a pair of fate

みか

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【第二部】

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「…おーい」


真ん中で胎児のように丸くなっている茶髪の肩を叩く。

シャツ越しに触れた肌はとても熱くて、高熱でもあるんじゃないかというくらいだった。


「ん…あ!!」


パチっと目を開けた茶髪は、俺を視界に入れるなり飛び起きた。


「うわっ」


ぐいっとネクタイを引っ張られ、踏ん張る間もなくベッド上の服の中に倒れる。

ぶわっとフェロモンの香りが強くなっ…たかと思いきや、すぐに香水の匂いで掻き消された。

…鼻がひん曲がる…換気、換気をさせてくれ…。


「これ、これも下さい!」

「ちょ、ちょっと待って苦しッ」


解いてもいないネクタイで首が苦しい…!!

強く引っ張られるネクタイを、まるで犬のリードの様に引っ張る茶髪。

俺の首から奪い取ったネクタイをくんくんと嗅いで、満足そうにうふふと笑みを零す。

俺の手を引いて自分の隣に座らせた。

それは丁度、服の輪っかの中心だった。


「できた…」


できたって、何が?と思い首を傾げると、茶髪はこれこれ、と服の輪っかを指さす。


「これアンタが作ったの?」


そう訊くと、頬をヒクつかせながら何度も頷いた。

もしかして笑ってる?さっきみたいに笑えばいいのに。


「…ふーん…」


なんか知らないけど、こんなの今時ストーカーでもしないだろ。

クローゼットは開きっぱなし。ベッドの上に入り切らなかった物は、床に落ちて散乱していた。

これは片付けが大変そうだ。

ほぼ無くなっている香水だって、高校生の俺でも知ってるブランド。高いに決まってる。


「え…」

「え?」


眉をくしゃっと寄せた茶髪は、悲しそうに声を漏らす。

その後、一気に涙目になって涙を流しだした。

理央とは違い決して大きな声で泣き喚かない茶髪に、なんだか一瞬懐かしい気分になる。

ボタボタ俺の手の甲に落ちてくる涙で我に返った。


「…ぅぇっ、」

「えっ、えっ?おい…」


泣くポイントあったか?て言うか、どちらかと言うと泣きたいのは俺の方なんだけど?

俺に原因があるとしても思い当たらないし、…ここは検索アプリに頼る。

こんな情緒不安定なのは、ヒートが原因としか思えない。
すぐに『オメガ ヒート』と打ち込むと、膨大な量の結果がヒットし、とりあえず一番上のURLをクリックした。


「…?…ネスティング…巣作り…?」


それは、オメガの生態について大まかにまとめてあるサイトだった。

『パートナーがネスティング(巣作り)をしたらたくさん褒めてあげましょう!あなたに対する信頼と愛情の現れなのです!しっかりケアしないとヒート中は心身ともにデリケートな期間なので不安定になってしまいます!』

なんてお気楽な文を見つける。
オメガの巣作りなんて迷信だと思っていた。

父さんから今は亡き母の巣作りの話を聞いても、作り話だと思って信じなかったから。


「ちょっ、あの…ご、ごめん、俺のために巣作ってくれたの?」


俺とこいつの間に信頼と愛情がどうたらこうたらあるのか知らないけど、この状況からしてこいつは俺の為に巣を作った事になる。

何より、こいつのすぐ側にあるキーケース。

完全に開いたそれには、俺の持っているここの鍵と同じ形の鍵が入っている。

それは、人を簡単に信用しないよう教育された俺にとっての、何よりも強い信頼の証拠だった。


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