異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第2章:闇蠢者の襲来編

第73話:最強姫

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  「クソッ!やってくれたな!」

 スーパーコボルトは牙を剥き出しにして、やっと小躍りを辞めたユーリーを苦々しく見て言った。

 「どうしたよ?もう手下はいねーのか?」

 「言ってやるな。悪魔から授かった軍勢が全滅してしもうて、帰ったらママに叱られるガキの様に内心怯えておるんじゃから」

 俺とアリシエーゼは揃ってスーパーコボルトを煽った。
 転移魔法の移動距離がどれ程の物か分からないが、ここで逃げられる事は避けたいので、煽って怒らせて俺達を殺せばチャラに出来るとでも思って貰った方がいいと判断した。

 アリシエーゼは純粋に煽りたいだけだろうが・・・

 「舐めやがって・・・テメェらマジでぶっ殺すぞ」

 「やってみろよ、三下」

 「チッ」

 スーパーコボルトは先程の意趣返し様な俺の言葉に舌打ちして俺とアリシエーゼ双方を相手取れる様に構える。
 ただその構えはなんと言うか、野性的で中腰で両腕をダラりと下げていた。
 端目でアリシエーゼを確認すると既に先程失敗した精霊魔法?を再度実行しようと、両掌を合わせてブツブツと何か言っていた。
 それを見て俺は直ぐに動き出し、スーパーコボルトを引き付ける事にした。

 攻撃時に手脚が吹き飛んで少しでも隙が出来てしまうと、こいつの場合、致命的になり兼ねない為、俺は出来うる限りの出力で、かつ自身の攻撃で身体が損傷しない様に注意を払って攻撃し続けた。

 「ハッハッ!効かねぇ、効かねぇ!」

 攻撃の威力がそれ程でも無いと悟るとスーパーコボルトは愉快に笑いながら俺の攻撃を全て易々と捌いた。

 やっぱダメか・・・

 俺は内心でそんな事を思いながらも攻撃を続け、相手に攻撃の糸口はなるべく与えない様に立ち回った。

 「ちょこまかとウゼェッ!」

 防御に回っていたスーパーコボルトはこの程度なら例えノーガードでも問題と踏んだのか俺の右ストレートを左腕で思いっきり跳ね上げた。

 ここでカウンター喰らっても問題無いとでも思ったんだろ?

 俺は右手を跳ね上げられて体制を崩され、それに驚いている様な表情を作り思う。
 そして同時にほくそ笑む。

 頭の方も犬並だな

 俺の腕を跳ね上げ、同時に俺の身体を浮かせる事に成功したスーパーコボルトは今度は右腕を後ろに弓でも引き絞りる様にググッと力を溜め込んでそれを解放した。
 丁度正拳突きの様に放ったその拳は普通の人間なら喰らえば一溜りも無いと分かる程の威力と速度を秘めているのが見て取れたが、俺は冷静にイメージした通りに身体を動かす。
 俺は跳ね上げられた腕と身体に急激に回転を加え、空中で身を捻る。
 捻った身体はスーパーコボルトが突き出した腕に巻き付く様な形で添わせて相手の懐から反対の背中側に瞬時に移動して空中でそのまま延髄に蹴りを不安定な体勢であったがかなりの力で喰らわせた。

 「ッガ!?」

 目ん玉飛び出るくらい痛いだろう?

 俺はニヤリと笑って着地し、一瞬、蹴りを放った左脚の状態を確認するが、既に問題無しと判断して続けて流れる様に目の前にあるスーパーコボルトの膝裏に蹴りを繰り出し膝を折らせる。
 間髪入れずに身体を移動させずにグッと下半身を固定してその場で渾身の力で右フックを振り抜いた。

 「ッ!!!」

 グシャリと俺の拳かスーパーコボルトのテンプルかは不明だが鈍い音が鳴る。
 そしてスーパーコボルトは声にならない声を発した。
 拳を引き戻した時に確認すると、右手首から先がほぼ無くなっていたが、引き戻し終わった時には元に戻っていた。
 そのままの流れで畳み掛け様と思った時、スーパーコボルトが腕を闇雲に振り回した為一度距離を取った。

 「テ、テメェ・・・」

 体勢を整えたスーパーコボルトは俺を睨み付け顔を醜く歪ませた。

 「大分、見れる顔になったじゃねぇか」

 「殺してやる!殺してやる!!」

 「おー、おー、威勢がいいねぇ。まるでチワワだな」

 クスクスと笑う俺にスーパーコボルトは怒り心頭と言った面持ちで完全にキレていた。

 「生きたまま手足引き千切って犬の餌にしてやる!!」

 「犬ってお前も含まれてんのか?」

 「五月蝿ぇぇ!!」

 スーパーコボルトはその場でギュンッといきなり回転して遠心力を最大限に乗せた拳を俺へと放つ。

 「ッと!」

 回転を認識した時には俺は既にかなり大きく横に飛び跳ねて大きく回避行動に移っていた為、スーパーコボルトが放つ衝撃波を喰らう事は無かった。

 「ホント、馬鹿な奴」

 俺は呆れながら、回避行動の着地後にその場で素早く後ろ回し蹴りを全力で放つ。
 丁度蹴りを放った所にスーパーコボルトが転移して来ており、右腕を振り上げた状態でガラ空きだった胴体にクリーンヒットした。

 「ギィアッ!?」

 不意打ちをしたはずなのに逆に不意打ちを喰らったコボルトは堪らず悲鳴を上げて大きく後ろに吹き飛んだ。

 「やっぱりゲームバランスおかしいだろ」

 こっちは一発当てる毎にその部位が損傷して使い物にならなくなるのに相手はダメージ自体は与えられているが、特に身体が損傷している訳では無い事実に俺はボヤきながら、回し蹴りにより損傷した脚の修復を待った。

 「な、何で分かった!?」

 吹き飛ばされた後に素早く立ち上がったスーパーコボルトは俺に向かって叫んだ。

 「何でってお前馬鹿なの?」

 損傷した脚が修復されているのを確認して俺は歩いてスーパーコボルトに近付きながら心底呆れて言った。

 「あぁ!?」

 「だってお前、常に不意打ちで転移魔法使う時、後ろにしか移動しねぇじゃん」

 「・・・」

 「そんなの予想するのなんて猿でも出来る」

 俺はスーパーコボルトと殴り合える程の距離まで近付き言った。
 そして続けて俺は笑いながら言う。

 「やるならさ、緩急付けたり、移動位置をずらさないと。こんな感じで横にとかさ」

 そう言って俺はスーパーコボルトの左横を不意に指差した。

 「ハッ!?」

 それを見て目を大きく見開き、スーパーコボルトは俺が指差した方に急激に首を振った。

 まぁ、そっちじゃ無いんだけどね

 それを見て俺は心の中で大爆笑しながら嗤った。

 「頭が足りん奴じゃのう」

 俺が言って横を振り向いたスーパーコボルトの真後ろに影移動したアリシエーゼが感情を感じさせ無い声でそう言ってスーパーコボルトの背中へ掌底を両手で放ちぶち当てる。

 「ッ!!!!????」

 アリシエーゼの掌底が当たった瞬間、スーパーコボルトは腹の辺りから凄まじい音と、口からは絶叫を発して、そして吹き飛んだ。

 さっすがアリシエーゼ
 ってか、やっぱり強いな・・・
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