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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第310話:勘違い
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「おー、生きてるじゃん」
「・・・・・・」
呆然と立ち尽くす直哉を見て俺は軽い口調で言うが、当の本人は完全に惚けた顔をしている。
自分の身体が超超高温になり、その状態で連合軍に突っ込んで行った直哉だが、ユーリーがこれまた超超大量の水を頭から被せて頭を冷やさせたのだ。
まぁ、その時発生した水蒸気爆発でこの辺一帯吹き飛ばされてるけど・・・
有り得ない程の高温となった直哉自身が、ユーリーの放った水に触れた事により水が急激に蒸発しその水の体積が一瞬で超増大した事で起きたと思われる水蒸気爆発だが、その威力は凄まじかった。
戦場近くにあった森はかなりの範囲が吹き飛んでいるし、直哉の割と近くに居た連合軍の兵は大分吹き飛んでいた。
それでもまだ十万以上残っていそうなのだが、帝国側にも被害が無かった訳では無い。
帝国側で見れば俺や仲間達が最も直哉の近くに居たのだが、怪我は特に無く、物理的に遠くに吹き飛ばされたくらいだった。
またイリアの絶対防御魔法に助けられたな・・・
イリアは魔法をストックしておく事をホルスで覚えた。
通常は戦闘開始前や戦闘時に詠唱だけ済ませて待機状態にしておき、発動するタイミングを任意に操作する技術だ。
それをイリアは何時からかは分からないが、相当永い時間待機状態にしており、どうにもならないピンチの時にベストなタイミングで発動したと言う事になる。
魔法の待機は相当精神力を使うって話だが・・・
イリアの日々の鍛錬や努力が垣間見えて俺は一人静かに笑う。
直哉をもう一度見るが、連合軍の被害状況を目の当たりにしてやはり未だに惚けていた。
「何時までアホ面晒してんだよ」
「――ぇ、あ、いや一体何が・・・」
漸く俺の声に反応を示した直哉はキョロキョロと辺りを見回すが、そこには何も無い大地が広がっているだけだった。
「いやぁ、まさかアンタがいきなり爆発するとは思わなかったよ」
「えッ!?爆発!?俺が??」
ハッハッハと嘘臭く笑う俺に直哉は目をひん剥く。完全に闇堕ちしていたと言うのもあるだろうし、突然鼓膜が破れそうな位の爆発音と共に凄まじい衝撃が襲ったのだろうと想像したが、それにしても何で此奴は生きてるんだと不思議に思う。
「アンタあの爆発で良く生きてたよな」
「いや、だから俺は爆発何て知らない。途中、何かデカい音がしたなと思ったらもう目の前が―――こんな感じに・・・」
「え、マジ?何か身体に衝撃とか、そもそも身体がバラバラに吹き飛んだとかそう言うの無かった訳?」
「ある訳ねぇだろ!そんな事が起こってたら俺は今この場に居ねぇよッ」
ふむ・・・
あれ程の爆発の中心点に居たのに直哉に外傷などは一切無い。
だとするならば、此奴の能力的な話でだうにかなったのだろうかと考えるが、今はそれ所では無いと思い直し直哉に尋ねる。
「なぁ、アンタはこのまま帝国軍として戦い続けるのか?」
「あ?どう言う意味だよ?」
「そのまんまの意味だよ。アンタだって神様からのクエストをこのまま続けてても達成出来ないって分かっただろ」
「・・・・・・それでも俺は―――」
そう言って直哉は唇を噛む。神様とやらの言い付け通りこのまま直哉が帝国軍で悪魔だの、悪っぽい奴らだのを狩って行くとしても、この世から悪そのものが一掃される人など来る筈も無い。
それこそ、この世界の魔界に居る悪魔や魔物、地上で繁殖している魔物を全て狩り尽くし、更に言えばその上で一人も全て滅ぼさないとならないのでは無いだろうか。
人は産まれた無垢のまま一生を終える言葉など出来ない。
神の定める悪の概念がどんなものなのかは知らないが、キリスト教の様に欲だのなんだのと言った話になるのなら、悪になど幾らでも染まる事が出来るのが人間だ。
ならば全ての悪を根絶させるのならば人もまたその中に組み込まれるのが道理と言う事では無いだろうか。
そして其れを成す事は不可能だと言える。
ならば直哉は神が言い渡したクエストを達成する事が出来ずに一生元の世界、時間軸、なんでも良いが家族の待つあの世界へは帰れない事に他ならない。
何て残酷なのだろうと思った。神が神の子たる人から、赦すべき愛すべき存在の人からとてもとても大事なものを奪いそれを返して欲しければ言う事を聞けと言ってくる。
そんなもの俺は絶対に認めねぇッ
明莉を思い出す。本人はあまり語らなかったが、きっと元の世界に帰りたくて帰りたくて仕方が無かった筈だ。
こんな人の命がゴミクズの様に散って行く、危険で力の無い者には容赦の無い世界で一生を過ごしたい等と誰が思うだろうか。
俺の様に特殊な人間なら良い。だが明莉は普通の、可愛らしい唯の高校生だ。
きっとあちらの世界なら普通に大学に行き卒業して就職し、普通に恋愛して結婚して子供を作り、普通に幸せな家庭を築いて普通にゆっくりと死んで行く。
そんな人として極々自然な人としての営みを奪われ、そして命を散らした。
其れは俺の責任でもある。甘々で無知でどうしようも無い俺が明莉を巻き込み、そして護る事さえ出来ずに死なせた。
これは事実だ。だが同時に神が明莉を選ばなければとも思う。何で明莉だったのか。何故俺は明莉わ魔界等に連れて行こうと考えたのか。何故俺はこんなにも弱いのか。何故、何故ッ、何故ッッ
「――こう考える事は出来ないか?どちらにせよ元の世界に帰して貰うなんて事は人が成せる領域じゃない。ならそれは神なり悪魔なり超常の者が成せる事だ。だったら出来る奴に直接直談判してやってもらうしかねぇだろ」
「直接って―――神に会って頭でも下げんのかよ?」
「そうだよ」
「はぁ?んなの無理に決まってんだろ!?そもそもその神様ってのは何処に居るんだよ?」
「そんなのは知らねぇよ」
「テメェふざけてんのか!?」
俺の言動に若干困惑しつつ直哉は叫ぶ。俺の言葉は自分でも矛盾しているのは分かっている。
だが、本当に人間の及びもつかない存在が神なのだとしたら会う会わないなんて次元では無いのだ。
「ふざけてなんてねぇよ。アンタこそ舐めてのか?アンタから突然命よりも大切なものを奪い、達成出来もしない事を命じて砂粒程の希望を持たせてこの世界に無理矢理送る様な存在に話したいと願っただけで会えるとでも本気で思ってんのかよ?」
「そ、それは・・・」
言い訳などさせやしない。
「神はアンタの事なんて爪の先程も気にしてやしない。だったら気にさせてやりゃいいしゃねぇか」
「・・・は?」
「俺達も悪魔を狩り尽くす事に決めてんだ。狩って狩って、殺して殺して殺して、死んでも殺して存在も何もかも跡形も無くこの世から消し去って、地獄からまた地上に出て来たいなんて絶対思えなくなる程の恐怖を与えに与えて一生震えさせてやるって決めてんだよ。その中でもしかしたら転移に関する知識持った奴も居るかも知れねぇし、更に言えば転移魔法なんてものを使える奴に出会うかも知れねぇだろ」
「・・・・・・」
直哉は俺の言葉に聞き入る。もしかしたら荒唐無稽な絵空事の様に聞こえているかも知れないが、俺は構わず続けた。
「もし仮にそんな奴が居るんならぶん殴ってでも使わせればいい。居ないなら、神も手を焼く悪魔共を殺し尽くして神が俺達を無視出来ない様にしてやりゃいい」
「ッ!?」
「それに俺達は一度この世界で神って野郎と話もしてるぜ?」
「な、なんだと!?」
俺達はホルスの魔界で目玉だけの存在と出会っている。
出会うと言う言葉は適切では無いかも知れないし、会話と言う会話も殆どしていない。
あちらが一方的に言いたい事を言って消えただけだが、恐らくアレは神と名乗る者共に与する存在だ。
神なのか、その関係なのかは定かでは無いがそうなのだろうと思っている。
なのでそんな存在と出会い、意思疎通が出来たのだから別に嘘は言っていない。
「つまりだ、もしかしたまたその神と出会う事も会話をする事も出来るかも知れない。そう考えればこの世界のどれだけいるかも分からない悪魔や魔物を狩り尽くすよりイージーだと思わないか?」
そこまで言って俺はニヤリと笑う。
直哉は強い。それは能力は勿論なのだが、それ以上に生への執着と言うか、生きて家族に会いたいと言う思いや、この世界、神への憤りが強い。
ドエインもその部類に入ると思うが、そう言った強さのある者は俺としても囲っておきたいし、何よりもこの理不尽がどうしても気に食わない。
別に直哉に感情移入をして可哀想だとかどうにかしてやりたいと言う訳では無い。
そう言った想いも多少はあるが心強い仲間は多いに越した事は無いのだ。
「・・・その話、マジなんだろうな?」
「あぁ、だがこの世界も絶対は無い。俺達と一緒に居たからって必ず神ともう一度――なんて事は約束は出来ないぞ?」
「それは分かってる。だが確率で考えるなら―――」
コレは戦場のど真ん中で語る様な内容でほ無いだろう。落ち着いてゆっくり話すべきだが、そうも言ってられない。
連合軍は先程の水蒸気爆発でかなりの死傷者が出ていて前線は大いに混乱している。
此方は一度前線から下がり帝国軍の軍勢の中に紛れている。
なので多少ゆっくりと話す時間もあるのだが、それでも悠長にこんな話をしている俺達に仲間は微妙な顔をしている。
そんな感情や視線を背中に感じつつ続けようとすると、それまで黙って聞いていたユーリーがトコトコと俺の横までやって来て直哉を見上げて言う。
「・・・ナオヤイッショニクル?」
「――え、そ、そうだな、もう少し考えたい所だが・・・」
「・・・ダイジョウブ、ハルナラドウニカシテクレル」
な、なんだその絶大な信頼は!?
こんな可愛い可愛い、可愛過ぎるユーリーにそんな事を言われたらお兄さんはもうッ
「――ハハッ、そうだな。結花――じゃない、ユーリーちゃんにそこまで言われちゃ仕方無い。俺も行くよ」
直哉はユーリーを本当に優しい眼差しで見つめて答える。
きっと娘と重ねているのだろうと思ったが、野暮だと思いその辺りは口を挟まない。
「・・・・・・ナオヤ、ボクノコトユーリーチャンッテヨブノハイヤダ」
「ハハハッ、そうかじゃあ何て―――――ん?ボク・・・?」
「・・・ウン、ボクモタタカエル。コドモアツカイシタラオコルヨ」
いや、ユーリー・・・
直哉は子供扱いしてユーリーちゃんなんて呼んでた訳じゃ・・・
「ぇ、どゆこと??ボクっ娘??」
完全に混乱状態に陥った直哉を見て俺はどうしようか悩んだ。このまま勘違いさせ続けても面白いのだが、ユーリーが可哀想かと思い直して俺は直哉に説明する事にした。
まぁ、ユーリーは可愛いからなッ!
「・・・・・・」
呆然と立ち尽くす直哉を見て俺は軽い口調で言うが、当の本人は完全に惚けた顔をしている。
自分の身体が超超高温になり、その状態で連合軍に突っ込んで行った直哉だが、ユーリーがこれまた超超大量の水を頭から被せて頭を冷やさせたのだ。
まぁ、その時発生した水蒸気爆発でこの辺一帯吹き飛ばされてるけど・・・
有り得ない程の高温となった直哉自身が、ユーリーの放った水に触れた事により水が急激に蒸発しその水の体積が一瞬で超増大した事で起きたと思われる水蒸気爆発だが、その威力は凄まじかった。
戦場近くにあった森はかなりの範囲が吹き飛んでいるし、直哉の割と近くに居た連合軍の兵は大分吹き飛んでいた。
それでもまだ十万以上残っていそうなのだが、帝国側にも被害が無かった訳では無い。
帝国側で見れば俺や仲間達が最も直哉の近くに居たのだが、怪我は特に無く、物理的に遠くに吹き飛ばされたくらいだった。
またイリアの絶対防御魔法に助けられたな・・・
イリアは魔法をストックしておく事をホルスで覚えた。
通常は戦闘開始前や戦闘時に詠唱だけ済ませて待機状態にしておき、発動するタイミングを任意に操作する技術だ。
それをイリアは何時からかは分からないが、相当永い時間待機状態にしており、どうにもならないピンチの時にベストなタイミングで発動したと言う事になる。
魔法の待機は相当精神力を使うって話だが・・・
イリアの日々の鍛錬や努力が垣間見えて俺は一人静かに笑う。
直哉をもう一度見るが、連合軍の被害状況を目の当たりにしてやはり未だに惚けていた。
「何時までアホ面晒してんだよ」
「――ぇ、あ、いや一体何が・・・」
漸く俺の声に反応を示した直哉はキョロキョロと辺りを見回すが、そこには何も無い大地が広がっているだけだった。
「いやぁ、まさかアンタがいきなり爆発するとは思わなかったよ」
「えッ!?爆発!?俺が??」
ハッハッハと嘘臭く笑う俺に直哉は目をひん剥く。完全に闇堕ちしていたと言うのもあるだろうし、突然鼓膜が破れそうな位の爆発音と共に凄まじい衝撃が襲ったのだろうと想像したが、それにしても何で此奴は生きてるんだと不思議に思う。
「アンタあの爆発で良く生きてたよな」
「いや、だから俺は爆発何て知らない。途中、何かデカい音がしたなと思ったらもう目の前が―――こんな感じに・・・」
「え、マジ?何か身体に衝撃とか、そもそも身体がバラバラに吹き飛んだとかそう言うの無かった訳?」
「ある訳ねぇだろ!そんな事が起こってたら俺は今この場に居ねぇよッ」
ふむ・・・
あれ程の爆発の中心点に居たのに直哉に外傷などは一切無い。
だとするならば、此奴の能力的な話でだうにかなったのだろうかと考えるが、今はそれ所では無いと思い直し直哉に尋ねる。
「なぁ、アンタはこのまま帝国軍として戦い続けるのか?」
「あ?どう言う意味だよ?」
「そのまんまの意味だよ。アンタだって神様からのクエストをこのまま続けてても達成出来ないって分かっただろ」
「・・・・・・それでも俺は―――」
そう言って直哉は唇を噛む。神様とやらの言い付け通りこのまま直哉が帝国軍で悪魔だの、悪っぽい奴らだのを狩って行くとしても、この世から悪そのものが一掃される人など来る筈も無い。
それこそ、この世界の魔界に居る悪魔や魔物、地上で繁殖している魔物を全て狩り尽くし、更に言えばその上で一人も全て滅ぼさないとならないのでは無いだろうか。
人は産まれた無垢のまま一生を終える言葉など出来ない。
神の定める悪の概念がどんなものなのかは知らないが、キリスト教の様に欲だのなんだのと言った話になるのなら、悪になど幾らでも染まる事が出来るのが人間だ。
ならば全ての悪を根絶させるのならば人もまたその中に組み込まれるのが道理と言う事では無いだろうか。
そして其れを成す事は不可能だと言える。
ならば直哉は神が言い渡したクエストを達成する事が出来ずに一生元の世界、時間軸、なんでも良いが家族の待つあの世界へは帰れない事に他ならない。
何て残酷なのだろうと思った。神が神の子たる人から、赦すべき愛すべき存在の人からとてもとても大事なものを奪いそれを返して欲しければ言う事を聞けと言ってくる。
そんなもの俺は絶対に認めねぇッ
明莉を思い出す。本人はあまり語らなかったが、きっと元の世界に帰りたくて帰りたくて仕方が無かった筈だ。
こんな人の命がゴミクズの様に散って行く、危険で力の無い者には容赦の無い世界で一生を過ごしたい等と誰が思うだろうか。
俺の様に特殊な人間なら良い。だが明莉は普通の、可愛らしい唯の高校生だ。
きっとあちらの世界なら普通に大学に行き卒業して就職し、普通に恋愛して結婚して子供を作り、普通に幸せな家庭を築いて普通にゆっくりと死んで行く。
そんな人として極々自然な人としての営みを奪われ、そして命を散らした。
其れは俺の責任でもある。甘々で無知でどうしようも無い俺が明莉を巻き込み、そして護る事さえ出来ずに死なせた。
これは事実だ。だが同時に神が明莉を選ばなければとも思う。何で明莉だったのか。何故俺は明莉わ魔界等に連れて行こうと考えたのか。何故俺はこんなにも弱いのか。何故、何故ッ、何故ッッ
「――こう考える事は出来ないか?どちらにせよ元の世界に帰して貰うなんて事は人が成せる領域じゃない。ならそれは神なり悪魔なり超常の者が成せる事だ。だったら出来る奴に直接直談判してやってもらうしかねぇだろ」
「直接って―――神に会って頭でも下げんのかよ?」
「そうだよ」
「はぁ?んなの無理に決まってんだろ!?そもそもその神様ってのは何処に居るんだよ?」
「そんなのは知らねぇよ」
「テメェふざけてんのか!?」
俺の言動に若干困惑しつつ直哉は叫ぶ。俺の言葉は自分でも矛盾しているのは分かっている。
だが、本当に人間の及びもつかない存在が神なのだとしたら会う会わないなんて次元では無いのだ。
「ふざけてなんてねぇよ。アンタこそ舐めてのか?アンタから突然命よりも大切なものを奪い、達成出来もしない事を命じて砂粒程の希望を持たせてこの世界に無理矢理送る様な存在に話したいと願っただけで会えるとでも本気で思ってんのかよ?」
「そ、それは・・・」
言い訳などさせやしない。
「神はアンタの事なんて爪の先程も気にしてやしない。だったら気にさせてやりゃいいしゃねぇか」
「・・・は?」
「俺達も悪魔を狩り尽くす事に決めてんだ。狩って狩って、殺して殺して殺して、死んでも殺して存在も何もかも跡形も無くこの世から消し去って、地獄からまた地上に出て来たいなんて絶対思えなくなる程の恐怖を与えに与えて一生震えさせてやるって決めてんだよ。その中でもしかしたら転移に関する知識持った奴も居るかも知れねぇし、更に言えば転移魔法なんてものを使える奴に出会うかも知れねぇだろ」
「・・・・・・」
直哉は俺の言葉に聞き入る。もしかしたら荒唐無稽な絵空事の様に聞こえているかも知れないが、俺は構わず続けた。
「もし仮にそんな奴が居るんならぶん殴ってでも使わせればいい。居ないなら、神も手を焼く悪魔共を殺し尽くして神が俺達を無視出来ない様にしてやりゃいい」
「ッ!?」
「それに俺達は一度この世界で神って野郎と話もしてるぜ?」
「な、なんだと!?」
俺達はホルスの魔界で目玉だけの存在と出会っている。
出会うと言う言葉は適切では無いかも知れないし、会話と言う会話も殆どしていない。
あちらが一方的に言いたい事を言って消えただけだが、恐らくアレは神と名乗る者共に与する存在だ。
神なのか、その関係なのかは定かでは無いがそうなのだろうと思っている。
なのでそんな存在と出会い、意思疎通が出来たのだから別に嘘は言っていない。
「つまりだ、もしかしたまたその神と出会う事も会話をする事も出来るかも知れない。そう考えればこの世界のどれだけいるかも分からない悪魔や魔物を狩り尽くすよりイージーだと思わないか?」
そこまで言って俺はニヤリと笑う。
直哉は強い。それは能力は勿論なのだが、それ以上に生への執着と言うか、生きて家族に会いたいと言う思いや、この世界、神への憤りが強い。
ドエインもその部類に入ると思うが、そう言った強さのある者は俺としても囲っておきたいし、何よりもこの理不尽がどうしても気に食わない。
別に直哉に感情移入をして可哀想だとかどうにかしてやりたいと言う訳では無い。
そう言った想いも多少はあるが心強い仲間は多いに越した事は無いのだ。
「・・・その話、マジなんだろうな?」
「あぁ、だがこの世界も絶対は無い。俺達と一緒に居たからって必ず神ともう一度――なんて事は約束は出来ないぞ?」
「それは分かってる。だが確率で考えるなら―――」
コレは戦場のど真ん中で語る様な内容でほ無いだろう。落ち着いてゆっくり話すべきだが、そうも言ってられない。
連合軍は先程の水蒸気爆発でかなりの死傷者が出ていて前線は大いに混乱している。
此方は一度前線から下がり帝国軍の軍勢の中に紛れている。
なので多少ゆっくりと話す時間もあるのだが、それでも悠長にこんな話をしている俺達に仲間は微妙な顔をしている。
そんな感情や視線を背中に感じつつ続けようとすると、それまで黙って聞いていたユーリーがトコトコと俺の横までやって来て直哉を見上げて言う。
「・・・ナオヤイッショニクル?」
「――え、そ、そうだな、もう少し考えたい所だが・・・」
「・・・ダイジョウブ、ハルナラドウニカシテクレル」
な、なんだその絶大な信頼は!?
こんな可愛い可愛い、可愛過ぎるユーリーにそんな事を言われたらお兄さんはもうッ
「――ハハッ、そうだな。結花――じゃない、ユーリーちゃんにそこまで言われちゃ仕方無い。俺も行くよ」
直哉はユーリーを本当に優しい眼差しで見つめて答える。
きっと娘と重ねているのだろうと思ったが、野暮だと思いその辺りは口を挟まない。
「・・・・・・ナオヤ、ボクノコトユーリーチャンッテヨブノハイヤダ」
「ハハハッ、そうかじゃあ何て―――――ん?ボク・・・?」
「・・・ウン、ボクモタタカエル。コドモアツカイシタラオコルヨ」
いや、ユーリー・・・
直哉は子供扱いしてユーリーちゃんなんて呼んでた訳じゃ・・・
「ぇ、どゆこと??ボクっ娘??」
完全に混乱状態に陥った直哉を見て俺はどうしようか悩んだ。このまま勘違いさせ続けても面白いのだが、ユーリーが可哀想かと思い直して俺は直哉に説明する事にした。
まぁ、ユーリーは可愛いからなッ!
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