異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第1章:異世界と吸血姫編

第11話:傭兵稼業

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「そもそも傭兵とはどんな…いえ、そんな話をしても無意味ですね」

 そう言ってアルアレは小さく首を振る。

「トイズ、変わって下さい、傭兵の戦い方と言うのを教えてあげてください」

「…俺は人に物を教える事が出来る程器用ではない」

 アルアレは途中で言葉を止めトイズへと引継ぐが、トイズは言葉通り不器用なのだろう。腕を組んで目を瞑りそう口にした。

「貴方もこの子が何故私達と話したがったのかもう分かったでしょう?ちゃんと教えてあげるべきです、この子の今後の為に」

 この子て…
 まあいいや
 それにしても穢人ってのはこの世界では相当生き辛そうだ

「…わかった」

 トイズはそう言って胡座と腕を組んでいた体制からスクッと立ち上がり俺にも立てと左手の人差し指をクイッと持ち上げた。
 俺は素直に立ち上がりトイズの前に立った。
 馬車は相変わらず小石に車輪が乗り上げる度に大きな音を立てて揺れるが、普段から毎日の様にジムに通い、体幹も鍛え上げて来た俺には何の問題も無い。

 伊達に身体や体幹を鍛え抜いてないやい!

「…俺は戦闘で魔法を使わない」

 え?う、うん

「それはわかっ――」

「だが、魔法を使っている」

 …若干喰い気味で来たな
 でもどう言う事だ?魔法は使わないけど使っている?

「どう言う事…?」

「…アルアレや他の魔法を使う者は魔法を発動する際に魔力を使う」

「うん、祈る時にも使うって言ってたね」

「…そうだ、祈りや魔法の詠唱にも魔力を使う」

 ふーん

「で?」

「…俺達前衛の者も戦闘中は魔力を使う。だから穢人では前衛も後衛も務まらない」

 なんだそりゃ?
 全然説明になってねぇし!

「いや、意味分かんないよ、もっとちゃんと説明してくれる?」

 段々とイラついて来て若干乱暴な物言いになってしまった。
 それを見てすかさずいつの間にか立ち上がっていたアルアレがフォローに回って来た。

「トイズ、それでは分かりませんよ、具体的に説明しないと」

「…言葉では上手く説明出来ない」

 どんだけ不器用なんだよ
 だが、言葉で説明出来ないなら――

「でしたら直接見せてあげたらどうですか?」

 アルアレも同じ考えだった。

「直接――」

 トイズはそう呟くと何やら考え込んでしまった様であったが程無くして何か考え付いたのか俺を真っ直ぐと見つめて言った。

「…坊主、俺を殴ってみろ」

 今度は坊主って――ん?殴る?
 何で殴る??

「え?なんで?」

「いいから殴ってみろ、本気でだ」

 そう言ってトイズは腕を組んで仁王立ちした。
 そして若干全身を強張らせるかの様に小さく震えたかと思うと同時に
 明らかに幌の中の空気が一瞬前より一段冷え込んだ気がする。

「…」

 その冷え込んで下がった温度がそのまま自分の悪寒に変換された様な気になり、直ぐには動けなかった。

「どうした、いつでもいいぞ全力で来い」

 俺を真っ直ぐに見つめたままトイズはそう言った。

 コイツ――何だか急に人が変わった様な喋り方になってないか?
 いや、そんな事はどうでもいい
 全力で殴ってOKと言うのだから殴ろう、思いきり

「んじゃ遠慮無く」

 自分自身、普通なら憚られる様な行動や言動、常人で在ったならば自制する様な行為を即断即決即実行出来るのが俺の強みだと思っている。
 別に何も考えてない、行き当たりバッタリ、感情の赴くままに行動している。訳では決して無い。
 いや、本当に。
 後からどうとでもなると思ってはいるが。

 トイズが何を見せようとしているのか分からないが既に間合に入っている為若干脱力した形から左ジャブを打つ――っと見せ掛けて左肩だけのフェイントからのノーモーションの右ストレートを躊躇無く放った。

 完璧だ

 トイズは左肩のフェイントに身体は反応して無いが確実に目で追っていた。
 これは視覚を奪ったも同然だし、そこにノーモーションのストレート。
 反応なんて出来やしない。

 そのまま顎を打ち抜いて―――




 ドゥンッ!!!

「痛って!」

 何だ??

 何が起こったのか理解が追い付かない。右ストレートでトイズの顎を撃ち抜こうとしたが出来なかった??
 何か分厚いゴムやタイヤをぶん殴った様な衝撃が俺の右腕から全身に伝わって来た。
 実際には音なんて出て無かったのだろうが、俺にはそれ程の衝撃が伝わって来た気がした。

「な、何が?」

 自分の右手とトイズを交互に見比べるが、トイズは先程のまま両腕を胸の前で組み仁王立ちしていた。
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