あざとすぎるよ、皆月さん

小坂あと

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学生編

皆月さんの高校時代と制服姿

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 紅葉ちゃんが帰ってくるまでの間。
 会話の内容は昔話になって、皆月さんの高校時代のアルバムをふたりで覗き込みながら話した。ちなみに皆月さんは高校も女子校だった。

「あぁ~…この頃から綺麗なんだ。もう完成されてる」
「き、きれいかな?」
「私と同じ高校生とは思えない…大人びてますね」
「それは当時からよく言われてた」
「…やっぱりモテました?」
「何がモテなのかはちゃんとよく分かってないけど…違う学校の男の子から告白とか、ラブレターはよく貰ったかな。あとバイト先の人からも連絡先貰ったり…」

 想像通りモテまくっていたらしい高校生時代の皆月さんだったけど、本人はかなり大変だったと軽くだけど話してくれた。
 大変だったのは恋愛のトラブルとかじゃなく、単純に自分を囲む環境が。
 皆月さんの家はいわゆるシングルマザーの家庭で、父親は紅葉ちゃんが産まれてすぐくらいに亡くなってしまった…らしい。
 そこから専業主婦だった皆月さんの母親が家計のため夜勤で働きだして、申し訳ないながらまだ生まれたばかりの紅葉ちゃんの夜の面倒を皆月さんに任せるようになったとか。皆月さんも不満になんて思わず、紅葉ちゃんが可愛くて仕方なかったからすんなり子育ても受け入れられたと言ってた。
 だから中学生の頃から、我が子のように可愛がってるとも話してくれた。
 高校生になってからはすぐにバイトを初めて、家事に育児に学校に…それらを器用に全てこなしながら、バイトの給料の大半は家に入れたり、将来の自分がいつ進学を希望しても平気なようにお金を貯め続けてたらしい。足りないなと思ったら掛け持ちのバイトを増やしたりもしたんだとか。
 結局、紅葉ちゃんの将来の学費とかのため安定を求めて大学へ進学して、現在。前も聞いたけど、今は司書さん、もしくは公務員を目指しているそう。
 ほんと、妹思いの素敵な人だ。苦労人でもある。

「そんな忙しくて…高校時代に遊んだりできなかったんじゃ…?」
「そうねぇ…高校の頃は友達もほとんどいなくて…放課後に遊びに行ったりとかは全然できなかったなぁ~」
「それじゃあ、彼氏とかも作れませんよね」
「うん。恋愛なんかに使う時間がもったいなかったし、そんな興味もなかったから」

 そりゃそうだ。
 モテるのに彼氏がいない理由に、すんなり納得できた。性の知識に乏しいのも、友達からの情報が入ってこないからか…私も友達がいなければ、知りもしないことばっかりだったもんね。

「…大学入ってからは?」
「変わらないよ~。紅葉が前より手が掛からなくなったから気持ちにも時間にもゆとりはできたけど…時間があったら寝るなり、勉強するなりしたいから。人付き合いも苦手だし…女子大だし、そもそも出会いもないよ~」
「出会いはたくさんあるじゃないですか」
「え?そうかな」
「うん。バイト先とか」

 よく連絡先貰ってるし、ってつもりで言ったんだけど…

「な…渚ちゃんは、そういうんじゃないよ?」

 どうしてか、フラレてしまった。

「純粋に、後輩として好きなの。そんなふしだらな目で見てないもん」
「ふしだらって…はは」

 苦笑する。何を勘違いしたのか、バッサリと言い切られて少し凹んだ。

「というか…この制服」

 話を変えるため、アルバムの中の皆月さんを指差す。

「かわいいですね」
「あぁ、それね。かわいいよね……あ!家にまだあるよ」
「え。着てるとこ見たい」
「き、着るの?」
「うん。めっちゃ見たいです」
「最近太っちゃったから…入るかなぁ」

 困った声は出すものの着てくれるみたいで、皆月さんは自分の部屋へと制服を取りに行った。
 皆月さんの高校の制服はブレザーで、比較的シンプルなチェック柄のスカートだった。リボンが赤みがかった紫なのがかわいい。今着てもきっと似合うんだろうな。

「……ちょっと、胸のあたりきついかも…」

 着替え終わったらしく、しばらくしてリビングに戻ってきた皆月さんを見て、

「え。………めっ……ちゃ、かわいい」

 私は感激して思わず、自分の口元を押さえた。
 今まで勝手にその雰囲気とかから大人びた人だと思ってたけど…制服着ると、私と同じくらいの年齢に見えた。
 それがまた親近感のようなものを覚えさせて、目の前に現れた高校生時代の皆月さんを、ただ呆然と眺めた。
 ……胸元だけパツパツで、ブラウスのボタンとボタンの隙間から谷間と下着が見えてるのは黙っておこう。眼福だし、隠されたらもったいない。

「変じゃない…?」
「全っ然!かわいいです」
「て、照れちゃうな~……でもこの年になって制服着るなんて思わなかった。年甲斐もなく…」
「まったく違和感ないですよ。同級生にいたらモテモテだっただろうなぁ~…美人すぎて」

 素直な感想がぽんぽん口から放り投げられる。
 それを受け取った皆月さんは恥じらった様子で太ももを擦り合わせて、胸元に手を置いた。それさえかわいすぎて鼻血出そう。

「き…気に入ってくれてよかったけど……は、はずかしいな」
「写真撮ってもいいですか?」
「っだ、だめ!絶対、やだ」

 記憶だけじゃなく記録にも残しておきたかったのに、断られてしまった。残念。

「一生見てられます、これ」
「じゃあ一生これで過ごしてあげようか?」
「お願いします」
「っや、う、うそだよ」

 土下座する勢いでお願いしたら、慌てて顔を上げさせられた。

「いやほんと…一生それで過ごしてほしい」
「もう~…ばか」

 珍しく悪態をついて、コツンと優しく額に拳を当てられる。もはやそれは今の私にとってはご褒美だった。
 その後もマジ女神…と崇める私を、皆月さんは対応に困ったようにあたふたと、慌てていた。




















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