17 / 48
第四章
エルトナム城と呪いの大穴(6)
しおりを挟む
講堂で食事を終えた後、アレフはリィンと別れて三階の学院長室に向かった。
学院長室の扉は堂々とした佇まいの木製の扉で、他の扉と違いドアノブがついていなかった。
アレフが扉の前であたふたしていると、螺旋階段から闘技場で見かけたリーフが登ってきた。
「おや、ここは学院長室ですが、どうしましたか?」
「すみません。リーフ先生。実はローレンス学院長に呼ばれたんですけど、扉の開け方が分からなくて」
アレフが頭を下げると、リーフは軽く手を振った。
「学院長室の扉はアーティファクトなんだ。君は一年生だろう? 知らなくても当然だ」
「一年生って、なんでわかったんですか?」
「闘技場に来て案内されていただろう」
リーフはアレフにほくそ笑むと、学院長室の扉を見た。
「開け方には少しコツがあってね。見ていてごらん」
リーフは扉の前に立つと、扉の前に手を当てた。
指先が触れている所から、少しばかりの光がこぼれた。
リーフは手を右にぐるっと回すと、扉からガチャリと音が鳴った。
音が鳴ると同時に触れていた箇所から扉が崩れ落ちるように崩壊していく。
ガタガタと音をたてていき、数秒後には扉は跡形も無く消えていた。
「扉に手を当てて、右に回すと扉が開きます。簡単ですが、少しだけ指先に力を入れるのがコツです」
リーフはアレフを見て唇を広げると、アレフも同じように返した。
「私もちょうど学院長に用事がありましたので、一緒に行きましょう。ついて来て下さい」
リーフは学院長室に入っていくと、後を追うようにアレフも付いて行った。
学院長室に入ると壁際にはびっしりと本が埋まっており、正面にはソファーとテーブル、それに加えて宝箱のようなものが幾つか放り出されていた。
アレフが宝箱を覗こうとするが、アレフの真上から声をかけられる。
「おお、リーフ先生にアレフか、よくぞ参った」
ローレンスは二階の吹き抜けから顔をひょっこり出すと、階段を降りてアレフたちの元に寄った。
リーフがローレンスに頭を下げると「そんなにかしこまらんでも良い」とローレンスはリーフに微笑みかけた。
「ローレンス学院長、お呼びでしょうか?」
「うむ。リーフ先生は騎士団総長ゆえ、呼ばせてもらった。さて、アレフよ」
ローレンスはアレフに向き直り、懐から白い花を出した。
リーフが目を丸くし、驚いたのをアレフは見逃さなかった。
「この花は間違いなくダァトから貰ったものなのだな」
「はい。そうです。ローレンス学院長」
アレフは正直に答えた。
リーフが「失礼」と言ってローレンスから白い花を取る。
リーフはそれを手にとってはまじまじとアレフを見た。
「ローレンス学院長。私を呼んだ理由というのは」
「そういうことじゃ」
ローレンスとリーフはお互いに何か理解したそぶりを見せては、少しばかり緊張しているアレフに説明し始める。
「この花はセシリアの花と言って、貴重な物なんだよ、アレフ君」
「そうなんですね」
少し慌てながらも話し始めるリーフに、アレフもただ相槌を打つしかなかった。
「そう。貴重なんだ。どこに生息しているか分からない花でね。マニアからの情報だと、蜜を吸えば、天国に行くような甘味と、不老不死になれる効果を持つ、三大珍味の一つなんだ。私もね、これを見るのは……」
「うんちくを話すのは後にしてくれ。リーフ先生」
ローレンスはあきれたようにリーフの話を遮った。
そのやり取りにアレフも緊張していた硬い表情を解いた。
「セシリアの花は確かにセフィラに存在するが、誰も見つけたことはない。栽培しようにも、根がないと育てられない」
ローレンスはリーフが持っているセシリアの花を見てそう言った。
すると、ローレンスは部屋にある戸棚から、何重にもかけられた鍵のかかった戸に手を当て、何か小さな声で唱えると戸にかかっていた鍵は床に落ちた。
落ちた鍵を気にもせず、ローレンスが戸から何かを取り出した。
ローレンスはそれを手に持ってはアレフの前に差し出した。
「セシリアの花だ」
ローレンスが持っているのは、アレフと同じ形と色をしたセシリアの花だった。
「そうこれもセシリアの花。私の他にも、リーフ先生も持っておるぞ」
アレフはリーフを振り返っては、リーフは得意げな顔を見せた。
アレフはローレンスの顔を見ては困った顔をした。
「えっと、どういうことですか?」
「このセシリアの花を持っている人たちは皆、、騎士団総長になれる者の証なのじゃ。かつての先人たちがそうだったようにの」
アレフは思わず目を真ん丸にして驚いた。
「ダァトが、こちらの方に決断した、って言ったのは」
アレフはどもりながらもローレンスに質問をした。
「ダァトがお前さんに騎士団総長の資格を見出した、ということじゃろうな。だが、それはお前さん次第じゃな。そもそもアレフはまだ騎士の見習いであるからのう」
ローレンスはアレフに微笑むと、リーフが持っているセシリアの花を手に入れては先ほどの戸棚の方へしまい込み、また何か呟くと、落ちていた鍵が勝手に戸棚まで吸い寄せられ、何重にも鍵をかけていた。
「この花は貴重ゆえ、アレフを襲うものが出てくるかもしれんから。預からせてもらうぞ」
「はい」
不老不死という言葉に少しばかり興味があったアレフだったが、鍵のかけられた戸棚を見て少しばかり後悔をした。
「さて、ここからが本題じゃ。ダァトがアレフにセシリアの花を運んできたのには訳がある。もちろん、ダァトがこちらの方を選んだ、という言葉もあるが、私はダァトとある約束をしておってな。次にセシリアの花を持ってきた人間には、とある意味が込められているのじゃ」
「とある意味ですか?」
リーフがローレンスの質問に食らいついた。アレフも思わず生つばを飲んだ。
「そうじゃ、とある意味じゃ」
ローレンスは戸棚から目を離し、アレフとリーフを見た。
「七年前の戦争はまだ終結していない、という意味じゃ」
アレフは学院長から一足先に退出した。
アレフはローレンスが放った「七年前の戦争が終結していない」という言葉を気にしていた。
七年前の戦争はアレフの両親が亡くなった日でもある。
思い出せない記憶を精一杯掘り返そうと躍起になるが、そんなことは叶わないまま、いたずらに時間だけが過ぎ去っていった。
学院長室の扉は堂々とした佇まいの木製の扉で、他の扉と違いドアノブがついていなかった。
アレフが扉の前であたふたしていると、螺旋階段から闘技場で見かけたリーフが登ってきた。
「おや、ここは学院長室ですが、どうしましたか?」
「すみません。リーフ先生。実はローレンス学院長に呼ばれたんですけど、扉の開け方が分からなくて」
アレフが頭を下げると、リーフは軽く手を振った。
「学院長室の扉はアーティファクトなんだ。君は一年生だろう? 知らなくても当然だ」
「一年生って、なんでわかったんですか?」
「闘技場に来て案内されていただろう」
リーフはアレフにほくそ笑むと、学院長室の扉を見た。
「開け方には少しコツがあってね。見ていてごらん」
リーフは扉の前に立つと、扉の前に手を当てた。
指先が触れている所から、少しばかりの光がこぼれた。
リーフは手を右にぐるっと回すと、扉からガチャリと音が鳴った。
音が鳴ると同時に触れていた箇所から扉が崩れ落ちるように崩壊していく。
ガタガタと音をたてていき、数秒後には扉は跡形も無く消えていた。
「扉に手を当てて、右に回すと扉が開きます。簡単ですが、少しだけ指先に力を入れるのがコツです」
リーフはアレフを見て唇を広げると、アレフも同じように返した。
「私もちょうど学院長に用事がありましたので、一緒に行きましょう。ついて来て下さい」
リーフは学院長室に入っていくと、後を追うようにアレフも付いて行った。
学院長室に入ると壁際にはびっしりと本が埋まっており、正面にはソファーとテーブル、それに加えて宝箱のようなものが幾つか放り出されていた。
アレフが宝箱を覗こうとするが、アレフの真上から声をかけられる。
「おお、リーフ先生にアレフか、よくぞ参った」
ローレンスは二階の吹き抜けから顔をひょっこり出すと、階段を降りてアレフたちの元に寄った。
リーフがローレンスに頭を下げると「そんなにかしこまらんでも良い」とローレンスはリーフに微笑みかけた。
「ローレンス学院長、お呼びでしょうか?」
「うむ。リーフ先生は騎士団総長ゆえ、呼ばせてもらった。さて、アレフよ」
ローレンスはアレフに向き直り、懐から白い花を出した。
リーフが目を丸くし、驚いたのをアレフは見逃さなかった。
「この花は間違いなくダァトから貰ったものなのだな」
「はい。そうです。ローレンス学院長」
アレフは正直に答えた。
リーフが「失礼」と言ってローレンスから白い花を取る。
リーフはそれを手にとってはまじまじとアレフを見た。
「ローレンス学院長。私を呼んだ理由というのは」
「そういうことじゃ」
ローレンスとリーフはお互いに何か理解したそぶりを見せては、少しばかり緊張しているアレフに説明し始める。
「この花はセシリアの花と言って、貴重な物なんだよ、アレフ君」
「そうなんですね」
少し慌てながらも話し始めるリーフに、アレフもただ相槌を打つしかなかった。
「そう。貴重なんだ。どこに生息しているか分からない花でね。マニアからの情報だと、蜜を吸えば、天国に行くような甘味と、不老不死になれる効果を持つ、三大珍味の一つなんだ。私もね、これを見るのは……」
「うんちくを話すのは後にしてくれ。リーフ先生」
ローレンスはあきれたようにリーフの話を遮った。
そのやり取りにアレフも緊張していた硬い表情を解いた。
「セシリアの花は確かにセフィラに存在するが、誰も見つけたことはない。栽培しようにも、根がないと育てられない」
ローレンスはリーフが持っているセシリアの花を見てそう言った。
すると、ローレンスは部屋にある戸棚から、何重にもかけられた鍵のかかった戸に手を当て、何か小さな声で唱えると戸にかかっていた鍵は床に落ちた。
落ちた鍵を気にもせず、ローレンスが戸から何かを取り出した。
ローレンスはそれを手に持ってはアレフの前に差し出した。
「セシリアの花だ」
ローレンスが持っているのは、アレフと同じ形と色をしたセシリアの花だった。
「そうこれもセシリアの花。私の他にも、リーフ先生も持っておるぞ」
アレフはリーフを振り返っては、リーフは得意げな顔を見せた。
アレフはローレンスの顔を見ては困った顔をした。
「えっと、どういうことですか?」
「このセシリアの花を持っている人たちは皆、、騎士団総長になれる者の証なのじゃ。かつての先人たちがそうだったようにの」
アレフは思わず目を真ん丸にして驚いた。
「ダァトが、こちらの方に決断した、って言ったのは」
アレフはどもりながらもローレンスに質問をした。
「ダァトがお前さんに騎士団総長の資格を見出した、ということじゃろうな。だが、それはお前さん次第じゃな。そもそもアレフはまだ騎士の見習いであるからのう」
ローレンスはアレフに微笑むと、リーフが持っているセシリアの花を手に入れては先ほどの戸棚の方へしまい込み、また何か呟くと、落ちていた鍵が勝手に戸棚まで吸い寄せられ、何重にも鍵をかけていた。
「この花は貴重ゆえ、アレフを襲うものが出てくるかもしれんから。預からせてもらうぞ」
「はい」
不老不死という言葉に少しばかり興味があったアレフだったが、鍵のかけられた戸棚を見て少しばかり後悔をした。
「さて、ここからが本題じゃ。ダァトがアレフにセシリアの花を運んできたのには訳がある。もちろん、ダァトがこちらの方を選んだ、という言葉もあるが、私はダァトとある約束をしておってな。次にセシリアの花を持ってきた人間には、とある意味が込められているのじゃ」
「とある意味ですか?」
リーフがローレンスの質問に食らいついた。アレフも思わず生つばを飲んだ。
「そうじゃ、とある意味じゃ」
ローレンスは戸棚から目を離し、アレフとリーフを見た。
「七年前の戦争はまだ終結していない、という意味じゃ」
アレフは学院長から一足先に退出した。
アレフはローレンスが放った「七年前の戦争が終結していない」という言葉を気にしていた。
七年前の戦争はアレフの両親が亡くなった日でもある。
思い出せない記憶を精一杯掘り返そうと躍起になるが、そんなことは叶わないまま、いたずらに時間だけが過ぎ去っていった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる