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第一章 始まりの板橋宿
第一話 まさかの状況
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目が覚めたとき、俺は薄暗い裏路地にいた。
建物の壁に背を持たれて気を失っていたようだ。レンタル着物屋でレンタルした着物を身に纏い、左手には模造刀の鞘、右手には模造刀の刀身。
そして目の前には俺とぶつかった強盗が転がっていた。服装は変わっておらず、少し先には重そうなカバンが転がっている。
強盗を起こさないように慎重にバッグに近づく。大きな肩掛けバック一杯に金塊が入っている。
驚いて強盗を見てみると、レザー製のジャンパーのポケットの中に、様々な宝石がぎっしりと詰まってある。
ここがどこなのか、それを調べようと体制を整えたときだった。表通りの方からカランコロンと下駄の音が近づいてきた。
何故下駄の音なのかなど疑問は浮かぶことすらなく、俺は焦った。この状況を見られては見られたのが誰であろうと面倒な事になるのは間違いない。俺は絶対にバレないように息を潜めた。
どんどんと音が近寄ってくる。額に変な汗が浮かんでくる。
若い男が、同い年くらいの女を連れて前を通り過ぎてゆく。二人とも着物に袖を通していた。
それを見て、理解して俺は今どこにいるのか急に不安になった。帯からスマホを取り出して電源を入れると、衝撃的な画面が映し出された。
「1680年!?」
俺のスマホが移していたのは、夕日のキレイな写真と、1680年6月6日という驚きの字列であった。
「江戸時代!?」
先程から声にならない心の声が溢れ出てきている。それほど今の状況に驚いているのだ。
それにしても、これからどうすればいいのだろうか。様々な「最悪の事態」が俺の頭の中でシュミレーションされた。
俺の存在が周りの人間にバレてしまって、斬首されるパターン。
俺がこの世界に馴染めなくて餓死していくパターン。
それから、目の前で気を失っている強盗犯の男が目を覚まし、俺を殺しに来るパターン。
いろいろなパターンを考える中で、俺の中の悪魔が酷いささやきをしてくる。
「今俺は和装をしている。ここでこいつを殺して金塊を手に入れれば江戸時代の世界でもなんとかなるのではないか?」
ふと、どれくらい時間が経ったのか心配になりスマホの電源を入れた。すると、先程見たときから5分も経過していなかった。それだけ胸の鼓動が速くなっていたのだろう。
いつ強盗が目覚めるか分からない。それに、先程は大丈夫だったが、一般人に見つかるという危険性も十分にある。早く決断しなければならない事は十分に分かっていた。
「済まない。許してくれ。」
俺は言葉を投げ捨てると、一旦納めていた模造刀の柄に手をかけた。
模造刀とはいえ、切っ先はかなり鋭利に研がれている。喉のあたりを思い切り突けば静かに殺せるかも知れない。
男の口に方手を当てる。そしてもう一方の手で刀を握り男の喉めがけてひと思いに突き通した。刀は、男の喉へと吸い込まれていき、無事に貫通した。
男は衝撃で一瞬だけ目を広げたが、ほぼ即死だった。口を抑えていた手は血で真っ赤に染められた。
俺は模造刀をゆっくり死体から引き抜いて、男の服で血を拭った。
刀を鞘に納めた時、俺は今更ながら恐怖を覚えた。俺は、人を殺したのだ。
幸い、返り血を貰わなかったので俺は持つべき荷物たちを持ち、人影のない廃寺へと入って行った。
建物の壁に背を持たれて気を失っていたようだ。レンタル着物屋でレンタルした着物を身に纏い、左手には模造刀の鞘、右手には模造刀の刀身。
そして目の前には俺とぶつかった強盗が転がっていた。服装は変わっておらず、少し先には重そうなカバンが転がっている。
強盗を起こさないように慎重にバッグに近づく。大きな肩掛けバック一杯に金塊が入っている。
驚いて強盗を見てみると、レザー製のジャンパーのポケットの中に、様々な宝石がぎっしりと詰まってある。
ここがどこなのか、それを調べようと体制を整えたときだった。表通りの方からカランコロンと下駄の音が近づいてきた。
何故下駄の音なのかなど疑問は浮かぶことすらなく、俺は焦った。この状況を見られては見られたのが誰であろうと面倒な事になるのは間違いない。俺は絶対にバレないように息を潜めた。
どんどんと音が近寄ってくる。額に変な汗が浮かんでくる。
若い男が、同い年くらいの女を連れて前を通り過ぎてゆく。二人とも着物に袖を通していた。
それを見て、理解して俺は今どこにいるのか急に不安になった。帯からスマホを取り出して電源を入れると、衝撃的な画面が映し出された。
「1680年!?」
俺のスマホが移していたのは、夕日のキレイな写真と、1680年6月6日という驚きの字列であった。
「江戸時代!?」
先程から声にならない心の声が溢れ出てきている。それほど今の状況に驚いているのだ。
それにしても、これからどうすればいいのだろうか。様々な「最悪の事態」が俺の頭の中でシュミレーションされた。
俺の存在が周りの人間にバレてしまって、斬首されるパターン。
俺がこの世界に馴染めなくて餓死していくパターン。
それから、目の前で気を失っている強盗犯の男が目を覚まし、俺を殺しに来るパターン。
いろいろなパターンを考える中で、俺の中の悪魔が酷いささやきをしてくる。
「今俺は和装をしている。ここでこいつを殺して金塊を手に入れれば江戸時代の世界でもなんとかなるのではないか?」
ふと、どれくらい時間が経ったのか心配になりスマホの電源を入れた。すると、先程見たときから5分も経過していなかった。それだけ胸の鼓動が速くなっていたのだろう。
いつ強盗が目覚めるか分からない。それに、先程は大丈夫だったが、一般人に見つかるという危険性も十分にある。早く決断しなければならない事は十分に分かっていた。
「済まない。許してくれ。」
俺は言葉を投げ捨てると、一旦納めていた模造刀の柄に手をかけた。
模造刀とはいえ、切っ先はかなり鋭利に研がれている。喉のあたりを思い切り突けば静かに殺せるかも知れない。
男の口に方手を当てる。そしてもう一方の手で刀を握り男の喉めがけてひと思いに突き通した。刀は、男の喉へと吸い込まれていき、無事に貫通した。
男は衝撃で一瞬だけ目を広げたが、ほぼ即死だった。口を抑えていた手は血で真っ赤に染められた。
俺は模造刀をゆっくり死体から引き抜いて、男の服で血を拭った。
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