わがままばくの食わず嫌い

正妻キドリ

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イメチェン

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 とある国のとある街。これは、とあるサーカス団の舞台裏の御話である。

 「いきなりだけど、髪を染めてみようと思うのよ。」
  
  アイリーンは、肩にかかった黒色の髪を手で払った。彼女のその発言にルイスは顔色ひとつ変えなかったが、内心少し驚いていた。何故なら、姉はその部類の人間ではないと思っていたからだ。いや、恐らく間違っていないのだが。あっ…という言葉をルイスは飲み込んだ。

 「生まれてからずっと、そのままの色で過ごしてきたわけだけれど、この色彩鮮やかな世界では、少々退屈になってしまうわ。たまには、他の色に染まってみるのも悪くないと思ってね。」

  聞いてもいないのにつらつらと語りだした姉に、純粋な弟は、淡黄色の髪を整えながら返答を探した。

「平たく言うとイメチェンですね。」

「そうね。出る杭を打ちたくなかっただけよ。」
 アイリーンは、腕を組み鏡に向かって歩きだした。いつもとは違って真剣な面持ちであり、何か考えを巡らせているようだった。

「どうせなら、他者とは被らない色にするわ。特別なオンリーワンは、元からあるものじゃなくて勝ち取るものよ。」

「でも、誰とも被らない色なんてあるんですか?多分、どんな色だって何処かしらにはいらっしゃると思うんですよ。」
  ルイスが投げかけた疑問符に、アイリーンは吹き飛ばすかの如く振り返り、真っ直ぐに人差し指を我が弟に向けた。その一連の動作には、自分は一枚上手だぞという意味が込められていた。

「誰が単色だなんて言った?」

 それは盲点だったような、そもそも虹色の髪の姉を持つことなんて考えたくなかったような。ルイスは、複雑な思いだった。

「私の記憶では、『芸術家とは、既存のものを組み合わせ、独創的なものを生み出す者のことである』と過去の…」
「偉人さんが言ったんですか?」
「私は言ったわ。とにかく色をいろいろ絡めて、最初くらいコントのオチにでもなってやるくらいの気持ちでやってやるわ。異論はないわね。」

「言葉に意気込みが表れてますね。」
姉さんのやることを全力で応援したいと思える弟にとっては、暴走した姉は世界で二番目に怖いものなのである。

開演まで三分である。
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