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人生、終わった。
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しおりを挟むそれだけ言って、レティシアは沈黙した。
妙な間。リリアーナは話を促すつもりでレティシアと視線を合わせたが、サファイアの瞳は一点の曇りもなく真っ直ぐに見つめ返してくるだけで、なんの言葉も返ってこない。
……もしかしてレティシア様、私が話すのを待っていらっしゃる?
独特な会話のテンポにまた違和感を覚えながら、リリアーナは彼女を安心させるように微笑んだ。
「職人は、これならほとんど元通りに直せる、と言っておりましたよ」
レティシアはまたポロポロと涙を落としながら、安堵のため息とともに小さな呟きを吐き出した。
「よかったあ……」
……どうも調子が狂う。人形が壊れたのがそんなにショックだったのだろうか。悪魔に戻って欲しいとは思わないが、これではまるで別人だ。いや、レティシア・モンフォルルがどんな人間かということを実際に知っているわけではないのだが。なにせまだ会って2回目で、知っていることは噂話だけ。
……そう、噂だけなのだ。
ここへきてリリアーナの心は揺らいでいた。彼女のせいで辞めていった者は確実に存在している。首はねられた者はもうこの世にいないだろうから確認できないが……不特定多数の使用人が辞めていっていることは紛れもない事実だ。
しかし、こうなってくると一体なにを信じたらいいのか分からない。目の前のいたいけな少女と、噂の「悪魔令嬢」……どちらが本当のレティシアなのだろうか。
きっとこれは、考えても分からないことだ、とリリアーナは思った。今のリリアーナはレティシアのことを知らなすぎる。まずレティシアと向き合って、それから判断すべきだろう。どうやら彼女はリリアーナを殺すつもりがないようだし。
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