大罪を極めし者〜天使の契約者〜

月読真琴

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第二十二話 緊急クエスト

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ルシファーによる治療が終わった時にギルドマスターがこちらに近寄ってきた。
「おう、レッド、ルシありがとうよ!」
「いや、俺は何もしていないさ、むしろルシが最も感謝されるべきだ。」
「いや、お前にも感謝を伝えたい、ありがとう。お前の言葉はキールだけでなく他の冒険者にも伝わったらしい。」
キールとはあの少年の名前だろう。
「いや、俺は本心を言っただけだ、最も気が緩むのは戦闘終了直後だからな、モンスターが跋扈している中でむしろ気を緩める方がおかしい。」
「そのことは、俺はいつも伝えてきたが、俺の言葉に耳を傾けてくれた冒険者は少なかったんだ。いつかはこういうことが起こると思っていた、俺の慢心のせいだ、みんなすまない。」
ギルドマスターは頭を下げながら悔しそうに言っていた。
「頭を上げてください、ギルマス。」
「俺たちの方こそすまなかった!」
「俺こそちょっと危機感が足りなかったらしい。」
「ギルマスは悪くありません!悪いのはギルマスの常に言っていたことを軽んじた私たちです!」
冒険者たちが足早に言っていった。
「み、みんな、すまない、ありがとう。」
ギルマスは再び頭を下げて感謝の言葉を伝えた。
「さて、ルシお前が使ったのは独自詠唱オリジナルスペル魔法マジックだな?」
「オリジ、何?」
「独自詠唱魔法だ。この魔法は最も使い手の少ない魔法だと聞いているが、使えたのか?」
「ん、他にも魔法はある。」
「マジかよ、独自詠唱魔法をこんなに使いこなす人材は初めてだよ。」
ギルドマスターはもう諦めたような顔だった。
(アイリス、独自詠唱魔法の使い手はこの世界に何人ほどいる?)
(そうですね、おそらく魔術師の中でもほんの一握りでしょう、一割にも届かないかと。)
そんなにすごい魔法だったのかと暁は思っていた。
回復の超級魔法でもほぼ死人には回復が追いつかないのだ。
けれど、ルシファーの魔法は死にかけている人でも完全に治癒させられるほどの効果がある。
だから、暁はこうも考えていた。
(恐らく、この話は広まるだろう、口止めも無駄だ、そしてお偉いさんがこの話を聞きつけたら必ずルシの勧誘や懐柔、又は誘拐を企む筈だ。)
暁の懸念は最もだった、瀕死と言う言葉そのものを体現していた少女を救ったのだ。
それも完治までさせて、貴族がこの話を聞いて行動しない理由が無い。
(これは早めにランクを上げて絶対的な地位を手に入れなくてはいけないな。)
暁はそのことを最優先事項とした。
「おい、俺たちはもうこの街を出る、世話になったな。」
そうして出ていこうとしたが。
「おい、待ってくれ。」
ギルドマスターに呼び止められた。
「なんだギルドマスター、俺たちにまだなんかあんのか?」
そうがんつくとギルドマスターは、
「Aランク冒険者レッドとAランク冒険者ルシ、お前たち二人に緊急クエストを依頼する!拒否権は無しだ!」
「なんだと?」
緊急クエストそれはギルドマスターが持つ権限の一つであり、ギルドマスターが指名した冒険者に強制的にクエストを受けさせることができる、だがリスクも大きい。
万が一その指名された冒険者が失敗したら
ギルドマスターは退職、最悪死んだりでもしたらギルドマスターは牢獄で一生を過ごすこととなる。
冒険者に緊急クエストを拒否することはできない、もし拒否したら一生の冒険者資格の剥奪となる。
「ちっ、面倒くさいことしやがって。」
暁に拒否することはできない、冒険者資格剥奪は最も回避すべき事態だ。
「仕方ねぇ、おい、依頼内容をさっさと言えや!」
「ああ、依頼内容は嘆きの森の異変の調査およびその原因の排除だ。」
「はあ?」
なんでそんなことをしなくてはならないのだろうか?
「ゴブリンがこんなに大量に出ることはおかしいんだ、しかもゴブリンナイトが狩りにでているなんて最も懸念すべき事態が起きている筈だ。」
「じゃあ、何が起きてるっていうんだよ?」
「………恐らく、ゴブリンエンペラーが現れた。」
「なんだと?」
モンスターのエンペラー種はキング種よりも比べ物にならないくらい強化されている。
暁はアヴァロンでもエンペラー種と戦ったがどれも曲者ばかりだった。
「何故、ゴブリンエンペラーだとわかった?」
「ゴブリンキングの時にはゴブリンナイトは狩りに出ない、しかしゴブリンエンペラーの時にはゴブリンナイトは下っ端として、狩りに出されるんだ。」
「それについてはわかった。だがお前は元とはいえSSランクだったんだろ?なんでお前が行かないんだ?」
「ゴブリンエンペラーの適正討伐ランクはSからSSの間だ、俺は前線を引いた身だ、戦闘の勘はだいぶ鈍っている。ゴブリンエンペラーには絶対に勝てない。
だからお前に依頼するんだ、頼むっ!力をかしてくれっ!」
セイズは土下座して、暁に頼み込んでいた。
暁は迷っていた、冒険者資格を失ってもいいから貴族との面倒ごとを避けるため、もうこの街を出ようとも思った、だが
「レッド、受けよう。」
当人のルシファーがそれを許さなかった。
「る、ルシ?」
「受けよう、レッド。恐らく私たちじゃないとこの問題は解決できない、他の場所からの援軍を待っている間に犠牲者がどんどん増えていっちゃう。そんなことはできない、私たちにできないことはないはず、救える命があるなら救う、未然に防げる問題があるなら私たちが防ぐべき。」
ルシは、あの時と同じ目をしていた、覚悟を決めた目だ。
「だから、受けよう。レッド、助けられる力があるのにそれを振るわないで見捨てるのは間違っている。そんな生き方を、人を見捨てるようなことをあなたにはには、私は、して欲しくないよ。」
ルシはそう言い終わると黙り込んでしまった。
暁は少し考えてやがて、頭をガリガリ掻きながらこう言った。
「わかった、受けようかそのクエストを。」
ルシはバッと顔を上げた。
「ホント?」
「ああ、嘘はつかねぇよ。」
その時ルシは表情を明るくして答えた。
「うんっ!」
そして暁はセイズの方に向かって
「依頼の件、了承した。必ずこのクエストを成功させてこよう。」
対してセイズは
「ありがとう!ありがとうレッド!この恩は必ずっ!」
「いらねぇよそんなの、それよかクエストの成功報酬を用意しといてくれや。」
「ああ、任せておいてくれ!最高の報酬を用意しておこう!」
その言葉を聞いて暁たちはギルドを出て行った。
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