a pair of fate

みか

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【第二部】

8 side 黒川 廉

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総会が二週間前に迫った今日。
俺は本家に来たばかりだと言うのに、あのメガネ秘書の『持って来て下さいと頼んでいた書類は何処ですか?』という一言で、自宅へトンボ帰りしていた。


「若!急いで下さいね!」


岩下の催促に頷き、エレベーターへ向かう。


「書類忘れとかあいつが取ってきてくれればいいのに」


それか岩下、もしくは優斗。部下というのは名ばかりだ。

やっと乗り込んだエレベーターで最上階へ上がる。

玄関のドアに鍵を差し込み解錠して、ドアを開けようとしたのに何故か開かない。


「あれ」


何でだ?鍵が空いてた?
もう一度鍵を差し込み回すと、今度はすんなり開いた。

玄関に足を一歩踏み入れたその時、なぜか全身の力が抜けてガクンと膝から崩れ落ちる。


「─っ」


なんだこの匂い。力入らない。

全身に纏わりついてくるこの匂い…これは、多分、オメガのフェロモン。
実際に嗅いだ事はほぼ無いが、頭のどこかで確信があった。


甘ったるくて胸焼けしそうな匂いに、思わず手のひらで鼻を覆う。

例えるならケーキ、生クリームとかチョコみたいな甘くて美味しそうな、俺の大好きな甘い物。

そんな香りが家中に充満していた。


「ん?」


とりあえず中に入らないと、と思い地面についた手の指先に何かが当たる。
そこを見ると、無造作に脱ぎ捨てられたスニーカーが目に入った。

黒のシンプルなそれは、見るからに男物。

サイズは俺とそこまで変わらなさそうな所から、身長もかなり高い方だと察した。


取りに来た書類のある書斎を通り過ぎ、匂いがより強い寝室へ向かう。



「くっっっさ!!」


ドアを開けると、フェロモンの香りより強い香水の匂いが鼻をついた。


そこで一番に目に入ったのは、真っ黒なシーツに浮かび上がる真っ白なケツ。

そう、ケツ、尻だ。

ぷりっとして、柔らかそうな…いや、意外と引き締まっていて筋肉質かも…、じゃなくて誰だ?

白いケツの持ち主は、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返している。ここからじゃ顔は見えない。

敵なら俺が入ってきた時点で動いているだろうし、とりあえずは敵ではないと仮定する。

恐る恐る近付いて、寝ている顔を覗き込んだ俺は言葉を失った。


「……うそだ」


俺のベッドを占領していたのは、病室で会った茶髪の無表情な青年だった。


そいつが握っているのは黒い腕時計と、薄紫のキーケース、それと俺がいつも使っている香水の瓶。

周りを囲む円形に置いてある俺の服やタオルにネクタイは、所々濡れている。香水がかなり減っている辺り、置いてある服などに吹きかけたと思われた。


「…マジか」


抱き締めているTシャツや、寝転んでいる場所付近の黒いシーツには色んな液体が付いていた。
まぁ何かとは分かりたくないが、そういう事だろう。


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