私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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11章

89話「死者の塔へ」

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 異界への入口はエリッドの仲間で、ロドを高めて攻撃する魔術師タイプのレーデアとアルディシアがキーパーとなって入口を安定化させてくれる事になっている。そして、同時に光の力を異界へと送り込んでくれる役目も担ってくれるとの事であった。
 異界の風に慣れてきた騎士達の準備も整い、ランスロットの号令で進軍を再開する事が伝えられる。騎士達の先導をするエリッドとトールデッド、ガルベルドが安定化した入口を通って異界へと姿を消していく。
 遅れてランスロット達も異界へと入って行く。異界の大地に降り立ったランスロットは以前の異界と殆ど変わらない事を確認して、静かにそびえ立つ塔を見上げた。
 見えている塔こそが最終決戦の地である死者の塔。ここに異世界の魔王であるバルキットがいるのは分かっている事だ。
「死者の塔付近まで向かったエリッド達から報告が入った。死者の塔の入口は解放されたままで、敵の姿も確認されてない、との事だ」
「誘い込まれている、と考えるべきか……、それとも余裕の表れか」
「どちらにせよ行くしかない。現場の判断は怠るなよ」
 ランスロットはガルド、ロルゾを引き連れて死者の塔へと向かう。先行しているエリッド達は入口から死者の塔内部の様子を伺いながら警戒をしてくれていた。
 本隊の到着で死者の塔内部に入れる人間を調整し、外からの攻撃にも備える為にロルゾは外で待機。ガルドとガルベルドがランスロットの両サイドを守り、エリッドとトールデッドが数名の騎士と共に塔内部に侵入して索敵もこなす。
 外には入れない騎士達で守りを固めてもらい、安全な退路を確保してもらいつつ内部の攻略を進めて行く流れである。ランスロット達も内部に入ると見上げて息を飲んだ。
「螺旋階段の先が見えない……」
「まるで何処までも昇り続ける感じの螺旋階段ですな……」
「幻覚、って訳じゃねぇんだろ。行くきゃねぇよ」
「僕達が先行します。ランスロットさん達は安全を確保しながら上がってきて下さい」
 トールデッドがエリッドと数名の騎士と共に螺旋階段を上がり始める。ある程度登ったのを確認してからランスロット達も階段を上がり始める。
 壁からも異様な力を感じなくもないが、こうして一段ごと上がっていくとなると神経が高ぶってしまうのは致し方ないが。ランスロット達の後方はアルボリス達が守ってくれていた。
 暫く全員が黙って階段を上がり続けていると上階から低い唸り声が響き始める。とうとう死者の塔の本領発揮が始まったのだと全員が察する。
「敵確認! キメラとダークエルフの集団です!」
「各自、各々の出来る範囲でいい! 各個撃破で進め!」
「おいでなすったな。腕が鳴るぜ!」
「ダークエルフは僕達が! キメラをお願いします!」
「キメラならば私が得意です! ランスロット様はアルボリス達と共に指示を出して下さい!」
 螺旋階段の狭い幅の上での戦闘は困難を極めるものだが、それでも幾戦の騎士達は遅れを取る事はない。1人、1人、確実に敵を仕留めていく。
 ランスロットの元にキメラが数体来てもガルベルドが自分の部下達と共に撃退してくれた。心強い仲間達の反撃のお陰でランスロットとアルボリス達は無理に戦う事は必要なかった。
 各個撃破していくと上階に繋がる踊り場に出た一団はそこでひとまず体勢を整える。まずトールデッドが扉に罠が無いかと確認してから扉を開錠して開けて中に飛び込んでいく。
 そして、エリッドが後に続き騎士達も続く。その後にランスロット達も続くと今度は螺旋階段ではなく垂直に上がった階段が待っていた、が……そこで上階の最上階らしき場所に続く踊り場を確認する。
「あの上が最上階か?」
「でも、高さはまだあります。何か隠されているのでは?」
「闇の力が強くなっているな……嫌な感じだ」
「ランスロット、この先に強敵いる」
「分かるのか?」
「聖なる武器の性能の1つで、敵の力を探知する事があるんです。その力を僕達は感じます。明らかに何者かが待っています」
 アルボリス達の忠告を胸に置いてランスロット達は前進する。少し階段を上がって開けた場所に出た時だった。
 物陰から剣を持った骸骨兵達が襲い掛かってくる。騎士達とガルベルドが応戦して進路を確保するが前方からは魔術師達の魔法のオンパレードが一団を襲い始める。
 各個撃破をしながらも、階段を無理矢理上がったランスロット達はテラスの様な場所がある踊り場に出る。そこに1人の男性が立っていた。
「お前は……ラオン!?」
「久しいな。やっとここで再会を果たせたのは奇跡かもしれないなぁ?」
「お前は神々の1人に消された筈じゃ……」
「その神々によって生前の肉体より強力な肉体を手に入れたのだよ。そして、バルキットをも凌駕する肉体を手に入れた。もはやお前やあの女など必要ない。お前だけは私の手で殺す!」
「くっ、こんな場所での戦闘か……これも試練の様だな」
「ランスロットは上に行って。ここは俺達が担当する」
「ほぅ? 聖なる武器の人型か。面白い、武器風情がこの最強の私と戦うと言うか。壊してくれるわ!」
「アルボリス!」
「行って!」
 アルボリスに背を押されたランスロットは階段を駆け上がって最上階らしい場所に続く踊り場までやってくる。誰1人ランスロットの傍にはいない。
 まだ下の方で戦っている姿を確認出来るが、ここで待つのは得策じゃない。全員の実力を知るランスロットはここで待つより先に進む事を選択する。
 全員の無事を願って踊り場から開けている扉を潜り抜けてその次の空間へと身体を進める。開けた場所に出たランスロットの視界には暗闇が広がっていた。
 先程までの階層とは異なり明かりが一切ない暗闇の空間にランスロットの足は迷うことなく前に進む。そして、何もない空間に足を1歩踏み出すとそこに足場が形成される。
 バルキットの気配をヒシヒシと感じながらランスロットは前に、前に進んでいく。そして、目指すは最上階のバルキットの元。
――――
「これで終わりだ!」
「急ぎランスロット様を追うぞ!」
「ちっ、雑魚が片付かなかったか。まぁいい……まとめてここで葬ってやろうじゃないか」
「俺達、負けない。ランスロットの後を追う」
「その為にもまずは目の前のこいつを倒すのが先よ!」
 アルボリス達の前に立ち塞がるラオンは不気味な笑みを浮かべてアルボリス達の前で立っているだけだった。だが、それが逆に不気味さを感じさせている。
 ガルベルド、ガルド、エリッド達も並んで敵対すると一瞬場が静寂を生み出す。そして、次の瞬間。
「ぐはっ!」
「がはっ!」
「な、にが……」
「これは!?」
 アルボリス達以外の者達が一斉に口から血を吐き出す。それに驚きの声を上げるアルボリス達には一切何の影響もない。
 ラオンはクックッと笑いながら右手に濃縮させておいた異界のロドを周囲に巻き散らす。それが人間達の身体には猛毒であるのをアルボリス達はそこで知る。
 人間ではないアルボリス達には影響がなくても、ガルドやガルベルド、エリッドやトールデッド達を始めとする人間達には影響があるのだ。
「早く倒さないと!」
「アルボリス、ボロスリア、援護を!」
「僕とアキュートスが攻撃を!」
「許さないっ」
「来るがいい、人ならざる存在の者達! 私を殺してみせろ!」
 ラオンとアルボリス達の戦いが幕を開ける。アルボリスとボロスリアはロドを高めて戦前の戦いになるアキュートスとガルダルスに補助魔法を掛ける。
 ガルダルスはリーチの長さを活かして突き攻撃を展開。ラオンはこれを軽やかに回避して、カウンターでガルダルスの顔に1発拳を入れる。
 それで吹き飛び後方に下がるガルダルスと入れ替わりにアキュートスが大型の大剣を振るい、ラオンの頭上を目掛けて降り下ろすが動きの早さからラオンは楽に回避。そのままロドを集めてアキュートスの大剣をへし折り胴体に回し蹴りを入れて吹き飛ばす。
「動きが早いっ」
「もう! 何しているのよ! 動きを止めるから攻撃なさい!」
「俺とボロスリアが動く!」
「油断するな! 奴は異様に状況を見極めている!」
「どうした? この程度か? まだまだ遊び足りないぞ!」
 ラオンの攻撃、ロドを集めた球体を天井に放つ。その球体から無数の光の雨が降り注ぎダメージをアルボリス達に与えていく、がアルボリス達はその程度のダメージはどうってことは無かった。
 アルボリスが素早くラオンとの間合いを詰めて片手剣を横払い。それによりラオンの腹部に一筋の線状の切り傷が生み出される。
 これにラオンは不機嫌さを爆発、アルボリスに狙いを定めて掴み掛かろうとした矢先。ボロスリアが精確な狙いを付けて矢を放つ。
 これによりアルボリスに掴み掛かろうとしていたラオンの右手首を矢が貫通。痛みはないが不快感を感じているラオンは鬱陶し気に矢を引き抜こうと掴むが、その矢は光になってラオンの両手足を縛り上げた。
「ほー、よくぞこんな小賢しい技を使う」
「動きさえ封じてしまえばアナタなんて、敵じゃないわ!」
「行け! ガルダルス、アキュートス!」
「「はぁぁぁぁ!」」
「……頃合いか」
 ラオンの小さな言葉を最期にアルボリス達はラオンを総攻撃しようと武器を振り翳す。そして、ラオンに武器が届く! という時に死者の塔全体が大きく揺れ出す。
 何が起こっているのか判断出来ないアルボリス達はすぐに行動を停止させ状況を確認する。ラオンは拘束された手足を自由にすると揺れる死者の塔が見渡せるテラス部分へと身体を滑り出させる。
 アルボリス達はガルド達を抱えてとりあえず階段を駆け上がっていくが、揺れはデカくなっていくばかり。何が起きているのか分からない今、下手な判断を出来ないと考えてガルベルドが気丈に部下達を見て指示を出す。
「お前達は外の部隊に事の詳細を伝えてくるのだ。私はこのままランスロット様の後を追う」
「しかしっ」
「ここで私が死んだ時は次期団長候補を定めて騎士団を守るのだ。行け!」
「流石にランスロットの事が心配だ、あいつの事だから無茶をしていなきゃいいが……」
「その為にも僕達も急がないと……。エリッド、行けますか?」
「あぁ、ここで立ち止まる訳にはいかない。行こう!」
 アルボリス達はガルド達の気迫に何故か驚きを見せてしまう。人間達は危険だと思っても前に進む事を躊躇わない事に驚きを感じてしまう。
 ランスロットの元に急ぐために全員が扉を抜けて次なる空間へと向かう。そこに待ち受けている驚愕の事実とは――――?
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