愛し、愛され。-ふたりの女に愛された男-

mikamo_sakuragi

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寛子という女

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「あら、お帰りなさい」

「あ、ただいま、恭子、どうですか?」

 病院から戻った直後だったのだろう。モスグリーンのスーツを着た義母の寛子が、結っていた髪をほどきながらバスルームから出てきた。

「暫く入院させるわ。あの子、相当ショックだったみたい」

 寛子が、大輔が手にしていた鞄を受け取ると、小さな溜息をついた。

 妻·恭子の妊娠が判明し、お金もかかるからと寛子に頼まれ、急遽実家に同居し1か月目。

 恭子が、ひとりでデパートへショッピングに出向いた際、下りのエスカレーターで転落し、流産。妊娠4ヶ月目だった。

「そうですか。あ、ありがとうございます。自分···」

 先を歩く寛子の背中に声を掛けようとしたが、当の本人はリビングへと入ってしまった。


「いいわよ。大輔さんにだって仕事はあるんですから。お食事、今から作るから先にお風呂入っちゃいなさいな。さっき入れたから···」

「はぁ···」

 寛子は、上着を脱ぐとキッチンにあった恭子のエプロンを身に着けた。

「なんか、ちょっときついわね···」

 恭子は、胸の辺りを気にしながらも、冷蔵庫の中を覗きながらあれこれ食材を出し始めた。

「なにボーッとしてるの? ほら、早く入っちゃいなさい」

「あ、はい」

 大輔は、自身がそっと寛子の豊満な胸やスカートから覗かれた太ももに目がいった事を咎められたかのように、慌ててバスルームへと向かった。

 結婚の挨拶にいった時も寛子は、家にいるのにキッチリとスーツを着ていて、少々怖い印象を持ったものだったが、いざ話を始めると恭子が言ったように話しやすくよく笑う女性で、社会経験が短いのに結婚と反対されるかと思ったが、寧ろ何も出来ない娘を貰ってくれてありがとうとお礼まで言われた。

「ふぅ···」

 同居して、もうすぐ1か月になるって時にこれか···

 大輔は、湯に浸かりながら天井を見上げた。

 初めての妊娠は、大輔も寛子も嬉しくて泣いた。あれこれ名前の本を買っては、ふたりでどんな名前にするか考えた毎日。

 そんな幸せな日々が、ある日突然悲劇へと変わった。

 コンコンッと軽くノックされ、大輔は声をあげた。

「大輔さん? 明日お休み? だったら···」

「行きますよ。病院···」

 寛子が、何を言いたかったのかは判る。

「元気づけてあげてね」

「はい」

 寛子は、それだけを言うとまたリビングへと戻った。

「さて、出るとするか。午後なら、あの店もやってるだろ」

 大輔は、恭子の好きなスイーツを考えていた。

「あ、それとね···」

 ドアがいきなりガチャッと開き、寛子が顔を···

 風呂から出たばかりの大輔···

「······。」

「きゃっ! あ、ご、ごめんなさい」

 真っ赤な顔をし、慌ててドアを閉めた寛子は、ドアを少しだけ開けた隙間から、

「ゆ、夕ご飯出来たって言おうとして···」

 それだけ言って、スリッパをパタパタ鳴らして去っていった。

「······。 見られた? まさかな」

 大輔は、そんな事を考えていながらもふと勃起してなくて良かったとも考えた。


「あ、あの、どうぞ···」

「あ、ども」

 ちょうどお椀に味噌汁を注いだのを手渡される。

「いただきます」

「いただきます」

 声を出したものの、どうもきまづくなり互いに無口になる。

 それを破ったのは、寛子だった。

「ね、明日なんだけど···」

「はい。なんですか? 寛子さん」

 義理の関係だから、お義母さんと言うのが正しいが、それは本人が嫌がり名前で呼ぶことになった。恭子は、少し嫌がってるが、からかってくる時もあったりする。

「明日、病院に行く前に寄ってほしいお店があるんだけど。いいかしら?」

「大丈夫です。自分も寄る店があるんで」

 大輔は、そういいながらも飯を口に運ぶ寛子を見ていた。

「ありがとう」

 寛子とこうして食事を摂ったのは、初めてだった。

 恭子も年齢を重ねたら、寛子さんみたいな感じになるのだろうか?

 そんな事をボォーッとして考えてたせいか、湯呑に入っていたお茶を零し、

「ちょっと、なにボォーッとしてるの?! ちょっと待ってなさい」と寛子が慌てて布巾を掴み、大輔の濡れたズボンや床に広がったお茶を拭い始めた。

「おわっ!」

 いきなり寛子の手が大輔の股間当たりに来て、素っ頓狂な声を出し、その声に驚いた寛子がテーブルに頭をぶつけた拍子に、まだ濡れていた床で滑りしゃがみ込む。

「だ、大丈夫···で···すか?」

 下を覗き込んだ大輔は、スカートがめくれ太腿の隙間から、ボヤッとした白っぽいものが見え、生唾を飲み込んだ。

「え、えぇ。ちょっと、驚いたから···」

 寛子は、四つん這いになりながらテーブルの下から出てきて、立ち上がった。

「急に変な声出すから···もぉっ!」

 少し怒った口調で、自席に戻ると再びまた夕食を口にし始めた。

 やばいな···。こんなんじゃ、席立てない···。

 大輔は、恭子の妊娠が判ってからSEXをさせては貰えなかった。

 色々考えてる内に、勃起していたらしく、寛子の手が股間近くに当たって···

「ごちそうさま。お風呂、頂いてくるから」

 寛子は、そう言うと食べ終えて汚れた食器を流しの桶に浸け、静かにキッチンを出た。

 カチャッと箸を置き、深く溜息をついた大輔は、思わず天井を仰ぐ。

「危なかった···」

 寛子がいなくなったせいか、大輔は自身が落ち着くのを待ってから席を立ち、汚れた食器を洗い始めた。

「明日は、恭子の一番好きなタルトを買ってってやるか!」


 大輔が、部屋に戻ってベッドで横になっていると、寛子がゆっくりと階段を昇る足音が聞こえてきた。いつもなら、大輔達の部屋を通り過ぎて扉が閉まるのに···

 ココンッと軽やかなノックと、「大輔さん? まだ起きてます?」と寛子の声が扉の外で聞こえ、大輔は扉を開けた。

「なにか?」

「マッサージ。お願い出来るかしら? ここのとこ、肩こりが酷くて···」

 それは、そうだろう。メロン並の大きさを毎日ブラ下げてるんだから···

 なんて事は言えず、部屋に通す。

「さっ、やってちょうだい」

 寛子は、大輔達のベッドに腰を掛けると静かに目を閉じた。

「じゃ、いきますよ? 痛かったら言って下さい」

 そう言い、寛子の肩に手を乗せるも湯上がり漂うそのいで立ちに、脇見をしそうな大輔だったが、我慢しゆっくりと揉んでいった。

「んっ···そこ···」

 寛子の肩は、大輔が摘んでも分かる位に固くなっていたが、揉み始めて出る寛子の声がに···

「ここ、どうですか? 寛子さん」

「あぁ、気持ちいい···。そこ、もっと···」

 頭では理性で抑えようとしつつも、自身の先がほんのりと冷たいのを感じ取っていた大輔。

「んっ···ふぅんっ!! はぁっ!」

 大輔に肩を揉んで貰い、かなり楽になった寛子は、

「じゃ、今度は私がマッサージしてあげるわ。ほら、うつ伏せになって、なって」とベッドから降りると、大輔は股間を少し隠しながらもベッドへと横たわった。

「ちょっと重いけど、我慢してね」

 腰の当たりに感じる柔らかな肉···

「たまらない···」

「どう? 重くない?」

 寛子は、大輔の背中の筋を力いっぱい押しながら、そう言う。

「大丈夫です。気持ちいいから···」

 手で押してるの箇所ではなく、大輔は、寛子が座っている腰に当たる肉を味わっていた。

「気持ちいい···そこ···」

 亡き夫のマッサージをしていただけあって、それなりの力加減に大輔は、

「最高だよ···寛子」思わずそう呼んでしまい、寛子に背中を叩かれた。

「はい、終わり。いい? 内緒にしといてね。あの子、ヤキモチ妬くから···。おやすみなさい」

 寛子は、そう言うと自身の部屋へと戻り、扉が閉まった。

「着替えるか···。溜まってるもんな、俺」

 股間の部分だけが、べっとりと濡れ、大輔は急いで新しいパジャマに着替えた。

 そそくさと布団に入るも、ちらつくのは湯上がり漂う寛子の姿とパジャマ越しにでも判る2つのメロン···

 手に残った感覚や部屋に漂う寛子の匂いを嗅ぎながら、大輔は何度か布団の中で果てた。


「えぇ、こんなに?」

「まぁ···」

「ね」

 まさか、寛子さんも同じ事を考えていたとは···

 寛子が、寄りたいと言った店は、大輔も寄るつもりだった『ディ·セボン』というタルトでは有名なお店。

 よくふたりでデートの帰りに寄った店だった。

「少しは、落ち着いたか?」

「うん···。ごめんね」

 寛子は、気を利かせたのか、売店に行ってくると言い病室を出ていった。

「まだ、少し早かったのかもな」

「でも、早く大輔さんの赤ちゃんほしいもん。ママだって、きっと···」

 確かに恭子の妊娠を知った時の寛子の感激っぷりは、半端なかった。涙を流し、仏壇で眠る亡き夫に泣き笑いながらも報告した位だ。

「またできるさ。俺も頑張るから」

「うん。そうだね···。大輔」

 恭子は、大輔の名を呼び目を閉じた。

「愛してるよ、恭子···」

 個室だから、誰にも邪魔されない空間···

 大輔は、恭子の唇を塞ぎながら、その胸に手を伸ばす。

 ピクリと動く恭子の身体を抱き締めながらも、寝間着の中に手を入れ···

「ん、だめ···こんなとこじゃ···んっ」

「少しだけ···誰か来たらやめるから」

 恭子を寝かせ、開いた寝間着の中に顔を埋める。

「んっ···大輔···」

 大輔の指で優しくこねられたそれは、硬くなり姿を現した。

「恭子···」

 チュパチュパと赤ん坊のように乳首を咬えた大輔は、そっと足元へと手を伸ばしてく。

「そこは···あ、だめ···んんっ!!」

 大輔が、少し茂みに隠れた小石を触っただけで、恭子は思わず身体をそらし大輔にしがみついた。

「あら? イッたの?」

 イタズラめいた笑いで言う大輔に、真っ赤な顔をした恭子は、プイと横を向いた。

 コンコンッ···

「は、はいっ!」

 慌てる大輔に、ただいまとにこやかに病室に入ってきた寛子は、花束と恭子の好きそうなスイーツばかりを買ってきた。

「ママ、私を太らせる気?」つかみかかる恭子に、寛子は笑う。

「その元気があれば、大丈夫ね!」

「じゃ、またくるから」

 次の休みはいつだ?と考えながらも、恭子を見る。

「明日がいいな···」のお願いに、寛子が笑う。

 明日来ることを約束し、寛子と一緒に自宅へと帰る途中、ファミレスに立ち寄り、延々と亡き夫との出会いから恭子が俺と出会う前の事を聞かされた。

 
 そして、恭子が退院して許可がおりてからも、俺達ふたりは子作りに励んだがなかなか出来なかった。

 結婚して3年目を前に、ふたりで産婦人科を訪れた俺達にくだされたのは、

「不妊症」という医師の冷たい声だった。
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