あざとすぎるよ、皆月さん

小坂あと

文字の大きさ
38 / 65
学生編

皆月さんの悩み

しおりを挟む
























 高校の時の制服を3、4年ぶりくらいに着た時、渚ちゃんの反応がいつにも増して良かった。

 大学の講義を受けながら、ぼんやり考える。
 今の自分の服装を見下ろせば、淡い緑のロングフレアスカートに、白のハイネックノースリーブ…そんなに変ではないはず。サンダルだって安物だけど…それなりに大人っぽくてかわいいのを選んでる。
 …アクセサリーが足りないかな。
 普段ネックレスとかつけないから、物足りなく見えるのはそれかも。一応いつも細めの腕時計は着けてるけど…これはオシャレというより時間を確認するためのものだしなぁ。
 あんまりに落ち着いた服装すぎて、渚ちゃんは好みじゃないのかな。もっと短いスカートとか履いた方が喜ぶ?足はあんまり見せたくないけど、制服はけっこうスカート短かったから…足を見せてた方が良いのかも?すごい喜んでたもんね、あの時。
 幸い最近は親の仕事も給料も安定してきていて、家に入れるお金も減った。紅葉のために貯金は欠かさずしてるものの、普段そんなに自分に使うこともないから服を買うためのお金は一応、余ってはいる。

「……買いに行こうかな…」
「なにを?」

 講義が終わってもまだ席について悶々と悩んで出たわたしの独り言を、大学の同級生のひとりが拾った。

「新しい服。買いたいなって」
「珍しいねぇー、なに。彼氏でもできた?」
「そういうんじゃないけど…」

 でも、喜ばせたい人はいる。
 というか…褒められたい。たまに毒舌な渚ちゃんがわたしのことを「おばさんみたい」って言うから、見返したいの方が正しいかも。

「一緒に…来てくれない?」

 珍しく自分から友人のひとりを誘ったら、彼女は快く承諾してくれた。

「どういう系の服がいいの?」
「うぅん…よく分かってないんだけど、できるだけ短いスカートで、あんまり大人びすぎてないやつがいいな」
「……ほんっと珍しいね。趣味変わったの?」
「変わったわけじゃ…いつも同じような格好だから変えたいなって思っただけだよ」
「やっぱ彼氏?」
「もう~…なんですぐそうなるの」

 みんなしてなんでもかんでも彼氏とか結婚とか男とかって…ほんとに恋愛好きだよね。わたしにはその気持ちがまるで分からないや。
 男の人と過ごすよりも紅葉とか…最近は渚ちゃんと過ごしてるのが一番楽しい。彼女はわたしの変なところもすんなり受け止めてくれたのもあって、心開いてるし話しやすい。

「こことかオススメだよ」
「わ…かわいい」
「でもちょっと高いよ?」
「へいき。今日は多めに卸してきたから」

 数万円…わたしにとっては大きな金額だけど、渚ちゃんにはどうしても「おばさん」から「お姉さん」くらいには思われててほしい。せめておばさんの印象は変えたい。
 改めて見返したい気持ちを心に溜めて、わたしはオシャレそうな店内へと入り込んだ。







  











「ほんとなんでも似合うね~!」
「そ、そう?」

 店内に入ったわたしはとりあえず、片っ端から色んな服を着てみることにした。
 パンツスタイル…は今日の趣旨には合ってないから、主にスカートメインで。自分が思ってたより服の種類や形が多くて戸惑った。

「で?相手の人には、どんな風に思ってもらいたいの?」
「うぅ~ん……いつもおばさんって言われるから、せめてお姉さん…欲を言えばかわいい~って反応されたいかなぁ」
「………やっぱり相手いるんじゃん」
「え。あ……えっとでも、別に付き合ってるとかじゃなくて、お互いそういうんじゃないっていうか、その」
「年下?年上?それによって感じる印象も変わるよ」
「……こ、高校生」
「は!?え…年下が好みだったの?」
「好み…っていうか、妹とか弟みたいでかわいいなって、はは…」
「意外すぎる…でも、そっか。年下かぁ」

 友人は顎に手を置いて悩んだあとで、

「それなら逆に、大人の色気ゴリ押しでもイケるかもよ」

 タイトな黒いスカートを手に取った。

「高校生ならきっとエロい妄想しかしてないだろうし…家庭教師のお姉さんとかに憧れる時期でしょ」
「あ…もう家庭教師したことある」
「それなら決まり!エロい家庭教師のお姉さんになれば、きっと相手めちゃくちゃ喜ぶよ~!」
「ほ、ほんと?」
「うん!勢いでそのまま…襲われちゃうかもね」
「襲われ…?や…そ、それはないかな」

 渚ちゃん女の子だもん。
 わたしのこと、そんな目で見るわけない。真面目な子だし。
 なにやら盛大に勘違いしてるらしい友人の提案に乗っかって、わたしは普段着ないような服をとりあえず買ってみた。
 それを両腕に抱えて、るんるん気分で帰路につく。

 渚ちゃん、喜んでくれるといいな。








 












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...