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第一章 始まりの板橋宿
第七話 七之助の頼み
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手が血で真っ赤に染まっていた。もう何日ぶりに見る景色だろう。目の前には七之助が鼻血を出して倒れている。
いつもだったら警察が来る前にずらかるだけだが、今回は違う。俺は七之助に駆け寄って声をかける。
「七之助!!大丈夫か?」
反応がない。少しやり過ぎたかもしれない。そう思った瞬間、急に怖くなってきた。
「きぬ!!医者を呼んでくれ!!七之助が倒れた!!」
「え!?なんですって!?今すぐ行ってきます!!」
まさかこんな事になるだなんて……すべては昨日の夕方に遡る。
このとき既にきぬを助けた事は七之助、いや屋敷中の者の耳に入っていた。
そんな夕方の事。俺が自室でボーッとしていると、七之助が部屋の外にやって来た。
「殿。よろしいですか?」
「よい。入れ。」
俺はだらしない姿勢を正して七之助を迎え入れる。
「どうした。こんな時間に。夕餉の時にはまだ早いだろう?」
「この度は殿に恐れ多くもお願いしたき事がありまして参りました。」
「そうか。七之助にはよく世話になっておる。俺にできる事であればなんでもするぞ?」
「ありがたき幸せでござる。では、私に武術を教えて頂きたい。」
「武術…か……」
武術ってあれ?喧嘩の事言ってるの?
「はい。先日きぬ殿をお助けになられたと聞きました。神業を連続されたとか。」
あーこれ喧嘩のこと言ってるわぁ。あんまり人に教えるとか好きじゃないんだよなぁ。
「是非とも!!私、七之助にお教えください!!」
七之助があんまり目を輝かせて言うので断る気だったがなかなか断れない空気になってしまった。
「で、では明日の昼にでも教えてやろう。」
と、とりあえずその場を抑えるために言った言葉を七之助はちゃーんと覚えていたのだ。逆に俺は全く忘れていたので本当に都合の良い男だ。
仕方がないので縁側から庭に降りる。俺と七之助が対峙している。
「では、始めにお前が俺に技を出してみろ。俺の身体に当たったら次の段階に向かう。」
七之助は頷くとすぐに真っすぐの突きを繰り出してきた。直線をなぞる様な進路で悪くは無いが、スピードが無いのでしゃがみこんで避けながら腹部にパンチをお見舞いする。
「グハ!……」
腹を抱えて悶絶する七之助。これは早々に諦めさせたほうがいいかも知れない。
「俺が手を出さないとは言っていない。これに懲りたら諦めな。」
と、俺がいい終わるかどうかの瞬間だった。七之助の素早く動いた拳が俺の顔2mmくらいのところまで伸びてきた。
「どうですか?殿。」
まさかここまでできるとは思って無かったが、七之助にはセンスがあるのかも知れない。かなり強めに殴ったが、それを受けてすぐに反撃の体制を整えて仕返しまで行った。初心者でここまで出来るとなるとかなりのセンスがあると思う。
「上出来だ。では本気を出すぞ?」
「へ!?」
俺は眼前に伸びる腕を掴むと身体の右側に投げる。木製の壁に打ち付けられる七之助。
今度は正拳突きを狙って繰り出してくる。俺はその拳をキャッチすると、七之助の顔面を思いっきり殴った。
俺の拳は七之助の鼻を直撃。鼻血が空を舞い俺の手もそれで紅く染められてしまった。
医者を呼んで診てもらったところ、気絶していただけだと分かり、皆一安心するのであった。
「旦那様。いくら稽古でも加減を考えてください!!」ときぬからお小言を言われたのを忘れてはいけない……
いつもだったら警察が来る前にずらかるだけだが、今回は違う。俺は七之助に駆け寄って声をかける。
「七之助!!大丈夫か?」
反応がない。少しやり過ぎたかもしれない。そう思った瞬間、急に怖くなってきた。
「きぬ!!医者を呼んでくれ!!七之助が倒れた!!」
「え!?なんですって!?今すぐ行ってきます!!」
まさかこんな事になるだなんて……すべては昨日の夕方に遡る。
このとき既にきぬを助けた事は七之助、いや屋敷中の者の耳に入っていた。
そんな夕方の事。俺が自室でボーッとしていると、七之助が部屋の外にやって来た。
「殿。よろしいですか?」
「よい。入れ。」
俺はだらしない姿勢を正して七之助を迎え入れる。
「どうした。こんな時間に。夕餉の時にはまだ早いだろう?」
「この度は殿に恐れ多くもお願いしたき事がありまして参りました。」
「そうか。七之助にはよく世話になっておる。俺にできる事であればなんでもするぞ?」
「ありがたき幸せでござる。では、私に武術を教えて頂きたい。」
「武術…か……」
武術ってあれ?喧嘩の事言ってるの?
「はい。先日きぬ殿をお助けになられたと聞きました。神業を連続されたとか。」
あーこれ喧嘩のこと言ってるわぁ。あんまり人に教えるとか好きじゃないんだよなぁ。
「是非とも!!私、七之助にお教えください!!」
七之助があんまり目を輝かせて言うので断る気だったがなかなか断れない空気になってしまった。
「で、では明日の昼にでも教えてやろう。」
と、とりあえずその場を抑えるために言った言葉を七之助はちゃーんと覚えていたのだ。逆に俺は全く忘れていたので本当に都合の良い男だ。
仕方がないので縁側から庭に降りる。俺と七之助が対峙している。
「では、始めにお前が俺に技を出してみろ。俺の身体に当たったら次の段階に向かう。」
七之助は頷くとすぐに真っすぐの突きを繰り出してきた。直線をなぞる様な進路で悪くは無いが、スピードが無いのでしゃがみこんで避けながら腹部にパンチをお見舞いする。
「グハ!……」
腹を抱えて悶絶する七之助。これは早々に諦めさせたほうがいいかも知れない。
「俺が手を出さないとは言っていない。これに懲りたら諦めな。」
と、俺がいい終わるかどうかの瞬間だった。七之助の素早く動いた拳が俺の顔2mmくらいのところまで伸びてきた。
「どうですか?殿。」
まさかここまでできるとは思って無かったが、七之助にはセンスがあるのかも知れない。かなり強めに殴ったが、それを受けてすぐに反撃の体制を整えて仕返しまで行った。初心者でここまで出来るとなるとかなりのセンスがあると思う。
「上出来だ。では本気を出すぞ?」
「へ!?」
俺は眼前に伸びる腕を掴むと身体の右側に投げる。木製の壁に打ち付けられる七之助。
今度は正拳突きを狙って繰り出してくる。俺はその拳をキャッチすると、七之助の顔面を思いっきり殴った。
俺の拳は七之助の鼻を直撃。鼻血が空を舞い俺の手もそれで紅く染められてしまった。
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