私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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12章

91話「最上階への長い道のり」

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 アルボリス達が追い掛けているランスロットは、階段を上がり始めて既に2時間程が経過しているが、未だに最上階へは到着していない。それどころか、徐々に光の力が強まりランスロットに危機感を抱かせているのはランスロット自身が一番に理解している。
 アルボリス達がランスロットを追っている事、ガルド達が来れなくなっている事もランスロットは何一つ知らない。そして、それを嘲笑うかの様に死者の塔はまだまだ先がある様に窺い知れる事が出来た。
「……」
 闇の力も徐々に強くはなっている。なってはいるものの、それでもまだランスロットは闇に怯える事を感じる事は全く無かった。
 それどころか、バルキットの気配を強く感じる様になり戦意が上がっているのを感じている。それがランスロットを前に進ませている原動力の1つになっている。
 階段を上がっていく中で、1歩1歩が確実に想いを乗せている。帰らなくてはならない想い、生き抜かなくてはならない想い、平和を手に入れる為に勝つとの想い、そして……最愛なるアレスの元に戻るとの想い。
 それらが何よりもランスロットの光になっている事はランスロット自身が一番に理解している。そして、階段の中間にある踊り場で一度足を止めて一息着く。
「結構上がってきたな……今どれくらいだ?」
 ランスロットはガルド達が渡れなかったあの階から無心で上がり続けてきたのもあって、気付けば87階辺りまで来ていた。まだ上に続く階段はあるがその階段の終わりが見え始めている。
 残りを上がるか、と足を踏み出そうとした時に光の存在を下層から感じたランスロットはガルド達だろうかと動きを止めて存在を確認しようとする。そこに来ていたのはアルボリス達であった。
「ランスロット!」
「アルボリス達が来たか。ガルド達は?」
「あの見えない階段の所で来れなかったわ。選ばれた者しか登れなかったみたい」
「ランスロット様がかなり上階にいたので、急いで上がってきたのですが終わりが見え始めているのですね」
「あの場所にバルキットの気配を感じる。ここからは要注意して進まないと、何が起きてもおかしくないよ」
 仲間達の言葉を聞いていたアルボリスがランスロットの先に出ると武器を構えた。そこにラオンの姿があったからだ。
 ボロスリアやガルダルス、アキュートスも武器を構える。ラオンの瞳はランスロットただ1人に注がれているのは全員が分かっていた。
 ランスロットとラオンの視線が交じり合う、それが合図だったのだとすぐに分かった。アルボリス達がラオンに向かって攻撃を始める。
「はぁ!」
「でぇりゃ!」
「この程度の雑魚に用は無い。私が求めているのはランスロットのみだ」
「ランスロット様には指1本触れさせません!」
「近寄らせないっ!」
 アルボリス達がラオンに攻撃をしていくが、ランスロットとラオンは一切戦う気配を見せなかった。だが、それが異様に思えてしまう。
 ランスロットはラオンの事を見ているが、ラオンは果たして。攻撃が切れた瞬間にアルボリス達は下層まで吹き飛ばされていく。
 ラオンの異様なる力を以ってして吹き飛ばされたのである。だが、それでようやく場は整った。
 ランスロットはラインハッドを引き抜き構える。ラオンもまたレイピアを構えて両者の間に緊張感が走る。
 アルボリス達はまた急いでラオンの前に立とうとして上がってきたがラインハッドを構えたランスロットを見て足を止める。そして、ラオンとランスロットのバトルが静かに幕を上げた。
「はぁぁぁぁ!」
「ふっ!」
 ラオンとランスロットの武器同士がぶつかり合い火花を散らす。ギギギっと金属同士のこすれ合う嫌な音が周囲に響き渡っていたがそんなのを気にする状態ではない。
 重なり合っている武器同士が離れると同時に魔法の詠唱が両者に入る。先に魔法の詠唱が終わったのはラオン。
 ラオンのレイピアに漆黒の炎が纏わり、その刃を更に狂暴な刃に変える。そして、ランスロットの魔法はそんな漆黒の炎を打ち消すかの様な神聖魔法で、ラインハッドをより神聖な力に満たす魔法。
「次でとどめを与えてくれるわ」
「次で終わりにしてやる。ここで終わりだラオン」
 お互いの武器に魔法が付与された状態で間合いを徐々に詰めていく。そして、両者が地を蹴って距離を一気に縮めた。
 ガギィンと音が甲高く鳴り響き、漆黒の炎を纏うレイピアと神聖魔法を纏うラインハッドがまた重なり合う。だが、徐々に炎がラインハッドを飲み込み始めていた。
 だが、ラインハッドを使う主であるランスロットの瞳には焦りは見られない。飲み込まれていくのを眺めていながら何かのタイミングを伺っていた。
「死ねぇ!」
「……ここだ!」
 レイピアを力一杯押し込んできたラオンの動きに合わせて、ランスロットのラインハッドが神聖魔法を解放する。光が瞬く間にレイピアをへし折ってラオンの身体を光が包み込んだ。
 ラオンはこの光に飲み込まれた瞬間に「死」を悟る。神聖魔法の中でも高難易度の魔法である攻撃魔法をラインハッドに纏わせていたランスロットの勝利がこの時に確定した。
 ランスロットは消滅したラオンのいた場所を見下ろして、小さく息を吐き出す。そして、アルボリス達に振り返り怪我の無いかと確認し始める。
「皆は無事か?」
「凄い、あんな一瞬でラオンを倒しちゃうなんて……」
「まさかの攻撃魔法だって思わないわよね。一枚上手だったかぁ~」
「ランスロット、強い」
「私達の使い手に選ばれる事だけはあります。さぁ、参りましょう。バルキットの気配をより強く感じます」
「ここからは俺1人で行く。皆には少し仕事を頼みたい」
 ランスロットはアルボリス達にある頼み事をして別れて階段を上がり始める。頼まれたアルボリス達はランスロットを見送り全員で階段を降り始めた。
 先程の戦闘を見れば自分達は足手まといなのは言うまでもなく理解してしまう。そして、頼まれた事の方が自分達の力を活かせる事をアルボリス達は自然と悟っていたのである。
 アルボリス達が頼まれたのは、この死者の塔の光を集めて最上階へと集めてくれとのランスロットの頼みであった。先程の戦闘で光の力を使ったので少なくなってしまった光を補いたいとランスロットは告げていたのである。
 そして、ガルド達のいる場所まで降りてきたアルボリス達はランスロットの言葉をガルド達に伝える。それを聞いたガルド達も光を集める作業を手伝ってくれるとの言葉をくれた。
「私はロルゾ様の元に赴き、異界とガハランド大陸を結ぶ光を集める様にお願いしてきます」
「僕とエリッドは下層のエリアの光を中層のここにまで集めますね」
「俺はその中層の光をアルボリス達に引き繋ぐ役目を持とう」
「光、集まればランスロット勝てる。だからお願いする皆」
「やるわよー!」
「やりましょう」
「やってあげます」
 こうして光を集める作業が始まる。ロルゾもガルベルドが知らせた内部の状況を把握すると騎士達に祈りを任せて光の力を集める様に指示を出す。
 それが集まり始めたのをトールデッドとエリッドが圧縮して中層のガルドの元にまで送る。そして、受け取ったガルドは中層に来るまでの間に貯めた光を更に圧縮して、上層階に持って行けるアルボリス達に引き渡す。
 それを受け取ったアルボリス達4人は階段の部分部分に立って、下層から送られてくる光の力を上層階を通して最上階のエリアに飛ばしていく。それを1時間程繰り返した所で最上階から爆発音が響き渡った。
 戦闘が、最期の戦いが始まったのだと誰もが気付くし、理解する。この爆発音の大きさからしてバルキットの力はラオンの数十倍もある事を。
「始まったか。負けるなよランスロット」
「ご無事で、ランスロット様」
 死者の塔入り口ではロルゾとガルベルドが騎士達と共に祈りを捧げてランスロットの無事と勝利を願う。
「この爆発音、物凄い闇の力を感じる……」
「大丈夫、ランスロットさんなら負けない」
 下層から光を送っていたトールデッドとエリッドも祈りを捧げる。
「派手にやり始めたな。だが、この戦いに勝ってこそ、聖騎士団団長の実力を維持出来る。行け、ランスロット」
 ガルドはランスロットに強い希望を信じて祈りを捧げる。
「バルキットの力はこんなに強大だったの? 大丈夫よね?」
「俺達が信じないで、誰が信じるのさ」
「そうです。信じましょう」
「ランスロット、負けない」
『ルーン♪』
「ルピルピも応援しているのね。そうよね……信じる力の強さを私達は知っている。送りましょう、私達の光の祈りを」
 アルボリス達は全員で最上階にて戦っているだろうランスロットの元に光が届きます様にと、強い祈りの心と光を乗せて送り出す。光の祈りと信じる心、言葉、願い、それらは眩い光を放ちながら1つの大きな球体の光になって最上階へと舞い上がっていく。
 その光の球体を見送っていたルピルピがパクリとアルボリス達の背後から迫っていた闇の魔物達の魂を食べる。まだ死者の塔の敵が残っている事も懸念してアルボリス達は掃討作戦を開始。
 同時に入口のロルゾ・ガルベルドがエリッド・トールデッドと共にガルド達の支援の為に掃討作戦を開始。ガルドも1人で出来る量の掃討作戦を開始。
 全員が信じたのである。光に愛されて、神々に愛されて、そして、同時に運命を変える為の運命の申し子であるランスロットを信じる事で繋がる信頼がある。
 光が全員の願いと信頼を絆に変えて、ランスロットを守る為の力になる。ガルドは特にそれを強く感じ取っていた。
「なんだろうな……ランスロットを守る事が当たり前になっているが、あいつがまだ団長になりたての頃はそんな義務とかも感じずに、当たり前の様に従ってきたが……今こそ、信じ抜く強さってのを知った気がするぜ」
 敵を倒していきながらガルドは約10年前のランスロットを思い出す。10年前のランスロットをガルドは守る事を運命づけられた。
 それがこの最終局面では「信じる力」を強く意識させられる。これこそが団長でもあるランスロットを信じて付いてきたガルドに感じられる絆だと言えるだろう。
 ランスロットを信じている仲間達の強き願いはランスロットを守る力になってくれるのだろうか――――?
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