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第2章:闇蠢者の襲来編
第72話:寵愛を賜りし者
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決死の覚悟が感じ取れる表情でコボルト達か俺達に特攻を仕掛けて来る。
「来るぞ!構えろ!」
俺がそう叫ぶと大男もイヴァンを諦めたのか、直ぐに立ち上がり大盾を構えた。
「イリア様!イヴァンを頼みます!」
聖女の回復魔法に一縷の望みに賭けた。
だが、それは直ぐに聖女により否定されてしまう。
「む、無理よ!これはもう無理!」
「クッ!」
大男はまだ試してもいないのにと今にも叫び出しそうな表情をしたが直ぐに気を持ち直して、無事な傭兵や騎士に指示を出した。
聖女、ホント使えねぇな
俺がそんな事を思っていると、アリシエーゼが先に動いた。
スーパーコボルトへ向けて駆け出したので、俺はそのままこの場に残って迫り来るコボルトの殲滅に務めた。
またこっちに転移されても面倒だしな
アリシエーゼに隙を作れと言われたが、仲間を気に掛けながらは正直しんどいのは事実なので、先ずは様子見をする事にしたが、アリシエーゼならその内、二対一になる様に上手く立ち回るだろうと想定もしていた。
「ユーちゃん、もう少しだからねッ、頑張って!」
「・・・・・・」
モニカの言にユーリーは答えなかった。
精霊と何かやってんのか?
俺には分からなかったが、今は目の前に迫り来るコボルト達に集中する。
始めの勢い程では無かったので、まだ森からコボルト達が湧いて来ていたが、少し余裕を持って対処出来ていた。
ただアルアレの魔法により大分数が減ったと思ったが、まだまだ居るのは確かで決して気は抜けないと思った。
篤と明莉も気にはなるが、弱音は吐かずに今の所いるので他の仲間達に任せてしまっている。
アリシエーゼを見るとこちらはコボルトを薙ぎ払いながらスーパーコボルトに近付き、最初の飛び上がっての殴り付けを放った。
スーパーコボルトは素早くサイドステップで交わし着地したアリシエーゼに左のローキックを放つ。
それをアリシエーゼは予見していたかの様に真上に飛び上がり、空中でクルリと後ろに回転してそのままスーパーコボルトの頭に蹴りをお見舞する。
「チッ!」
スーパーコボルトは舌打ちをしてアリシエーゼの蹴りを両腕でガードするが、アリシエーゼはガードされた時の反動を利用して上空に更に跳ね上がった。
アリシエーゼは両掌をパンッと音を立てて合わせると何かブツブツと呟いていたが、何か詠唱して精霊魔法を放つつもりだろうか。
「なんじゃ!?クソッ!」
詠唱をしつつスーパーコボルトに向けて落下するアリシエーゼであったが、途中で焦った様にその行為を中断して苦々しく言う。
何だ?
詠唱を中断した?
アリシエーゼはスーパーコボルトに打撃を繰り出して攻防し、一旦離れた。
「おい、アリシ―――」
俺が何事かと問い掛け終わる前にアリシエーゼが叫ぶ。
「ユーリー!精霊の制御を寄越せ!!」
精霊の制御?
と思いながら俺は回し蹴りを放って、一気に三匹のコボルトを倒して後ろを向いた時にユーリーを見る。
アリシエーゼの言葉が届いていないのか、ユーリーは眠たそうな目で空を見詰めて微動だにしなかった。
「ユ、ユーちゃん!?」
モニカがアリシエーゼの様子にビビってユーリーの様子を窺うがそれにもユーリーは反応しなかった。
精霊の制御がユーリー側に行っていて精霊魔法が発動しなかった?
そんな事が有り得るのかと思ったが、こればかりは俺には分からなかったので、とりあえずアリシエーゼのフォローに回る事にした。
「シッ!」
俺はスーパーコボルトに素早く肉薄したが、身長差があり過ぎる為顔面に打撃は届かないので、目の前に躍り出てから素早くサイドステップで横に逸れてからボディにフック気味のパンチを放つが、脚と腕を使ってスーパーコボルトにガードされる。
今のは無意識に出力を抑えちまった
殴り付けた手は損傷しなかったのでそう思い、俺は少しギアを上げて連打を放つ。
「何だ、どうした!さっきより威力がねぇなッ」
スーパーコボルトは完全に息を吹き返したのか、俺の低威力の打撃を簡単に払いながら嗤った。
「煩ぇ、もう片方の眼玉もくり抜いてやろうか?」
俺はそう言って嗤い返した。
「・・・」
スーパーコボルトは俺のその言葉に思い出したかの様に醜く顔を歪め、片目だけのその顔で言った。
「言うじゃねぇか、三下がぁ」
「人間様に物言うんじゃねぇ、犬畜生の分際で」
俺達は実際の攻防の他にも同時に舌戦も繰り広げて居たが、丁度そのタイミングで小さな声を拾う。
「・・・・・・ジュンビ」
ユーリーか?
俺は耳だけを傾けそのこえの続きを待つ。
「・・・・・・デキタ」
それを聞いた瞬間、俺は叫んだ。
「ユーリーィィ!やれぇぇ!!」
「・・・・・・ウン」
俺の叫びに呼応するかの様に、ユーリーは気怠そうに両手を上へ上げた。
俺は何か隠し玉があって、スーパーコボルトに大ダメージを与えられる物を想像して、殴り付けの反動を利用して距離を取る。
アリシエーゼも同じ様に考えたのか素早く距離を取っていた。
「・・・・・・エイ」
直後、ユーリーのこれまたやる気の無い様な声が聞こえると、直ぐに変化を感じ取る。
何だ?
明るくなった?
ふと空を見上げると、所々にポツポツと何か光る物体が出現しているのが確認出来た。
よく目を凝らして見ると、それはスイカ程の大きさの燃える火球であった。
数はそれ程多く無いがそのスイカ程の大きさの火球はユーリーが掛け声と共に振り下ろした両手に反応して落下した。
おい、まさかこれって・・・
初動はゆっくりとした動きであったが、直ぐに速度が増し、コボルト達の頭上に降り注いだ。
「・・・・・・エイ」
ユーリーは間髪入れずに両手を上げてまた振り下ろしたり、時にはその場でピョンと飛び上がってから、両手を斜め上に上げたり下ろしたりと何だか雨の日に遊んでいる子供の様な動きを続けた。
ユーリーは何か動作する度に火球が産まれては落ち、産まれては落ち、あっという間に周辺に居たコボルト達は炎で焼かれ死んだ。
「・・・はは」
俺はまたもや乾いた笑いしか出なかったが、降り注ぐ火球を見て思った。
これ絶対にメ●オって名前の魔法だろ・・・
その火球はまるで隕石の様であったが、味方の自動識別などの便利機能は付いていないと思うのできっと俺やアリシエーゼ、仲間達の周辺には一切落ちいないので、ユーリーが制御していると思われる。
なので当然、俺達の近くにいるスーパーコボルトにもその魔法が落ちて来る事は無かったが・・・
「スーパーコボルト用じゃなくてコボルト用だったのね・・・」
俺がそう独りごちると俺の少し近くに火球が落下した。
ドォォンと結構な音がして衝撃で地面が抉れ、直撃したコボルトは勿論、周りのコボルトも衝撃や炎で巻き添えを食っていた。
熱っつ!?
結構な高温に顔を炙られて俺は腕で顔をガードして笑った。
すっげぇ!
かなりの数が削れたんじゃね!?
辺りを見渡すと森から出てくるコボルトはもう殆ど居らず、村に集まって来ていた奴らもこの炎に焼かれて大分数を減らしていた。
「せ、精霊魔法の無詠唱連続魔法・・・低位の魔法でしょうが一体どれだけの数が・・・」
アルアレが何とかそんな事を口にするが、その様子は明らかに動揺していた。
他の面々もこの光景にあっけに取られており、コボルトですらただ動けず、上空を見上げるのみであった。
「呆れた奴じゃな。妾も無詠唱は出来るがあんなに連発は出来んぞ」
そんなアリシエーゼのボヤきも聞こえて来るが、流石に全滅とまでは行かず、ある程度の数は残されているものの、もう仲間達に雑魚は任せても良いと思えた。
「んじゃ、俺達はあの犬っころを躾ますかね」
俺は一度首をボキリと鳴らしてからスーパーコボルトに対峙し直した。
「来るぞ!構えろ!」
俺がそう叫ぶと大男もイヴァンを諦めたのか、直ぐに立ち上がり大盾を構えた。
「イリア様!イヴァンを頼みます!」
聖女の回復魔法に一縷の望みに賭けた。
だが、それは直ぐに聖女により否定されてしまう。
「む、無理よ!これはもう無理!」
「クッ!」
大男はまだ試してもいないのにと今にも叫び出しそうな表情をしたが直ぐに気を持ち直して、無事な傭兵や騎士に指示を出した。
聖女、ホント使えねぇな
俺がそんな事を思っていると、アリシエーゼが先に動いた。
スーパーコボルトへ向けて駆け出したので、俺はそのままこの場に残って迫り来るコボルトの殲滅に務めた。
またこっちに転移されても面倒だしな
アリシエーゼに隙を作れと言われたが、仲間を気に掛けながらは正直しんどいのは事実なので、先ずは様子見をする事にしたが、アリシエーゼならその内、二対一になる様に上手く立ち回るだろうと想定もしていた。
「ユーちゃん、もう少しだからねッ、頑張って!」
「・・・・・・」
モニカの言にユーリーは答えなかった。
精霊と何かやってんのか?
俺には分からなかったが、今は目の前に迫り来るコボルト達に集中する。
始めの勢い程では無かったので、まだ森からコボルト達が湧いて来ていたが、少し余裕を持って対処出来ていた。
ただアルアレの魔法により大分数が減ったと思ったが、まだまだ居るのは確かで決して気は抜けないと思った。
篤と明莉も気にはなるが、弱音は吐かずに今の所いるので他の仲間達に任せてしまっている。
アリシエーゼを見るとこちらはコボルトを薙ぎ払いながらスーパーコボルトに近付き、最初の飛び上がっての殴り付けを放った。
スーパーコボルトは素早くサイドステップで交わし着地したアリシエーゼに左のローキックを放つ。
それをアリシエーゼは予見していたかの様に真上に飛び上がり、空中でクルリと後ろに回転してそのままスーパーコボルトの頭に蹴りをお見舞する。
「チッ!」
スーパーコボルトは舌打ちをしてアリシエーゼの蹴りを両腕でガードするが、アリシエーゼはガードされた時の反動を利用して上空に更に跳ね上がった。
アリシエーゼは両掌をパンッと音を立てて合わせると何かブツブツと呟いていたが、何か詠唱して精霊魔法を放つつもりだろうか。
「なんじゃ!?クソッ!」
詠唱をしつつスーパーコボルトに向けて落下するアリシエーゼであったが、途中で焦った様にその行為を中断して苦々しく言う。
何だ?
詠唱を中断した?
アリシエーゼはスーパーコボルトに打撃を繰り出して攻防し、一旦離れた。
「おい、アリシ―――」
俺が何事かと問い掛け終わる前にアリシエーゼが叫ぶ。
「ユーリー!精霊の制御を寄越せ!!」
精霊の制御?
と思いながら俺は回し蹴りを放って、一気に三匹のコボルトを倒して後ろを向いた時にユーリーを見る。
アリシエーゼの言葉が届いていないのか、ユーリーは眠たそうな目で空を見詰めて微動だにしなかった。
「ユ、ユーちゃん!?」
モニカがアリシエーゼの様子にビビってユーリーの様子を窺うがそれにもユーリーは反応しなかった。
精霊の制御がユーリー側に行っていて精霊魔法が発動しなかった?
そんな事が有り得るのかと思ったが、こればかりは俺には分からなかったので、とりあえずアリシエーゼのフォローに回る事にした。
「シッ!」
俺はスーパーコボルトに素早く肉薄したが、身長差があり過ぎる為顔面に打撃は届かないので、目の前に躍り出てから素早くサイドステップで横に逸れてからボディにフック気味のパンチを放つが、脚と腕を使ってスーパーコボルトにガードされる。
今のは無意識に出力を抑えちまった
殴り付けた手は損傷しなかったのでそう思い、俺は少しギアを上げて連打を放つ。
「何だ、どうした!さっきより威力がねぇなッ」
スーパーコボルトは完全に息を吹き返したのか、俺の低威力の打撃を簡単に払いながら嗤った。
「煩ぇ、もう片方の眼玉もくり抜いてやろうか?」
俺はそう言って嗤い返した。
「・・・」
スーパーコボルトは俺のその言葉に思い出したかの様に醜く顔を歪め、片目だけのその顔で言った。
「言うじゃねぇか、三下がぁ」
「人間様に物言うんじゃねぇ、犬畜生の分際で」
俺達は実際の攻防の他にも同時に舌戦も繰り広げて居たが、丁度そのタイミングで小さな声を拾う。
「・・・・・・ジュンビ」
ユーリーか?
俺は耳だけを傾けそのこえの続きを待つ。
「・・・・・・デキタ」
それを聞いた瞬間、俺は叫んだ。
「ユーリーィィ!やれぇぇ!!」
「・・・・・・ウン」
俺の叫びに呼応するかの様に、ユーリーは気怠そうに両手を上へ上げた。
俺は何か隠し玉があって、スーパーコボルトに大ダメージを与えられる物を想像して、殴り付けの反動を利用して距離を取る。
アリシエーゼも同じ様に考えたのか素早く距離を取っていた。
「・・・・・・エイ」
直後、ユーリーのこれまたやる気の無い様な声が聞こえると、直ぐに変化を感じ取る。
何だ?
明るくなった?
ふと空を見上げると、所々にポツポツと何か光る物体が出現しているのが確認出来た。
よく目を凝らして見ると、それはスイカ程の大きさの燃える火球であった。
数はそれ程多く無いがそのスイカ程の大きさの火球はユーリーが掛け声と共に振り下ろした両手に反応して落下した。
おい、まさかこれって・・・
初動はゆっくりとした動きであったが、直ぐに速度が増し、コボルト達の頭上に降り注いだ。
「・・・・・・エイ」
ユーリーは間髪入れずに両手を上げてまた振り下ろしたり、時にはその場でピョンと飛び上がってから、両手を斜め上に上げたり下ろしたりと何だか雨の日に遊んでいる子供の様な動きを続けた。
ユーリーは何か動作する度に火球が産まれては落ち、産まれては落ち、あっという間に周辺に居たコボルト達は炎で焼かれ死んだ。
「・・・はは」
俺はまたもや乾いた笑いしか出なかったが、降り注ぐ火球を見て思った。
これ絶対にメ●オって名前の魔法だろ・・・
その火球はまるで隕石の様であったが、味方の自動識別などの便利機能は付いていないと思うのできっと俺やアリシエーゼ、仲間達の周辺には一切落ちいないので、ユーリーが制御していると思われる。
なので当然、俺達の近くにいるスーパーコボルトにもその魔法が落ちて来る事は無かったが・・・
「スーパーコボルト用じゃなくてコボルト用だったのね・・・」
俺がそう独りごちると俺の少し近くに火球が落下した。
ドォォンと結構な音がして衝撃で地面が抉れ、直撃したコボルトは勿論、周りのコボルトも衝撃や炎で巻き添えを食っていた。
熱っつ!?
結構な高温に顔を炙られて俺は腕で顔をガードして笑った。
すっげぇ!
かなりの数が削れたんじゃね!?
辺りを見渡すと森から出てくるコボルトはもう殆ど居らず、村に集まって来ていた奴らもこの炎に焼かれて大分数を減らしていた。
「せ、精霊魔法の無詠唱連続魔法・・・低位の魔法でしょうが一体どれだけの数が・・・」
アルアレが何とかそんな事を口にするが、その様子は明らかに動揺していた。
他の面々もこの光景にあっけに取られており、コボルトですらただ動けず、上空を見上げるのみであった。
「呆れた奴じゃな。妾も無詠唱は出来るがあんなに連発は出来んぞ」
そんなアリシエーゼのボヤきも聞こえて来るが、流石に全滅とまでは行かず、ある程度の数は残されているものの、もう仲間達に雑魚は任せても良いと思えた。
「んじゃ、俺達はあの犬っころを躾ますかね」
俺は一度首をボキリと鳴らしてからスーパーコボルトに対峙し直した。
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