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第九十八話 羊皮紙
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ペレシアからの情報によればツノゴマは数週間の謹慎と賠償金を支払うこと、ビブリスは数か月間の無償奉仕という処分が決まったらしい。賠償金と言っても軽い金額ではない。けれど、彼はしぶしぶながらも了承し支払った。ビブリスは支部から解放されてセシリヤに連れ出されていた。
「お、おい。翠眼の……なにをするつもりだ」
視線を合わせないように問うビブリスはやや怯えているようだ。セシリヤの考えが分からないのだから当然と言えばそうなのだが、セシリヤは複雑な心境だ。眉根を寄せている。
「というか、翠眼のって何? 私にはセシリヤって名前があるんですけど?」
(そっち⁉)
ジト目でビブリスを見るセシリヤにティルラがツッコんだ。彼女にとっては怯えられることよりも通り名で呼ばれ、さらには略されていることの方が気になるらしい。
「えっと、いや……はい。すみません」
肩を落とす相手にセシリヤは溜息を吐くと、
「まあいいわ。時間がないからさっさとやるわよ」
気を取り直して先を歩き始めた。セシリヤが向かったのは大道芸をした噴水。彼女の意図がまったく分からないビブリスは噴水を見上げて首を傾げた。絶え間なく噴き出している水とセシリヤを交互に見ている。
「土人形を操っていた羊皮紙は魔力で作られた物? それとも自分で魔法を込めた物?」
「前者だ。購入した」
ビブリスの答えを聞いてセシリヤは腕を組み思考を巡らせる。魔力が込められている羊皮紙はそれに術式を刻み込んだり、あらかじめ術式が書かれているものに付け加えるだけで魔術が完成する代物で魔法が使えない者でも簡単な魔術が使えると密かに重宝されている魔術道具の一つだ。考え込んでいるセシリヤに
「あ! お水でどうぶつを作ってたお姉ちゃんだー!」
「ほんとだー! きょうはなにするのー?」
小さな女の子が二人駆け寄ってきた。見上げてくる瞳は期待が込められており輝いている。セシリヤは膝を折って二人に目線を合わせた。
「そうだね、何をしようか」
「あたしもどうぶつ作りたい!」
「わたしも、わたしもー!」
二人が手を挙げながら動物の名前をあげていく。ネコ、トリ、イヌと身近な動物を交互に思いつくだけ言い合う子供たちの話を聞いていたセシリヤは思いついたように「あ」と声を上げた。二人だけでなく、ビブリスとティルラもその声にセシリヤを見る。
「ねえ、その動物を自分たちで作ってみたくない?」
「え⁉ つくれるの? つくりたい!」
「できる? あたしたちでもできるの?」
瞳をキラキラと輝かせて詰め寄ってくる子供たちに大きく頷いたセシリヤは腰に下げていたポシェットから羊皮紙、空瓶と羽ペンを取り出した。何が始まるのだろうとワクワクしている子供たちは羊皮紙に注目している。ビブリスも同じでセシリヤが今からしようとしている事を黙って見つめていた。瓶の中に水を入れてそこにペンを浸し、羊皮紙の上を走らせていく。文字が刻まれては淡い光を帯びていき真ん中まで書き終えると羽ペンをビブリスへ向けた。彼は小さな悲鳴を唾と一緒に呑み込んでペンを受け取った。
「お、おい。翠眼の……なにをするつもりだ」
視線を合わせないように問うビブリスはやや怯えているようだ。セシリヤの考えが分からないのだから当然と言えばそうなのだが、セシリヤは複雑な心境だ。眉根を寄せている。
「というか、翠眼のって何? 私にはセシリヤって名前があるんですけど?」
(そっち⁉)
ジト目でビブリスを見るセシリヤにティルラがツッコんだ。彼女にとっては怯えられることよりも通り名で呼ばれ、さらには略されていることの方が気になるらしい。
「えっと、いや……はい。すみません」
肩を落とす相手にセシリヤは溜息を吐くと、
「まあいいわ。時間がないからさっさとやるわよ」
気を取り直して先を歩き始めた。セシリヤが向かったのは大道芸をした噴水。彼女の意図がまったく分からないビブリスは噴水を見上げて首を傾げた。絶え間なく噴き出している水とセシリヤを交互に見ている。
「土人形を操っていた羊皮紙は魔力で作られた物? それとも自分で魔法を込めた物?」
「前者だ。購入した」
ビブリスの答えを聞いてセシリヤは腕を組み思考を巡らせる。魔力が込められている羊皮紙はそれに術式を刻み込んだり、あらかじめ術式が書かれているものに付け加えるだけで魔術が完成する代物で魔法が使えない者でも簡単な魔術が使えると密かに重宝されている魔術道具の一つだ。考え込んでいるセシリヤに
「あ! お水でどうぶつを作ってたお姉ちゃんだー!」
「ほんとだー! きょうはなにするのー?」
小さな女の子が二人駆け寄ってきた。見上げてくる瞳は期待が込められており輝いている。セシリヤは膝を折って二人に目線を合わせた。
「そうだね、何をしようか」
「あたしもどうぶつ作りたい!」
「わたしも、わたしもー!」
二人が手を挙げながら動物の名前をあげていく。ネコ、トリ、イヌと身近な動物を交互に思いつくだけ言い合う子供たちの話を聞いていたセシリヤは思いついたように「あ」と声を上げた。二人だけでなく、ビブリスとティルラもその声にセシリヤを見る。
「ねえ、その動物を自分たちで作ってみたくない?」
「え⁉ つくれるの? つくりたい!」
「できる? あたしたちでもできるの?」
瞳をキラキラと輝かせて詰め寄ってくる子供たちに大きく頷いたセシリヤは腰に下げていたポシェットから羊皮紙、空瓶と羽ペンを取り出した。何が始まるのだろうとワクワクしている子供たちは羊皮紙に注目している。ビブリスも同じでセシリヤが今からしようとしている事を黙って見つめていた。瓶の中に水を入れてそこにペンを浸し、羊皮紙の上を走らせていく。文字が刻まれては淡い光を帯びていき真ん中まで書き終えると羽ペンをビブリスへ向けた。彼は小さな悲鳴を唾と一緒に呑み込んでペンを受け取った。
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