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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第292話:召喚
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「助かった、礼を言う」
そう言って生き残った騎士の一人がドエインに向かい頭を下げる。
基本的に何か無い限り対人の対応はドエインに任せているので、騎士もドエインが此方パーティの代表だとでも思ったのだろう。
まぁ、俺みたいなガキが出てって話すより、一応ドエインは貴族家の次男坊だしそれなりに対応も出来るし出自とかも対外的には問題ないだろうしな
ダグラスでも良かったが、イリア同様にホルスの魔界で死んだ事になっているのでダグラスの顔を知っている奴が居た場合面倒な事になりそうで余り積極的に外向けに出したりはしない。
バレたら俺がどうにかすればいいんだけどね・・・
そんな事を考えているとドエインと騎士は会話を終了させていた。
此方に戻って来たドエインにどうなったのかを尋ねると肩を竦めた。
「礼がしたいから本隊と合流するのを待ってくれってさ」
「「え、面倒臭い!」」
俺とアリシエーゼが声を合わせるとそれを見てドエインが苦笑する。
「だと思ったよ。だから俺達は先を急ぐからと断っておいた」
おぉ、何て出来る男や!
「流石ドエインだ」
「あの姉にこき使われて来ただけはあるのう。良い心掛けじゃ」
「あ、姉貴は関係無いだろ・・・」
そうか?と思ったがそれは口には出さないでおく。
このドエインと言う男の存在と言うか、ドエインをドエインたらしめる要素は限り無く姉であるリラの影響を受けている事は間違いない。
剣の腕然り、処世術然りである。
「一応索敵してみたが敵影は無さそうだし、さっさと先に進もう」
ダグラスとデス隊、それにリリが周辺を探ってみたが元々あの人数しか残していなかったのか、反撃を喰らい残りは撤退したのかは定かでは無いが危険は無いと判断された。
なので此処に留まる理由も無いので面倒臭い騎士共が此処に来る前にさっさと進む事を提案する。
「それはいいがあの長距離魔法はどうする?」
「どうするってのは?」
「馬車を操ってる御者役なんか格好の的だと思うんだがな」
「あぁ、確かに・・・」
あの岩を打ち出す魔法を発動させた奴は一キロ以上先に居たので単純に考えて射程距離は一キロ以上と言う事になる。
ゴリアテの御者台は雨避けの屋根等は付いているが狙撃に対応した堅牢な造りとはなっていない。
なのでドエインとしては御者してる時に狙撃されたら死ぬぞ?と言っているのである。
「妾達が上で警戒しておくしかあるまい?」
「マジかよ・・・」
俺やアリシエーゼ、それにリリなら反応は出来そうであるが移動中常に警戒するとかどんな罰ゲームだと思ってしまう。
「文句ならストレガンド人に言うんじゃな」
「くそッ」
結局アリシエーゼの提案通りに三人でゴリアテの屋上に上がり常に周囲を警戒する事となった。
マジで面倒臭ぇぞこれ・・・
そこから移動は極めて順調であった。
途中村が二つと街が一つあったが特に襲われた形跡は無く補給も済ませる事が出来たのだが、住民達は皆不安に駆られていた。
もう何日か行けば両軍の本隊が睨み合っている最前線なのだから当然と言えば当然だが、何故避難などしないのかと不思議に思う。
両軍の人数は今も増え続けているだろうし、そうなれば戦火が拡大するのは目に見えている。
「この世界では魔物がそこらを歩き回っておるんじゃ。移動だけでも命懸けなんじゃよ」
「まぁそうかも知れないけど、ここまでの道中そんな魔物に遭遇したか?」
「お主・・・ゴブリンやコボルトもこの世界の一般市民からすれば立派な害悪じゃぞ」
思い起こせば確かにゴブリンやコボルトの通常種は割と見掛けた気がするが、ゴリアテの前に出て来れば有無を言わさず轢き殺し、横から出て来ても国王四頭轢きのゴリアテは物凄い速度が出ている為 、グゲゲッとか言って飛び出した時には既に目の前にはゴリアテは居らず先に進んでいるので全く此方が被害を被る事が無いのだ。
なので俺の意識的には存在すらしていない事になっていた。
「あー、そう言う事か・・・」
「マスターの記憶力はゴブリン並と言う事だな」
「おい・・・」
等と平和なやり取りが続き、夜になれば野営を行うと言う日々を繰り返す。
後数日もすれば前線が見えて来る頃なのでそろそろ考えないといけないかと夕食時に皆に切り出す。
「――で、俺達はどうするべきだと思う?」
「何よ突然?」
「いや、そろそろ俺達の立ち位置を明確にするべきかなと思うんだよ」
このまま前線に突っ込んで行っても連合軍として帝国と戦うのか、それともその逆となるのか等決めておかないとならないと思うと伝える。
「スドレガンド人は捨て置けねぇぞ?」
「つまり帝国側に付くって事か?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどな・・・」
「どっちだよ・・・」
ドエインの言葉に若干呆れはするが言いたい事は分かる。
先日戦ったストレガンド人は皆、かなり戦い慣れしているし恐らく戦争での戦術等は体系化されているのだろう。
脳筋の戦闘部族の集まりだと思っていたがそうでは無く、戦術や戦略を使いかなり厄介な存在である事は間違いない無いしそんな奴らだが略奪やこの世界にあるかどうかは分からないが戦争犯罪的な事を平気でやるのだ。
放っておけば被害だけが拡大するし王国や公国の人間にとってはストレガンド人と言うだけで戦う理由にはなるのだろう。
「大司教はお救いしなければならないのだけれど・・・」
「分かってるって」
黙って聞いていたサリーだが俺達ががバリス大司教の事を忘れているのでは無いかと疑っていた。
別に忘れていた訳では無いが帝国の奴らがどんなルートを使って大司教と首都に向かっているのかが分からない以上どうしようも無いのだ。
帝国なり連合軍なりの人間がそれなりの数が居る場所へ赴き直接情報収集をして何か知っている人間を探し出さないとならない。
それでも前線を駆け抜けるなんて言葉はしないと思うので情報が得られるかどうかすら怪しい。
「やっぱりこの前のストレガンド人から情報は取っておくべきだったなぁ」
岩を射出するあの射撃魔法だったり、天使の様なものを作り出して光球をぶっ放す魔法だったり、そもそもあの部隊だけ勝手に動き回っているのか、他にも同じ様な部隊が居るのか、何か目的があって動いているのか、そう言った事を強制的に情報を抜き出すべきだったと誰にともなく愚痴るが、それを聞いた粗全員が驚いた表情をする。
「天使を造り出した?」
「ん?いや、何か天使みたいなのが数体出現しだろ、光の柱が突然現れてさ」
「それは分かるんじゃが、なんじゃ天使を造り出すとは」
「何って、あの魔法が何なのか自体分からないからそう言った事も情報としてあった方がいいだろ?」
そう言うとアリシエーゼとイリアが顔を見合わせる。
「何だよ?」
「お主知らんのか、アレは召喚魔法じゃぞ」
「え・・・」
「アンタ本当に何も知らないのね・・・それにアレは天使では無いわよ」
アリシエーゼの言葉も衝撃的だったがイリアの言葉も聞き捨てならなかった。
召喚魔法ってあの召喚?
ってか、天使じゃないって・・・
どう見ても何か羽根生えてたし、頭の上には光輪の様な物もあった気がするんだが・・・
あの時は焦っていてまた訳も分からなかったので具体的な造形等の印象などは情報として入っていたがそれを深く考える暇は無かった。
だが羽根や光輪、賛美歌の様な歌に鐘の音が聞こえたりとそれをもって完全に天使だと自分の中で解釈していた。
「いや、アレはどう見ても―――って、まぁいいか・・・」
そんな事をイリアに言ってもどうにもならないだろうと諦める俺はまたしても自分だけ知らない情報が今度はユーリーから齎されて衝撃を受ける。
「・・・・・・イワヲバーンッテブツケルノボクモデキル」
「え?あ、そうなの・・・?」
「・・・ウン、フツウ」
ユーリーはそんなの普通の精霊魔法だと言って嘲笑い―――はしなかったがそう教えてくれた。
結局、その二つの魔法については俺が知らないだけで仲間達はどんなものかは把握していた。
だったらそう教えてくれれば良いじゃんと思ったが、言えばまた何かしら言い返されるのがオチだと思って素直に情報として聞き入れる。
ストレガンド人の部隊が何故本隊と離れて行動していたのか等は分からなかったが、俺は仲間達と情報を共有し各情報の整合を確認して時間が過ぎて行った。
結局、俺達がどうするかはまったく決まらなかったな・・・
そう言って生き残った騎士の一人がドエインに向かい頭を下げる。
基本的に何か無い限り対人の対応はドエインに任せているので、騎士もドエインが此方パーティの代表だとでも思ったのだろう。
まぁ、俺みたいなガキが出てって話すより、一応ドエインは貴族家の次男坊だしそれなりに対応も出来るし出自とかも対外的には問題ないだろうしな
ダグラスでも良かったが、イリア同様にホルスの魔界で死んだ事になっているのでダグラスの顔を知っている奴が居た場合面倒な事になりそうで余り積極的に外向けに出したりはしない。
バレたら俺がどうにかすればいいんだけどね・・・
そんな事を考えているとドエインと騎士は会話を終了させていた。
此方に戻って来たドエインにどうなったのかを尋ねると肩を竦めた。
「礼がしたいから本隊と合流するのを待ってくれってさ」
「「え、面倒臭い!」」
俺とアリシエーゼが声を合わせるとそれを見てドエインが苦笑する。
「だと思ったよ。だから俺達は先を急ぐからと断っておいた」
おぉ、何て出来る男や!
「流石ドエインだ」
「あの姉にこき使われて来ただけはあるのう。良い心掛けじゃ」
「あ、姉貴は関係無いだろ・・・」
そうか?と思ったがそれは口には出さないでおく。
このドエインと言う男の存在と言うか、ドエインをドエインたらしめる要素は限り無く姉であるリラの影響を受けている事は間違いない。
剣の腕然り、処世術然りである。
「一応索敵してみたが敵影は無さそうだし、さっさと先に進もう」
ダグラスとデス隊、それにリリが周辺を探ってみたが元々あの人数しか残していなかったのか、反撃を喰らい残りは撤退したのかは定かでは無いが危険は無いと判断された。
なので此処に留まる理由も無いので面倒臭い騎士共が此処に来る前にさっさと進む事を提案する。
「それはいいがあの長距離魔法はどうする?」
「どうするってのは?」
「馬車を操ってる御者役なんか格好の的だと思うんだがな」
「あぁ、確かに・・・」
あの岩を打ち出す魔法を発動させた奴は一キロ以上先に居たので単純に考えて射程距離は一キロ以上と言う事になる。
ゴリアテの御者台は雨避けの屋根等は付いているが狙撃に対応した堅牢な造りとはなっていない。
なのでドエインとしては御者してる時に狙撃されたら死ぬぞ?と言っているのである。
「妾達が上で警戒しておくしかあるまい?」
「マジかよ・・・」
俺やアリシエーゼ、それにリリなら反応は出来そうであるが移動中常に警戒するとかどんな罰ゲームだと思ってしまう。
「文句ならストレガンド人に言うんじゃな」
「くそッ」
結局アリシエーゼの提案通りに三人でゴリアテの屋上に上がり常に周囲を警戒する事となった。
マジで面倒臭ぇぞこれ・・・
そこから移動は極めて順調であった。
途中村が二つと街が一つあったが特に襲われた形跡は無く補給も済ませる事が出来たのだが、住民達は皆不安に駆られていた。
もう何日か行けば両軍の本隊が睨み合っている最前線なのだから当然と言えば当然だが、何故避難などしないのかと不思議に思う。
両軍の人数は今も増え続けているだろうし、そうなれば戦火が拡大するのは目に見えている。
「この世界では魔物がそこらを歩き回っておるんじゃ。移動だけでも命懸けなんじゃよ」
「まぁそうかも知れないけど、ここまでの道中そんな魔物に遭遇したか?」
「お主・・・ゴブリンやコボルトもこの世界の一般市民からすれば立派な害悪じゃぞ」
思い起こせば確かにゴブリンやコボルトの通常種は割と見掛けた気がするが、ゴリアテの前に出て来れば有無を言わさず轢き殺し、横から出て来ても国王四頭轢きのゴリアテは物凄い速度が出ている為 、グゲゲッとか言って飛び出した時には既に目の前にはゴリアテは居らず先に進んでいるので全く此方が被害を被る事が無いのだ。
なので俺の意識的には存在すらしていない事になっていた。
「あー、そう言う事か・・・」
「マスターの記憶力はゴブリン並と言う事だな」
「おい・・・」
等と平和なやり取りが続き、夜になれば野営を行うと言う日々を繰り返す。
後数日もすれば前線が見えて来る頃なのでそろそろ考えないといけないかと夕食時に皆に切り出す。
「――で、俺達はどうするべきだと思う?」
「何よ突然?」
「いや、そろそろ俺達の立ち位置を明確にするべきかなと思うんだよ」
このまま前線に突っ込んで行っても連合軍として帝国と戦うのか、それともその逆となるのか等決めておかないとならないと思うと伝える。
「スドレガンド人は捨て置けねぇぞ?」
「つまり帝国側に付くって事か?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけどな・・・」
「どっちだよ・・・」
ドエインの言葉に若干呆れはするが言いたい事は分かる。
先日戦ったストレガンド人は皆、かなり戦い慣れしているし恐らく戦争での戦術等は体系化されているのだろう。
脳筋の戦闘部族の集まりだと思っていたがそうでは無く、戦術や戦略を使いかなり厄介な存在である事は間違いない無いしそんな奴らだが略奪やこの世界にあるかどうかは分からないが戦争犯罪的な事を平気でやるのだ。
放っておけば被害だけが拡大するし王国や公国の人間にとってはストレガンド人と言うだけで戦う理由にはなるのだろう。
「大司教はお救いしなければならないのだけれど・・・」
「分かってるって」
黙って聞いていたサリーだが俺達ががバリス大司教の事を忘れているのでは無いかと疑っていた。
別に忘れていた訳では無いが帝国の奴らがどんなルートを使って大司教と首都に向かっているのかが分からない以上どうしようも無いのだ。
帝国なり連合軍なりの人間がそれなりの数が居る場所へ赴き直接情報収集をして何か知っている人間を探し出さないとならない。
それでも前線を駆け抜けるなんて言葉はしないと思うので情報が得られるかどうかすら怪しい。
「やっぱりこの前のストレガンド人から情報は取っておくべきだったなぁ」
岩を射出するあの射撃魔法だったり、天使の様なものを作り出して光球をぶっ放す魔法だったり、そもそもあの部隊だけ勝手に動き回っているのか、他にも同じ様な部隊が居るのか、何か目的があって動いているのか、そう言った事を強制的に情報を抜き出すべきだったと誰にともなく愚痴るが、それを聞いた粗全員が驚いた表情をする。
「天使を造り出した?」
「ん?いや、何か天使みたいなのが数体出現しだろ、光の柱が突然現れてさ」
「それは分かるんじゃが、なんじゃ天使を造り出すとは」
「何って、あの魔法が何なのか自体分からないからそう言った事も情報としてあった方がいいだろ?」
そう言うとアリシエーゼとイリアが顔を見合わせる。
「何だよ?」
「お主知らんのか、アレは召喚魔法じゃぞ」
「え・・・」
「アンタ本当に何も知らないのね・・・それにアレは天使では無いわよ」
アリシエーゼの言葉も衝撃的だったがイリアの言葉も聞き捨てならなかった。
召喚魔法ってあの召喚?
ってか、天使じゃないって・・・
どう見ても何か羽根生えてたし、頭の上には光輪の様な物もあった気がするんだが・・・
あの時は焦っていてまた訳も分からなかったので具体的な造形等の印象などは情報として入っていたがそれを深く考える暇は無かった。
だが羽根や光輪、賛美歌の様な歌に鐘の音が聞こえたりとそれをもって完全に天使だと自分の中で解釈していた。
「いや、アレはどう見ても―――って、まぁいいか・・・」
そんな事をイリアに言ってもどうにもならないだろうと諦める俺はまたしても自分だけ知らない情報が今度はユーリーから齎されて衝撃を受ける。
「・・・・・・イワヲバーンッテブツケルノボクモデキル」
「え?あ、そうなの・・・?」
「・・・ウン、フツウ」
ユーリーはそんなの普通の精霊魔法だと言って嘲笑い―――はしなかったがそう教えてくれた。
結局、その二つの魔法については俺が知らないだけで仲間達はどんなものかは把握していた。
だったらそう教えてくれれば良いじゃんと思ったが、言えばまた何かしら言い返されるのがオチだと思って素直に情報として聞き入れる。
ストレガンド人の部隊が何故本隊と離れて行動していたのか等は分からなかったが、俺は仲間達と情報を共有し各情報の整合を確認して時間が過ぎて行った。
結局、俺達がどうするかはまったく決まらなかったな・・・
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