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第7話 報告
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翌朝。
目が覚めると身体は少しだけ重かった。
気持ちよく寝れたのだが、どうやら寝すぎてしまったらしい。
起きようと思っていた時間を大幅に過ぎてしまっていた。
俺は体を起き上げて、外に出る準備をする。
そして、玄関の前でため息をついてからドアを開けた。
「やっぱりか……」
目の前にいる人を見て、そう言った。
リンが疲れた顔をして突っ立っていた。
こんなことだろうと思っていた。なんとなくだが、直感していた。
家も突き止められているし。
「あ、レンさん! やっと来ましたね!」
「やっと来たって……いつから待ってたんだ」
「ずっとですよ。朝からです! いくらまっても来ないので暇すぎて地面に絵をかくくらい暇でした」
リンの足元を見ると、変な人の似顔絵が書いてあった。
枝も落ちていて、それで書いたらしい。
ここまでくると呆れて来る。
「馬鹿なのか……」
「馬鹿じゃないですよ!」
「しかも結構下手くそだし」
「本気で書けばもう少しうまく行きますよ!」
リンは怒鳴り疲れたのかため息をついた。
「……ていうかレンさんこそどうしてこんなに遅れたんですか!?」
「普通に寝ていた。寝坊はあまりないはずなんだがな」
「ないはずなんだがな、じゃないですよ。昨日レンさんが今度って言ってくれたからずっと待っていたんです。他にどこで会うとか約束してませんでしたし」
「そりゃあ……まあそうだな」
そういえば、そうだった。
待ち合わせとかは全く指定していなかった。
でも、それはそれだ。
「……だけどな、普通は家の前じゃなくてギルドとかで待っているんじゃないのか。こんな一軒家の前でいたら他の人に変に思われるぞ」
「そ、それは……たしかに数人からの視線が酷かったですけど……結局レンさんが来たので結果オーライです!」
「んな無茶苦茶なこと言うなよ」
「無茶苦茶でもいいんです!」
「それに俺は今度って言っただけで今日とは一言もいってないからな。怒られる筋合いはない」
「うぅ……ぐうの音もでないほど正論ですね……」
一瞬たじろいでから、
「……ってこんな会話していたら本当に日が暮れちゃいますよ。早く行きましょう!」
「だな。とりあえずギルドに行ってクエストの完了を伝えに行くぞ。あとリンが見つけた落とし物な」
「はい!」
起きたのが相当遅かったせいでほぼ夕方みたいな感じだった。
ギルドまで急ぎ足で歩いていく。
歩きながらリンが、
「レンさん」
「どうした?」
「……今日もクエストしていくんですか?」
「クエストか……どうだろうな。時間も時間だし、やめておいた方が無難なんじゃないか。夜に帰るのは危ないし。それにまだパーティーは組めてないんだろ。なら、やめておいた方がいい」
「そうじゃなくて、レンさんと一緒にクエストにいきたいんです!」
「…………俺と一緒に? 一度だけって言っただろ」
「あ……やっぱり駄目ですか……」
悲しそうな顔をしているリンを見ていると俺も悲しくなってくる。
そんな事を思っている自分に嫌気がさしてため息をつく。
仕方ない奴だと思いつつ、言う。
「……クエストはいつかまた一緒にやってやるから今日はギルドに行って帰るぞ」
「え? いいんですか!?」
「ああ、昨日はモンスターに邪魔されて早く帰ってしまったからな」
「やった~! ありがとうございます!!」
2日前に偶然出会っただけなのに。
どうして俺はここまで彼女に深入りしてしまうのだろう。
全くもってわからない。
本来なら昨日で関係は終わっていたはずなのだ。
それが今日もこうして続いていることに驚きつつ、そしてそれが逆に心配だった。
そうこうしているうちにギルドに着く。
いつも通りの異物感は抜けなく、その建物のなかへと俺たちは入って行った。
「今日も一段と騒がしいですね」
「…………だな」
そして、クレタさんのいる受付の方に行く。
「あ~リンちゃんとレン君。もうクエストは終わったの?」
「はい、もう終わりました。ほら、リン」
リンは鞄から採取した草、【ランベルカ】を出す。
「おお、じゃあこれでクエスト完了だね。ほい、報酬の2000シリル」
お金をもらいリンと山分けして1000シリルになった。
リンも初めて自分で稼いだお金は嬉しいようでテンションがさっきよりも高いように見える。
「あ、そういえば忘れてました。クレタさんこれです!」
「……? なにこれ……」
リンが落ちてあった球を取り出す。
ここでも輝きは落ちずに綺麗に光っている。
「クレタさんでもわかりませんか? クエストにいっている途中に落ちていたんですけど」
「う~ん……ごめん、私でもわからないなあ。いったいなんだろうね」
「そうですか……」
「まあ、とりあえずこれ落とし物なんだね。なら、預かっておくよ。もしかしたら誰かが受け取りにくるかもしれないし」
「はい! ありがとうございます」
「いえいえ、なんかリンちゃんの笑顔を見ていると癒されるなあ。こんな人と一緒にいるレン君羨ましい~」
「急に俺に振ってくるの止めてください。酔っ払いに絡まれているみたいで嫌です」
「全くレン君はシャイだなあ」
「はいはい、シャイですよ」
適当に返しておく。
「……それでクエストやってくの? 一応、出来そうなものはあるけど」
「いや、今日はやりません。それより、聞いてみたいことがありまして」
「なになに?」
俺は他の人に聞かれないようにちょっとだけクレタさんに顔を近づける。
もしかしたらこの人なら知っているかもしれないと思いつつ昨日から疑問に思っていたことを聞いてみる。
「ダンジョン内いるボスって普通とは違う他の層だったり、違う場所に湧いたりする可能性ってあるんですか?」
「ん、どういうこと?」
「たとえば10階層のボス、【竜蛇】っているじゃないですか。それが5階層に湧くことってあるのか聞いているんです」
「え、なにそれ。全く聞いたことがないね。そんな話は」
クレタさんでも知らないのか。
じゃあ、いったい昨日は……
ダメだ。いくら考えても俺じゃ答えは出せない。
「なんでそんなこと聞いてくるの? なんかあったの?」
「実は……昨日クエストで5階層にいる間、【竜蛇】と出会ったんです」
「え!? 大丈夫だったの!?」
「一応倒したので、死人とかは出てません」
「倒したの!? レン君があの【竜蛇】を一人で!?」
「ちょ、クレタさん。声がデカいですって!」
間違いなくギルド内に聞こえるくらい大きな声で言ってしまう。
俺は少し焦るが、息を吐いて落ち着く。
「…………レン君それ本当?」
「事実です。リンもその場に居ました」
「私も見てました。まあ、ほぼ隠れてたんですけどね。でもいたのは事実です!」
「マジか……にわかには信じられない話だね……」
「なので一応、ギルド長にもその話を通したいんですが……」
そんな時だった。
最悪の奴らに聞かれていた。
「おいおい、腰抜け野郎。その話、もっと聞きたいなあ」
「「あはははははは」」
「…………」
後ろを振り返ると、いつもの3人組がニヤニヤとしながら立っていた。
まるで弱者を刈り取ろうとする虎のような目だった。
目が覚めると身体は少しだけ重かった。
気持ちよく寝れたのだが、どうやら寝すぎてしまったらしい。
起きようと思っていた時間を大幅に過ぎてしまっていた。
俺は体を起き上げて、外に出る準備をする。
そして、玄関の前でため息をついてからドアを開けた。
「やっぱりか……」
目の前にいる人を見て、そう言った。
リンが疲れた顔をして突っ立っていた。
こんなことだろうと思っていた。なんとなくだが、直感していた。
家も突き止められているし。
「あ、レンさん! やっと来ましたね!」
「やっと来たって……いつから待ってたんだ」
「ずっとですよ。朝からです! いくらまっても来ないので暇すぎて地面に絵をかくくらい暇でした」
リンの足元を見ると、変な人の似顔絵が書いてあった。
枝も落ちていて、それで書いたらしい。
ここまでくると呆れて来る。
「馬鹿なのか……」
「馬鹿じゃないですよ!」
「しかも結構下手くそだし」
「本気で書けばもう少しうまく行きますよ!」
リンは怒鳴り疲れたのかため息をついた。
「……ていうかレンさんこそどうしてこんなに遅れたんですか!?」
「普通に寝ていた。寝坊はあまりないはずなんだがな」
「ないはずなんだがな、じゃないですよ。昨日レンさんが今度って言ってくれたからずっと待っていたんです。他にどこで会うとか約束してませんでしたし」
「そりゃあ……まあそうだな」
そういえば、そうだった。
待ち合わせとかは全く指定していなかった。
でも、それはそれだ。
「……だけどな、普通は家の前じゃなくてギルドとかで待っているんじゃないのか。こんな一軒家の前でいたら他の人に変に思われるぞ」
「そ、それは……たしかに数人からの視線が酷かったですけど……結局レンさんが来たので結果オーライです!」
「んな無茶苦茶なこと言うなよ」
「無茶苦茶でもいいんです!」
「それに俺は今度って言っただけで今日とは一言もいってないからな。怒られる筋合いはない」
「うぅ……ぐうの音もでないほど正論ですね……」
一瞬たじろいでから、
「……ってこんな会話していたら本当に日が暮れちゃいますよ。早く行きましょう!」
「だな。とりあえずギルドに行ってクエストの完了を伝えに行くぞ。あとリンが見つけた落とし物な」
「はい!」
起きたのが相当遅かったせいでほぼ夕方みたいな感じだった。
ギルドまで急ぎ足で歩いていく。
歩きながらリンが、
「レンさん」
「どうした?」
「……今日もクエストしていくんですか?」
「クエストか……どうだろうな。時間も時間だし、やめておいた方が無難なんじゃないか。夜に帰るのは危ないし。それにまだパーティーは組めてないんだろ。なら、やめておいた方がいい」
「そうじゃなくて、レンさんと一緒にクエストにいきたいんです!」
「…………俺と一緒に? 一度だけって言っただろ」
「あ……やっぱり駄目ですか……」
悲しそうな顔をしているリンを見ていると俺も悲しくなってくる。
そんな事を思っている自分に嫌気がさしてため息をつく。
仕方ない奴だと思いつつ、言う。
「……クエストはいつかまた一緒にやってやるから今日はギルドに行って帰るぞ」
「え? いいんですか!?」
「ああ、昨日はモンスターに邪魔されて早く帰ってしまったからな」
「やった~! ありがとうございます!!」
2日前に偶然出会っただけなのに。
どうして俺はここまで彼女に深入りしてしまうのだろう。
全くもってわからない。
本来なら昨日で関係は終わっていたはずなのだ。
それが今日もこうして続いていることに驚きつつ、そしてそれが逆に心配だった。
そうこうしているうちにギルドに着く。
いつも通りの異物感は抜けなく、その建物のなかへと俺たちは入って行った。
「今日も一段と騒がしいですね」
「…………だな」
そして、クレタさんのいる受付の方に行く。
「あ~リンちゃんとレン君。もうクエストは終わったの?」
「はい、もう終わりました。ほら、リン」
リンは鞄から採取した草、【ランベルカ】を出す。
「おお、じゃあこれでクエスト完了だね。ほい、報酬の2000シリル」
お金をもらいリンと山分けして1000シリルになった。
リンも初めて自分で稼いだお金は嬉しいようでテンションがさっきよりも高いように見える。
「あ、そういえば忘れてました。クレタさんこれです!」
「……? なにこれ……」
リンが落ちてあった球を取り出す。
ここでも輝きは落ちずに綺麗に光っている。
「クレタさんでもわかりませんか? クエストにいっている途中に落ちていたんですけど」
「う~ん……ごめん、私でもわからないなあ。いったいなんだろうね」
「そうですか……」
「まあ、とりあえずこれ落とし物なんだね。なら、預かっておくよ。もしかしたら誰かが受け取りにくるかもしれないし」
「はい! ありがとうございます」
「いえいえ、なんかリンちゃんの笑顔を見ていると癒されるなあ。こんな人と一緒にいるレン君羨ましい~」
「急に俺に振ってくるの止めてください。酔っ払いに絡まれているみたいで嫌です」
「全くレン君はシャイだなあ」
「はいはい、シャイですよ」
適当に返しておく。
「……それでクエストやってくの? 一応、出来そうなものはあるけど」
「いや、今日はやりません。それより、聞いてみたいことがありまして」
「なになに?」
俺は他の人に聞かれないようにちょっとだけクレタさんに顔を近づける。
もしかしたらこの人なら知っているかもしれないと思いつつ昨日から疑問に思っていたことを聞いてみる。
「ダンジョン内いるボスって普通とは違う他の層だったり、違う場所に湧いたりする可能性ってあるんですか?」
「ん、どういうこと?」
「たとえば10階層のボス、【竜蛇】っているじゃないですか。それが5階層に湧くことってあるのか聞いているんです」
「え、なにそれ。全く聞いたことがないね。そんな話は」
クレタさんでも知らないのか。
じゃあ、いったい昨日は……
ダメだ。いくら考えても俺じゃ答えは出せない。
「なんでそんなこと聞いてくるの? なんかあったの?」
「実は……昨日クエストで5階層にいる間、【竜蛇】と出会ったんです」
「え!? 大丈夫だったの!?」
「一応倒したので、死人とかは出てません」
「倒したの!? レン君があの【竜蛇】を一人で!?」
「ちょ、クレタさん。声がデカいですって!」
間違いなくギルド内に聞こえるくらい大きな声で言ってしまう。
俺は少し焦るが、息を吐いて落ち着く。
「…………レン君それ本当?」
「事実です。リンもその場に居ました」
「私も見てました。まあ、ほぼ隠れてたんですけどね。でもいたのは事実です!」
「マジか……にわかには信じられない話だね……」
「なので一応、ギルド長にもその話を通したいんですが……」
そんな時だった。
最悪の奴らに聞かれていた。
「おいおい、腰抜け野郎。その話、もっと聞きたいなあ」
「「あはははははは」」
「…………」
後ろを振り返ると、いつもの3人組がニヤニヤとしながら立っていた。
まるで弱者を刈り取ろうとする虎のような目だった。
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