レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ

文字の大きさ
3 / 127
第一章

3 簡単にレベルが上がる件

 棘スライムを倒し続けること、小一時間。
 レベルは十五まで上がった。
 この半年くらいレベル十のまま、ひとつも上がらなかったのに。

「一体、どうなってるんだ……」

 倒した魔物の死骸はその場で消失し、後には「魔物の核」というアイテムが残る。
 魔物の核には魔物の強さに比例した量の魔力が含まれている。集めて潰して魔力を抽出し、魔道具への魔力供給に使われる。
 また、冒険者にとっては魔物を倒したという証明書代わりにもなる。

 核は全部で三十二個拾えた。
「おかしいだろ。棘スライム三十二匹くらいでレベルが五つも上がるとか……」
 腑に落ちなくて、思わず口から愚痴がこぼれる。
「……ま、いいか。結構稼げたし。帰ろう」
 難易度Gは一回達成でたったの二千ナルとはいえ、三十二回分なら六万四千ナルだ。僕とアイリ、二人分の十数日分の宿代と飯代は稼げた。

 アイリの部屋探しはどうなったかな。そろそろ帰ろう。


「ラウトこっち! 早かったね」
 待ち合わせ場所には既にアイリがいた。手荷物が随分減っている。
「アイリこそ。そっちはどうだった?」
「あのね、この町素敵よ。パーカスに比べて物価も家も安いの!」
 テンションの高いアイリに引っ張られてついていくと、パーカスの町で住んでいた拠点より一回り大きな家の前に着いた。
「えっと、これは?」
「買ったの!」
「買った!?」
「流石に分割支払いだけどね。返済は月三万ナルで三年!」
「安っす!」
「あ、ただしちょっと掃除ができてなくてね、とりあえず部屋ふたつとキッチンしか片付いてないんだ。あと家具も殆どないの」
「十分でしょ。アイリも疲れてるのに、大変だったな。ありがとう」
 僕がお礼を言うと、アイリは瑠璃色の目を細めて、えへへと笑った。

 中に入ると、確かに放置されていた感があちこちにあった。
「ね、ラウト。クエストはどうだった?」
「そうだ、ちょっと妙なことがあってさ」
 僕が棘スライムを倒して、今日だけでレベルが五つも上がったことを報告した。
「へぇー」
 ところがアイリは薄い反応だ。
 そのことを突っ込むと、アイリははっとした表情になった。
「あ、ううん。ちょっと吃驚して。そ、そっか、急にレベルが……不思議ね」
「だからさ、明日はアイリも一緒に来てくれないかな。僕におかしな様子とかあったら教えてほしい」
「うーん、その必要は無いんじゃない? それに私、この家をもうちょっと快適に過ごせるようにしたいから、明日から暫くクエストはソロで請けてくれないかな」
 この家に住まわせてもらえる以上、家主の言うことは絶対だ。
「わかった。あと掃除や片付けなら僕もクエストの後で手伝うよ」
「疲れていないときにお願いするわ」

 それから二人で少し家を片付け、夕食は出来合いのもので済ませた。
 寝る前になって部屋割を決めることになり、アイリは僕に、一番広い部屋をあてがおうとしてきた。
「どうして。アイリが家主でしょう?」
「私にこの部屋は広すぎるのよ。持て余すのも勿体ないし、ラウトが使って」
 家主の言うことは、絶対だ。
 現実問題として、パーカスの町の拠点では一番小さな部屋をあてがわれていたせいで、僕の身長に合うサイズのベッドが入らず、夜は足を伸ばして眠ることができなかった。
 ちなみに僕の身長は、一般男性からすれば少し大きいかもしれないが、冒険者としては至って平均だ。パーティでは一番高かったが。
「じゃあ有り難く使わせてもらう。交換したくなったらいつでも言って」
「無いと思うけど、わかったわ」

 ベッドはまだない。アイリが明日、手配してくれるそうだ。今日のところは床にシーツを敷いて横になった。
 僕は早いところ、アイリに買ってもらうものの代金を稼がねば。
 明日は何のクエストを請けようかな、などと考えているうちに、眠ってしまっていた。



*****



 ラウト達の育った村を含む世界中のあちこちに、勇者の伝説が伝えられていた。

 魔王は千年前にも降臨している。
 その時現れた人間の勇者は、はじめはレベルの上がり方が他の者より遅い、ごく普通の冒険者だった、というものだ。

 千年前の出来事は現代まで確かに伝わったが、完全に信じているものは少なかった。
 アイリの両親は信心深く、他の者が「迷信」と一笑に付すものまで頑なに信じ、迷信に沿って日常を送っていた。
 その子供のアイリは両親の考え方を押し付けられて育つのかと思われたが、意外なことにアイリの両親はアイリのしたいようにさせた。
 むしろ、アイリが拒み、否定した迷信は、両親も信じなくなったのだ。

 アイリが拒否せず、頭から信じた昔話のひとつが、勇者の伝説の話である。

 昔から少し不思議な感覚を持つアイリが、自身に宿る能力の真の意味に気づくのは、まだ先の話だった。



*****



「またレベルが……僕は一体どうなったんだ……」
 今日の討伐対象はグレイウルフ。昨日の棘スライムより少し強いが、難易度は同じGの魔物だ。
 難易度が同じでも強さが違う魔物がいて、得られる経験値も違う。ギルドからの報酬も少しだけ多くもらえる。

 だからといって、十匹討伐しただけでまたレベルが五も上がるのは、流石におかしい。

「何か壊れてるんじゃないか? 大丈夫か?」
 物言わぬステータス表示を指でスカスカとつつき、独りごちる。
 森の中、しかも魔物の生息地で歩きステータス表示なんてやっている冒険者は、愚か者だと言われる。
 今みたいに背後から魔物に襲われたら、対処できないからだ。
 普通は。

 何故か、今日はグレイウルフの気配がよくわかるのだ。
 今まで「気配を察知する」なんて経験から来る勘のような不確定なものだとばかり思っていたのに、明らかに「後ろからグレイウルフから飛びかかってくる」という具体的な状況が脳裏に閃く。

 飛びかかってきたグレイウルフに剣を向け、グレイウルフ自身の勢いを使って剣で両断した。これで十一匹目。
 グレイウルフを相手に一人でこんなに討伐できたことは今までなかった。
 レベルが上がって強くなったのは実感できるが、レベル二十はこんなに強くないはずだ。
「うーん……。なんだろう、調子がいいのかな。うん、きっとそうだ」
 調子のいいときにいっぱい魔物を討伐して、たくさん稼いでおこう。
 得体の知れないもやもやを振り払い、次のグレイウルフの気配目指して森を進んだ。


 朝から森に入って、昼過ぎまでに四十五匹のグレイウルフを討伐できた。
 町へ戻らないと日が沈んでしまうから戻り始めてはいるけれど、体力的には余裕だ。何なら帰り道に別の魔物の気配がしたらちょっと倒していこうかな、とまで考えている。
 レベルは、流石に少し停滞しはじめて今日で二十七レベルになった。……最初は二匹倒す毎にレベルがあがっていたのが、最後の方は八匹倒してやっと一レベルアップしたのだから、停滞と言って差し支えない、よね?

 二日で十七レベルアップしたことは一旦措いといて。

 レベルが二十を超えたから、明日から難易度Fのクエストを請けられる。
 ほくほくした気分で冒険者ギルドへ向った。

 クエスト達成の報告をしていると、後ろに不穏な気配が漂い始めた。
 脳裏には、僕より大柄な冒険者が、焼け付くような視線で僕を刺している光景が浮かび上がっている。
 その冒険者は立ち上がり、僕の真後ろへやってきた。受付さんが僕の背後を見上げて青褪めながら、超特急でクエスト達成手続きをやってくれた。

「何か御用ですか?」
 報酬を受け取って振り返りながらそう尋ねると、大男はいきなり僕の胸ぐらを掴み上げた。
「今日、グレイウルフを狩ってたのはお前だろう」
 冒険者の誰がいつどこで魔物を倒したかは、調べればすぐに分かる。
 ギルドが保持している冒険者のクエスト記録は特別な理由がなければ誰でも閲覧できるようになっているし、森には他の冒険者も魔物目当てで入っている。目撃情報を言いふらされるのを、止めることはできない。
「はい。それが何か?」
 更に言えば、冒険者がいつどこでどんな魔物を狩ろうと、誰にも咎められない筈だ。
 僕の返事の何が気に食わなかったのか、大男は僕をそのまま突き飛ばそうとしたのが、どん、と押した。僕は一歩も動かず踏みとどまることができたが。

 ……うーん、何か筋力や身体能力が異常に上がっているような……。この前までの僕が、例えばセルパンあたりに同じことをされたとしたら、突き飛ばされた勢いで転んで怪我のひとつふたつしていただろう。

「何をしているんですかっ!」
 受付さんが大男に向かって怒鳴る。そりゃそうだ。冒険者同士の喧嘩は禁止だ。
感想 43

あなたにおすすめの小説

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています