23 / 25
第三章 出世をかけた戦い
第二十二話 御用ダァ
しおりを挟む
奉行所の者が宇都宮邸におしかけてきたのは、夜明けすぐの早い朝の事だった。この頃、結花は味方を裏切り俺の側室になることを誓い牢屋から出て俺の後ろにくっついて来ていた。
「この屋敷の主、宇都宮和人殿は何処で?」
「宇都宮和人は拙者だがいかがされた。」
七之助が息を上げて知らせてくるのも十分に理解できる。それだけ岡っ引きの様子は動転していた。田川さんのもとに向かった忍びは俺が倒して捉えてあったはずだから……もしかして、エ口さんが殺された!?
「昨夜こちらの屋敷に忍が襲いに来ませんでしたか?」
「その前にあなたのお名前をお聞かせ願いたい。」
「これは失礼。拙者、桐元平次と申す。南町奉行所に所属して候。」
「それはご苦労さまです。忍ならやって来ましたよ。」
そう言うと平次の顔色が一気に明るくなった。何かに心底安心した様子が用意に見て取れる。
「それで、その襲ってきた忍はどこにいますか?」
まずい……。結花の存在は七之助に軽く説明しただけで朝詩やそれ以外の使用人は知らない。幸いまだ早朝の部類で彼らが起きていないから平静を保てているだけである。
「桐元殿。少しこちらに来て頂いてもよろしいか。」
「はい。承知いたしました。」
流石に結花の話を縁側でするわけには行かない。とりあえず桐元を母屋隅にある応接間へと通すことにした。して、結花のことをどう説明するべきか……
ベテランヤンキーの感からして、このあと結花が裏切ると言うことは考えにくい。あれだけ身体を合わせればこうなるのか、それとも結花が流されやすいのか………
「忍はどこにいるのですか?」
俺と結花が座って早々に平次は言った。どうやら誤魔化しを考える時間はそう長くは貰えないようだ。
「えっと~……」
「宇都宮殿?」
「あたくしが和人様を襲った忍でございます。」
応えをつまらせる俺に代わって結花自身がそう言い放った。俺も平次も驚いて結花に視線を向ける。
「宇都宮殿。一体どういうことか説明して頂こうか。」
桐元は体制を変えて腰の鞘に手をかけている。今にも俺もろとも斬り殺そうと言う殺気が漂っている。全くどうしてこうなった!?
「潜入をしていたのです。」
「へ?」
結花が言ったまさかの二言目に俺も桐元も唖然となる。潜入?そうか言い訳すればなんとか二人して罰を逃れることができるかも?
「そ、そうです。潜入。結花はそれがしの妻でしてね。女にしては運動神経が良いのでくノ一として潜入させていたのです。」
「なるほど。納得いたした。」
え!?こんなんで納得しちゃうの!?奉行所の育成大丈夫?まあなんとか取繕えたのなら良いか。
「それで、あなたはどこに潜入して誰に支持を受けたのですか?」
「結花と申します。あたくしは和人様の命で忍棟梁の碓氷兵衛門の下に潜入していました。」
「碓氷兵衛門といえば江戸で一番の雇われ忍ではないですか。」
「はい。そして碓氷は書庫整理番の頭・亀山高石より仕事を受けたのです。亀山の部下である田川、宇都宮、エ口の屋敷を襲ってくれと。」
「なんですと!?」
「いかがされましたか?」
「実は……」
「そこまでだ。桐元。」
突然平次の言葉を遮ったのは俺の後ろに現れた2つの影だった。大物の雰囲気をまとっているところから平次の上司と言ったところだろうか。
「お、御奉行様!?それに目付様!?」
「話は聞かせてもらった。平次は奉行所へと戻り出陣の支度を整えるよう連絡せよ。」
「はっ!!」
町奉行と目付の二人は平次に代わって部屋の上座にと座った。
「名乗り遅れたな。遠山正孝と申す者。上様より南町奉行を任されておる。」
「儂は金本豊後守春清。目付職を仰せつかっておる。」
「これは。先程までのご無礼誠に申し訳ありません。」
俺と結花が揃って謝罪した。その挙動の揃い方から二人は俺たちを本当の夫婦関係にあると錯覚したようだ。(まあ事実夫婦だけどね。)
「単刀直入に言う。書庫整理番の頭・亀山高石により田川、宇都宮、エ口邸が襲われた。しかし田川、宇都宮邸では君が退治したので被害は無かった。エ口邸も屋敷中の者を引き連れて当主が宴を店で開いていたのでこちらも被害は出ていない。」
「何故亀山の仕業だとわかったのですか?」
「結花殿と田川邸を襲った忍が吐いた。これより我々は亀山高石を捉えるべく出陣する。」
「そこで君に頼みたい事がある。」
「なんでございましょうか。」
「君にもついて来てほしい。」
ヘェぇぇぇぇぇぇ!?!?なんでどうしてそうなるの!?
「この屋敷の主、宇都宮和人殿は何処で?」
「宇都宮和人は拙者だがいかがされた。」
七之助が息を上げて知らせてくるのも十分に理解できる。それだけ岡っ引きの様子は動転していた。田川さんのもとに向かった忍びは俺が倒して捉えてあったはずだから……もしかして、エ口さんが殺された!?
「昨夜こちらの屋敷に忍が襲いに来ませんでしたか?」
「その前にあなたのお名前をお聞かせ願いたい。」
「これは失礼。拙者、桐元平次と申す。南町奉行所に所属して候。」
「それはご苦労さまです。忍ならやって来ましたよ。」
そう言うと平次の顔色が一気に明るくなった。何かに心底安心した様子が用意に見て取れる。
「それで、その襲ってきた忍はどこにいますか?」
まずい……。結花の存在は七之助に軽く説明しただけで朝詩やそれ以外の使用人は知らない。幸いまだ早朝の部類で彼らが起きていないから平静を保てているだけである。
「桐元殿。少しこちらに来て頂いてもよろしいか。」
「はい。承知いたしました。」
流石に結花の話を縁側でするわけには行かない。とりあえず桐元を母屋隅にある応接間へと通すことにした。して、結花のことをどう説明するべきか……
ベテランヤンキーの感からして、このあと結花が裏切ると言うことは考えにくい。あれだけ身体を合わせればこうなるのか、それとも結花が流されやすいのか………
「忍はどこにいるのですか?」
俺と結花が座って早々に平次は言った。どうやら誤魔化しを考える時間はそう長くは貰えないようだ。
「えっと~……」
「宇都宮殿?」
「あたくしが和人様を襲った忍でございます。」
応えをつまらせる俺に代わって結花自身がそう言い放った。俺も平次も驚いて結花に視線を向ける。
「宇都宮殿。一体どういうことか説明して頂こうか。」
桐元は体制を変えて腰の鞘に手をかけている。今にも俺もろとも斬り殺そうと言う殺気が漂っている。全くどうしてこうなった!?
「潜入をしていたのです。」
「へ?」
結花が言ったまさかの二言目に俺も桐元も唖然となる。潜入?そうか言い訳すればなんとか二人して罰を逃れることができるかも?
「そ、そうです。潜入。結花はそれがしの妻でしてね。女にしては運動神経が良いのでくノ一として潜入させていたのです。」
「なるほど。納得いたした。」
え!?こんなんで納得しちゃうの!?奉行所の育成大丈夫?まあなんとか取繕えたのなら良いか。
「それで、あなたはどこに潜入して誰に支持を受けたのですか?」
「結花と申します。あたくしは和人様の命で忍棟梁の碓氷兵衛門の下に潜入していました。」
「碓氷兵衛門といえば江戸で一番の雇われ忍ではないですか。」
「はい。そして碓氷は書庫整理番の頭・亀山高石より仕事を受けたのです。亀山の部下である田川、宇都宮、エ口の屋敷を襲ってくれと。」
「なんですと!?」
「いかがされましたか?」
「実は……」
「そこまでだ。桐元。」
突然平次の言葉を遮ったのは俺の後ろに現れた2つの影だった。大物の雰囲気をまとっているところから平次の上司と言ったところだろうか。
「お、御奉行様!?それに目付様!?」
「話は聞かせてもらった。平次は奉行所へと戻り出陣の支度を整えるよう連絡せよ。」
「はっ!!」
町奉行と目付の二人は平次に代わって部屋の上座にと座った。
「名乗り遅れたな。遠山正孝と申す者。上様より南町奉行を任されておる。」
「儂は金本豊後守春清。目付職を仰せつかっておる。」
「これは。先程までのご無礼誠に申し訳ありません。」
俺と結花が揃って謝罪した。その挙動の揃い方から二人は俺たちを本当の夫婦関係にあると錯覚したようだ。(まあ事実夫婦だけどね。)
「単刀直入に言う。書庫整理番の頭・亀山高石により田川、宇都宮、エ口邸が襲われた。しかし田川、宇都宮邸では君が退治したので被害は無かった。エ口邸も屋敷中の者を引き連れて当主が宴を店で開いていたのでこちらも被害は出ていない。」
「何故亀山の仕業だとわかったのですか?」
「結花殿と田川邸を襲った忍が吐いた。これより我々は亀山高石を捉えるべく出陣する。」
「そこで君に頼みたい事がある。」
「なんでございましょうか。」
「君にもついて来てほしい。」
ヘェぇぇぇぇぇぇ!?!?なんでどうしてそうなるの!?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる