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デート2日目。
シューティングアトラクションやジェットコースター。パークを満喫して昼過ぎのこと、写真を撮っていた辰也さんの画面に2通のメッセージが届いた。
1通は生徒会長から、もう1通は父と表示されていた。
それを見た途端、辰也さんの表情が曇り、呼吸が荒くなっていく。
「辰也さん、遅くなりましたがお昼食べましょうか。レストランで座って…カレーはどうですか?ここから近いですよ。」
道のど真ん中に立ち尽くすのは、周りから注目を集めてしまうため、ひとまず屋内に入ることを提案する。
安心して欲しい。僕がついてますよ。
その想いを伝えたくて、優しく背中を撫でレストランの方へエスコートする。
ちょうど空いていたテーブルに辰也さんを座らせて、食べたいメニューはあるか聞く。
「何でもいいよ……環ちゃんが選んで。」
メッセージ画面を見た時より落ち着いたが、顔色は悪いままだ。
レストランの購入列に並びつつ、すぐさま電話である人物を呼び出す。
プルルッと1コール音の後、はいはい御用でしょうか環さま、といつもの気怠げな返事をする相手。
母方の実家から何かあったら頼りなさいと言われてある、僕専属の何でも屋。
「こんにちは南雲さん。例の件どこまで調べてくれました?」
メニューを頼み、支払いをしつつ電話相手に頼み事の進捗状況を尋ねる。
「あー大体は。あとは必要書類揃えて、弁護士連れてけば終わりますよ。」
「ありがとうございます。動きの方はどうですか?」
カウンターで、2種類のカレーが乗ったトレーを受け取るため、携帯を肩と耳で挟み、スプーンやナプキンなどの必要なものをトレーに揃えて、邪魔にならないように隅の方へ移動する。
「辰也さまが帰ってこないことに苛々してんな。ちゃんと脅したのに、馬鹿な連中ですよ。裏のヤバイ奴に頼んで誘拐するつもりらしいぜ。」
「当然潰しましたよね?脅しが効果ないなら目に見えるもので…勿論法に触れないようにね。」
「怖えよ環さま。はーあ、昔はあんなに可愛かったのに…」
あー怖い怖いとわざとらしく言ってくる南雲さん。無精髭にだらけた風貌の三十路過ぎのおじさんだが、能力は高い。
護身術を教えてくれた師匠でもある。
「それじゃあ頼んだ件、なるべく早くお願いしますね。僕はデート中なので。」
「はいはい、ったく…初めての頼み事が恋人のこととか…」
ぶつぶつ言っている南雲さんを無視して電話を切って辰也さんのところに戻る。
僕が戻ってきたことで、パッと顔を上げて安心したような表情を見せてくれた。
「お待たせしました。2種類買ってきたので折角だし食べっこしましょうか。」
買ったばかりのMサイズのテディベアを抱きしめていた辰也さん。
汚さないようにと買った時の袋に入れ直して膝の上に置いている。
「ありがとう環ちゃん。いくらだった?」
いそいそと鞄から財布を出そうとしている辰也さんの腕を制し、奢らせてくださいと告げる。
「両方食べてみたかったんで、半分手伝ってくれませんか?ほら、美味しいですよ。」
一口食べた方のカレーをスプーンですくい辰也さんに食べさせる。
やっと目を輝かせて、美味しいねと言ってくれた。
メッセージの内容は今は聞かないが想像はつく。
実家に帰ってこいとか、仕事しろとかだろうどうせ。本当にむかつくな…
辰也さんには3人のお兄様がいる。残念ながら、誰1人としてまともな奴はいなかった。
金にものを言わせて豪遊三昧、親のコネ入社のイキリ野郎、名ばかりの留学。
親が親なら子も子だな。
辰也さんがこんなにいい子なのは反面教師のおかげかな?
あー早く潰したい。辰也さんの目の前で全員を土下座させて、プライドズタズタにしてやりたい。
まあしないけど、そんなことして辰也さんの繊細な心が傷ついたらどうする。
それに、やらせたところで許すほど心が広くないので。そんなもの少年漫画でやってくれ。
「ん、そうだ。環ちゃん、さっき京本がね…」
さっき送られてきた生徒会長からのメッセージを教えてくれる辰也さん。
元気になったのは嬉しいが、デート中に他の男の名前を言って欲しくない。
まあ聞くけど?
自主的に内容を話してくれるなんて、嬉しいなぁ。
辰也さんは何も気にしなくていいんですよ。
僕だけを信じて。
シューティングアトラクションやジェットコースター。パークを満喫して昼過ぎのこと、写真を撮っていた辰也さんの画面に2通のメッセージが届いた。
1通は生徒会長から、もう1通は父と表示されていた。
それを見た途端、辰也さんの表情が曇り、呼吸が荒くなっていく。
「辰也さん、遅くなりましたがお昼食べましょうか。レストランで座って…カレーはどうですか?ここから近いですよ。」
道のど真ん中に立ち尽くすのは、周りから注目を集めてしまうため、ひとまず屋内に入ることを提案する。
安心して欲しい。僕がついてますよ。
その想いを伝えたくて、優しく背中を撫でレストランの方へエスコートする。
ちょうど空いていたテーブルに辰也さんを座らせて、食べたいメニューはあるか聞く。
「何でもいいよ……環ちゃんが選んで。」
メッセージ画面を見た時より落ち着いたが、顔色は悪いままだ。
レストランの購入列に並びつつ、すぐさま電話である人物を呼び出す。
プルルッと1コール音の後、はいはい御用でしょうか環さま、といつもの気怠げな返事をする相手。
母方の実家から何かあったら頼りなさいと言われてある、僕専属の何でも屋。
「こんにちは南雲さん。例の件どこまで調べてくれました?」
メニューを頼み、支払いをしつつ電話相手に頼み事の進捗状況を尋ねる。
「あー大体は。あとは必要書類揃えて、弁護士連れてけば終わりますよ。」
「ありがとうございます。動きの方はどうですか?」
カウンターで、2種類のカレーが乗ったトレーを受け取るため、携帯を肩と耳で挟み、スプーンやナプキンなどの必要なものをトレーに揃えて、邪魔にならないように隅の方へ移動する。
「辰也さまが帰ってこないことに苛々してんな。ちゃんと脅したのに、馬鹿な連中ですよ。裏のヤバイ奴に頼んで誘拐するつもりらしいぜ。」
「当然潰しましたよね?脅しが効果ないなら目に見えるもので…勿論法に触れないようにね。」
「怖えよ環さま。はーあ、昔はあんなに可愛かったのに…」
あー怖い怖いとわざとらしく言ってくる南雲さん。無精髭にだらけた風貌の三十路過ぎのおじさんだが、能力は高い。
護身術を教えてくれた師匠でもある。
「それじゃあ頼んだ件、なるべく早くお願いしますね。僕はデート中なので。」
「はいはい、ったく…初めての頼み事が恋人のこととか…」
ぶつぶつ言っている南雲さんを無視して電話を切って辰也さんのところに戻る。
僕が戻ってきたことで、パッと顔を上げて安心したような表情を見せてくれた。
「お待たせしました。2種類買ってきたので折角だし食べっこしましょうか。」
買ったばかりのMサイズのテディベアを抱きしめていた辰也さん。
汚さないようにと買った時の袋に入れ直して膝の上に置いている。
「ありがとう環ちゃん。いくらだった?」
いそいそと鞄から財布を出そうとしている辰也さんの腕を制し、奢らせてくださいと告げる。
「両方食べてみたかったんで、半分手伝ってくれませんか?ほら、美味しいですよ。」
一口食べた方のカレーをスプーンですくい辰也さんに食べさせる。
やっと目を輝かせて、美味しいねと言ってくれた。
メッセージの内容は今は聞かないが想像はつく。
実家に帰ってこいとか、仕事しろとかだろうどうせ。本当にむかつくな…
辰也さんには3人のお兄様がいる。残念ながら、誰1人としてまともな奴はいなかった。
金にものを言わせて豪遊三昧、親のコネ入社のイキリ野郎、名ばかりの留学。
親が親なら子も子だな。
辰也さんがこんなにいい子なのは反面教師のおかげかな?
あー早く潰したい。辰也さんの目の前で全員を土下座させて、プライドズタズタにしてやりたい。
まあしないけど、そんなことして辰也さんの繊細な心が傷ついたらどうする。
それに、やらせたところで許すほど心が広くないので。そんなもの少年漫画でやってくれ。
「ん、そうだ。環ちゃん、さっき京本がね…」
さっき送られてきた生徒会長からのメッセージを教えてくれる辰也さん。
元気になったのは嬉しいが、デート中に他の男の名前を言って欲しくない。
まあ聞くけど?
自主的に内容を話してくれるなんて、嬉しいなぁ。
辰也さんは何も気にしなくていいんですよ。
僕だけを信じて。
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