51 / 114
第四十八話 疑似的湖 2/2
しおりを挟む
「(いや、問題解決にはなるんだけどさ……)」
「(発想がぶっ飛んでるというか、精霊ってみんなこんな感じなの?)」
アンディーンの後ろでセシリヤとティルラが小声で話す。セシリヤからの問いに「(私が知るわけないでしょ)」とティルラが返した。温厚な人も……否、精霊も怒らせると怖いんだな、とセシリヤは一つ学んだ。
「セシリヤ様!」
勢いよく振り向いたアンディーンに「はい!」とセシリヤが背筋を伸ばす。
「水晶をこの窪みへ」
指示された通りに窪みへと水晶を置けば、アンディーンがそれに触れた。双眸を閉じて力を流し込んだ途端、水晶が薄い水色に色づき始める。
「水よ、我が支配下にある水よ、水の精霊―アンディーンが命ず。枯れた地に潤いを、生きとし生ける者たちに我が祈りが届く限り水の恩恵を……」
声に反応するように水晶を中心として水が溢れてきた。セシリヤは「わわっ!」と言いながら窪みの縁まで登った。水路だけあって水の通り道と、人間が通れるように通路が作られている。セシリヤはしゃがむと水面へと手を伸ばした。水の中へ手を入れれば、冷たい感触。透き通る水はアンディーンのいる洞窟のものと同じ物ものの様だ。
「すごい……」
素直な感想が零れる。
「数時間もすればこの水路には水で満たされるでしょう。水道や井戸にも間もなく供給されると思います」
アンディーンが柔らかく微笑んだ。
「ありがとう」
礼を述べるセシリヤにアンディーンは首を左右に振る。
「いえ。これは私がしたくてしたことですので」
「それでもよ」
セシリヤは間髪入れずに返した。真っ直ぐ見つめる瞳にアンディーンは「ふふっ」と笑い、「それでは、有難く頂戴します」そう言って今度は素直に受け取った。
「目的は達成した?」
ティルラがポケット越しに問う。
「え? あ、うん。水の供給が出来たし、これ以上の滞在は不要ね」
「だったら、早く戻ってあげないとミラが可哀想じゃない?」
地下水路に入り込むために大道芸を押し付け……お願いしてだいぶ時間が経過しているはずだ。ギャラリーが飽きる頃だろう。セシリヤは人差し指を顎に添えて考え込む。いきなり戻れば怪しむ人がいないとは限らない。
うーん、と唸り声を上げ始めたセシリヤと心配そうに見つめているアンディーンの視線が交差した。エメラルド色の瞳がジッと水の精霊を見つめる。
「あ、あの……セシリヤ様?」
戸惑いの色を見せるアンディーンにセシリヤが閃いた、と言わんばかりに表情を輝かせた。
「アンディーン、もう少し私に力を貸して」
「えっと、はい?」
疑問符を浮かべながらもアンディーンは頷いた。
「(発想がぶっ飛んでるというか、精霊ってみんなこんな感じなの?)」
アンディーンの後ろでセシリヤとティルラが小声で話す。セシリヤからの問いに「(私が知るわけないでしょ)」とティルラが返した。温厚な人も……否、精霊も怒らせると怖いんだな、とセシリヤは一つ学んだ。
「セシリヤ様!」
勢いよく振り向いたアンディーンに「はい!」とセシリヤが背筋を伸ばす。
「水晶をこの窪みへ」
指示された通りに窪みへと水晶を置けば、アンディーンがそれに触れた。双眸を閉じて力を流し込んだ途端、水晶が薄い水色に色づき始める。
「水よ、我が支配下にある水よ、水の精霊―アンディーンが命ず。枯れた地に潤いを、生きとし生ける者たちに我が祈りが届く限り水の恩恵を……」
声に反応するように水晶を中心として水が溢れてきた。セシリヤは「わわっ!」と言いながら窪みの縁まで登った。水路だけあって水の通り道と、人間が通れるように通路が作られている。セシリヤはしゃがむと水面へと手を伸ばした。水の中へ手を入れれば、冷たい感触。透き通る水はアンディーンのいる洞窟のものと同じ物ものの様だ。
「すごい……」
素直な感想が零れる。
「数時間もすればこの水路には水で満たされるでしょう。水道や井戸にも間もなく供給されると思います」
アンディーンが柔らかく微笑んだ。
「ありがとう」
礼を述べるセシリヤにアンディーンは首を左右に振る。
「いえ。これは私がしたくてしたことですので」
「それでもよ」
セシリヤは間髪入れずに返した。真っ直ぐ見つめる瞳にアンディーンは「ふふっ」と笑い、「それでは、有難く頂戴します」そう言って今度は素直に受け取った。
「目的は達成した?」
ティルラがポケット越しに問う。
「え? あ、うん。水の供給が出来たし、これ以上の滞在は不要ね」
「だったら、早く戻ってあげないとミラが可哀想じゃない?」
地下水路に入り込むために大道芸を押し付け……お願いしてだいぶ時間が経過しているはずだ。ギャラリーが飽きる頃だろう。セシリヤは人差し指を顎に添えて考え込む。いきなり戻れば怪しむ人がいないとは限らない。
うーん、と唸り声を上げ始めたセシリヤと心配そうに見つめているアンディーンの視線が交差した。エメラルド色の瞳がジッと水の精霊を見つめる。
「あ、あの……セシリヤ様?」
戸惑いの色を見せるアンディーンにセシリヤが閃いた、と言わんばかりに表情を輝かせた。
「アンディーン、もう少し私に力を貸して」
「えっと、はい?」
疑問符を浮かべながらもアンディーンは頷いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
29
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる