レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ

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第一章

6 冒険者とレベル

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 ただでさえ大きかった男は更にふた回りほど身体が大きくなっていた。
 頭の両側から角を生やし、口からは牙が覗いていて、両手と両足の指は三本ずつの太い鉤爪に変化している。
 そいつがギルドハウス内部を手当たり次第にぶち壊し、止めようとしている冒険者を攻撃している。

 僕はすぐにギルドハウスの中へ突入し、大男に立ち向かう冒険者達の間を縫って大男に肉薄し、こめかみを拳で殴りつけた。
 大男は吹っ飛んでギルドハウスの壁にめり込み、止まった。

「よくやってくれた! 君は……ラウトじゃないか」
 他の冒険者が止まった大男を拘束している間に、監査役が僕のところへやってきた。
 監査役も全身傷だらけだ。
「アイリを、僕の仲間の回復魔法使いを呼んできます」
 ざっと見た感じ、回復魔法使いがいない。ほぼ全員魔法使いですらなかった。
「ああ……いや、他の者に呼びに行かせよう。あれにまともな攻撃を入れられたのは君だけだ。しばらくここにいてくれないか」
「わかりました」
 監査役が人を呼び、アイリと他の回復魔法使いにも招集をかけるよう指示を出した。
 僕もせめて怪我人の応急処置を手伝おうとしたが、監査役に「あいつを見張っていてくれ」と頼まれたので、ギルドにある一室に、他の冒険者たちと待機することになった。

「見ていたよ。凄いな君は。名前とレベルを聞いてもいいか?」
 冒険者がお互いのレベルを聞くのはよくあることだ。だいたいレベルで強さも決まるから、そこからパーティを組む組まないの話になったり、レベル差があっても大抵の人は気にせず魔物や装備について情報交換したりする。
 中には相手が低レベルだとわかると途端に尊大な態度になる冒険者もいるけど、稀だ。
 ただ、僕は……。少し躊躇ったが、ここにいる人たちは皆、いい人そうだから正直に話すことにした。

「ラウトです。レベルは二十七」
「二十七!?」
 やっぱりざわついた。
「あの、多分あいつ弱ってて、だから一撃入れられたのはきっと偶然で……」
 なんとなく言い訳めいたことを口にしてしまう。
 しかし、僕にレベルを尋ねてきた人は首を横に振った。
「謙遜することはない。俺のレベルは五十八だが、あいつに攻撃はできてもダメージは通らなかった。君は余程、修行を積んだのだろう」
「恐れ入ります」
「なんだなんだ、英雄は謙虚だなぁ」
 誰かが茶化すと、その場にいた僕を除く全員がどっとわいた。
「パーティは組んでいるのか?」
 レベル五十八の人に問いかけられた。
「今は一人ですが、僕のレベルが上がったら回復魔法使いと組むことになってます」
「その回復魔法使いのレベルは?」
「四十四です」
「それならふたりとも、俺のパーティに合流しないか? ふたりが入っても平均レベルは五十を超える」
「おい抜け駆けするなよ」
「ラウト、うちもいいぞ」
 何故か僕の取り合いみたいになってきた。
 どうしたものかと正直困っていると、部屋の扉が開いた。
「回復魔法使い達が来たぞ。怪我したものはホールへ。ラウト、君の仲間も呼んである」
 入ってきて部屋の中の全員にそう伝えたのは監査役だ。アイリに会うという名目でこれ幸いと部屋を抜け出した。

「アイリ!」
 アイリは怪我人の治療を終え、立ち上がったところだった。
「ラウト、怪我は?」
「僕は無傷」
「よかった。じゃあ他の人を治してくるわね」
 アイリの他にも五人ほど回復魔法使いが集まっていて、ギルドホールじゅうの怪我人を次々に治療していった。
「彼女がラウトの仲間かい?」
 後ろに、先程のレベル五十八の人が立っていた。
「はい」
「いい腕だ。ますます君たちが欲しいな」
「あの……」
 アイリは幼い頃から回復魔法の英才教育を受けている。他の回復魔法使いとは、魔力の使い方や魔法の発動の速さが段違いなのだ。
 そのことはいいとして。僕は僕で、パーティというものに対して少々のトラウマを抱えていた。
 セルパンのパーティにいた頃、僕は不当にこき使われていたのだと、改めて実感した。
 目の前の人がそうとは限らないし、そうは見えない。
 だけど、幼馴染で信頼していた仲間からも、僕はていのいい盾として扱われていたのだ。
 新しいパーティということは、全員知らない人たちだ。アイリみたいに信頼のおける仲間ならともかく……。

 僕が俯いてマイナス思考に溺れていると、レベル五十八の人は僕の肩に手を置いた。
「何か事情がありそうだな。俺も無理にとは言わないよ。気が向いたら声をかけてくれ」
「……すみません」
「謝ることはない。強引に誘ったのは俺だ」
 治療をしていた回復魔法使いの一人が近寄ってきて、レベル五十八の人に声をかけた。どうやら仲間らしい。
「じゃあ、またな」
 そう言って、爽やかに去っていった。

 あたりを見回すと、怪我人は全員治療完了していた。
「終わったわ。どうしたの、ラウト?」
「パーティに誘われたけど、断っちゃったんだ」
「そうね。今はそのほうがいいわ」
 アイリはまた例の、「理由はないがこうしたほうがいい」というときの顔をしていた。
 アイリがそう言うなら、僕の判断は間違っていない。

 監査役に声をかけられて、僕はギルドの会議室へ集められた。
 他には監査役と例のレベル五十八の人――後にヤトガという名だと知った――の他に、レベルの高そうな冒険者たちやギルドの偉い人達が集まっていた。
 アイリは呼ばれなかったからと、さっさと家に帰ってしまった。

「集まってもらったのは他でもない。先程ホールで暴れていた冒険者、バレスの魔力を測定器で分析した結果、この辺り一帯の魔物の分布が異常な件について、関連性があると判明した」
 ギルドの偉い人が最初に発言し、冒険者たちは一斉に息を呑んだ。
「バレスの魔力とこの辺り一帯の自然魔力、そして先日入手できた魔王のうち一体の魔力の標本がほぼ一致した。これらの状況証拠から推察されるのは、一連の事態は魔王の仕業、細かく言えば魔王軍に寝返った人間の仕業だ」
 今度は痛いほどの沈黙。全員が困惑している。

 そんな中、僕は別方向に困惑していた。

 集まっているのは、凄腕冒険者ばかりだ。ヤトガを基準に人の気配を読んでみたら、皆同じくらいのレベルもしくは実力のある人たちだった。
 元々大男、バレスに絡まれたのも、魔物に変異したのを倒したのも僕だから、関係者扱いなのだろうか。
 だとしても、人間が魔王軍に寝返ったなんて重大な話は、レベル二十七程度の冒険者が聞いていい内容じゃない。
 ちなみに冒険者が一人前と呼ばれるのはレベル二十、達人と呼ばれるのはレベル五十になってからが一般的だ。
 僕は一応一人前ではあるけれど、達人揃いのここにいるのは場違いだ。

「勇者がまだ誕生していない今、魔王に仕掛けるのは時期尚早だ。差し当たり、この辺り一帯を異常化させている原因を取り除く。魔王の魔力を持っていたバレスから詳しく聞き取り次第、諸君らにギルドから緊急クエストを出す。事態の収束に向けて仕事してもらいたい」
 ギルドの偉い人は、この場の全員に向けて発言した。
 全員だ。つまり、僕も含む。

「パーティはもう決まっているのか?」
 ヤトガの隣に座っている人が挙手して質問した。
「二手に分かれて欲しいのだが、組分けはこれから君たちに話し合って決めてもらいたい。どうしても決まらなければ、ギルドが決める」
「承知した」
「では……」
 ギルドの偉い人が立ち上がったのを合図に、冒険者だけで部屋の隅に集まった。

「魔法使いは属性を申告してくれ」
 ヤトガが自主的に仕切りはじめたが、誰も異論を出さず従っている。魔法を使える人が属性を言いながら手を挙げていく。
「回復二人は分かれてくれるか」
「ああ」
「わかった」
「後は近接と遠距離で……ラウトは近接でいいか?」
 急に話を振られて、思わず背筋が伸びる。
「その前に、ちょっと言いたいことが」
 折角の機会なので、言わせてもらおう。

「僕はレベル二十七です。多分、バレスに絡まれたから関係者としてこの場に呼ばれただけかと」
 だから皆さんの足を引っ張りますよとアピールしてみた。

 僕以外の人達が全員きょとん、と止まってしまった。
 やっぱり僕がレベル二十七とは知らずに話を進めていたのだろう。
 ところが、ヤトガに思いがけないことを言われた。
「何を言っている。ふたつに分けたパーティのうち、片方のリーダーはラウトだ。ラウトが近接ならば遠距離か魔法使いを多く振り分けようとだな」
「僕がリーダー!?」
 驚いているのは何故か僕一人だ。
「まあレベル二十七なのは驚いたけどさ。君の実力はこの目で確かに見たよ。あの異形を一撃で倒したのだからな」
「しかも普段の得物はその剣だろう? それを拳でやっていた。実力は充分だ」
 別の人が口々に言い募る。他の人もうんうんと頷いている。
「……しかし、リーダーは……自信が無いというか」
 セルパンが良いリーダーだったかと問われれば否と答える。じゃあ僕がリーダーを務められる器かと言われたら、それも違う気がする。
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