大罪を極めし者〜天使の契約者〜

第二十話 二つ名

ルシファーと結ばれたら契約の効果が上がったような気がした。
より、絆が深くなったからだろうか。


冒険者ギルド
「おい、来たぜ「守護者アイギス」だ。」
「おっ、マジで「守護者アイギス」じゃねぇか。」
「アイツが「守護者アイギス」か、強いな。」
何やら冒険者ギルドがざわついていた。
よく聞こえる「守護者アイギス」とはなんだろうか？
「あっ、おはようございますレッドさん。」
「ああ、おはようテミス。」
俺たちは受け付け嬢のテミスの所へ向かった。
「ところでテミスさっきから聞こえる「守護者」ってなんだ？」
「ああ、「守護者」ですね？それはレッドさんの二つ名ですね。」
「二つ名、だと？」
あの、「守護者」が俺の二つ名なのか？
「厨二病、かよ。」
「ちゅう、なんですか？」
「いや、なんでもない。」
と言うかすごく恥ずかしい、大事な事だからもう一度あえて言おう。
すごく、恥ずかしい。
確かに俺も中学生の頃は憧れていたこともあったし、ラノベの主人公になりたいとも思った。だか、現実は辛いよ恥ずかしすぎる。
「だけど、なんで守護者なんだ？」
「聞きたいですか？」
「あ、ああ。」
「ではお話致しましょう！何故「守護者アイギス」となったのか。それはですね、あなたですよ、ルシさん。」
「？私？」
「そうですよルシさん、ところでレッドさん、あなたはAランク冒険者相手にルシさんのために啖呵を切りましたよね？その様子を見ていた冒険者たちが、逃げずにどんな悪者でも最愛の人を守り抜く、正しく物語に出てくる守護者のようだ、という理由で付いたそうです。」
「な、なるほど。」
「私と暁の二つ名…」
ルシファーはとても恍惚した表情だった。
とても嬉しかったらしい。
「他にも「黒銀閃光」や、「銀の処刑人」、「刹那」などが候補にあったらしいですよ？」
「やめてくれ！本当にマジで！」
これ以上は俺が羞恥心で死んじまう！
「そもそも一日でAランク冒険者になったこともすごいことのですが、二つ名まで同時なんて前代未聞です！」
「わかった、わかったからちょっと落ち着け。顔が近いわ。」
言われてようやく気づいたのか、
「すすすすいませんっ！」
「あー、依頼を受けても良いか？」
「もももちろんでしゅっ。」
あっ噛んだ、よし突っ込まないでスルーしよう。
「何か良い依頼を見繕ってくれないかな？」
「はい、少々お待ちください！」
そうして行ってしまった。しばらくすると戻ってきた。
「それでは、このブラッドウルフの討伐はいかがでしょうか？」
「ん？ブラッドウルフだと？」
「はい、ご存知ないですか？」
ブラッドウルフ、ブラッド、赤色、赤、はっ！
「なあ、ルシ、ブラッドウルフってあれだよな？俺たちの旅立ちを邪魔したやつ。」
「んー？あ、あの狼さんかな？」
「どうしましたか？」
「いや、あのさ、そのブラッドウルフなんだけどな、俺たち既に倒してんだわ。」
「えっ？ブラッドウルフをですか？」
「ああ、ほら証拠に。」
「っ！待って、」
ルシファーは止めようとしていたが一歩遅かった。
暁はアイテムボックスの中に入っていたブラッドウルフを出した。
「これじゃないのか？」
「…………」
「ん？どうしたんだ？」
（マスター、アイテムボックスを持っている人は大変貴重なんですよ？）
「ん？はっ！」
（やっちまったー！）
俺は汗をダラダラ流しながら言い訳した。
「いや、あの、これはだな、そう手品だ！すごいだろ？イッツァマジック！」
「レッド、言い訳が見ていて見苦しいよ？そもそもマジックなんて言ってもここじゃ通用しないよ？」
ルシファーが溜め息をそれはそれはもう分かりやすいほどに大きくついてそう言った。
「あ、アイテいや、すごいですね！レッドさん、マジックバックを持っているなんて！」
「は？マジックバック？なんだそれはぁあいたたた！」
ルシファーが耳を引っ張っていた。
「レッド、ちょっと黙ってて、ね？」
（マスター、私もルシファーに同意します。マスターが会話すると必ずボロが出ます。気づいていないんですか？テミスが機転を利かせてくれたことに？）
「ん、そうなの。これはダンジョンで手に入れたマジックバックなの。」
「わぁぁー！すごいです！」
（ありがと、テミス。）
（いえいえ、お気になさらないでください。）
ルシファーとテミスは目線で会話した。
「それでは、査定をするので私についてきてください。」
俺たちは外に出てギルドの裏にある倉庫に向かった。
「ゴーンさーんいますか？」
「あいよっいまいくよ。」
奥からいかにも職人みたいな男が出てきた。
「んで、どうしたんだい？査定かい？」
「はい、よろしくお願いします。レッドさんブラッドウルフを出していただけませんか？」
「いや、けど。」
「大丈夫です。ゴーンさんは信頼できる人ですから。」
「なら良いか。いいよな？」
「ん、いいと思うよ。」
（マスター、多分大丈夫しょう）
「おーし、んじゃ、ここに出してくれないか？」
「おうっ。」
俺はアイテムボックスからブラッドウルフ（頭無し）を約100匹全部出した。
「「……………」」
「おーい、大丈夫か？」
「な、な、な、なんですかこれぇー！」
テミスさんが耳元で叫んだ。
「静かにしてくれ、テミスさん。頭に響いてしょうがねぇ。」
「い、いやだって、ブラッドウルフがブラッドウルフが！」
ブラッドウルフがなんだと言うのだ？
「こりゃあすげぇよくこんな量のブラッドウルフを狩ってきたな。」
ゴーンさんも関心していた。
「そんなにすげぇか？よくわからないぞこんな犬っころ雑魚だろ？」
するとテミスさんが
「何言っているんですかレッドさん！ブラッドウルフは単体でこそBランクですが、そもそもブラッドウルフの真骨頂は集団での連携です！ここまでの集団だとSランク級の難易度ですよ！」
「なん、だと？こんな犬っころどもがSランク？なんかの間違いだろ。」
「間違いなんかじゃありませんから！」
おかしい、もしかして冒険者はレベルが低いのだろうか？
（ご主人っ逆だよっ逆っ！）
（逆だと？どういうことだ？）
（ご主人様、冒険者のレベルが低いのではありません、ご主人様が高すぎるんです。）
（えっ？やっぱりそうなのかな？）
（そうだよぉ～ご主人っ！）
（恐れながら言わせていただきますが、ご主人様に人の身で勝てる者はおりません。ルシファー様くらいのレベルではないと勝負にすらならないかと。）
（俺ってそんなに強くなっていたのか。）
やはりあのアヴァロンはレベルが違ったのであろう。
「ちょっと、ギルドマスターに相談に行ってきます。」
テミスさんが行ってしまった。
「さて、じゃあ俺も査定するかな、こんだけあると時間がかかるからお前は明日取りに来てくれないか？」
「ああ、わかった頼む。」
「あいよっ、じゃあ始めるからほら行った、行った！」
俺たちは倉庫から出てギルドへ戻っていった。