風紀委員長は××が苦手

乙藤 詩

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混沌を極める2学期

十一話

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それから1週間が経った頃、文化祭の準備が本格的に始まった。
歳明治の文化祭は他の学校とは違う特色がある。
それは、企画から運営まで全て生徒が行うことだ。どんな催しをするか生徒自身が企画案を出し、それを生徒会と風紀委員で吟味する。
そうやって選ばれた企画者はプレゼンテーションを行い、具体的な運営や売上などを示していく。それに合わせて生徒会が予算を出し、風紀委員がその店や催しに合った場所を用意する。
そこまで決まると、生徒達がその場所や予算を使って実際に企画を形にしていく。
歳明治の中でもトップの一大イベントだ。
体育祭よりも文化祭に力を入れている歳明治は2学期早々、準備に着手する。
そして午後の授業1コマと放課後がこの準備期間に当てられる。
自分たちが一から企画した催しを開催するのは、生徒達にとっても自信になるし、なにより文化祭には歳明治の会社の役員達も来賓としてやって来る。そこでその役員達の目に留まれば、たとえ成績が芳しくない生徒達でも歳明治に就職するチャンスを手に入れることが出来るのだ。
よって毎年、生徒達の文化祭への熱量は相当なものだった。
そして売りあげ1位を取った店や催しは後に表彰制度もあり、それも歳明治への就職に有利に働くのだった。

姫川達は風紀委員室で膨大に提出された企画書と睨みあっこしていた。
「えっ?この量で半分なの?」
三田が顔を引き攣らせながら言った。
その顔は柏木の事を話した直後のショックを受けていた顔とは違い、三田なりに気持ちを整理してきたのが伺えた。
企画書は生徒会と風紀で半分にしている。
少しでも効率よく企画書に目を通せるようこの作業だけは協力をして行なっていた。
正木に生徒会で一緒に企画書に目を通さないかと事前に誘われていた姫川だったが、柏木と顔を合わせるのが嫌で断ってしまった。
柏木が目の前にいると、とても集中して企画書に目を通せそうになかった。

「1日や2日で絞るのは無理だな。」
姫川が小さく呟くと他のメンバーも納得したように首を縦に振った。
多くの生徒が任意で出す企画書は、風紀が預かっているものだけで200枚はあった。
任意なのにここまで募集が集まるという事を見ても、生徒達がこの文化祭に注ぐ熱量がわかる。
「この中から最終的にどのくらい残るんですか?」
清木がそう尋ねると、姫川が眉間の辺りを揉みながら答えた。
「取り敢えず最初に半分ほどは減らして、生徒会と協議だな。その後、最終的には30か40ほどに絞る。」
「えぇー、大変だね。」
牧瀬が苦笑いを浮かべながらそう言う。
姫川は去年この作業をする先輩達を見てきたが本当に大変そうだった。
生徒達も並々ならぬ思いで企画書を提出しているので、適当に目を通すわけにもいかず協議しながら選んでいくので、相当な時間と労力が必要だった。
「はぁ、取り敢えず書類を目の前にしてるだけじゃ終わらないから、さっさと始めよう。」
姫川の言葉でそこから企画書の選定が始まったのだった。
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