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第五章 火の筆頭侯爵アルバーニとの邂逅
しおりを挟む「なんで!? わたしとお兄ちゃん、セリシアお姉ちゃんとアルテミアお姉ちゃん、でいいじゃない!」
ウェール領から街道に出て早々、俺たちは小さな問題にぶち当たっていた。
「いいや。大人ふたりで相乗りはセリシアが大変だ。だから、俺がアルテミアと相乗りする。チナはセリシアに乗せてもらうんだ」
当然と言えば当然なのだが、長く塔で暮らしていたアルテミアは、馬に乗れなかったのだ。
「うぅ。お兄ちゃんがそこまで言うなら……」
チナはしぶしぶ了承し、先に馬に乗っていたセリシアから差し伸べられた手を取った。
「ありがとう、セリシアお姉ちゃん」
「どういたしまして」
馬上のセリシアは、目深に被ったフードの下から微笑んだ。
セリシアは、今はウェール領主からもらい受けたフード付きのローブを目深に被っていた。これならば、道中で不用意に注目を集めずに済みそうだった。
「チナツちゃん。早くひとりで乗れるようするから、今日だけごめんなさい」
「ううん。アルテミアお姉ちゃんが謝るのはおかしいよ。わたしこそ、我儘言ってごめんなさい」
俺の手を借りて馬に乗ったアルテミアがすまなそうに告げれば、チナはしおらしく謝罪した。子供らしく率直に思いを口にしてしまうふしはあるが、素直に「ごめんなさい」が言えるのはチナの美徳だ。
俺は馬上で俯くチナの頭を慰めるようにポフポフと撫で、自身もヒラリと乗り上がる。
そうして俺たちは、ブラスト領へと馬首を定めた。
「あら? オルベルに行くならば、東の街道に出るのが速いのではない?」
俺の前に横座りしているアルテミアが、怪訝そうに口にした。さすが、塔から見下ろす360度パノラマの景色を熟知しているだけあり、彼女は地理に詳しい。
アルテミアの言うように、オルベルに向かうならば、真っ直ぐ東に進むのが最短だ。しかし俺たちは少しだけ遠回りをして、進路を東南に取っていた。
「お兄ちゃんは寄りたいところがあるんだって!」
「寄りたいところ?」
「実はお兄ちゃんって、火の筆頭侯爵様の紋状を持ってるの」
「そうなのですか!? ということは、アルバーニ様が治めるブラスト領に向かっているわけですね。けれど、筆頭侯爵様が紋状を託すのは非常に稀なこと。しかもセイさんはセイスです。過去にセイスが……いえ、ウノ以外の者が紋状を授かった例を私は知りません。セイさんは火の筆頭侯爵・アルバーニ様とどのような関係でらっしゃるのですか?」
高位貴族の生まれにあって、チナやセリシアよりもそういった事情に精通しているのだろう。アルテミアはチナから聞かされた事実に、衝撃と興奮を隠しきれない様子で、勢い込んで尋ねてきた。
「アルバーニ様と出会ったのは、俺が次元操作を体得し、故郷の村を出て間もない頃だった。その頃の俺は能力には恵まれていたが、セイスを理由に冒険者登録はおろか次元獣の出現情報すら与えてもらえないまま、数軒のギルドで軒並み門前払いを食らっていた。そんな中でたまたま立ち寄ったのがアルバーニ様が治めるブラスト領だった」
俺は過去を懐かしむように、目を細くして宙を仰ぎ見た。そうして当時の状況を思い出しながら、ゆっくりと口を開いた。
「……あの時、ブラスト領の城下街ブレイナスは大型次元獣に襲われていた。大きな領ゆえ、かなりの規模の守備隊が配備されていたが、大型かつ強力な次元獣を相手に苦戦していた」
「それをお兄ちゃんがやっつけたのね!」
並走するチナが、嬉々とした声をあげた。
「結果的にはそうなるな。アルバーニ様は俺を館に招き入れ、セイスの俺に信頼の証である紋状を与えてくださった。……アルテミアが言っていたように、筆頭侯爵がセイスに紋状を与えることは通常ならばあり得ない。しかし、アルバーニ様は現状の階級社会に疑問を持ち、その是正に水面下で尽力されていたんだ。だから、セイスの俺がウノ以上の力を発現させたことも喜んでくださった」
「冒険者登録もアルバーニ様のお力添えで叶ったのですね?」
「その通りだ。おそらくアルバーニ様の後見がなければ、セイスの冒険者登録など永遠に叶わなかっただろう。しかし、セイスを理由に蔑まれ、辛酸を舐め続けてきた俺にとって、なにより感動したのはアルバーニ様の分け隔てのない心だった。魔力の属性数に関わらず対等に接してくださるアルバーニ様を支え、どこまでも付いていきたいと思った」
彼の方について語る時、どうしても俺の言葉には熱が篭もってしまう。今の俺があるのは、アルバーニ様のおかげと言っても過言ではない。本当に、どんなに感謝してもしきれなかった。
「セイさんがそこまで心酔なさるのです。アルバーニ様というのは、素晴らしい方なのですね」
「ああ、素晴らしい人格者だ。その上、アルバーニ様には先見の明もあった。実は、俺が旅をしながら情報を集めていたのは、両親の敵討ちを果たすという目的だけでなく、アルバーニ様の思惑もあったんだ。アルバーニ様は当時から次元獣の現れ方に疑問を持っていて、俺は秘密裏に次元獣とその出現に関する調査依頼を受けていた」
「……なるほど、よく分かりました。セイさんがこれまでの旅で集めた情報を伝えに行くのですね」
「そうだ。もちろん俺自身もアルバーニ様がこの一年で集めた教会の情報をもらう。そして出来得る対策を取ったら、敵の本拠地、オルベルに向かう」
ここで一旦会話は終わり、カッカッという馬脚の音と頬を撫でていく風の音を心地よく聞きながら平坦に続く道を駆った。
ひと晩野宿し、翌夕に俺たちはアルバーニ様が治めるブラスト領に入った。
「よし、まずは城下街ブレイナスのギルドで次元獣の換金だな」
「なんだかんだで途中、全然ギルドに寄れなかったのよね。結局、今って何体いるんだっけ?」
チナがあげた疑問の声に、俺自身も即座に答えることができず、脳内で数えていく。ひい、ふう、みい……。
「八体だな」
「わっ! 一度にこれだけ持ち込まれたら、ギルドのスタッフも驚いちゃうわね」
実は、俺が冒険者登録をしたここブレイナスのギルドには、よく彼……ギルドマスターが入り浸っているのだ。なんとなくだが、鉢合わせするのではないかと、そんな予感があった。
「……まぁ、そうだな」
確証はないので、チナには曖昧に答えた。
そしてこの会話から三十分後、俺たちはギルドに到着した。馬を繋ぎ、正面入口の扉を引き開ける。
次の瞬間、気が遠くなりかけた。
……勘弁してくれ!! 何故、ここにコイツがいるんだ!?
この男との鉢合わせまでは予感していなかった俺は、思わず頭を抱えた。
「おい、アルバーニ様はどこのどいつに紋状を授けたんだ!? 本当は知っているんだろう!?」
「存じません」
カウンター前を陣取ってまくし立てるアレックのうしろ姿と声に、横にいたチナもすぐにピンときたようで、嫌そうに眉間にクッキリと皺を寄せて俺を見上げた。
「なに、俺に秘す必要などない。……フッフッフッ! なにを隠そう俺は風の筆頭侯爵が子息、アレック・ヴェルビント様だ!!」
「どなただろうと存じ上げないものはお伝えできません」
「おいおい、ちゃんと聞こえなかったのか? ならばもう一度聞かせてやろう! 俺は風の筆頭侯爵が子息、アレック・ヴェルビント様だーっ!!」
俺は常々思っているのだが、この白けた空気に気付こうともせず、高笑いを続ける奴のメンタルは生半可なものではない。
「ねー。あの人、抜かしちゃダメ?」
「え、ええっと。こういうのは一応順番ですから、彼がカウンターから退くのを待ちましょうか」
衝撃に固まり反応が遅れた俺に代わって、セリシアが答えた。
「お前みてえな下っ端じゃ埒が明かねえんだよ! もっと上のスタッフと代われ!!」
そうこうしているうちに、奴がお決まりの台詞を吐いた。……またこれか。どうやら奴は『上のスタッフと代われ』以外の台詞を持たないらしい。
ちなみに、スタッフとのやり取りにヒートアップするアレックは、後ろに立つ俺たちの存在にいまだ気付いていない。
その時、奥のスタッフルームの扉を開け、カウンター内に入ってくる人影があった。
「やれやれ、アレック。またお前か」
ん!? この声は――!
「って、オッサンかよ。あんたとは、本当に色んなギルドでよく会うな。下っ端は方々に飛ばされて大変だなあ」
アレックはギルドの長であるギルドマスターを相手に、相変わらず頓珍漢な軽口を叩いていた。
「それよりオッサン、今日は聞きたいことがあってきてるんだ。上のスタッフを呼んできてくれないか?」
「お前さんの言い分は、奥で聞いていた。アルバーニ様が誰に紋状を授けようが、お前には関係のないことだ。たとえ、お前さんが親父さんの威光を盾に迫ったところで、結果は同じだ。分かったら他の客の邪魔だ、早々に出て行け」
「っ、このっ!」
ピシャリと切り捨てられたアレックは、肩を戦慄かせ、拳を握りしめて口を開いた。悲しいかな、奴がこの後に続ける台詞の想像がついた。
「あぁ、ちなみに俺に『上のスタッフ』はいない。俺がギルドマスターだからな」
ところが、アレックがお決まりの台詞を吐くよりも一瞬早く、ギルドマスターがサラリと己の身分を明かした。
「なっ、なっ、なっ」
するとアレックは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で「なっ」の一語を連発しながら、岩のように固まった。
「え? ギルドマスターとか、マジやばくね?」
「うん! ちょっとリーダー、これヤバイってば! 固まってないで早く謝って!?」
パーティの女性メンバーのひとりに肘でどつかれたアレックは、その衝撃でグラリと傾ぐ。
「わわわ!?」
脇にいたずんぐりが慌てて支えたアレックは、口から泡を噴いて白目を剥いていた。
長年の顔見知り、しかも、ずっと下っ端のスタッフと思い込んでいた『オッサン』が、実はギルドの最高権力者だったのだ。これを知ったアレックの衝撃は、なんとなく察することができた。だからといって、同情の余地など微塵もないが。
「あ、あの。オイラたちのリーダーがお騒がせしてすみませんでした。今、連れて出ますんで……」
ひょろりがアレックに代わって、ギルドマスターに向かってヘコヘコと頭を下げて謝罪する。その横をふたりの女性メンバーとアレックを担いだずんぐりが、いいそいそと行こうとして――。
「え!? セイ!」
四人が俺に気づき、揃って足を止めた。
「待たせてすまなかったな、セイ。この間のお嬢ちゃん以外にも、今日は綺麗どころがいっぱいじゃないか。こっちで用件を聞こうじゃないか」
「やっぱりいたか、なんとなくまた会うような気がしていた」
「はははっ、新魔力に目覚めると勘までよくなるとは知らなかったな」
「いや、別に新魔力と勘は関係ない」
俺は四人には目もくれず、カウンターから手招きするギルドマスターの元へと歩み寄る。初対面のセリシアとアルテミアがギルドマスターに丁寧な挨拶をすれば、彼はいい年こいて頬をすっかり緩ませて応じた。
「おじさん、また会ったわね! 今日もいっぱい次元獣を売りにきたよ」
ギルドマスターと面識のあるチナも、臆せずに話しかける。
「おう、お嬢ちゃんか。今日はあんたら美人姉妹の顔を立ててたっぷりと色を付けてやらにゃならねえな」
「ふふふ。そんなこと言って大丈夫? ギルドの金庫がスッカラカンになっちゃったら申し訳ないから、正規の金額査定で十分よ!」
「はははっ! その口ぶりだと、よほどの大物を持ち込んできたとみえるな」
「うん! 大物がいっぱいよ! ここに入りきらないから、今回も外にいるわよ!」
チナはニコニコと胸を張り、誇らしげに言う。
「どれ。さっそく見せてもらおう」
「こっちよ!」
ギルドマスターはカウンターを出ると、外に向かってパタパタと走り出すチナに続いた。
「あらあら。チナツちゃん、待ってちょうだい」
それをセリシアとアルテミアが足早に追う。
俺も四人の後ろに続き、ギルドのフロアを突っ切る。そうして扉から出ようとしたまさにその瞬間――。
「ぁああああっ! テメェ、セイスのセイじゃねえか!? この間は舐めた真似しやがって! タダじゃおかねえぞ!?」
俺の背中に向かってアレックが雄叫びをあげ、奴の下品な声がギルド中に木霊した。思わず、踏み出しかけていた足が止まった。
……どうやら無事、意識を取り戻したらしいな。それにしても、他人の迷惑を考えぬ、なりふり構わぬ振る舞いは、初めて出会った三年前から微塵も成長がない。
……ふむ。ここまで清々しいほどの唯我独尊っぷりを見せられると、いっそ頭が下がる。もちろん、俺が裸の王様に付き合ってやる義理などないが。
「オイ!? 無視してんじゃねえぞ!!」
俺は構わずにスタスタと外に出ると、そのままパタンと扉を閉めた。
「あ、お兄ちゃん遅いよ! もう査定、出ちゃったわよ」
なんと、俺がほんの一瞬奴に気を取られていたうちに、査定は終了したらしい。
「すまんすまん。背後から漂う邪気に一瞬足を止められてしまってな。……それにしても、ずいぶんと早かったな」
ぷうっと頬を膨らませるチナの頭を撫でながら答えると、ギルドマスターに向き直って後半の台詞を告げた。
「これだけの次元獣を積まれたら、電卓を弾くまでもない。すまんが金庫の中にある分で負けといてくれ」
チナの先の言葉ではないが、色を付けるまでもなく金庫はスッカラカンになってしまったらしい。
……まぁ、無理もない。八体もの次元獣が一日で持ち込まれるなど、どこのギルドでも想定外だ。
「なに、それで十分だ」
本当は、金庫に少し残してやるべきかとも思ったが、今後のデラ一味との決戦には先立つ物も必要になってくる。本意ではないが、聖魔法教会内部に切り込むために、やむなく金品を撒く可能性もなしではない。他にも、戦闘への備えはもちろん、万が一教会周辺に物的被害が及べば、その修繕や補償の費用も必要になる。
「すまんな、セイ。恩に着る。この礼に、次の酒は俺の奢りだ」
ギルドマスターは軽い口調で言いながら、入口の扉の札を【open】から【close】に掛け替えた。金庫が空っぽになってしまったため、ギルドは営業終了を待たずに閉店となった。
「すぐに金を纏めるが、かなりの額だ。少し時間がかかる、お前さんたちも一旦中で待っていてくれ」
「ああ、そうさせてもらおう」
ギルドマスターが先頭になり、ギルドの中に戻ろうと扉の取っ手を掴む。
「ねぇ! 今の聞いた!?」
「聞いたわよ! ってか、金庫の中身全部ってセイたちどんだけの次元獣を持ち込んだわけ!?」
すると扉一枚隔てた向こう側から、姦しく言い合うパーティメンバーの声が、少しくぐもりつつ外の俺たちにも届いた。
「わわわ!? またリーダーが泡噴いて倒れたぞ!」
「なぁ。リーダーはもう、そこらへんに捨てて行かないか。なんかオイラ、リーダーに付いていく意味、見失ってきたし」
「それ、超賛成!!」
「それじゃ、どこに捨ててく?」
あろうことか、後半の方はアレック放置の算段だった。
――ギィイイイイ。
「お前さんたち、頼むからギルドの敷地内に捨てて行くのだけは勘弁してくれ」
ギルドマスターは扉を開け放つと、パーティメンバーをジトリと見つめて釘を刺す。
「や、やだ! 聞いてたの!?」
「聞こうとせずとも、聞こえてきたんだ。さぁ、今日はもう店終いだ。出ていってくれ」
ギルドマスターに言い放たれた面々は、しぶしぶアレックの首根っこを掴み、引き摺りながら出ていった。
面々がギルドの庭にうず高く積み上げられた次元獣を目にしてあげた悲鳴とも歓声ともつかぬ声を扉越しに聞いた。
……やれやれ。騒がしい連中だ。
そうしてギルド内で十五分ほど待てば、ギルドマスターが金貨がパンパンに詰まった革袋をいっぱいに積んだ台車を押して俺の元にやって来た。
「金庫内の全額だ。持っていってくれ」
「いきなりやって来て、掻っ攫っていくような真似をしてすまなかったな」
「なに、先だってアルバーニ様と会った時に『そろそろセイが訪ねてきそうだ』とおっしゃっていたんだ。よくよく考えれば、お前さんが手ぶらで来るはずもない。事前に金庫を満杯にしておくべきだった、それもこれも俺の読みの甘さだ」
ギルド内にまばらに残っていた客も、先ほど最後のひとりが手続きを終えて出ていき、今は俺たち以外いなかった。
俺は人目を気にせず次元操作を発動し、目の前の大金を一瞬で次元に収納した。
「はははっ、相変わらず便利な技だ。ところで、この後はアルバーニ様の屋敷に行くんだろう?」
「ああ、報告にあがる。……不思議なものだ。この地で冒険者登録をして旅を始めたのが一年前。なのにもう、ずいぶんと昔のことのようにも思える。同様に、アルバーニ様にお会いするのも、ずいぶんと久しぶりに感じてしまう」
「なんだなんだ? 久しぶりの再会に照れているのか?」
ギルドマスターの茶化すような物言いに、俺はヒョイと肩を竦めてみせた。
「……だが、そうだな。彼の方には、未熟だった頃のみっともない姿を何度も見られているからな。俺は少し、照れているのかもしれん」
「おいおい。そんな初恋相手を前にしたような反応されっと、逆にこっちが照れんだろうが」
空になった台車を返しながら答えたら、俺の反応がよほど予想外だったのかギルドマスターは驚いたように目を見開いて、早口で漏らした。
「……え? ねぇお兄ちゃん!」
すると、横にいたチナがクイックイッと俺の袖を引いた。
「どうしたチナ?」
「なんでアルバーニ様って人がお兄ちゃんの初恋相手になれちゃうの? まさかお兄ちゃんって、男の人が好きなの!?」
なっ!? いったい、なにがどうして俺は五歳の幼女からこんな質問を浴びせかけられている!?
後頭部をハンマーで一撃されたような衝撃に震えながら、なんとか気を取り直すと、やっとのことで口を開いた。
「待て待て、チナ! なにを勘違いしているのか知らんが、俺は断固として男が好きな趣味はない! それからアルバーニ様はたしかに美しい女性だが、別に俺の初恋の人というわけでは――」
「うそ? うそっ!? うそーーっっ!! アルバーニ様って女の人なの!?」
チナの絶叫が響き渡る。どうやらチナは、すっとアルバーニ様のことを男性と思い込んでいたらしい。
「あぁ、アルバーニ様は王国史上初の女性の筆頭侯爵だ。就任当時はずいぶんと騒がれたから、つい周知のものだと思い込んでいた。そうか、チナは知らなかったか。気が回らずにすまなかったな」
果たして、俺の言葉が聞こえているのか、いないのか。とにかく、チナは全身から猛烈な悲愴感を漂わせ、くるりと俺に背中を向けた。
「いやだ。ただでさえセリシアお姉ちゃんやアルテミアお姉ちゃん、強力過ぎるライバルがひしめいてるのに。これ以上ライバルが登場しちゃったら……ぅ、うっ、うえええっっん!」
「お、おい!? チナ?」
ブツブツと独り言ちた後、突然、泣き出したチナを俺は反射的に抱き上げて宥める。
「……実は、私も地方の教会であまり世間との交流を持たずに暮らしておりましたので、アルバーニ様が女性だとは知りませんでした。アルテミアさんはご存知だったんですか?」
「私はこれでも一応貴族子女だったし、知っていたわ。もっと言うと、セイさんの言葉にあった通りかなりの美人だともっぱらの評判よ」
「なんということでしょう。チナツちゃんが嘆くのも無理はありませんね。これは、ここにきてかなり強力なライバル登場ですわ」
「ええ。セイさんのようなタイプは侮れないのよ。飄々としているようで、ああいうタイプが実は結構モテるのよ」
チナを泣き止ませようと必死になっていた俺は、後ろで繰り広げられるセリシアとアルテミアの会話には気づかなかった。
アルバーニ様の邸宅は、城下街ブレイナスが一望できるブラスト領南の高台に悠然と聳え立つ。
「セイさん、アルバーニ様との出会いや、ふたりの関係については前に聞かせてもらったけれど、アルバーニ様ご本人はどんな方なの?」
高台に続く緩やかな坂道を上りながら、俺の馬に横座りで同乗しているアルテミアが尋ねてきた。
以前にも触れた通り、筆頭侯爵の地位は世襲ではないが、ブラスト領主といえば代々火属性の有能なウノを輩出する名門。それゆえ、歴代のブラスト領主にはアルバーニ様就任以前にも数名、火の筆頭侯爵の名を冠した者があった。
そんな名家の出身で、かつ、自身も火の筆頭侯爵でありながら、アルバーニ様という人は不思議なくらい特権意識のない、平かな人柄だった。
「気っ風のいい、豪胆な女性だ。そんな彼女の魅力に引き寄せられるように、周りにも自然と魅力ある人が多く集まってくる。……ああ、心配せずとも君たちともきっと気が合う。いつだって彼女は、誰とでもすぐに打ち解けてしまうんだ」
「そうですか」
アルテミアは自分から尋ねてきたわりには、あっさりした答えを返した。
ふと横を見れば、チナがセリシアと一緒の馬上で頬に風を受けて微笑んでいた。
ギルドで泣きべそをかいていたチナは、あの後俺が抱き上げて慰めてやっていたら、いくらもせずに泣き止んだ。しゃくりあげながら告げられた『今晩は、わたしと一緒のお部屋で寝てくれる? アルバーニ様のお部屋に行ったりしちゃいやよ?』の台詞には内心でかなり驚いたが、俺が是と答え、私的にアルバーニ様の私室を訪ねるような仲ではないことを伝えたらコロッと機嫌を直した。
そういえば、あの時セリシアとアルテミアのふたりが、揃って安堵の表情を浮かべていたのだが、あれはなんだったのだろう。不可解ではあるが、とにかくチナが泣き止んでくれたのは助かった。
「……セイさん」
「ん?」
低く呼びかけられて、再び視線をチナからアルテミアに向ける。
「私はこれまで塔という限られた世界の中で生きてきたわ。だから世間知らずで、圧倒的に人との交流は不得手よ。だけど、これからは自分の足で広い世界へ出て、この目に多くの景色を映し、たくさんの経験を積んでいく。そしてアルバーニ様のようにとはいかなくても、もっともっと自分を磨いて、いつかセイさんにほんの少しでも認めてもらえるように頑張るわ」
アルテミアから告げられた突然の決意表明に戸惑いつつ、俺は緊張で張り詰めた彼女の肩をポンポンッと叩く。
「なに、それならば気負う必要はまるでない。俺はとっくにアルテミアを認めている。いや、認めるなどという台詞では生温いな。ウェール領では、俺が頼んだ重力制御の無茶ぶりを即座に受け入れて実践してくれた君の勇気と度胸に感服した。アルバーニ様と比較する必要なんてない、君は十分に魅力的だ」
「セイさん……」
俺を見上げるアルテミアの瞳が僅かに潤み、頬が紅潮して見えたのは、果たして俺の気のせいなのか……。
そうこうしているうちに高台を上りきり、俺たちはアルバーニ様の邸宅の玄関前に立った。
「セイ! 待っていたぞ!!」
俺がノッカーを叩くと、待ち構えていた素早さで、彼の方が燃え立つような赤い髪を靡かせながら中から扉を引き開けた。
パッと目を引く艶やかな赤毛とアーモンドの形のくっきりとした二重の奥の太陽みたいに眩しい金色の瞳。秀でた額に鼻筋がスッと通り、キュッと口角の上がった形のいい唇。
一年ぶりに見えたアルバーニ様は、咲き誇る大輪の花のように輝き、息をのむほどに美しかった。
「アルバーニ様、ご無沙汰しております。御自らお出迎えいただき、恐悦至極に存じます」
「よいよい、堅苦しい挨拶はなしだ。それよりもお主、少し見ぬ間に男を上げたのではないか」
「おやめください。また、そのように俺を揶揄って」
「なに、思ったことをそのまま申したまで。揶揄ってなどおらんわ」
アルバーニ様は形のいい唇から白い歯を覗かせて、カラカラと声を立てて笑う。
「して、此度はずいぶんと可愛らしい連れが一緒ではないか。私はアルバーニ、ブラスト領主で、今代の火の筆頭侯爵の名を賜っておる。其方らの名を教えてくれ」
ひとしきり笑うと、アルバーニ様は後ろに立つチナたちに視線を向けて、自ら名乗りを口にした。
「わたしはチナツよ」
「セリシアと申します」
「アルテミアですわ」
アルバーニは三人と順に握手を交わす。
「この地にも噂話は届いている。グルンガ地方教会の聖女を越える治癒の魔力を発揮する真の聖女が現れたことも、ウェール領に突如現れた四体の次元獣を空から赤子の手を捻るように倒したという其方らの活躍も。それらを耳にして、セイに新魔創生を体得した仲間が現れたのだとすぐに分かった。そしてぜひ、会ってみたいと思っていた!」
アルバーニ様は、喜色に声を弾ませる。それにつられるように、硬かった三人の表情も解れていくのが見て取れた。
「チナツ、セリシア、アルテミア、今日は会えて嬉しく思う! 奥で各々のこと、旅のことやセイのことなど詳しく聞かせてくれ」
「アルバーニ様! お兄ちゃんのことだけは、交換こよ!」
「なに?」
チナの言葉にアルバーニ様のみならず、俺の脳内にも疑問符が浮かぶ。
「わたしたちも教えるから、代わりにアルバーニ様も昔のお兄ちゃんのことを教えてね!」
「ほう! 情報交換ということか、それは面白い! よし、そうと決まれば、奥の応接間に茶や菓子を用意してある。そちらでじっくり話そうじゃないか」
「うんっ!」
……なんと、チナとアルバーニ様が手を取り合って行ってしまった。
「セリシアお姉ちゃんとアルテミアお姉ちゃんも早く早く!」
「ええ」
振り返ったチナに手招かれて、セリシアとアルテミアもいそいそと後に続く。
「急に四人で押しかけてしまってすまんが、世話になる」
「いえいえ。アルバーニ様も申しておりました通り、セイ様のご活躍は風の噂でこの地にも届いておりました。セイ様が旅の途中で仲間を持たれたことも同様です。複数名の滞在を想定し、準備を整えてございます。ゆっくり寛いでいかれてください」
玄関にひとり残った俺が脇に控えていた顔見知りの家令に告げたら、丁寧な答えが返された。
「さすがに抜かりないな。……これならば、アルバーニ様は俺が旅の子細を伝えるまでもなく『風の噂』とやらで全て把握しているのではないか」
「ははは、ご冗談を。アルバーニ様とて、千里眼はお持ちではない。それに、たしかにこの一年、アルバーニ様は教会の暗部に切り込むべく持ち得る人脈を駆使し、慎重に情報を集めてきました。しかし、次元獣に関する詳細は、セイ様が一年をかけて集積してくださった情報頼りでございます。セイ様がお越しになるのを、アルバーニ様も、そして私も、首を長くして待っておりました」
ここで家令は一度言葉を区切り、少しの間を置いて再び口を開いた。
「セイ様、ついに時は満ちた。これからヴィルファイド王国は……いえ、エトワールは大きく変わる。そして、この変革をなすのはセイ様、あなただと確信しておりました」
「俺ひとりではなせん。さすがに過大評価だ」
ピンと背筋が伸びた初老の家令・ベルゼルン。俺は彼の燕尾服の下に、無駄なく鍛え上げられた筋肉が隠れていることを知っている。
屋敷を切り盛りする家令の姿は、表の顔。彼には、別の顔がある。
この国には、"紅炎の鬼"の異名で呼ばれた伝説の勇者がいる。火属性のその男は、卓越した攻撃力と果敢な戦略で、数多の次元獣を倒してきた歴戦の勇者。――その"紅炎の鬼"とは、目の前にいるアルバーニ様の右腕・ベルゼルンだ。
「……だがベルゼルン、俺ひとりでは叶わなくとも、一丸となって挑めばなせる。変革は皆で成し遂げる」
「真の勇者は私ではない。真の勇者の名は、やはりあなたにこそ相応しい。……おっと、あちらはすっかり盛り上がっているようですな。玄関先で長々と足止めしてしまい、失礼しました。どうぞセイ様も、応接間の方で喉を潤してください」
ずいぶんと盛り上がっているようで、楽しげな話し声や笑い声が応接間からここまで漏れてきていた。その声にベルゼルンは皺が刻まれた頬を緩め、俺を奥へと促した。
応接間で夕刻から始まった茶会は大盛り上がりを見せ、そのまま夕食に縺れ込んだ。夕食を終えても、話は一向に尽きる様子がなかった。
言葉達者なチナはもちろん、セリシアとアルテミアも自身の身の上から新魔創生で目覚めた能力のことなど、アルバーニ様相手にまるで女友達を相手にしているように打ち解けて饒舌だった。アルバーニ様自身も、彼女たちとの会話を心から楽しんでいるようだった。
ただし、その内容はただ楽しいだけのものもあれば、教会の核心に切り込むようなものもあった。
特に、チナが孤児院で聞いた『闇の器が見つかってひと安心だ。これで無事に器が全て揃った』という魔導士の言葉を伝えた時と、セリシアがグルンガ地方教会の聖女イライザがデラから祝福を受け、治癒の能力を開花させたという話をした時に、アルバーニ様の目が鋭くなったのを俺は見逃さなかった。
彼女たちがひと通り話し終えると、今度は俺が旅の中で知り得た次元獣の出現傾向から、その個体の特徴と弱点、さらには聖魔法教会の『加護』についても知り得る情報を伝えた。アルバーニ様は興味深そうに、俺の一言一句を聞いていた。
ただし俺がネズミから得たマリウス大魔導士と教祖の関係について話しても、アルバーニ様に驚いた様子はなかった。要は、デラ信仰の権力構図については、俺よりも教会周辺を重点的にあたっていたアルバーニ様の方が詳しいということだろう。
やがて、幼いチナがこっくりこっくりと舟を漕ぎだし、後を追うように初めての乗馬で疲れたのだろうアルテミアと、こちらも慣れないチナとの相乗りで疲労が出たのだろうセリシアが、ふんわりと沈み込む極上の応接ソファに身を預け、寝息を立て始めた。
それを横目に見て、アルバーニ様が俺に水を向ける。
「セイ、先ほど玄関先でベルゼルンとなにを話していた?」
「具体的なことはなにも。ただ、彼は『時は満ちた』とそう言っていました。……アルバーニ様、ここまであなた自身は多くを語っていない。だが、チナとセリシアが、デラによる単一属性の覚醒を示唆する話題に触れた時、あなたの目の色が変わった」
アルバーニ様は真っ直ぐに俺を見つめていた。
「聞かせてください。この一年、あなたが知り得た教会の……いえ、デラのことを。そもそもデラというのは何者なのですか?」
アルバーニ様はひと呼吸置いて、重く口を開いた。
「デラとは――」
アルバーニ様の言葉は、まるで知らない異国の言語でも聞いているかのようだった。それくらい彼女から聞かされたのは、想像を遥かに超えるスケールの内容だった――。
全てを聞き終えた時、俺の全身は小刻みに震えていた。その振動が俺の膝に凭れかかって眠っていたチナに伝わってしまったようで、小さく身じろぐ。
「……ん?」
幾度か瞬き、チナがゆっくりと瞼を開く。
水色の長い睫毛を割ってサファイアみたいな瞳が現れて、俺の姿を映す。すると、チナは安心しきったようにふにゃりと笑んだ。
「あれ? わたし、寝ちゃってた?」
不思議なことに、チナの存在が俺の中で荒らぶる熱を静める。全身の震えも、目が合った瞬間に止まっていた。
まるで透き通るサファイアの瞳が、悪感情を全て吸い込んでしまうかのようだった。
「ああ、連日の移動で疲れも出たんだろう。今日はもう客間で休もう。セリシアとアルテミアも起こしてやってくれるか」
「あ、うん!」
平静を取り戻した俺が、起き抜けのチナの頭をサラリと撫でて伝えれば、彼女は俺の膝からピョンと下り、セリシアとアルテミアの肩をゆさゆさとゆすりだす。
「セイ。今伝えたのは、あくまで教会側の言い分だ。どんな思惑があってデラが教会に加担するのか、そこはデラ本人にしか知り得ない。しかし、どうあってもデラを担ぎ上げ、己の私利私欲に走る教祖を筆頭にした聖魔法教会上部との決戦は不可避だ。私たちは、前に進むしかない」
「もちろんです。聞かせていただいたように六つの器が揃った今、俺たちには一刻の猶予もありません」
チナたちを横目に声を低くするアルバーニ様に、重く頷いて答える。
「戦略などの詳しい話は明日に」
「はい」
話を終えて客間に引き上げてからも、俺の頭の中はアルバーニ様から聞かされた内容がぐるぐると巡っていた。隣の寝台から健やかな寝息を立てるチナとは対照的に、眠りは一向に訪れる気配がなかった。
どんな歴史書にも書かれていないがエトワールでは、数千年前に世界大戦が起きたそうだ。そして、大戦の発端になったのはセイス……。
アルバーニ様に聞かされた話はこうだった。
『世界は数千年より遥か昔からウノを頂点とする厳密な階級社会だった。しかし数千年、それに反旗を翻したレジスタンスグループが現れた。それを煽動していたのが、新魔創生によりウノを超える魔力を得たセイスだった。最初は一部のセイスらによるほんの小さなうねりだったのが、シンコやクアトロにも新魔創生を扱える者が現れだすと、エトワール中を巻き込んだ大きな争いに発展し人類は滅亡の危機に瀕した。この収束に、各属性のウノの中でも随一の魔力を誇る六名が集まってデラ……次元獣の王・デッドラッシュを召喚。デラの援護によりレジスタンスグループは壊滅、大戦は集結し世界は均衡を取り戻した』
ここまででも十分な驚きだった。しかし、さらなる衝撃はその後にやって来た。
『ちなみに、デラの援護というのは次元獣の放出だ。驚くべきことに、この大戦以前に、エトワールに次元獣はいなかったんだ。現れた次元獣は、レジスタンスグループの拠点をことごとく潰していったというが、不思議とウノ一派の被害は最小限で収まっている。要は、次元獣の出現はデラの匙加減ひとつということだ。現代だと《加護》と呼ばれているのが次元獣除けの目印だ。そして対戦終息後、デラを召喚した六名が初代の筆頭侯爵を名乗り、闇の筆頭侯爵だった男が教祖を名乗り聖魔法教会という組織を立ち上げた。この初代教祖によってレジスタンスグループに組した者は子孫まで根絶やし。教会によって新魔創生は禁忌とされ、その痕跡も全て消し去られた。いつしか人々から新魔創生の記憶はなくなった』
現世の日本で見た映画や物語の世界の出来事のようだと思った。しかしこれは、この世界の現実だ。
「……なぜ、次元獣の王は人間世界に関与した?」
宙に向け小さく零した呟きに、答えはない。
デラは両親の仇であり、絶対悪。少なくとも、俺はこれまでずっとそう思ってきた。
しかし人間世界に関与したこと、他にも大戦終結後も次元獣を送り続けること、謎は尽きず、その思惑が見えない。
そもそも、デラは今回の召喚に応えるのだろうか。六つの器が揃ったというのは、おそらく再びの召喚を意味している。ただし、わざわざ召喚を試みることからも分かる通り、通常教会に……いや、人間世界にデラはいない。デラは召喚によってのみ、人間世界に姿を現すのだ。
普通に考えれば、器に祝福を与え覚醒を促しているのがデラなのだから、召喚はデラの意思にも思えるが……。だが、次元獣の王がそうも簡単に人間の思惑通りに動くものだろうか。
果たしてデラは本当に姿を現わすのか、すべてはデラの心ひとつ――。
俺は身を起こすと、チナを起こさぬよう足音を忍ばせて窓に向かった。カーテンを薄く開けて外を見れば、東の空が薄っすらと白み始めていた。
どうやら一睡もせぬうちに、夜明けを迎えてしまったらしい。
ふむ。考えたところで、こればかりは堂々巡りだ。
「……だが、デラの思惑がどこにあろうと関係ない。己に都合のいいウノ至上の楽園を維持せんがため新魔創生を闇に葬り、俺の両親を殺した教会組織を倒す。そしてウノ至上の階級社会を打破してやる――!」
目に眩いほどの光を放ち、地平線からゆっくりと顔を出す太陽を眺めながら、固く決意を誓う。
窓の前を離れるとマントを掴み上げて客間を後にし、朝日に誘われるように中庭に向かった。
ところが廊下を渡り、中庭へと続く扉に手をかけようとしたところで、玄関の方から聞こえてくる声に気付いた。
……なんだ? こんな早朝から他家を訪れるとは非常識な訪問者もあったものだな。
なんとなく気になって、中庭に向かわず声がする玄関へ足を向けた。
「だーかーらぁ。セイがここに来てるのは分かってるのよ。それからね、あたしたちとセイは仲間なの。なーかーま。仲間が来てるってひと言伝えてくれればいいのよ」
なっ!? この声は――! 玄関が近くなり、鮮明になってきた声を耳にして、背筋が凍りそうになった。
「セイ様から、他にお仲間がいらっしゃるという話は伺っておりません。お知らせするにしても、セイ様はまだお休みになれて――」
「ちょっとオッサン! グダグダ言ってないで、ちょちょっと呼んできてくれればいいの。ね?」
なぜ、こいつらがここにいる!? 見知った四つの顔を目にした瞬間、クラクラと眩暈を覚え卒倒しそうになった。しかし、応対するベルゼルンにこれ以上手間を取らせてはならないと、すぐに気を持ち直して面々の前に進み出る。
「あーっ!! セイじゃないの!」
「ねぇねぇ、セイからもこのオッサンにあたしたちが『仲間だ』って言ってやってよ!? マジで全然話になんなかったんだから~」
静かに俺を見つめるベルゼルンは、声にこそ出さなかったが「え? 本当に仲間なのか?」という眼差しが突き刺さるようだった。
「今も昔も、お前たちと仲間だった記憶はないがな。お前たちにとっても、当時の俺はせいぜい飯炊きか雑用係だったろうに」
嬉々として歩み寄る四人に、氷点下の声音で告げれば、四人は揃ってビクンと肩を跳ねさせた。
「や、やだ!? そんなことないってば!」
「そうよ! 飯炊きと雑用の得意な仲間よ!!」
女たちは裏返った声で、咄嗟に詭弁を口にする。良くも悪くも、強かで逞しいところは当時から寸分も変わっていない。
勝手に特大のため息が零れた。
「……それで? お前たち、なにをしに来た?」
俺がしたこの質問に、ここまで姦しくまくし立てていた女性ふたりに代わって、ずんぐりとひょろりのふたりが進み出た。
「た、頼みがあってきたんだ」
「リーダーを捨ててきたから、オイラたちをセイのパーティに入れておくれよ!」
耳にした瞬間、鈍器で後頭部を一撃されたような衝撃に打ちのめされる。
どの口がそれを言うか――! しかも、アレックを捨ててきた??
ぐわんぐわんと目の前の景色が撓み、足が床を踏む感覚を失いそうになった。
「もちろん今度は、セイひとりに飯炊きを押し付けたりしないよ!」
「ああ、オイラたちみんなで当番にするからさ!」
ずんぐりとひょろりのふたりは、勢い込んでさらに頓珍漢な発言を重ねる。
「……お前たち、勘弁してくれ」
あのアレックと長年パーティを組んでいるだけあり、こいつらも頭のネジが相当に緩んでいる。
「とにかく、俺はお前たちとパーティは組まん。この屋敷にお前たちを上げるつもりもない。だからさっさとアレックを拾いに戻れ!」
なんとか眩暈をやり過ごすと、敷地の外に続く坂道を示しながらきっぱりと告げる。
「あ」
果たして、この「あ」は誰が発した声であったのか……。あるいは、全員が同時に口にしたのかもしれない。
屋敷に続く坂道をよたりよたりと上ってくる襤褸雑巾のような男に、全員が口をポカンと開け、目を真ん丸にして見入った。
ちなみに、俺たちが食い入るようにヤツを見つめるのには理由がある。なぜかヤツは……アレックは、生きているのが不思議なくらいボロボロの有様だった。
「あれ、リーダーじゃん。なんでいんのよ……ってか、あたしたちちゃんと粗大ゴミ置き場に捨ててきたよね?」
ポツリと零されたこの言葉を皮切りに、他の面々も思い思いに口にする。
「……もしかして、回収日じゃなかった?」
「もしかすると、有料の回収券を貼る必要があったんじゃ?」
「いや、違うよ! 生ゴミに出さなきゃダメだったんだ!」
「「「おぉおおおお!! それだ!!」」」
……今すぐに、こいつら全員をゴミにしてやりたい。
そうこうしている内に、這いつくばるようにしてアレックが坂道を上りきる。
「お、お前たちなにをブツブツ言っている? それより、よくも俺を置いて行きやがったな」
アレックはよたり、よたりと、俺たちに歩み寄ると、些か覇気のない目でパーティの面々を睨みつけた。
「別に、置いていったわけじゃ……」
ゴニョゴニョと語られた「捨てようとした」の一語は、俺の耳には届いたが、這う這うの体のアレックの耳は拾えなかったようだった。
「そうなのか? そんじゃ、俺だけはぐれちまったのか。なんでか知らねえが、ギルドに行った後からの記憶が曖昧なんだ。目が覚めた時には、壊れかかったタンスや本棚だのと一緒に処分場で高火力焼却にかけられてた。風魔力を発動して間一髪なんとか脱してきたが……」
この段になっても、アレックは自分が捨てられたとは思っていないようだった。
それにしても、さすが火の筆頭侯爵アルバーニ様が治めるブラスト領だ。他の領や町村では、いまだ野焼きでゴミ処理しているところも多い中、高火力焼却の仕組みがきちんと整えられている。
「途中で領民に、お前らに似た風貌のやつらがアルバーニ様の屋敷に向かってったと聞いて後を追って……って、テメェ、セイじゃねえか! セイスのくせになんでここにいやがる!?」
アレックが語るここまでの経緯を、妙に納得しながら聞いていたら、突然奴が叫んだ。どうやら、アレックはここにきて初めて俺の存在を認識したようだった。
俺を前にしていつもの勢いが戻ってきたのか、これまでの覇気のなさから一変し、その声は空気の澄んだ朝に不釣り合いに高い。
「アレック、声を低くしろ。眠っている皆が起きてしまうだろうが」
「ここは火の筆頭侯爵アルバーニ様の屋敷だぞ! セイスのテメェがおいそれと訪ねていい場所じゃねえ!」
アレックは俺の忠告に聞く耳を持たず、姦しく喚き立てた。
――カツカツ。
その時、屋敷の奥から玄関にやって来る新たな人影があった。
これは……! 誰なのかは、気配ですぐに分かった。
――カツン。
「お主、アレックと言ったか。いかにも、ここは火の筆頭侯爵である私の屋敷。そしてセイは、この私が招いた客人だ。私の客に無礼な発言は許さんぞ」
「こ、これは火の筆頭侯爵・アルバーニ様! 恐れながら、アルバーニ様はなにか勘違いをしています。セイは、……セイは最下層のセイスです!」
長い溜めの後で、自信満々に告げるアレックに、アルバーニ様は呆れ眼でヤレヤレと肩を聳やかした。
「かようなこと、とうに知っておるわ。二度言わせるな、セイは私の大切な客だ。そして私はお主らを屋敷に上げる気はない。いつまでも敷地内をうろちょろされるのは不愉快だ。早々に去らんと不法侵入と見なし、焼き切ってくれる!」
「ひぃいいいっ!!」
素っ頓狂な雄叫びをあげながらアレックは腰を抜かし、他の面々は脱兎のごとく逃げだした。
「待て、其方ら! 我が屋敷に不法投棄はまかりならん。この者も連れて行け!」
「ヒッ!!」
我先にと駆け出した四人は、アルバーニ様の鋭いひと声で一斉に舞い戻ってくると、床にへたり込むアレックの首根っこをむんずと掴む。そのままズルズルと引っ張りながら、五人で坂道を下っていった。
「……やれやれ、セイ。とんだ『仲間』もあったものだな?」
「お人が悪い。聞いておられたのですね?」
面々が俺の『仲間』と主張して喚いていたのを知っているなら、アルバーニ様は俺とそう変わらぬ頃から玄関先で繰り広げられるやり取りを聞いていたのだ。おそらく、クツクツと肩を揺らし、忍び笑いを漏らしながら。
「はははっ! まぁ、少々お粗末だが滑稽ではあった。朝の余興としては悪くなかったぞ」
「……仲間だったつもりはありませんが、それでも俺を訪ねてきた奴らが朝から騒々しくして、すみませんでした。ベルゼルンも、面倒をかけてしまい、すまなかった」
「なに、お前に謝ってもらう筋合いはない。それに、私はもともと朝は早い。とうに起きておったわ」
「ええ。実を言うと私も面倒どころか、内心、彼らとのやり取りがおかしくて、笑いを堪えるのに必死でございました」
アルバーニ様は軽い調子で答え、ベルゼルンも鉄面皮の口もとをヒクヒクとひきつらせながら口にした。……十中八九、ベルゼルンは思い出し笑いを堪えている。親しい者しか知らないが、彼はかなり笑い上戸なのだ。
「それよりセイ、せっかくだ。庭でも歩きながら少し話さんか」
「はい」
ベルゼルンに見送られ、アルバーニ様と並んで屋敷を背に歩きだす。
広い庭の整えられた石畳の歩行路を行けば、左右の花壇には季節の花々が咲き誇る。
陽光を受けて花弁についた朝露がキラキラと光る様は生命力に溢れ、樹木の枝から聴こえてくる小鳥の囀りは、清廉な朝の訪れを報せる。
「セイ、今後の具体的な流れだが――」
そんな美しい庭を進みながら、俺たちはひとつずつ現状持ち得る情報のすり合わせを行い、今後の指針を立てていく。
「アルバーニ様、最後にひとつ疑問があります」
「なんだ?」
「なぜ、アルバーニ様はこんなにも教会の内部情報に詳しいのですか?」
アルバーニ様が一年という期間をかけて情報を集めてくださったのは分かっている。しかし、それにしても詳細すぎる。
「あぁ、それは私がネズミ……スパイだからな」
「え!? まさか聖魔法教会に潜入しているのですか!?」
「それもある。が、スパイというのは、セイ、お前のスパイというのも意味している」
は? 俺の、スパイ??
あっさりと告げられた台詞に、まったく理解が追いつかない。岩のように固まる俺を見やり、アルバーニ様はさらに噛み砕いて説明した。
「私はこの一年、教会内部に食い込みデラを崇拝する一味……奴らは自身を"ウノ教徒"と言っているが、私はこのウノ教徒の幹部になっている。なぜ、教会所属でない私が幹部にまで登り詰めることができたのか。それは偏に、セイ、お前の情報を売っていたからだ」
「はっ!?」
「お前の情報を餌に、より得難い教会の情報を得ていた。まぁ、要は二重スパイというやつだ」
なんと、アルバーニ様が二重スパイ――! 思いもよらぬ事実を告げられて、目の前がチカチカした。
「ちなみに、ウノ教徒に売った俺の情報というのはどのような……?」
「そうだな。両親はかつて教会に所属していたアスラとメイリで、お前が教会に殺されたふたりの敵討ちを目論んでいること。既に新魔創生を体得し、次元操作の使い手となったこと。次元操作の威力、それから旅の予想進行ルートを伝えたか」
……信じられん。俺自身のことが筒抜けになっている。
だが、俺自身のことはこの際、まるで問題ではない。問題は――。
「チナツやセリシア、アルテミアのことは?」
尋ねる俺の声は自ずと低くなった。鼓動が煩いほどの大きさで鳴り、ジンジンと痺れるような緊張感が全身を支配していた。
ここに至るまでの三人の成長は目覚ましかった。道中でも絶えず鍛錬を重ねた結果、三人の新魔力はますます磨きがかかっていた。
チナは錬金術を自在に操るようになり、形ある物ならばどんな材質にだって変えてみせる。
セリシアは再生快癒の広域発動をなし、更には身体強化・増強を施せる。
アルテミアは重力制御を使いこなせるようになり、今では開眼して空を飛ぶことはもちろん、与える重力の大きさまで自由自在になっている。
……まさか、これらが全て知られているのか!?
「それは伝えていない。というよりも、私は旅半ばのお前と連絡を取っていなかったのだから、そもそもそれらの情報を知らなかった」
あぁ、アルバーニ様という人は……。
耳にした瞬間、ジンッと胸が熱を持つ。目の前の麗しい人への思慕が募る。
取ろうと思えば、連絡を取る手段はあったのだ。途中で立ち寄るギルドを介したり、水鏡に近い火属性の術もある。なのに、アルバーニ様は『報告は、旅の終わりに纏めて聞く』の一点張りだった。
「やっと分かりました。あなたが旅途中の俺と頑なに連絡を絶っていた理由が」
知らなければ、伝える必要がない。知らなければ、ウノ教徒に嘘をつく必要もない。全ては、他のウノ教徒に疑う隙を与えないため――。
「俺は今、改めてあなたの偉大さを思い知らされています」
「はははっ! こうも事が上手く運んだのは、私が初代の火の筆頭侯爵の子孫だというのも追い風だった。私だけの力ではない。それに、あちらの信用を勝ち得、情報を得るためにお前の情報もあちらに丸裸だが。……まぁ、どうせひと度相対すれば、すぐに露見することだろうがな」
「ええ。俺にエトワールの儀を行ったのは、当時はまだ役職に就いていなかったマリウス大魔導士です。セイスは、そうそう生まれるものではない。おそらく、会えば彼は俺に気づくでしょう。次元操作についても同様で、相対すれば能力はすぐに露見します」
「セイ。王都へ、オルベルに行け。向かうのは、聖魔法教会の屋外の礼拝施設から続く地下施設だ。そこが唯一、デラとの交信が可能な場所で、召喚もそこで行われる。そして召喚は一週間後、初代教祖の生誕祝賀の日の正午に行われる。六つの器も既にオルベルに揃ったと連絡を受けている。ウノ教徒は、お前を脅威と見なしている。禁忌の新魔創生をなし、ウノ至上の階級社会を揺るがすお前を、全力で潰しにかかってくるだろう」
……一週間。通常の移動では間に合わない。しかし、馬にアルテミアの重力制御を使い、馬脚を速めれば到着は可能だ。
ここでアルバーニ様は一旦言葉を区切り、真っ直ぐに俺を見据えて再び口を開いた。
「ウノを頂点とする階級社会、そんなのは所詮、ウノ側の都合に過ぎん。歪な階級制度は、どうしても淀みを生む。私利私欲に走る教会幹部らがいい例だ。だからセイ、逆にお前がぶっ潰してやれ!」
俺は両の拳を握ると、逸らさずにアルバーニ様を見返した。
「はい、アルバーニ様! 必ず成し遂げてみせます! 俺は昨夜『己に都合のいいウノ至上の楽園を維持せんがため新魔創生を闇に葬り、俺の両親を殺した教会組織を倒す。そしてウノ至上の階級社会を打破してやる』と決意を固めたんです。そこに次元獣の王・デラの思惑は関係ない。俺の目的はただひとつ。エトワールの……人間世界の歪みの是正です!」
「……セイ、ひとつ面白いことを教えてやろう。数千年前の世界大戦でレジスタンスグループを率いたセイスのリーダーの名は、なんだと思う?」
アルバーニ様は眩しい物でも見るように目を細くして、柔らかな声音でこんなふうに問いかけた。
「いえ。俺はアルバーニ様に教えていただくまで、その世界大戦のことすら知りませんでしたから、リーダーの名前など……」
「セイという、二十歳の青年だったそうだ」
驚きに目を丸くする俺に、アルバーニ様はフッと表情を緩ませて宙を仰ぎ見た。
「どんな運命の悪戯だろうな。この世は不思議に満ち、時に常人の予想を遥かに超える。しかし、だからこそ面白い」
アルバーニ様は再び目線を俺に移し、ふたりの視線が絡み合う。
「さぁ行け、セイ。そして、世界を変えてやるんだ」
「はい、アルバーニ様。オルベルに出発します――!」
俺たちはブラスト領を発ち、オルベルへ向けて旅立った。
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