私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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12章

97話「ただいま」

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 ランスロット達は一度全体の陣形を整えてから暫く身体の調子を整える為に、異界の入口があった泉の傍でテントを張って過ごしていた。だが、全員の体調も整い、そして、帰国するまでの体力を回復したと判断したランスロットは全員にティクス国帰還を命じる。
 ガルベルド、エリッド、トールデッドが先陣を歩き、アルディシアとレーデアが本隊に遂行して、アルボリス達とガルドとロルゾはランスロットと共に穏やかな道を馬で歩いていた。アルボリス達はティクスに戻り次第聖なる武器本体に姿を戻してまたティクス国に祝福を与える為に眠りに着くという。
「なんだか、寂しいな」
「でも、私達はガハランド大陸に危機が無くなった今、こうして人の姿でいるのは結構疲れてしまうの。力ももう使い過ぎているからまた蓄積しなければならないわ」
「それに、聖なる武器の祝福があるからこそティクス国やエドゥル国の存在が際立つと言われている。だから、俺達は静かにまた時が来たら動ける様に眠りに落ちるんだ」
「僕達の存在があまり公にされない様に、そこら辺の配慮はお願いしますねランスロット様」
「ランスロットと過ごせて楽しかった。いつかランスロットと聖女の子供に会ってみたい」
「姿は変わっても必ず会いに連れて行く。だから、その時は祝福を子供達に与えてくれると嬉しい」
「私達の祝福を受ければ、きっと闇からは遠ざける事が出来るわね。いつの日かその子供達と旅に出る事にならない様に願っているわ」
 ボロスリアやアキュートス、ガルダルス、アルボリスはランスロットと馬を並べて歩きながらそんな風に笑いながら話をしてくれていた。ランスロットもそんな4人の言葉に微笑みを浮かべて小さく頷いて4人と自分の子供達がいつの日か共に旅をする日が訪れる事のない事を静かに願うのであった。
 一団は山や丘を越えて国境付近にまで戻ってくる。ガルドとロルゾが全体のスピードを確認しているとエリッドとガルベルドが本隊に近付いてくる。
 どうしたのだろうかとガルドとロルゾが2人に近寄るとトールデッドの姿がない事も含めて問い掛ける。エリッドが先頭から出迎えの一団が出てきていると話をし始めた。
「それじゃ出迎えの騎士団が迎えに来ているって事か?」
「恐らく間違いないと思います。ティクス国の聖騎士団の旗を掲げているのを確認してますから」
「それと私の騎士団の顔馴染みもいました。ほぼ間違いはないかと思いますぞ」
「ハルウッドとカセルが出迎えの騎士を派遣したのかねぇ。それならそれでかなり助かるちゃ助かるが」
「だが、迎えの騎士を寄越すなんてティクス国で何か起きたか?」
「とりあえず、俺がランスロットに知らせてくる。ガルド、エリッド達の事を頼むぞ」
「おうよ、分かった」
 ロルゾが馬を本隊の後方にて歩いているランスロットに向けて走らせていく。それを見送ったエリッドとガルベルドがガルドに不思議そうな視線を向けていた。
 その視線の不思議そうなのを受けてガルドは首を傾げる。何故自分に不思議そうな視線を向けるのかをガルドは分かっていない。
 ガルベルドがエリッドの代わりにガルドに不思議な視線を送っている理由を話す。それを聞いたガルドは少し真剣に考えて、すぐに大きな声で笑い始めた。
「あっははは。俺とロルゾの役目が不思議だって言うんだな?」
「そ、そうです。普通親衛騎士のガルドさんが知らせに行くのが普通なんじゃないかなって思ったから……」
「私も同じ意見ですな。親衛騎士の方が団長への取り次ぎ等をしているイメージがありましたので」
「それはティクス本国にいる時は俺やハルウッドがそんな役目をしているさ。でも、今みたいに出先の場合はロルゾの方が都合がいい。何故なら、風を読んで緊急事態を把握する事に長けているロルゾの方が状況に臨機応変に対応出来るからだ」
「そうなんですか……騎士団の人達の関係は俺には分からないや」
「私も理解出来るかと思いましたが、ティクスは臨機応変に対応しているから柔軟性のある騎士団なのですな」
「臨機応変に対応しなきゃいけないのさ。ランスロットに振り回されてる騎士団が俺達だからな」
 ガルドの笑い声に釣られてランスロットに知らせに云っていたロルゾが戻ってくる。ランスロットとアルボリス達を引き連れて。
 ランスロットはガルドの笑い声に苦笑を浮かべながら静かに3人の傍に馬を寄せると、エリッドとガルベルドに出迎えの騎士団の中に知った顔を見なかったか? と問い掛けた。2人は少し思い出す様にしてからエリッドが手を叩いて1人の名前を口にする。
「リディルっていう女性騎士がランスロットさんの事を聞いていましたけれど、ご存知ですか?」
「リディルはアレスの同期で、ハルウッドと共に騎士団の留守を任せているカセルの妻だ。そのリディルが来ているのであれば間違いないのだろう」
「それじゃ俺達に何かを知らせに来ていると考えていいんだろうな。呼ぶか?」
「呼ぶならこちらから出向いた方が早い。全体的に帰国のペースを上げさせてくれ。このままだと明後日までには帰国出来るか分からないからな」
「明後日って、何かあるのですかな?」
「明後日……あぁ、予定ではアレスの出産予定日に重なっているな確か。そうか、早く我が子に会いたいかランスロットは」
「それもあるが、出産に立ち会えないと分かっている以上、早くアレスに再会して出産の労いをしたいんだ。俺の留守中に不安にさせていたのは間違いない事だし」
 ランスロットはそこまで話をしてリディルがいる場所に馬を走らせて行く。それに追い付く様にロルゾとガルドが随行する。
 エリッド達も遅れてランスロットとガルド達を追った。アルディシア達もトールデッドがリディルと何かを話している場面に遭遇して冷やかす為にわざと茶化して遊び始める。
 リディルはランスロットを確認するとローレンスとフィンからの手紙を取り出して、それをランスロットに差し出した。そこに書かれているのは出産時のアレスの様子と産まれてきた子供達の様子について書かれているとリディルが説明してくれる。
「団長がお戻りになられてから出産をしたかったとアレスは考えていたとは思いますが、赤ん坊はそんな事はお構いなしで産まれてくるので。ローレンス様とフィン様のお話だと母子共に元気で過ごしているとお伺いしております」
「そうか……。リディル、少し質問をさせてもらってもいいだろうか?」
「はい、私にお答え出来る事であればお答え致します」
「産後の身体を労わる為にも必要な栄養や必要な物とかは何を用意したらいいのだろうか。留守中にお婆様にお願いしていたが、俺が戻ってきた以上、俺も何かしらの事をしたいなと考えている」
「そうでございますね……。まずは身体の免疫力を高める為にも質のいい食事をしっかり用意して食べさせる事が必要です。母乳で赤ん坊は栄養と免疫力を高めますから母体の身体が健康でないと子供の身体に病魔が忍び寄ります」
リディルの言葉にランスロットは真剣に聞いて、それで必要になるだろう食事や育児に必要な知識を学ぼうとする姿勢を見せていた。リディルはそんなランスロットに微笑みながら自分の経験談を交えて色々とアドバイス的な話をしていく。
 会話をしながら歩き続けていた本隊のスピードが上がる。皆が皆、愛する家族や恋人の元にいち早く帰りたいと思っているのだろうとリディルは感じ取っていた。
 そして、本隊がティクス国の城がある首都に戻ってきたと報告が入ったロゼットはハルウッドとカセルの決定で大人しく自国に帰国して行ったアベリオ国の騎士団の人間達のリストを眺めている所だった。アベリオ国の騎士団の人間達は明らか様にハルウッドとカセルの決定に顔色を変えてしまっていたのはテラスからでも見ていて分かっていた。
「まさか、本当に聖女の素質などの調査に騎士団を使うとはな。アベリオ国の本気度が伺えるものだが……。だが、今回はハルウッドとカセルの決定があったから余計な揉め事が起きる事も無かったのは不幸中の幸いか」
 ロゼットはそこまで呟いてローレンスが定期的にアレスの環境や状況についての定期報告書を提出しているのを知っている。これがランスロットが戻ってきた時にいなかった間のアレスを知らせる事に繋がると思えば可愛らしいものだと言えるだろう。
 ローレンスがアレスの出産時に起こった出来事を簡略的に纏めている資料を読み込んだロゼットは、これがランスロットが知れば間違いなく暫くは城に上がるのは控えるだろうと考えて、それなりの対処をする事を考えていた。そう、アレスの出産は思っていた以上に難産で、母体も危ない状態に陥っていた時もあったとローレンスが報告している。
「幸いな事に、長女が取り上げられてから1時間後に長男が取り上げられたのは奇跡だと言えるだろう。まさか双子とはいえ時間差で出産する事になるとは予想もしなかっただろうしな」
「ロゼット様。ローレンス様から定期報告書が届きました。こちらに置いておきます」
「あぁ、ありがとう。ランスロット達が戻ってきたら陛下の謁見後にここに来る様に伝えてくれ」
「はい、心得ました」
 部下の女性にランスロット達が戻ってきた後の事を指示すると、女性は一礼して執務室を出て行った。ロゼットはランスロットがアレスの出産時の事を知りたいだろうと思ってローレンスが寄越している定期報告書の内容を自己流ではあるが、簡単に纏めておこうと羽ペンを手に取り羊紙に内容を簡単に書いて行く。
 そして、ランスロットがロック王と謁見しているとの報告が入る頃には纏めあがった内容を纏めた羊紙を丸めて封をしていた。これをランスロットが見ればある程度は理解出来るだろうし、把握も出来るだろうとロゼットは考えている。
 ランスロットがロゼットの執務室を訪れたのは羊紙を纏めてから40分後の事だった。帰国を報告に来たランスロットが羊紙を見付けて首を傾げているのをロゼットの口元には笑みが浮かぶのであった――――。
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