て! お婆様の直伝のパイの包み焼き! お爺様が大好きだったんだって!」
「アレスが飲み込みが早いからつい昔の料理を教えてしまいたくなってしまいました。ランスロットも着替えてきて一緒に食べましょう」
「はい。アレス、あまりはしゃぐなよ?」
「うっ、気を付けます」
ランスロットは鎧を脱ぎに自室に入って着替えを済ませていく。鎧を脱いだ身体は軽くてリラックスも出来た。
シルバーの髪の毛を軽くブラシで整えていると、グルルッと腹の虫が音を立てる。空腹を知らせるその音にランスロットは苦笑しながら、手際よく髪の毛を整えて食堂に向かった。
食堂では湯気の立っている栄養豊富な料理が待っていた。アレスとフィンも既に椅子に座って待ってくれている。
ランスロットはフィンとアレスの間に座り、目の前に並ぶ料理に微笑みを浮かべていた。取り分けし始めるフィンとアレスはランスロットに沢山食べやすい様に少量ずつ取り分けてくれて、品数が豊富なのが良かった。ランスロットの取り皿に並ぶ色々な料理を見て、ランスロットの胃は完璧に臨戦態勢になっていく。
「頂いてもいいかな?」
「どうぞ、しっかりお食べなさい」
「うんっ。沢山食べてねランスロット」
「ありがとう」
ランスロットの手が動いて料理を食べ始める。味付けも殆どがランスロットの好みで統一されており、これはフィンとアレスの手腕だと思えた。
気付けばランスロットの皿は空になっており、ランスロット自身も余程の空腹だったのもあって平らげてもまだ足りなかったらしい。フィンがクスクス笑いながらアレスがキョトンとしているのを見て説明し始める。
「アレスは知らないかもしれませんが、ランスロット位の年齢になるとこの味付けだと食が進むんですよ。だから、ランスロットも遠慮しないで沢山食べて下さいね」
「助かります。携帯食料ばっかりだったのがこうして目の前に美味しそうな料理があるとつい手が止まらない。味付けも俺の好きな味付けですし」
「そうなんだね。お婆様、またお料理教えてくれますか? 私もランスロットの為にもっとお料理頑張りたいです」
「えぇ、いいですよ。私も料理は好きですから。でも、ランスロットもですけれど、アレス、貴女もしっかり食べてお腹の子供に栄養を送るのですよ? お腹の子供は貴女からしか栄養が貰えないんですから」
フィンの言葉にアレスも出来るだけの料理を食べ始める。こうしてアレスとフィンとの家族として過ごす食事を堪能したランスロットも今日はよく寝れそうだ、と考えて料理を平らげていったのであった――――。
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