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プロローグ 修学旅行
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俺は宇都宮和人。栃木県に住んでいる高校2年生だ。実家は江戸時代から続く名家だが、俺は地元では知らない同級生がいないくらい有名なヤンキーだ。
歳の離れた兄が二人いるため、両親や親族からの関心はほとんどなく、冷たい空気が充満している家の中で暮らしていた。
親から愛されたこともなく、学校なんかの行事ごとにも使用人がポツリと立っているだけ……。こんな環境でグレないほうが凄いと思う。
今日は俺の通う底辺高校の修学旅行の一日目。特別魅力を感じた訳ではないが、地元にいても息が詰まるだけなのでなんとなく東京までやって来ていた。
持ち物は着替えと財布とスマホ。あぁ、モバイルバッテリーも持っていた。(内緒だが酒タバコも多少持ち込んでいた。)
東京にやってきて早々、班別行動の時間になった。俺がいた班の女子がイケイケな感じで、「
せっかくの東京観光だしぃ、着物着たくなぁい?」的な流れで着物を着る事になった。
俺は小さい頃から冠婚葬祭や年中行事などの行事ごとで着物を嫌というほど着てきたので着たくなかったが、せっかくの修学旅行だ。関係を悪くする必要は無いかと思い、仕方なく着ることにした。
「お手伝いします。」と従業員が言ってきたが、「邪魔だ。必要ない。」と断った。
浅い緑色の着流しを慣れた手付きで身にまとう。なんだかんだで着物を着たのは2年ぶりくらいになる。
「なんで宇都宮くん着物着れるの?」
「馬鹿野郎。あいつの家考えろよ。江戸時代から続く名家だぜ?」
と同級生たちの会話が聞こえた。ん?と変わった顔を向けると、彼らは急に怯えだしたかのように小さくなった。
「紙燃やしてくる。」
「いってらー。」
奴らは俺がいない方が生き生きしている。それは分かってるから俺は早々に店を出た。
懐から金色のライターと煙草を取り出し火をつける。スゥーと大きく空気を吸ってから吐くと、白く曇った気体が無気力に出ていった。
俺は火のついたタバコを片手に持っていたショルダーバッグを開けた。スマホや財布、モバイルバッテリーなんかを帯に挟んでチャックを閉めたその時だった。
近くのビルから「ジリリリリ」「ジリリリリ」と大きな大きなベルの音が轟々と鳴き始めた。
「強盗だ!!」と男の叫ぶ声がした。
俺はタバコを足で踏んで処理すると急いで店内にかけ戻った。それから、班長の腰に刺さっていた模造刀を鞘ごと引っこ抜くとまたまた店を退出した。
強盗はすぐ近くまでやって来ていた。俺は模造刀を道の真ん中足元あたりに伸ばし、強盗犯の足をすくってやろうと考えたのだ。
幸い、強盗は追ってくる警備員、警察官から逃げることに精一杯でこちらには気づいていないようだった。
一秒一秒と時間が経過していくと同時に、犯人と俺との距離が詰まっていく。このまま行けば、見事犯人はここで転び、無事逮捕されるだろう。
そんな俺の計算は、まさかの集結を迎えた。犯人は俺の立っているところの直前にあった小石に足を取られて空を飛んだのだ。
さらに、勢いがついた人間が空を飛ぶと制御などできるはずも無く、男の身体は俺が伸ばした模造刀ではなく、俺の身体へと飛び込んできたのだ。
次の瞬間から何が起こったのか全く覚えていない。
歳の離れた兄が二人いるため、両親や親族からの関心はほとんどなく、冷たい空気が充満している家の中で暮らしていた。
親から愛されたこともなく、学校なんかの行事ごとにも使用人がポツリと立っているだけ……。こんな環境でグレないほうが凄いと思う。
今日は俺の通う底辺高校の修学旅行の一日目。特別魅力を感じた訳ではないが、地元にいても息が詰まるだけなのでなんとなく東京までやって来ていた。
持ち物は着替えと財布とスマホ。あぁ、モバイルバッテリーも持っていた。(内緒だが酒タバコも多少持ち込んでいた。)
東京にやってきて早々、班別行動の時間になった。俺がいた班の女子がイケイケな感じで、「
せっかくの東京観光だしぃ、着物着たくなぁい?」的な流れで着物を着る事になった。
俺は小さい頃から冠婚葬祭や年中行事などの行事ごとで着物を嫌というほど着てきたので着たくなかったが、せっかくの修学旅行だ。関係を悪くする必要は無いかと思い、仕方なく着ることにした。
「お手伝いします。」と従業員が言ってきたが、「邪魔だ。必要ない。」と断った。
浅い緑色の着流しを慣れた手付きで身にまとう。なんだかんだで着物を着たのは2年ぶりくらいになる。
「なんで宇都宮くん着物着れるの?」
「馬鹿野郎。あいつの家考えろよ。江戸時代から続く名家だぜ?」
と同級生たちの会話が聞こえた。ん?と変わった顔を向けると、彼らは急に怯えだしたかのように小さくなった。
「紙燃やしてくる。」
「いってらー。」
奴らは俺がいない方が生き生きしている。それは分かってるから俺は早々に店を出た。
懐から金色のライターと煙草を取り出し火をつける。スゥーと大きく空気を吸ってから吐くと、白く曇った気体が無気力に出ていった。
俺は火のついたタバコを片手に持っていたショルダーバッグを開けた。スマホや財布、モバイルバッテリーなんかを帯に挟んでチャックを閉めたその時だった。
近くのビルから「ジリリリリ」「ジリリリリ」と大きな大きなベルの音が轟々と鳴き始めた。
「強盗だ!!」と男の叫ぶ声がした。
俺はタバコを足で踏んで処理すると急いで店内にかけ戻った。それから、班長の腰に刺さっていた模造刀を鞘ごと引っこ抜くとまたまた店を退出した。
強盗はすぐ近くまでやって来ていた。俺は模造刀を道の真ん中足元あたりに伸ばし、強盗犯の足をすくってやろうと考えたのだ。
幸い、強盗は追ってくる警備員、警察官から逃げることに精一杯でこちらには気づいていないようだった。
一秒一秒と時間が経過していくと同時に、犯人と俺との距離が詰まっていく。このまま行けば、見事犯人はここで転び、無事逮捕されるだろう。
そんな俺の計算は、まさかの集結を迎えた。犯人は俺の立っているところの直前にあった小石に足を取られて空を飛んだのだ。
さらに、勢いがついた人間が空を飛ぶと制御などできるはずも無く、男の身体は俺が伸ばした模造刀ではなく、俺の身体へと飛び込んできたのだ。
次の瞬間から何が起こったのか全く覚えていない。
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