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第六章 最終決戦とデラの真実
しおりを挟むブラスト領を出発して一週間。俺たちは、ついにオルベルの街並みを目前にしていた。
オルベルは南北に中央通りが走り、通り沿いは多種多様な商店の他、公会堂や劇場などがひしめいて賑わう。中央通りを挟んだ西地区が、貴族らの邸宅が集まる高級居住エリアだ。東地区が一般市民の居住エリアだが、王都に居を構える彼らもまた、国全体で見れば富裕にあたる。
そうしてオルベルのシンボル・聖魔法教会は中央通りの中ほど、西側にひと際存在感を放って建っている。広大な敷地には、空高く聳え立つ尖塔を有する象徴的な本棟の他、別棟や屋外の礼拝施設、整えられた庭園があり、一部は市民にも開放されている。その開放部分、本棟の礼拝堂に施されたステンドグラスがキラキラと反射しているのが、通りからでも見てとれた。
ちなみにヴィルファイド王宮は、中央通りの南端、王都の景観が一望できる南の高台に建ち、ヴィルファイド王国の国旗をはためかせている。通りから見上げる白亜の城は女性的で美しい。しかし、歴史を感じさせる重厚な聖魔法教会に比べると些か劣って見えた。
「……すごく豪華」
「ええ。教会内の全てが計算され尽くした完璧な造形美ですわ」
「増改築を繰り返しているとはいえ、これが千年以上も前に造られたというんですから驚きね」
間もなく中央通りに入ろうかというところで、チナ、セリシア、アルテミアの三人が間近に迫る教会を車窓から見つめ、思い思いの感想を口にする。
「チナ、そんなに窓から身を乗り出しては落ちてしまうぞ。それに今は、どこに監視の目があるか分らんからな」
俺は小柄なチナの背中のあたりを掴み、そっと車内に引き寄せる。先に示したとおり、教会は礼拝堂を開放しており、そこには市民のみならず多くの巡礼者が訪れる。そして巡礼者の大多数は、煌びやかな馬車に大量の心づけを積んでやって来る。
ここまで騎馬で駆け通してきた俺たちだったが、そんな巡礼者を装わんと、オルベルの隣町であえて御者付きで馬車を用立てていた。
「ありがとう、お兄ちゃん。だけど監視の方は、もし本当にいるとすれば、とっくにバレていると思うわ」
チナが、チラリと馬車後部に付いた窓を流し見ながら口にする。セリシアとアルテミアも苦笑して同意する。
馬車の後部を振り返り、なりふり構わず追いかけて来る五つの人影を認めた俺も、苦くひと息吐き出した。
「それもそうだな」
……そうなのだ。これから最新の注意を払い最終決戦に挑もうという俺たちに、とんでもない疫病神……アレックたちが付いていたのだ!!
チナのいうように、俺たちがどれだけ息をひそめたところで、これだけ目立つ五人を引き連れていれば、俺たちの動向など教祖たちにはとうに筒抜けだろう。
奴らはパーティに入れろと主張して、ブラスト領からここまでずっと俺たちの後を追いかけてきていた。道中、なんとか追い払おうと速度を上げてみたり、撒こうとして横道に逸れてみたりしたが、奴らはスッポンのように離れないのだ。
やむ終えず、直接奴に「付いてくるな」「パーティには加えられん」と告げたのも一度や二度ではない。その度に奴らは食い下がり、そしてまた追いかけっこを繰り返すという負のループだった。
その追いかけっこで、こちらは馬にアルテミアの重力制御を用いているのに何故追いついてくるんだ!?と、俺は何度も首を傾げながら、何日か目にアレックが風魔力で周囲の空気抵抗を減らしながら馬を駆っていることに気づいた。ほんの僅かにではあるが、奴は絶え間なく魔力を放出し続けていた。
……ずっと、風の筆頭侯爵の子息というのを笠に着た、自信過剰な男だと思っていた。しかし、一撃の威力には劣っても、この持久力は伊達ではない。
冷静に考えれば、ここまでの道中で監視者の気配を感じることはなかったが、それこそ異様だ。おそらく教祖らは俺たちの襲来を見越し、教会内で迎え撃つべく備えているのだ。
教祖らは、オルベルの街中で直接交戦となり、俺の新魔創生の力が市民に広く知れ渡ってしまうのを恐れているのだろう。秘密裏に葬り去ろうと、そんな目論見が感じられた。
……とはいえ、仮に教祖らに動向が筒抜けだとしても、教会内部にまでこのままゾロゾロと後を付いて来られてはたまったものではない。
「仕方ない」
俺はしばしの逡巡の後、中央通りに入ってしまう前に、御者に合図をして道端で馬車を止めさせる。
「おお、セイ! やっと俺たちをパーティに入れる気になったか!」
「……アレック、お前は『セイスのパーティなどごめんだ』と言っていなかったか?」
「な、なに! それは他の奴らがどうしてもお前のパーティに入りたいというから仕方なくだ。それにまぁ、セイスとはいえ俺とお前は以前、同じ釜の飯を食った仲間でもあるからな。お前がなんかでかいことやるっつーんなら、手伝ってやらねえわけにいかねーだろが! おっと、もちろん成功報酬は等分で頼むぜ!」
いっそ天晴なほど調子のいい奴だ。
「……ここではなんだ、来い」
「お! やっと俺たちを仲間に入れる気になったか! いい判断だ!」
「お前たちの持久力を見込んで、役目を割り当ててやる。ただし、これから伝える内容に、反論や異論、質問は一切受け付けん」
俺は往来を避け、アレックたちを木陰に引っ張り込むと、こんな前置きの後で端的に告げる。
「これから俺たちは、私利私欲を満たさんがため次元獣の王・デラの召喚に臨む教祖らを阻止し、彼らとの決戦に挑む」
「ハァ!?」
「ちょっ!? セイ、あんた、なにトチ狂ったこと言ってんのよ!」
四人の面々はギョッと目を剥いて声をあげたが、アレックだけは驚いた様子を見せつつも唇を引き結び、声を発しなかった。
俺はさらに続けた。
「決戦に際し、オルベル市街に被害が及ばぬよう、俺が事前に防護障壁を展開する手はずだ。だが、戦闘が激化する中で攻撃に集中し、障壁の維持に綻びが生じる可能性がないとはいえん。お前たちの役目は、なにがあっても中断せずこの障壁に絶え間なく魔力を注ぎ続けること」
ここに至るまで、チナたち三人は新魔力の使い方に関し飛躍的な進歩を遂げた。それこそ、俺が舌を巻くほどに。
だが、チナたちの進化を指を銜えて見ているだけの俺ではない。俺もまた、以前とは段違いに次元操作を磨き上げて技のバリエーションを増やし、精度をあげ、威力を増強させている。
今だったら守備も攻撃も俺が一人で担えるが、守りに関してはいくら対策を重ねても越したことはない。俺の防護障壁の維持にこいつらの魔力を宛がい、いくらかでも足しにできるのならそれもいい。
「お前たちに、これが出来るか?」
「ったりまえだ! 俺様を誰だと思ってやがる! 風のウノで歴戦の勇者・アレック・ヴェルビント様だぞ!」
試すように問えば、疑心暗鬼に顔を見合わる面々を余所に、アレックが俺をキッと見据えて断言した。
……ほう。アレックの言葉を、少し興味深い思いで聞く。これまで幾度となく『風の筆頭侯爵が子息、アレック・ヴェルビント様だぞ!』とうそぶいてきた奴が、今は父親の威光を持ち出さず、己の功績(盛り過ぎではあるが)で伝えてきたことに僅かに好感を覚えた。
「そうか、それはいい。ならば、風のウノで歴戦の勇者・アレック・ヴェルビント、お前に任せる。この後の流れを言うから、一度で覚えろ」
アレックは俺から視線を逸らさず、引きしまった表情で一言一句聞き逃さぬよう耳を傾ける。
「巡礼者らの列に紛れて教会に入ったら、俺たちが偽のぼや騒ぎを起こし一般巡礼者を全て教会の外に退避させる。直後、俺がオルベルの街を覆うように防護障壁を展開する。障壁は無形で無色、たとえウノでも能力に劣る者はその存在すら感じることはないだろう。だが、曲がりなりにも勇者の名を冠したお前なら察知できるはずだ。それに、道中のように風魔力を注ぎ続けろ。高濃度でなくていい、絶えず注ぎ続けることが重要だ」
「任せろ。俺はここまで、この不屈の持久力でやってきたんだ!」
聞き終えたアレックは、力強く胸を張った。
不思議なことに、今目の前にいるアレックは、俺が知るこれまでの奴とは別人のように見えた。
「……確かに。やられてもやられても倒れないゴキブリ並みの生命力で、めっちゃ弱いくせに『勇者』と呼ばれるまでになったんだもんね」
「うん、セイ! うちのリーダーなら、きっと打たれても打たれても、細く長く魔力を注ぎ続けるよ!」
「うちのリーダーに……いや、パーティにお誂え向きの役目だな!」
「ああ! オイラたちも手伝うぞ!」
四人はフォローになっているんだかいないんだかよく分からない台詞と共に決意を叫び、アレックを引っ張ってくると五人で円陣を組んだ。
「エイエイオー!!」
やれやれ。仲がいいんだか、悪いんだか。
とはいえ、過去にあれだけいいようにしてやられながら、奴に役目を与えてみせる俺もまた相当お人好しなのかもしない。
「お兄ちゃん! そろそろ正午になるよ」
その時、車内からチナが降りてきて、俺を手招く。
「ああ、すぐに行く!」
チナに答え、円陣を解いたアレックたちに向き直る。
「お前たち、オルベルの守りは頼んだ」
「任せとけ!」
五人から力強い返答を得て、俺たちはウノ教徒らの本拠地である聖魔法教会へと踏み込んでいった。
聖魔法教会への入場は、スムーズだった。一般開放しているとはいえ猫も杓子も入場可能というわけではなく、門前での身分照会が必須となる。
俺たちはアルバーニ様が用意した紹介状によって、早々に門戸をくぐることができた。
入場するとすぐに、本棟の一部に燃料と火を放つ。見る間に炎が燃え上がった。
「火事だ!」
巡礼者らが叫べば、訓練された職員らは炎と煙が立ち込める中、手早く巡礼者を避難誘導していく。同時に水属性の魔導士らが中心となって消火を試みるが、大量の燃料と共に放火したため、炎の勢いはなかなか収まらない。
正午に迫る召喚の儀に出向いてしまっているのか、そもそも駆けつけてくる高位の魔導士の数自体が圧倒的に少なかった。このことも追い風となって、ついに職員らも消火を諦めて避難を開始した。
「アルテミア!」
不要な延焼は俺たちの望むところではないから、全員が避難していったのを確認すると、即座にアルテミアに指示を出す。
「ええ!」
アルテミアはいまだ延焼に至らぬ本棟の壁に手を宛がい、延焼部に無重力を作り出す。
無重力下では気体の温度による対流が生じない。そのため、アルテミアが無重力環境を作りだせば、炎は酸素不足でいくらもせずに消えた。
俺たちは鎮火を確認すると、充満する煙が姿を隠してくれている間に、屋外礼拝施設に続く最短ルートを走りだす。アルバーニ様が入手してくれた教会の見取り図はすでに脳内に叩き込んでいた。そして地下施設への入り口は、屋外の礼拝施設には不釣り合いなほど大きな礼拝像の真下だ。
「この下だ。この先は階段になっている。チナは俺に負ぶされ。セリシアとアルテミアは足元に注意して俺に続け」
礼拝像の足元にある一メートル四方の戸を引き開けて、下に続く薄暗い階段に踏み出す。
あえて、光源は持たなかった。五メートルほど行けば、すぐに開けた地下施設に行き当たることを知っていたからだ。
壁の感触を頼りに、足音を忍ばせて進む。奥からはずっと、祈るような声が聞こえていた。
案の定、いくらもせずに空間が開け、薄暗さの中にほんの僅かな明るさを感じるようになる。足を止め、目を凝らせば、魔導士らの公式の長衣とは違う揃いのローブを羽織った三十人ほどが、奥の祭壇に向かって祈っていた。
祈りの声が段々と高くなったと思ったら、ローブ集団から六人が進み出て祭壇に上がり、豪奢な台座に設えられた黒水晶に六人揃って手を添える。
その動きでひとりのローブが僅かにずれて、フードの隙間から長い赤毛が覗いた。目にして、ピンとくる。暗がりでもそれと分かる、腰まである鮮やかな赤毛は――。
「やめろイライザ! 他の者もすぐに水晶から手を離せ!! さもなくば、デラに体内魔力を食いつくされるぞ!」
――ブワァアアアアアーーッッ!!
俺が叫んだのと同時、黒水晶は木っ端みじんに砕け、中から大量の黒い霧が放出されて六人を包み込む。六人を包んだ霧は渦となり、とぐろを巻きながら天井を打ち破って上空に打ち上がった。
……遅かった!! 召喚がなされてしまったか!
「床に伏せて!!」
アルテミアが鋭く叫ぶ。
黒い霧が発生させる凄まじい威力の上昇気流が地下施設の天井や壁はもちろん、教会の敷地内のありとあらゆる建築物を巻き上げていき、歴史ある聖魔法教会本棟もガラガラと音を立てて崩れてゆく。
アルテミアが床を介して発動させた重力制御によって、俺たち四人と黒水晶に触れていたイライザたち六人を除くローブの集団は吹き飛ばされずに済んでいた。
アルテミアの新魔力がなかったら、ローブ集団は全滅していただろう。
召喚の儀は遂行され、デラはそれに応えた。ただし俺の睨んだとおり、次元獣の王・デラは人間の浅知恵で対抗できる存在ではない!
黒い霧の中から上空に次元を割って現れた禍々しく黒光りする城を見上げ、俺はギリリと歯噛みした。
次元操作を操る俺だからこそ、分かる。
人間界の権力闘争も、新魔創生や覚醒も、デラにとっては所詮、次元を跨いだ他界の出来事。デラは教祖らに与する気など、端からない。デラが纏うのは全ての人間に対する怒りの波動だ。
「……ん?」
「教祖様、気が付かれましたか?」
後ろでマリウス大魔導士が、床で白目を剥いていた教祖を助け起こした。
「お、おお! あれはデラ様の居城であられるか!? デラ様が我らの願いを聞き届け、召喚に応じてくださったか……!」
なんと教祖は、この段になっても事の重大さをなんら理解しておらず、期待の篭もった目で上空の城を見仰いでいた。
「まだ分らんのか!? デラの怒りの矛先は――」
俺は振り返り、声を荒らげた。しかし、最後まで言い終わるより前に、真っ黒な霧で覆われた上空から百体を超す大量の次元獣が地上に襲い掛かってきた。
俺が張り巡らせた防護障壁によってオルベルの街への被害は防がれている。だが、これだけの次元獣をけし掛けられてしまっては、それとていつまで持つか――!
「全員で応戦し、街への侵入を許すな! 大型と超大型は俺たちがやる! それ以外の小・中型はここにいる全員で協力して打ち倒すんだ!」
ローブ集団に向かって指示を飛ばしながら、俺は眼前に迫る二足歩行タイプの大型次元獣の首に向かって次元魔力を放ち、青紫に光る硬い水晶ごと口を打ち抜く。
威力を増した俺の次元魔力は、大型次元獣の急所を一撃した。次元獣が真っ黒い瘴気を噴出させながら地面に倒れるのを横目に見て、次の次元獣に狙いを定める。
攻撃の手だけは休めぬまま、チナ、セリシア、アルテミアの三人を見やる。チナとセリシアはリボルバー銃を使い、比較的動きの遅い四足歩行型の次元獣を中心に、急所の狙い撃ちをしていた。
触れた物を媒介として重力を操るアルテミアはしゃがみ込んで地面に手を当てると、重力を反転させて大量の瓦礫を上空に向かって打ち上げる。これを食らった次元獣は上空に押し戻されて、一度に襲い掛かる数を減らす。
その間にチナたちやローブ集団が、次元獣を確実に射止めていく。
「アルテミアはこれを使え!」
俺は次元を裂いて全長百七十センチの大型ライフルを取り出すと、アルテミアへ向けて放り投げた。普通の女性には重すぎてとても扱えない代物だが、彼女の重力制御をもってすれば、何の問題もない。
「任せて頂戴! やぁっ!」
アルテミアが撃ち放った魔力砲は、一匹目を貫通し、後方の数体をも貫通した。
「わっ、アルテミアお姉ちゃん凄い! セリシアお姉ちゃん、わたしたちも頑張ろう!」
「えぇ!」
チナとセリシアも負けじと、次々攻撃していく。
ローブ集団も腐っても高位の魔導士。本来、戦闘は門外漢ではあるが、各々の魔力で必死に次元獣に応戦していた。
戦闘力に劣る者でも次元獣を倒すには至らぬまでも、攻撃を躱して生き延びることはやってのけてくれそうだ。
「……何故、デラ様は我々を攻撃するんだ? ……に、逃げろ! 逃げるんだ!」
教祖は顔面蒼白で呟いて、途中でハッとしたように叫んで一目散に駆け出していく。
「お待ちください教祖様!! デラ様が次元獣をけしかけて我々を攻撃してくるのは想定外。しかし、我々には召喚した責任がある! オルベルの街に被害が及ばぬよう、最後まで戦うのが我々のせめてもの務めではないのですか!?」
脇にいたマリウス大魔導士がローブの裾を掴み、教祖の逃走を阻む。
「マリウス大魔導士、なかなかいい心がけだな」
「っ、お前は……!」
俺を認め、マリウス大魔導士が息を呑む。
「エトワールの儀以来十八年振りだな、マリウス大魔導士。もっとも生後七日では、生憎と記憶はないのだがな」
「お前がセイか! メイリが産んだ、あの時のセイスの赤子――!!」
「古い文献の研究や編纂を職務としていた生前の母は、あなたの直属の部下でもあったそうだな。母はさる古文書の調査を切欠に、新魔創生の可能性に思い至った。そしてセイスとして生まれついた俺のため新魔創生に挑み、その実験の最中に死んでいる。……父と母を殺したのはマリウス大魔導士、お前だな?」
「そうだ、手を下したのは私だ。……だが、止むを得なかったのだ。新魔創生をなせば、また世界は数千年前の二の舞になる。大戦が起こり大地は荒れ、多くの民草が巻き込まれて屍の山ができる。そんな事態だけは、なんとしても避けなければならなかった。安寧の世を保たせるための、尊い犠牲だったのだ」
整然と告げられたのは、傲りも甚だしい主張だった。
安寧の世……それは、言い換えれば自分たちにのみ都合のいいウノ一強の階級社会。世の中全体の安寧には遠い。
なにより、自分たちの正義のために殺戮すら正当化してみせる。その時点で、正義はとうに歪められていることに、歴史上の独裁者たちは皆気付こうともしない。
マリウス大魔導士の正義は既に、地に落ちてしまっている。
「……見上げた理屈だ。ならばせいぜい、オルベルの安寧を保つため教祖と共に体を張れ! なんとしても、次元獣を一匹たりとオルベルの街には行かせるな!!」
父と母の無念を思えば、殴り殺しても殺したりない。しかし今は、マリウス大魔導士の傲り高ぶった正義感をせいぜい有効活用させてもらおう。
俺はマリウス大魔導士たちから上空へと目線を移し、襲い来る次元獣へと再び意識を集中させる。
荒らぶる感情のうねりをぶつけるように次元操作を発動させ、急所もなにもなく次元獣を木っ端みじんに散らせた。そのまま、二発、三発と一心不乱に次元獣を打ち続けた。
その甲斐あって、放出された百体もの次元獣はいつしか数体を残すのみとなっていた。戦闘に終わりが見え始め、皆の表情が僅かに綻びかけた次の瞬間――。
「何故だ!? また大量の次元獣が来るぞ……!」
魔導士のひとりが、上空を見上げて絶望的な声で叫ぶ。見れば、次元の割れ目から再び数百体を超す数の次元獣が姿を現す。
クソッ! 無尽蔵にやって来やがる!
「このままではキリがない! チナ、セリシア、アルテミア、あれを使うぞ! デラの城へ強襲揚陸だ!」
俺は三人の名を叫びながら、次元操作を発動する。次元が裂け、巨大な魔導戦艦が姿を現す。
二門の主砲に加え、多数の副砲を備え、三百六十度攻撃可能な大型戦艦は俺の設計図を基にチナが錬金術で造りあげたもの。そのボディは耐火性、耐久性に優れて強靭で、刃や火はもちろん次元獣の瘴気にも揺るがない。
戦艦に乗り込むとアルテミアの重力制御で一気に離陸する。
「チナ、セリシア、主砲を任せる! 前方の次元獣を凪ぎ払え!」
「任せて!」
「はい!」
二砲ある主砲をふたりに任せ、俺は多数の副砲を一度に操作し、三百六十度襲い来る次元獣を一網打尽にしていく。
――ズガガガガガガガッ!! ――ズドドドドドッッ!!
魔力砲が上空でごう音を轟かせ、新たに放出された次元獣がなす術なく倒れていった。
そのまま遥か上空のデラの城までひと息に辿り着く。不思議と次元の狭間から次元獣こそ攻めてくるものの、城からの直接攻撃はなかった。
……何故、仕掛けてこない?
その時、まるで俺たちを迎え入れるかのように城の門戸が開かれる。
なんだ!?
『よくここまで辿り着いた、次元を操る同胞よ』
声は、脳内に直接響いてきた。
『我はそなたらを歓迎する。進まれよ、我は王の間にて待つ』
声はそれきり止んでしまった。
「……三人とも、行くぞ。俺の後に続け」
俺たちは戦艦を下り、浮遊する城の門戸をくぐる。念のため全員が手を取っていたが、アルテミアの重力制御がなくとも城の中は地上と同じ感覚で歩くことができた。
デラの城は、外観から推し測った通り内部も広かった。三メートルはあろうかという高天井の広々とした空間になっており、幅広に取られた廊下が真っ直ぐに奥へと続いていた。ただし装飾の一切が排除された造りは質実というよりは、どこか空虚で物悲しい印象がした。
廊下の床は磨き上げられた黒水晶のような素材で、足を進める度に足音が反響した。そしてこの城は、床だけでなく内装も全てが同じ黒水晶で造られており、光源はないはずなのに、水晶自体がキラキラと煌いて僅かに明るく感じられた。
「城内は大丈夫そうだ。一旦、手を離すぞ」
ひと声かけて繋いでいた手を解くと、黒光りする壁にそっと触れてみる。
……やはりそうか。
「ねぇお兄ちゃん、これって同じだよね?」
隣のチナがポケットから取り出したのは、孤児院で『打ち勝った証』として渡した金色のペンキが付いた水晶。チナのそれは青紫がかった色をしていたが、城を形作る水晶とたしかに同じだった。
「あぁ、同じだな」
……次元獣の体表を覆うそれと城の素材が同じ。果たしてこれは、なにを意味しているのか。
そうこうしているうちに廊下が途切れ、両開きの重厚な扉に突き当たった。
――カツン。
足を止め、天井まで続く扉を見上げる。おそらく、ここが王の間なのだろう。
押せばいいのか? 俺が扉を押し開けようとしたら、俺が触れるより先に中から引き開けられた。
――ギィイイイ。
無意識のまま体勢を低くして、迫るデラとの対面に身構える。ついにデラが……!!
軋みをあげながらゆっくりと扉が開きる。そうして中には――。
なっ!? 次元獣の王というからには、風体は次元獣らと同じだと疑っていなかった。しかし、開け放たれたがらんどうの空間に次元獣の姿はなく、中央に一脚の椅子が置かれているのみだった。
……デラはどこにいる?
その時、高い背凭れの付いた椅子からスッと立ち上がる影があった。
椅子から立ち上がり、艶めく漆黒の長髪をなびかせて振り返ったのは、研ぎ澄まされた美貌の青年。
なに、人型だと……!?
カラカラに渇いた喉に唾を飲み込む。ゴクリと喉が鳴る音が、妙に大きく響いた。
「お前がデラか」
青年の瞳は冴え冴えとした紫で、視線がぶつかると、彼の目に吸い込まれてしまいそうな錯覚に慄いた。
『いかにも。我がデッドラッシュ。そなたらがデラと呼ぶ者だ』
目の前の青年……デラの形のいい唇が動く。けれどその声は、やはり脳内に直接聞こえた。
「何故、召喚に応じた? いや、そもそも次元獣の王であるお前が何故人間に関与をしてくる!? デラ、お前の目的はなんなんだ!?」
『我は召喚に応じたわけではない。愚かな人間どもに制裁を与えるべく降り立ったタイミングが今だったにすぎぬ』
「人間に制裁だと?」
『然り。此度、我は実に身勝手な人間側の都合で召喚を受けた。我は此度の召喚に関与した愚かな人間どもを葬り、エトワールに再びの安寧を敷く。強いて言えば、これが目的となろうか』
デラはここで一拍の間を置いて、再び続ける。
『本来、我にとってはウノとセイスのどちらが上位だろうと関係もないし、エトワールが階級社会であろうが平等な社会であろうが、それすらもどうでもよいのだ。だが、数千年前、セイスの青年が起こした反乱は世界大戦に発展し、エトワールは崩壊の危機に瀕した。あのときは我が介入し、エトワールに均衡を敷いた。再びあの時の大戦を再現するような事態だけは到底容認できぬ』
「なぜ、次元獣の王がエトワールの動乱に関与を……?」
『それが唯一にして最大の我の存在意義。……次元を操る同胞よ、そなたなら分かるのではないか? 次元を統べる者は、全てを制す。我が次元獣の王というのも間違いではないが、同時に我は人類の王であり、全ての空間を統べる調律者でもある』
調律者だと……?
耳にして、ピンときた。
「まさか次元獣をけしかけることで、人間の数も統制しているのか!?」
『然り。人間は次元獣にも、他界の種にもない、実に愚かな特性を持つ。増えすぎると、必ず派閥を組んで争う。この愚かな特性を制御するには、数の統制が手っ取り早く、かつ、有効なのだ』
……この時、俺が感じていたのは、デラという存在そのものに対する不思議な憐憫だった。
数千年前の出来事をまるで昨日のことのように語る。全ての界の手綱を取り、己の意思ひとつで操作しながら、数千年もの年月を過ごす。
想像したその重みに、全身に震えが走った。
『数千年前、反乱によって世界を大混乱に導いたセイスの青年は、我が次元の狭間に葬り去る直前に言った。《こんなにも多くの命が失われるのなら、立ち上がらなければよかった》と。彼は気づいたのだ、セイスの犠牲の上にではあるが、大戦前は一応の安定が敷かれていたことに。そして、世界全体の安寧の前に、一定の犠牲はやむを得ないということを彼は死を前に悟ったのだ。ゆえに我は、此度、少し早めに手を打つことにした』
「デラ、やはりお前は次元に帰り、次元獣の王としてだけ生きた方がいい。世界に調律者は不要だ」
俺の言葉に、デラはその真意が分からないというように胡乱気に眉根を寄せた。
しかし、口にしながら俺自身も、まるで俺ではない誰かに言わされているような不可思議な感覚に襲われていた。
デラが口にした一語が、俺の記憶を紐解く鍵――。
俺の中の奥深く、眠っていた遥か遠い古の記憶が蘇る。
……あぁ、そうか。レジスタンスグループを率い、発起したのは前世の俺だったのだ。
「お前は高みから人間の動向を眺め、その結果でしか物事を判断しない。だから、見誤る。レジスタンスグループを率いたセイスの青年・セイは……かつての俺は、決して野望を捨ててはいなかった。ただし、劣勢のまま極限に追い込まれたことで、その場は一旦引くことを選んだだけ。事実、彼の志は次代に繋がっているんだからな」
『なんだと!?』
俺はある一節を諳んじた。これは、両親の日記に記されていた一節と同じ。ただし俺は、日記の文面を思い出して口にしたわけではなかった。
――数多の源を統べし者、新たなる源を得るであろう。
例えるなら、数多の源泉より湧き出でた小さき主流同士が合流し、ひとつの大きな主流へと変わるがごとく。しかしそれは同時に、世界に混乱をもたらす火種にもなろう。初めは小さき火なれども、くすぶりながら燃え続け、終にはこの世を焼き尽くすほどの業火とならん。肝に銘じよ。そして考えよ。新たな源を欲するわけを。何かを得れば何かを失う。それがこの世の理なのだから――
「今のは、母が書き残した古文書の一節だ。これを書いたのは、レジスタンスグループを率いて発起したセイ。そして、何代も転生を繰り返し、今に生き繋いだ俺でもある」
『馬鹿な……!』
「『何かを得れば何かを失う』転生を繰り返したことで、俺は当時の熱量を失っているのだろう。だが、ウノ至上の階級社会を打破したいという志は今にきちんと繋がっている。幾度もの転生を繰り返し、色々な世を見てきたからこそ俺は思うんだ。全ては長い年月の中で繰り返される事象に過ぎない。人間の増減も、愚かな争いすらも長い歴史の中のほんの一部分だ。『それがこの世の理』なんだ。人間の世界に、……デラ、お前の介入は不要だ」
『戯言だ! 人は道を誤る。ゆえに、我が調律を保たねばならんのだ!』
わなわなとデラの体が戦慄き、彼の周囲に薄っすらと黒い霧が立ち昇る。
「ならばデラ、お前もまた過ちを犯した。当時、俺が巧妙に隠していたのもあるが、お前は俺が次元操作の使い手だと知ろうともせず、次元の狭間に葬って幕引きとした。それによって俺は次元を介して命を繋ぎ、こうして今、またこの地へと降り立っている。お前の言葉を借りれば『あの時の大戦を再現するような事態』、こんな今の状況を作り出したのはお前でもあるんだ。それと知らぬままお前も片棒を担いでいる。悪いことは言わん、人間の世界のことは今生きている人間の手に委ねるんだ!」
『ふざけるな! あらゆる種族を見守りながら生き続けた我があって、世界は成り立っている!! そなたになにが分かる!? 次元を操る同胞と思えばこそ、対話に応じてやったというに……!!』
デラが美貌を歪めて叫ぶのと同時に、ブワーッとあふれ出た真っ黒い霧が俺たちを襲う。
「チナ、セリシア、アルテミア! 伏せろ!!」
「きゃあああっ!」
――ブワァアアアアアアアアッッ!!
襲い来る圧倒的な瘴気の波動。三人に覆い被さるようにしながら次元魔力を発動させ、目を固く閉じ、歯を食いしばってなんとか凌ぎきる。
一旦衝撃が去り、薄く目を開けば、そこに美貌の青年はいなかった。
代わりにいたのは、これまで相対してきたどんな次元獣よりも大きく、過去のそれらとは比較にならぬほど禍々しい瘴気を放つ次元獣の王――。
奴がバサリと翼をはたいた時、先端がほんの僅かに床を掠める。すると、奴の触れた部分の床がジュウゥッッと不快な音を立てて溶けた。
……なんという邪悪な翼だ!!
その姿はティラノサウルスに似ていた。ただし、手足は丸太のように太く、全身には黒水晶を纏いゴツゴツしている。また、顔面にギョロリと光る三つの目も、触れた物を瘴気で抹消してしまう翼も、ティラノサウルスは持ち得ない。他を圧倒する猛烈な邪気もまた然りだ。
人の姿は仮初。あれが次元獣の王、本来の姿か……! 未知の敵――それも、強大すぎる敵を前にして、武者震いした。
その時、俺の下で三人が身じろぎするのを感じる。
「ヒィッ!!」
次元獣の王を目にしたセリシアとアルテミアが咄嗟に悲鳴を噛み殺す。
「お兄ちゃん……っ!」
怯えて縋りついてきたチナを抱き締め、安心させるようにトントンと背中を撫でてやる。
「大丈夫だ、チナ。お前たちに手出しはさせん。……三人とも、よく聞け。奴との決戦は避けられん。俺がこのまま奴に向かっていったらお前たちは走って戦艦に戻り、すぐにここを飛び立て。戦艦の動力や砲撃には、組み込んである黒水晶から魔力が供給されるから、お前たちでも扱える」
「え!? 私たちが戦艦に乗って逃げちゃったら、お兄ちゃんが逃げられなくなっちゃうよ!?」
「逆だ。俺と奴の戦闘で城はもとより、この浮遊空間もそう間を空けずに崩壊する。崩落により、戦艦を失うわけにはいかない。それが、俺の退路の足を確保することにもなる」
俺の説得に、チナは納得がいかない様子だった。チナは聡く、もっとも長い時間俺と旅をして過ごしてきた。
もしかすると彼女は、俺が戦艦で退避する気などないことに勘づいているのかもしれない。ただし、攻撃力に劣る自分たちがこの場に留まれば、足手まといになることもまた十分に理解している。
「……セリシア、アルテミア。チナのことを頼んだ」
俺はポンッとチナの頭を撫でて、年長のふたりに目線を向ける。
「チナツちゃんのことは任せてちょうだい!」
即座に、アルテミアがチナを背中に負ぶった。
「セイさんがそうおっしゃるのなら従います。セイさん、どうかご無事で……!」
セリシアも頷いて答え、ギュッと俺の手を握る。
触れ合った手のひらを通して、ぽかぽかとした温もりが伝わってくる。血の流れにのるように、柔らかな熱は全身の細部にまで巡っていった。
「ありがとう、セリシア」
身体強化を施してくれたセリシアに感謝を伝える。
直後、デラが放つ瘴気がぐわんと撓むのを肌で感じ取る。
「行け!!」
――グワァアアアアアッッ!!
俺が三人に向かって叫ぶのと同時、デラが咆哮をあげて口から瘴気を吐き出した。
三人の退路を守るため、躱すことを選ばなかった。両手を前に突き出して次元操作で瘴気の波動を、真正面から全て受け止めて吸収していく。
三人が無事に廊下に出て、パタパタと駆けていく足音が、俺の心を奮起させる。
クッ! 圧倒的な瘴気を受け、全身がビリビリと痺れる。かつてない量を吸収しきった時、ガクリと膝が頽れそうになるのを歯を食いしばり、すんでのところで堪えた。
よし、後は三人が無事に軍艦辿り着くまで、デラをこの場に留めておけばいい……!
デラは瘴気を放出しきると、バサリと翼を広げ俺に向かって飛びかかってくる。その時、大きく広げた翼が、はじめに座っていた背もたれの高い椅子を弾いた。
――ジュワァアアアッッ!! ――プスッ、プスンッ。
奴に弾かれた椅子は不快な音を立てながら溶け、真っ黒な泥炭のように変質し、やがて悪臭を放ちながら気化した。
っ、改めて目の当たりにした次元獣の王のおぞましさに、ぞわりと全身が粟立った。同時に、本当にこれでいいのかと、自分の中で葛藤が湧き上がる。
「待ってくれ、デラ! 世界の調律者まで名乗ったお前が、本当にこの決着でいいのか!? 戦う以外に道はないのか!? もう一度、俺と話を……っ、クッ!!」
俺の説得は、デラが放った瘴気に遮られる。今度は正面から受け止めることをせず、寸前で躱して避ける。
――ズドォーーンッッ!!
デラの瘴気を食らった王の間の壁が吹き飛んで、周囲はガラガラと音を立てて崩れていく。たった一撃が、巨大な城を揺るがす。
次元障壁で降ってくる瓦礫を防ぎながら、幾度かデラに呼びかける。
しかしこれ以降、どんなに俺が呼び掛けてもデラは対話に応じなかった。
なにより、奴からの攻撃が激しさを増す中で、俺も防戦一方では限界になり、応戦せねばならなくなっていた。
奴の瘴気と俺の次元魔力がぶつかり、目に見えぬ波動となって大気を震わせる。打って、打たれての攻防が幾度か続いた。
デラと俺の力は拮抗していた。デラの瘴気もその源は次元魔力、要するに俺たちは次元から吸い上げた力を互いにぶつけ合っていることになる。まさに、泥試合の様相を呈していた。
……いかんな。直接攻撃は全て防御しているとはいえ、飛び散る瓦礫を完全に防ぎきることはできない。避けきれずに食らい、既に全身の肌は傷だらけだった。ほんの僅かに翼が掠った脇腹は抉れ、ボタボタと鮮血が滴っていたし、打ち身も至るところにあった。
黒水晶の甲冑で全身を覆っている奴に対し、俺はセリシアに身体強化をかけてもらっているとはいえ生身だ。こうなってくると、生身の肉体で戦っている俺の分が悪いのは当然だった。
既に、立っているのもやっとの状態で、ほとんど気力だけで戦っているような状態だった。
クソッ! 目の前が霞んできやがった。
……だが、まだだ! チナたちの無事を見届けるまで、持ってくれ――! 祈るような思いで、油断すれば揺らぎそうになる両足を踏ん張った。
やがて天井が崩れ、頭上に空が広がる。しかし晴天のはずの空は、デラが放出する瘴気と巻き上がった瓦礫や礫によって、周囲一帯が黒く淀んでいた。
それからいくらもせずに天井を失くした城は壁を失くし、基盤だけになり、ついにガラガラという崩落音を立てながら、完全に崩壊した。
素早く周囲に視線を走らせると、暗雲とした空の下にほんの一瞬、チナたちが乗った魔導戦艦を認める。
……無事に飛び立ったか! 戦艦の姿はすぐに淀んだ黒い霧に隠されてしまったが、俺はチナたちの無事を確信し、安堵の息をついた。
ところが、デラもまた戦艦の存在を視認したようで、スッと宙を掻くような仕草をした。
なんだ!?
直後、奴が掻いた部分の次元が裂け、三体の次元獣が現れた。
しかも三体は、デラをそのままコピーしたかのような風貌をしていた。さらに三体が放つ瘴気もデラ自身には及ばぬとも、これまでの次元獣とは比較にならない強さだった。これまでの次元獣とは格が違うのだと、一目で分かった。
――グァアアアアアッッ!! ――グォオオオオオーーッッ!! ――グガァアアアアッッ!!
三体が戦艦に向かって、瘴気を吐きかける。戦艦を呑み込まんと、三体分の瘴気が螺旋を描きながら暗雲の中を真っ直ぐに突き進む。
させるか!!
俺はグンッと両手を前方に突き出すと、渾身の力を込める。
己の内の集中力を極限まで高め、従来の次元操作を進化させた新技を発動する。
「いけ! 次元を断ち切れ――っ!」
三体分の瘴気が戦艦に到達する直前で、俺は次元を分断した。
全身に漲る活力を感じ、次元分断の成功を確信する。厳密には、俺とデラ、そしてデラのコピー三体を奴らが吐き出した瘴気ごと、別次元に飛んだ格好だ。しかもここは、俺が創り出した空間。ここでは、俺が有する六属性の魔力全てがウノを超える威力になっている。
この時を待っていた――!
俺がヒラリと手を振れば、疾風が巻き起こる。風を受け、デラのコピーのような次元獣の一体が千々に千切れた。
グンッと掌打を打ち出したら、つらら状の岩がいくつも現れて、別の一体を串刺しにした。
パチンを指を弾くと火炎が上がり、三体の最後の一体を包み込む。燃え上がる炎は、次元獣を跡形もなく焼き切った。
俺が創り出したこの次元。ここで、俺に敵う者はない!
コピーの三体が瞬殺されたことで、デラにも僅かな動揺が見て取れた。……いや、動揺ではなく奴は実際にダメージを負ったのだ。
見た目にこそ変化はないが、奴が噴出する瘴気は今にも消え入りそうに弱々しい。「コピーのよう」ではなく、あの三体は事実奴が生み出した"分身"だったのだ。
『それだけの力がありながら、どうしてお前は人間界の王に……いや、あらゆる界を統べる調律者にならんのだ?』
次元獣の姿を取ってから初めてデラが声を発した。もしかしたら人型を手放したことで理性のない獣に成り下がってしまったのかと訝しんでいたが、そうではなかったらしい。
「調律者など、ごめんだ。終わりがあるから、生きる楽しみもある。……デラ、俺が前世の世界で知った言葉をひとつ教えよう。『有終の美』と言うんだ」
黒水晶に覆われて表情などないはずの奴が、どこか悲しげに見えるのは俺の気のせいなのか。
『我は万物の終わりを見届ける役。その我に終わりはない』
「いいや、デラ。俺がお前に『終わり』を与える」
是なのか、否なのか、デラの本当の思いは果たしてどちらであったのだろう。デラは、三つある紫の目を見開いたが、それに答えなかった。
俺は空を見仰ぎ、両手を広げて叫んだ。
「――火・水・風・土・光・闇――全ての魔力よ、集え! そして新たな魔力となれ!」
一度グッと目を瞑り、カッと見開く。
――キュィイイーーンッッ!!
次元が振動し、共鳴する。ぐわんぐわんと撓むのは視界ではなく、空間そのもの。
ウノを超す威力となった俺の六つの魔力が掛け合わさり、新魔を創生してゆく。
全身の細胞が波打つような感覚。ジンジンと痺れるような熱を発しながら、体の奥の奥、俺の中で眠っていた大いなる源が目覚める――!
あまねく次元を揺るがしながら、新魔力が発動する。これが次元操作の最終形態――。
「次元支配――!!」
――ズォオオオーーンッ!!
カッと閃光が走り、耳をつんざく爆音が轟く。
――パキーンッ!!
直後に、あがったのはこれまでとは違った澄んだ音。たしか昔、大切にしていたガラス細工が割れた時にこんな音がしたなと、そんなことを思い出した。
『人間世界を他の次元世界と完全に切り離したか』
既に分かたれた界の向こう側からデラが呟いたひと言は、やはり俺の頭に直接聞こえてきた。ただし、一枚紗幕でもかかったように、その声は近いのに、遠い。そんな不思議な聞こえ方だった。
デラの言った通り、俺は全ての次元を支配して切り離して独立させた。
これにより、互いの世界は永遠に干渉ができなくなった。もう、人間界に次元獣が現れることはない。同様にデラは、人間界にも、他の種が住まう界にも、関与する手段を永遠に失った。
「デラ、数千年もの年月、お前はあらゆる界の調律を保ち、よく務めた。だが、それも今生が最後。これからお前は、次元獣の世界で今生の残りを王として生きるのだ。そして、その生が尽きた時は全ての終わり、『有終の美』を飾れ」
『――』
俺の声がデラに届いたのかは分からない。デラが最後になにか口にしたようにも思えたが、なにも聞こえてはこなかった。
やがてデラは、その次元ごと蜃気楼のように消えた。
……いかん、このままでは俺も次元の狭間に取り残される。
しばし、デラが消えたあたりを見つめていたが、すぐに思い直してチナたちが待つ次元――人間世界に戻った。
【最終章 エトワールの新たな日の出】
次元支配によって全ての世界が分かたれて、一年の月日が経った。エトワールから次元獣が消え、冒険者も守備隊も皆、失業。勇者を示すプラチナのエンブレムも、とうに過去の栄冠となった。
新魔創生が白日となり、ヴィルファイド王国からウノやセイスといった属性数による階層支配はなくなった。……少なくとも、表面上はそうなっている。
同様に、ウノ教徒も、教会組織も、今はもう存在しない。
この一年は、激動の一年だった。しかし、市井の人々は逞しい。現状を柔軟に受け入れて、新しい日常を力強く過ごしている。
大変だったのは、ウノ至上で特権に胡坐をかいてきた貴族たちだ。彼らは今も、隙あらば過去の階級社会を取り戻そうと必死だ。
煩わしいが、その動向に目を光らせるのも変化をなした俺の責任だと心得ている。
「お兄ちゃん、聞いて聞いて!」
俺が聖魔法教会の敷地に新しく建てた王立魔力研究所の所長室で来季の予算組みに頭を抱えていたら、チナがノックもなしに飛び込んでいた。
「こら、チナ。ノックを忘れている」
一年前よりグッと身長も伸びて、真ん丸だった頬も少女めいたそれへと変わり、急成長を遂げたチナ。しかし、眩いばかりの笑みと元気のよさは相変わらずだ。
「あ、ごめんなさい! でもね、ビックニュースなのよ!」
「それで? いったいなにがあったんだ?」
「なんとアレックたちが、引っ越し屋さんを始めたのよ!」
「ほう!」
俺は以前、チナと『もしこの世界から次元獣がいなくなり、冒険者が軒並み廃業となったら、その時は荷運びや引っ越しを生業とするのも悪くない』と、こんな話をしたことがあった。
その発言はなまじ冗談でもなかったのだが、俺は現在、アルバーニ様の鶴の一声で王立魔力研究所の所長に就任させられていた。
ちなみに王立魔力研究所というのは、聖魔法教会の魔力研究と研鑽の部門をそのまま引き継いだ後身の組織だ。教祖以下、ウノ教徒らの権勢が強すぎた教会組織をそのまま残すことができず、教会は一度解体の形を取らざるを得なかった。教会の次世代へ繋げていきたい分野だけ名を変えて残した恰好だ。ここの長は俺だが、研究研鑽を担う研究員は大部分が元教会所属の魔導士たち。研究員は教会では下級職だったが、俺に言わせればデラに傾倒したウノ教徒の幹部らよりよほど優秀だ。
とにもかくにも、アルバーニ様の思惑に乗せられて所長に据えられてしまった俺は、現在目が回るほどの忙しさ。とてもではないが、引っ越し屋に手を出せる状況ではなかった。
「しかも、すっごい人気らしいの! 後から後から引っ越しの依頼が引っ切りなしで、てんてこまいなんですって!」
「……なるほどな。ブラスト領からオルベルに移動した時のように風魔力を利用し、運搬の効率化を図っているのか」
実は、アレックは侮れない。奴はきっと、ゴキブリ並みの生命力でどんな場所でも生き繋ぐだろうと、今の俺はある種の確信を持っていた。
一年前も、アレックたち面々は俺がオルベルに張った防護障壁を守り続けた。
俺が次元を分断し、デラと共に別次元に行ってしまった後は、オルベルに張った防護障壁への次元魔力供給が滞った。しかし奴らは、自前の魔力で防護障壁を維持し、魔導士らが教会から取り逃がした次元獣からオルベルを守り切ったのだ。
チナは「わたしたちが上空から戦艦で危ないところを援護してあげたからよ」と言っていたが、それでも最後までやり切ったのは立派だと俺は一定の評価をしていた。
「あー、なるほどね!」
「後で俺の名で開業祝いでも届けてやるとするか」
「わっ! お兄ちゃんってば人がいいんだから」
――コン、コン。
「セリシアです」
「入ってくれ」
扉が外から叩かれて、俺は即座に入室を促す。
ひょっこりと顔を表したセリシアは、今ではヴィルファイド王国のみならずエトワール中で聖女と謳われている。
一年前、デラ召喚に伴う次元獣発生で、あの場にいた教祖以下、三十人近い魔導士らの中には救命が困難なほどの負傷者が多数いた。教祖も瀕死の重症を負っていた。この負傷者全員を、セリシアが再生快癒の新魔力で救った。
救命の場面は、オルベルの皆が目の当たりにした。奇しくも、論より証拠で新魔創生の存在を民草に広く伝えることになった。
救命された教祖は戦慄く唇で小さく謝罪と礼を呟いて、それっきり表舞台から退いていった。マリウス大魔導士は、自ら十九年前の俺の両親殺害を自白し、贖罪の日々を送っている。
「おかえりセリシア」
「はい、ただいま戻りました」
セリシアは国の機関を通した正式な依頼があればどこにでも出向いていって治療を施し、そして、後進の育成にも精力的に励んでいる。能力のみならず、彼女の姿勢はまさに聖女といえた。
その彼女が、今回は私的な訪問から戻ってきたところだった。
「して、マーリンの具合はどうだった?」
「アルテミアお姉ちゃんは!? 元気だった?」
そうなのだ、セリシアが出向いていたのはアルテミアの故郷・ウェール領。アルテミアの弟のマーリンの一年後検診で再訪したのだ。ちなみにアルテミアは、半年前に故郷に戻っている。
当初、オルベルで俺の秘書役を務めていたアルテミアだったが、半年が過ぎようというタイミングでウェール領への帰郷を選んだ。もしかすると、その直前に、老衰によって旅立った祖父母を見送った俺が『時間には限りがある。もっと多く話をしておけばよかった』と、こんなふうに零したことが少なからず影響しているのかもしれない。
ただし、その言葉はあくまで残された俺の心残りであり、祖父母たちは生前口にしていた『息子夫婦の弔いも無事に済んだし、後はピンピンコロリで逝くぞい』を見事に有言実行してみせたわけで、後悔なく大往生で逝ったのだろう。
「ええ、マーリン様の心臓機能は正常そのもの。成長も健やかでらっしゃいました。アルテミアさんは相変わらず、とっても元気でしたわ。なんでも、源泉位置の確認が取れただとかで、来年中にはマーリン様とふたりで温泉施設建設の実行に移られるのだとか。張り切っていましたわ」
「え!? ほんとに温泉を始めちゃうんだ! ねぇお兄ちゃん、いざ工事着工となったら、わたしも手伝いに行っていい!?」
「そうだな。その時は、長期休暇をとって、俺も手伝いにいくか」
アルテミアは一連の騒動を終息に導いた功労者のひとりだ。その彼女が満を持して事業を開始するとなれば、俺が少々長めの休暇を取ったとて罰はあたるまい。
「やったーっ!!」
「ふふふ。チナツちゃんが錬金術でお手伝いしたら、あっという間に立派な温泉施設が完成しますわね」
「うん! そうしたら、皆でゆっくり温泉に浸かりたい! アルバーニ様やギルドマスターのおじちゃんも一緒がいいわ! ……あ、そう言えば、おじちゃんはもうギルドマスターじゃないんだっけ?」
チナが興奮気味に叫び、途中ではたと気づいたように首を傾げた。
冒険者や守備隊員が失業すれば、当然ギルドは不要の産物だ。では、そのギルドは今、どうなっているのかと言えば……。
「ああ。ギルドマスターは今は、労働局局長だな」
……そう。ギルドは現在、建屋やスタッフをそっくりそのまま流用し、前世日本で言うところのハローワークになっている。ちなみにこれを発案したのは、俺だ。
当時、失業者(元冒険者と元守備隊員)対策は、国の最重要課題であり、支援対策が急がれていた。
そこで目を付けたのが、ギルド職員だった。彼らは素材の買取の他、訪れる冒険者らの力量を聞き取りしながら就業場所の斡旋や情報提供といった業務をもともと行っていたのだ。
これを流用しない手はないと考えた俺は、即座にヴィルファイド王国全土のギルドスタッフを集め、教育を行った。農林水産業、工業にサービス業、それぞれの求人状況と適正人材、保有魔力との相性等々の講習を行って、最適な求人を提案する職業相談員に育て上げ、再び全土に配置した。
当然、既知のギルドマスターは、問答無用で全ハローワークを管轄する労働局の局長に就任させた。もちろんこれは、四年前に、彼が俺のことを『弱き者』などと呼んだことへの仕返しではない。……そう、断じてない。
「へー。おじちゃんも、いい年なのに新たな組織の長になんかさせられちゃって大変ね」
チナがしみじみと呟いてみせるから、思わず苦笑が浮かんだ。
「まぁ、ふふふっ。チナツちゃんったら。でも、きっと疲れた体に温泉がうんと沁みますわね」
「だねっ!」
「ところチナツちゃん、アルバーニ様からブラスト領で教育を受けないかってお誘いをいただいたんですって?」
「うん! だけどもう断った。私は、お兄ちゃんと一緒がいいの。それに学校なら、ここからだって通えるもん」
セリシアの問いかけに、チナが即答した。
「それに私、お兄ちゃんが一段落ついたら、また旅に出るの! それで、国中を回って学校や孤児院を建てるの」
「……素敵ね。その学校や孤児院では、みんなが等しく笑って過ごし、多くを学ぶ。そこから巣立った子供たちが各地へ散り、豊かな次代へと時代を綱いでいく。夢のようだわ」
「セリシア。君の語る未来は夢ではなく、ヴィルファイド王国の数年後の現実だ」
「はい、セイさん」
セリシアは感慨深い様子で、ゆっくりと頷いた。
「ねぇチナツちゃん、もしその旅の途中でグルンガ地方に立ち寄ったら、そこにも学校と孤児院を建ててもらえるかしら」
「うん、もちろんよ!」
「ありがとう。それからね、その時にこれを地中に埋めてもらいたいのだけど、いいかしら?」
そう言ってセリシアは、首にかけていたペンダントを外し、チナに差し出す。
「もちろんいいけど」
チナは怪訝そうに、トップに小さな革袋が付いたペンダントを受け取った。俺はすぐに革袋の中味にピンときた。
「……それの中身は、もしやイライザに譲られたというリボンか?」
俺の問いかけにチナはハッとしたような顔をして、セリシアを見上げた。セリシアは儚く微笑んで応えた。
「ええ。時代が違えば私と彼女は同じ孤児院で笑い、同じ学校で机を並べて学んでいたかもしれません。せめてもの供養にと……」
チナはグッと唇を噛みしめて、大切そうにペンダントを握りしめた。
「分かった! 必ずグルンガ地方にこれを埋めて、その上に学校と孤児院を建てる。……ううん、グルンガ地方だけじゃなくて、絶対国中に造ってみせる!」
チナの決意を聞きながらそっと目を閉じれば、俺の瞼の裏側に子供たちの笑い声が絶えない平等で豊かなヴィルファイド王国の未来が広がっていた――。
完
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