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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第276話:小芝居
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「お前、何言ってるんだ?」
謎の女は心底不思議そうに俺を見るが、此奴は今、転移者を何処かの国からテレポートして来た奴と言った。
この世界にテレポートと言う概念は無い。
だったら何故、テレポート言う言葉を知っていると言うのか。
それに、それよりも何よりも―――
「お前、その服どうした」
「どうしたと言うのはどう言う意味だ??」
更に俺の言葉が分からないと言う様に、眉を顰め完璧に整った顔を歪める。
「どこで手に入れたかって事だ」
「これは私の対神魔戦用装束だ。私が産まれた時より与えられた物としか言い様が無い」
対神魔って・・・
どれだけ拗らせてるんだとジト目で女を見る。
「制服が戦闘装束って、お前厨二どころの騒ぎじゃねぇぞ・・・」
「何を言ってるんだお前は。これは可逆的事象―――」
「あー、はいはい。そう言う設定な」
何かを言いかける女に俺は面倒だと言わんばかり手を振り言葉を遮る。
「・・・何でそんな態度を取る」
「何で?お前が妄想を語って真実を言わないからだよ」
「私は妄言など言っていない」
「いーや、妄言だね」
「何故そう思う」
俺の否定に若干苛立ち始めた女が俺をキッと睨むが、どう考えても俺や篤と同じ転移者にしか見えない。
「何でってお前が着てる服は学校の制服だろ・・・そんな格好してて現地人ですと言われて、はいそうですかと納得出来るか」
そう、この女が着ているのは日本の学校―――恐らく高校だろうが、その何処かの学校指定の制服なのだ。
空色鼠のブレザーに下は白茶がベースで涅色のストライプがアクセントとなっているスカートを履いている。
ブレザーの下には白いシャツを着込んで、タイは茜色の細身のリボンだ。
ただ一点、足元は何かゴツくて黒い、すね当ての様な物なのだが、それ以外は見るからに女子高生だと言わんばかりの格好であり、それ以外の言葉が思い付かない。
顔が北欧人の様な顔立ちで違和感があるが、ふと明莉に出会った時を思い出す。
明莉はセーラー服だったか
それを思い出し心の奥底がズキリと痛むのを感じて考えるのを止める。
「アリシエーゼ、お前だって気付いてただろ」
何故それを指摘しなかったのだとアリシエーゼを見ると、口を尖らせて反論した。
「だって絶対に面倒臭い奴じゃろ此奴。それにもうハーレム要員は事足りておるんじゃ!」
ハーレム要員って何だ・・・
俺の今の状況の何処にハーレム要素があるのかと本気で悩むが、その辺りはまるっと無視する。
「コレはお前達の生活に溶け込みやすい様にこう言ったデザインである―――と・・・」
俺とアリシエーゼの会話に女は反論しようと口を開くがその途中で何かに気付き俺とアリシエーゼを見た後に後ろの仲間達にも視線を向け、そして押し黙った。
「どうした?」
「―――は正常か・・・?―――に依存――――――仕方無い、――開始」
「は?」
俺の言葉が届いていないのか、女がブツブツと何か囁き出す。
なんだよ急に・・・
一瞬アリシエーゼと顔を見合わせるが、アリシエーゼも全く意味が分からない様で怪訝そうな顔をして女を見る。
「頭でもおかしくなったのかのう?」
「さあ・・・」
そんな事を話している間も目の前の女はブツブツとまるで念仏でも唱える様に意味不明な言葉を呟く。
「―――――シークエンス開始・・・・・・・・・エラー」
何なのだろうか・・・
完全に自分の世界に入ってしまったかの様な女が急に不気味に感じ、俺は恐る恐るもう一度話し掛ける。
「な、なぁ、さっきから何言ってんだ?べ、別にお前のアイデンティティを否定する訳じゃなくてだな、その、この多様化社会で―――その、そう言う奴が居ても良いと言うか何と言うか・・・」
「・・・何言っておるんだお主は」
「・・・うるせぇ、俺だって分からねぇよ」
すぐ様アリシエーゼからツッコミが入るが、こんな痛い女に何と声を掛けるべきなのか、その答えを俺は持ち合わせてはいない。
「―――仕方無い、一旦――――――ちょっと待て」
「へ?」
それまで一人でブツブツと言っていた女が突然俺に顔を向け、真剣な眼差しで見つめてくる。
待ても何も、ずっとこの小芝居を黙って見てるんだが・・・
「そもそも私は―――誰だ?」
「・・・・・・・・・」
「私が此処に居るのはお前が居るからで―――何故お前は此処に居る?」
「・・・・・・・・・」
「―――駄目だ、思い出せない。情報が意図的に削除されている痕跡がある。いや、削除では無いな。ロックが掛かっているのか?」
「・・・・・・・・・」
「―――開示不能だと!?」
あー、その、なんだ・・・
もう完全に着いていけないんだが・・・
「・・・・・・・・・」
「おい、黙ってないで私の名前くらい教えないか」
「知らねぇよ!!!」
何だ此奴は!?
本当に頭湧いてんじゃねぇの!?
「知らないとは何だ。私のマスターだろう」
「もういいよ・・・」
「良くは無いだろ。私はお前と生涯を共にし、お前を護る様にプログラムされている。それに―――」
プログラムって・・・
女の言葉に俺は頭が痛くなって来る感覚を覚えて眉間を指で摘む。
このままでは埒が明かないと思い、どうすれば良いかと思案していると女は言い掛けた言葉を続ける。
「―――お前の子も沢山産まなくてはならないしな」
「ぶーーーーッッッ!!!」
「な、ななッ、なんじゃとぉぉ!?」
「こ、子供って・・・嘘でしょ」
「あーあー、これは決定的ですよ。誰彼構わず女を孕ませるとか、もうそこいらのゴブリンやオークと変わりありませんよッ」
マジでこの女、何言ってくれやがるんだ!?!?
いや、って言うかモニカ、マジで口が過ぎるぞ・・・
「・・・もう、色々と言いたいことはあるんだが、淡々と詰める事にする。お前さっきからプログラムされてるだの何だの、恰も自分がロボット―――アンドロイドかの様に話したり振舞ったりしてるが、そんな奴か何故俺の子供を産むなんて言い出すんだ。おかしいだろ、アンドロイドが子供を産むとかよ」
「何故だ??」
「何故ってアンドロイドだろ?機械の身体で子供を産むなんて―――」
「何を言っているんだ。人工的に作られた人間が生殖活動を行えないなんて事は無いだろ」
「・・・・・・いや、行えないだろ」
「生殖活動の問題など数世代前に解決している。それに―――アンドロイド等と言うな。前時代的でそんなのを他に聞かれたら頭がおかしいと思われるぞ」
頭おかしいのはお前だよッッ
「いや、その―――まぁいいか・・・いや、良くないな。良くは無いけどその前にお前、自分がアンドロイドと認めんのか・・・」
「アンドロイドでは無いが、人間が人工的に創り出した身体である事は認める」
「・・・・・・・・・」
駄目だ此奴・・・
もうこのまま話していても話が全く前に進む気がしないので、俺は自身の能力を使い女の記憶を読む事に決めた。
最初からそうすれば良かったと言われるとそうなのだが、制服を着た如何にも女子高生で俺達と同じ転移者だと思ったのでそれを躊躇ってしまったのだ。
でもそんな事言ってられないな・・・
「もういい、とりあえず黙っておけ」
俺は一度溜息をついてから、意識をして目の前の女と繋がる。
瞬時に脳を―――いや、存在自体を掌握して―――――
吐いた。
「―――ぐぇぇぁッッ」
突然、両膝を付き口から吐瀉物を撒き散らす俺に仲間達が驚く声がする。
「暖ッ!?」
「ど、どうしたの!?」
「旦那ッ、どうした!?」
「なに?毒かしら・・・?」
「・・・・・・ハル」
悲鳴の様にも感じる仲間達の声を聞きながら一通り胃の内容物を吐き出した俺は肩で息をする。
頭が割れる様に痛く、脳自体が膨張しているかの様な感覚に陥る。
なんだ此奴は!?
若干涙目になりつつ俺が嘔吐した事にも一切動じない女を下から睨み付ける。
何だアレは!?
女と繋がった瞬間、大量の断片的な情報が俺の中に流れ込んで来たが、その殆どが役に立たない意味不明なものばかりだった。
だが、断片的な情報の奔流の中にソレとは毛色の違う、常に張り付き離れない粘質の何かが紛れ込んで来ていた。
老人・・・?
イメージとしては年老いた男達。
そんな老人達の顔のどアップが常に俺の脳を刺激する。
それは単純に一言、
気持ち悪い
それだけだ。何かは分からないし、記憶と言うよりも感情と言った方が良いかも知れないが、物理的には一瞬だった筈だが、長い時間気色悪いものに晒された感覚があり思わず吐いてしまった。
それでも分かった事がある。
「―――お前、マジでアンドロイドかよ」
俺の言葉にアリシエーゼが驚愕する。
他の仲間達はそれの意味する事を理解出来ずにおり、まだ跪く俺を心配そうに見つめる。
ここは剣と魔法のファンタジー世界だぞ・・・
メカなんて物を持ち込むんじゃねぇよ・・・
謎の女は心底不思議そうに俺を見るが、此奴は今、転移者を何処かの国からテレポートして来た奴と言った。
この世界にテレポートと言う概念は無い。
だったら何故、テレポート言う言葉を知っていると言うのか。
それに、それよりも何よりも―――
「お前、その服どうした」
「どうしたと言うのはどう言う意味だ??」
更に俺の言葉が分からないと言う様に、眉を顰め完璧に整った顔を歪める。
「どこで手に入れたかって事だ」
「これは私の対神魔戦用装束だ。私が産まれた時より与えられた物としか言い様が無い」
対神魔って・・・
どれだけ拗らせてるんだとジト目で女を見る。
「制服が戦闘装束って、お前厨二どころの騒ぎじゃねぇぞ・・・」
「何を言ってるんだお前は。これは可逆的事象―――」
「あー、はいはい。そう言う設定な」
何かを言いかける女に俺は面倒だと言わんばかり手を振り言葉を遮る。
「・・・何でそんな態度を取る」
「何で?お前が妄想を語って真実を言わないからだよ」
「私は妄言など言っていない」
「いーや、妄言だね」
「何故そう思う」
俺の否定に若干苛立ち始めた女が俺をキッと睨むが、どう考えても俺や篤と同じ転移者にしか見えない。
「何でってお前が着てる服は学校の制服だろ・・・そんな格好してて現地人ですと言われて、はいそうですかと納得出来るか」
そう、この女が着ているのは日本の学校―――恐らく高校だろうが、その何処かの学校指定の制服なのだ。
空色鼠のブレザーに下は白茶がベースで涅色のストライプがアクセントとなっているスカートを履いている。
ブレザーの下には白いシャツを着込んで、タイは茜色の細身のリボンだ。
ただ一点、足元は何かゴツくて黒い、すね当ての様な物なのだが、それ以外は見るからに女子高生だと言わんばかりの格好であり、それ以外の言葉が思い付かない。
顔が北欧人の様な顔立ちで違和感があるが、ふと明莉に出会った時を思い出す。
明莉はセーラー服だったか
それを思い出し心の奥底がズキリと痛むのを感じて考えるのを止める。
「アリシエーゼ、お前だって気付いてただろ」
何故それを指摘しなかったのだとアリシエーゼを見ると、口を尖らせて反論した。
「だって絶対に面倒臭い奴じゃろ此奴。それにもうハーレム要員は事足りておるんじゃ!」
ハーレム要員って何だ・・・
俺の今の状況の何処にハーレム要素があるのかと本気で悩むが、その辺りはまるっと無視する。
「コレはお前達の生活に溶け込みやすい様にこう言ったデザインである―――と・・・」
俺とアリシエーゼの会話に女は反論しようと口を開くがその途中で何かに気付き俺とアリシエーゼを見た後に後ろの仲間達にも視線を向け、そして押し黙った。
「どうした?」
「―――は正常か・・・?―――に依存――――――仕方無い、――開始」
「は?」
俺の言葉が届いていないのか、女がブツブツと何か囁き出す。
なんだよ急に・・・
一瞬アリシエーゼと顔を見合わせるが、アリシエーゼも全く意味が分からない様で怪訝そうな顔をして女を見る。
「頭でもおかしくなったのかのう?」
「さあ・・・」
そんな事を話している間も目の前の女はブツブツとまるで念仏でも唱える様に意味不明な言葉を呟く。
「―――――シークエンス開始・・・・・・・・・エラー」
何なのだろうか・・・
完全に自分の世界に入ってしまったかの様な女が急に不気味に感じ、俺は恐る恐るもう一度話し掛ける。
「な、なぁ、さっきから何言ってんだ?べ、別にお前のアイデンティティを否定する訳じゃなくてだな、その、この多様化社会で―――その、そう言う奴が居ても良いと言うか何と言うか・・・」
「・・・何言っておるんだお主は」
「・・・うるせぇ、俺だって分からねぇよ」
すぐ様アリシエーゼからツッコミが入るが、こんな痛い女に何と声を掛けるべきなのか、その答えを俺は持ち合わせてはいない。
「―――仕方無い、一旦――――――ちょっと待て」
「へ?」
それまで一人でブツブツと言っていた女が突然俺に顔を向け、真剣な眼差しで見つめてくる。
待ても何も、ずっとこの小芝居を黙って見てるんだが・・・
「そもそも私は―――誰だ?」
「・・・・・・・・・」
「私が此処に居るのはお前が居るからで―――何故お前は此処に居る?」
「・・・・・・・・・」
「―――駄目だ、思い出せない。情報が意図的に削除されている痕跡がある。いや、削除では無いな。ロックが掛かっているのか?」
「・・・・・・・・・」
「―――開示不能だと!?」
あー、その、なんだ・・・
もう完全に着いていけないんだが・・・
「・・・・・・・・・」
「おい、黙ってないで私の名前くらい教えないか」
「知らねぇよ!!!」
何だ此奴は!?
本当に頭湧いてんじゃねぇの!?
「知らないとは何だ。私のマスターだろう」
「もういいよ・・・」
「良くは無いだろ。私はお前と生涯を共にし、お前を護る様にプログラムされている。それに―――」
プログラムって・・・
女の言葉に俺は頭が痛くなって来る感覚を覚えて眉間を指で摘む。
このままでは埒が明かないと思い、どうすれば良いかと思案していると女は言い掛けた言葉を続ける。
「―――お前の子も沢山産まなくてはならないしな」
「ぶーーーーッッッ!!!」
「な、ななッ、なんじゃとぉぉ!?」
「こ、子供って・・・嘘でしょ」
「あーあー、これは決定的ですよ。誰彼構わず女を孕ませるとか、もうそこいらのゴブリンやオークと変わりありませんよッ」
マジでこの女、何言ってくれやがるんだ!?!?
いや、って言うかモニカ、マジで口が過ぎるぞ・・・
「・・・もう、色々と言いたいことはあるんだが、淡々と詰める事にする。お前さっきからプログラムされてるだの何だの、恰も自分がロボット―――アンドロイドかの様に話したり振舞ったりしてるが、そんな奴か何故俺の子供を産むなんて言い出すんだ。おかしいだろ、アンドロイドが子供を産むとかよ」
「何故だ??」
「何故ってアンドロイドだろ?機械の身体で子供を産むなんて―――」
「何を言っているんだ。人工的に作られた人間が生殖活動を行えないなんて事は無いだろ」
「・・・・・・いや、行えないだろ」
「生殖活動の問題など数世代前に解決している。それに―――アンドロイド等と言うな。前時代的でそんなのを他に聞かれたら頭がおかしいと思われるぞ」
頭おかしいのはお前だよッッ
「いや、その―――まぁいいか・・・いや、良くないな。良くは無いけどその前にお前、自分がアンドロイドと認めんのか・・・」
「アンドロイドでは無いが、人間が人工的に創り出した身体である事は認める」
「・・・・・・・・・」
駄目だ此奴・・・
もうこのまま話していても話が全く前に進む気がしないので、俺は自身の能力を使い女の記憶を読む事に決めた。
最初からそうすれば良かったと言われるとそうなのだが、制服を着た如何にも女子高生で俺達と同じ転移者だと思ったのでそれを躊躇ってしまったのだ。
でもそんな事言ってられないな・・・
「もういい、とりあえず黙っておけ」
俺は一度溜息をついてから、意識をして目の前の女と繋がる。
瞬時に脳を―――いや、存在自体を掌握して―――――
吐いた。
「―――ぐぇぇぁッッ」
突然、両膝を付き口から吐瀉物を撒き散らす俺に仲間達が驚く声がする。
「暖ッ!?」
「ど、どうしたの!?」
「旦那ッ、どうした!?」
「なに?毒かしら・・・?」
「・・・・・・ハル」
悲鳴の様にも感じる仲間達の声を聞きながら一通り胃の内容物を吐き出した俺は肩で息をする。
頭が割れる様に痛く、脳自体が膨張しているかの様な感覚に陥る。
なんだ此奴は!?
若干涙目になりつつ俺が嘔吐した事にも一切動じない女を下から睨み付ける。
何だアレは!?
女と繋がった瞬間、大量の断片的な情報が俺の中に流れ込んで来たが、その殆どが役に立たない意味不明なものばかりだった。
だが、断片的な情報の奔流の中にソレとは毛色の違う、常に張り付き離れない粘質の何かが紛れ込んで来ていた。
老人・・・?
イメージとしては年老いた男達。
そんな老人達の顔のどアップが常に俺の脳を刺激する。
それは単純に一言、
気持ち悪い
それだけだ。何かは分からないし、記憶と言うよりも感情と言った方が良いかも知れないが、物理的には一瞬だった筈だが、長い時間気色悪いものに晒された感覚があり思わず吐いてしまった。
それでも分かった事がある。
「―――お前、マジでアンドロイドかよ」
俺の言葉にアリシエーゼが驚愕する。
他の仲間達はそれの意味する事を理解出来ずにおり、まだ跪く俺を心配そうに見つめる。
ここは剣と魔法のファンタジー世界だぞ・・・
メカなんて物を持ち込むんじゃねぇよ・・・
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