あざとすぎるよ、皆月さん

小坂あと

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学生編

タイトなスカート

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 期末テストは終わったけど模試が控えてるから、それを気にかけてくれた皆月さんから「また家庭教師するよ~」と、バイト先で会った時に言われた。
 それはそれはありがたい話だから断るわけもなく、女神と崇めてよろしくお願いしたのが先日。

 そして今日。

「さ…はじめましょ?」

 ぴっちりな黒のタイトスカートに、胸元をなかなか大胆に開けた半袖のYシャツ、そして謎の伊達眼鏡姿の皆月さんを目の前に、私は頭を抱えた。
 ⸺なんで家庭教師の日に限ってこんなえっちな恰好なの!?
 そしてもしや……これで外を歩いてきたんだろうか。…きたんだろうな、皆月さんのことだから。

 って、ことは。

「あ、あれ。勉強しないの?」

 呑気な顔の下にある大きな膨らみを睨みつける。
 あのダイナマイトな胸の脂肪と、それが生み出す谷間と言う名の1本線を、道行く男達が見たんだ。
 うぐぐ……く、悔しい。
 私だけが見たわけじゃないなんてやだやだ。と思わず地団駄を踏みそうになって、癇癪一歩手前の自分の心を戒める。落ち着け、渚。お前は男好き、タイトなスカートには興奮しない。
 興奮、しな…

「もう、いつまでそうしてるの?」

 皆月さんの体が近付いて、頭を抱えていた手首を持たれる。
 視界の半分くらいを埋めた豊満なお胸といい感じにはだけたYシャツの襟と、少し下を向けば見えるタイトなスカートから覗く太ももに、ゴクリと喉が何かを飲み込もうと動いた。
 こんなの……興奮するに、決まって…

「こ、心の準備をさせてください」
「なんの?」

 私にも分かりません。
 質問には答えずに、一旦ベッドシーツにぽすり、と顔を預けた。

「すぅー…………はぁー…………」

 深く、深く。ゆっくりと、呼吸をしていく。
 大丈夫。私は正常。
 あんなの女でも男でも、誰が見ようが興奮する。グラビアアイドルが写真集の中から飛び出してきました、みたいな格好だもん。そんなのもう無理、私じゃなくても興奮する。
 これはそう…不可抗力。自然の摂理。森羅万象。酒池肉林、弱肉強食…焼肉定食……あれ。なに考えてたんだっけ?
 とにかく私は、女が好きなわけじゃない。
 よし。

「お、終わった?」
「はい。もう完璧です」
「なにが…?あ、それよりさ」

 何かを思い出して、皆月さんは、

「どうかな?この格好」

 襟を掴んで、チラリと胸元を見せるように服を開いた。それがやらしいという自覚なく。

「好きです」
「へ?」
「いやもう正直めっ………………ちゃ好きです」
「た、溜めるねぇ…」

 私の葛藤の時間は無駄に終わった。
 そりゃ仕方ない。どう?なんて聞かれたら、問答無用で好きに決まってる。好みドンピシャ、ごめんだけど勉強なんて放り投げて今すぐ保健体育の実践授業を始めてほしい気分。すみませんもう変態でいいです。

「えへへ…気に入ってくれてよかった」

 照れたように頬をかく姿さえ、頭のおかしくなった私にはいやらしく見えてしまう。

「渚ちゃんいつもおばさんみたいって言うから……私服より、この間の制服の方が良かったみたいだし?」

 気にしてたのか、嫌味っぽく言われた。ごめんなさいもうなんかあんまり頭に入ってこない。かわいすぎて。

「肌を見せるのは恥ずかしいけど…ふふ、渚ちゃんに好きって言ってもらえてうれしいな」

 服装はどこまでもやらしいのに、可憐で純粋な笑顔を浮かべる皆月さんを見たら、つい。

「…楓さん」

 細い手首を掴んで、腰に手を回す。

「勉強じゃないこと…しませんか」

 グッと手に力を入れて抱き寄せたら、眼下の瞳が戸惑いに揺れた。

「べ、勉強じゃ…ない、こと?」

 もう、どう思われたっていい。
 私はやりたい事をやってやろうと、無防備なYシャツのボタンに手をかけた。































「はぁ~!やっぱり!めっちゃ良い…」
「や、は…恥ずかしいよ」
「いやまじで…最高。かわいすぎる」

 私の願望を叶えるため、コスプレ用のナース服に着替えてくれた皆月さんへ向かって、ありがたや…と手を合わせた。
 もうずっと着せてみたかったんだよね、ナース服。
 絶対似合うと思ってた。

「こ、これ…スカート短すぎない…?」
「それがいいんですよ!パンツが見えそうで見えないのが、また…くぅ、たまらん」
「…………渚ちゃん、なんだか男の子みたい」

 目を細めて睨まれる。

「嫌でした?」
「そんなことはないけど…あんまり、その……え、えっちな目で見られるのは恥ずかしいな」
「見てませんよ」
「あ…な、なんだ。よかった」
「官能的だなとは思ってます」
「っ…そ、それ言い方変えただけよね!?」

 声を荒げて顔を赤くする皆月さんを見て、吹き出すように笑う。

「はぁー…たのしい」

 これで少しは、日頃の鬱憤も晴らせた。ついでに血迷った欲求不満も。

「じゃあ次はメイド服、お願いします」
「えっ、まだ着るの?」
「もちろん。ミニスカ婦警さんもありますよ?」
「……なんでそんなやらしい服ばっかあるの」
「趣味です。着せる方の」
「じ、自分で着ればいいのに」
「着てもらうからいいんですよ!皆月さんに」
「なっ…なんでわたし限定なの?」
「なに着ても似合うから」
「や、やだ。そんなに褒めないでよ、もう~…照れちゃう」

 ちょろすぎる皆月さんは、その後もまんざらでもない様子であれやこれや衣装チェンジをしてくれた。

 …まじで危なかった。

 コスプレ着せたい欲を何か違うものと勘違いして、女なのに皆月さんに対して欲情してしまうところだった。心の底から安堵する。
 私はただコスプレ姿が見たかっただけで、これは恋愛感情なんかじゃない。そう自分に言い聞かせることもできた。
 そう思えば、動揺も何もない。気分も沈まない。

 ただ、写真に残せなかった事にだけものすごく落ち込んだのは…もちろん内緒のお話である。

 

 
 もちろん、帰りは露出の少ない格好に着替えさせて念のため家まで送った。














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