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第11話 社内コンペティション
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「「「社内コンペティション?」」」
安保・土師・馬路が、声をそろえて聞き返す。
澤山の手にあるチラシには『社内コンペ!優秀企画には賞金あり!』と書かれてあった。
「新規事業の開発に向けて、社員から意見を集める企画だ。会社的には様々な視点からのアイデアを集められる、一方社員にとっても、良い企画を提案すれば賞金や、ゆくゆくは出世につながる。winwinってやつだな」
「ふーん、自分、お金にも出世にも興味がないんで、参加しなくていいっスか?」
「言うと思ったわ安保。営業係として最低1個は企画出せ、って言われてるから、お前も強制参加だぞ」
「げぇ~…」
安保は眉間にしわを寄せてチラシを忌々しそうに睨みつける。土師はそんな安保を慰めつつも、少し弾んだ様子で話す。
「でも、良い企画は実際にうちの新規事業になるかもなんですよね! 自分のアイデアが現実になるって、楽しそうです……!」
「そうですね、私も色々と企画案を考えてみたくなりました」
馬路も頷きながら、早速手元の手帳にアレコレとメモを書き始めた。
澤山は部下の顔を一通り見渡して、改めて声を上げる。
「じゃあ、とりあえずアイデアのアイデアレベルでいいから、一人1つ企画案を考えてきてくれ。期限は1週間後だ、解散!!」
――そして1週間後。
「はい、じゃあ順番に聞いていこうか……安保、考えてきたか?」
「考えてきましたよー。せっかくなので資料作りました、配りますねー」
「わ、安保さん提案書まで仕上げたなんて! すごいです!」
安保が全員に配っていく資料、体裁はきっちり整っているのだが、タイトルが――
「では、私、安保から提案させていただきますのは、こちら、『SUGUTORE猫カフェの開店』に向けての企画で――」
「だから猫から離れろ却下だ!!!!」
「いや、でも安保さんすごいです! ちゃんと猫カフェの開店までのビジネスフローが現実的な規模でまとめられてます…」
「惜しむらくは、うちが資格学校であることですね」
安保の完璧な猫カフェ提案書は、営業係内だけで回し読みするということで落ち着いた。
「じゃあ次は僕ですね! 僕からはえーっと、最新のAIを使って生徒さんに最もマッチする資格を選ぶシステムの構築と、それを使った新規生徒獲得の企画です」
「……まともだ」
「普通っスね」
「いいと思いますよ」
「ちゃんと考えてきたのに反応が薄い……」
土師はちょっと泣きそうになったが、なんだかんだで企画の実現可能な部分が評価され、この後の馬路の案と併せて検討することになった。
「最後は私ですね。提案書の形にまでまとめきれず、ベタ打ちのままとなってしまっていて恐縮ですが、資料を配らせていただきます」
「まてまてまて、その紙の束はなんだ、単行本くらい分厚さがあるぞ!?」
「やば、これ読み切るの3時間くらいかかりますよ」
「ひえええ、これ何文字くらいあるんでしょう……?」
「申し訳ない、色々考えていたら止まらなくなってしまいまして……」
馬路の配った資料は厚さが3センチもあり、中には企画がぎっしりと詰まっていた。目次までついており、それによると企画数は20もあった。
うっすらと目の下にクマができている馬路の熱意を思うと、適当に読み飛ばすこともできず、全員しっかりと読み込んでそれぞれの企画について検討を重ねていった。
ただ、出てきた意見は(安保の提案を除いて)どれも素晴らしく、なかなか絞れずに時間が過ぎていった。
「うううん、どれもこれもやってみたい企画ばかり……」
「私は土師さんの企画も興味がひかれます」
「やっぱ猫カフェしましょーよ、現代社会人が最も求めてるものですって。フクロウでも可」
うだうだと悩む3人を見て、澤山はため息をついて助け舟をだした。
「じゃあ、こういうのはどうだ?」
澤山が3人に提案したのは、
・土師が提案した企画をもとに
・馬路が実際にビジネスに落とし込めるよう詳細を詰め
・安保が提案書の形にまとめる
・澤山は相談役として全体管理を行う
という役割分担だった。
土師と馬路は、「「それで行きます!」」と嬉々として作業に移り、安保も資料を作ることは好きなほうなので、渋々ながらも二人と一緒に作業を始めた。
時に紙が舞い、時にプリンターインクが舞い、時には椅子が舞った。
様々な苦難を乗り越え、営業係は一丸となって企画を作り上げた。
そして社内コンペの結果発表の日。
「優秀賞は―――営業係の皆さんの企画です!」
「「「「ぃよっしゃあああーー!」」」」
4人はガッツポーズを決め、手を取り合って喜んだ。
「優秀賞の皆様には、今後、受賞企画のプロジェクトの中心メンバーとなって取り組んでいただきます!」
「「「「あぁー……」」」」
そして、今後の業務が増えることが確定し、上げた手と肩をがっくりと落とした。
安保・土師・馬路が、声をそろえて聞き返す。
澤山の手にあるチラシには『社内コンペ!優秀企画には賞金あり!』と書かれてあった。
「新規事業の開発に向けて、社員から意見を集める企画だ。会社的には様々な視点からのアイデアを集められる、一方社員にとっても、良い企画を提案すれば賞金や、ゆくゆくは出世につながる。winwinってやつだな」
「ふーん、自分、お金にも出世にも興味がないんで、参加しなくていいっスか?」
「言うと思ったわ安保。営業係として最低1個は企画出せ、って言われてるから、お前も強制参加だぞ」
「げぇ~…」
安保は眉間にしわを寄せてチラシを忌々しそうに睨みつける。土師はそんな安保を慰めつつも、少し弾んだ様子で話す。
「でも、良い企画は実際にうちの新規事業になるかもなんですよね! 自分のアイデアが現実になるって、楽しそうです……!」
「そうですね、私も色々と企画案を考えてみたくなりました」
馬路も頷きながら、早速手元の手帳にアレコレとメモを書き始めた。
澤山は部下の顔を一通り見渡して、改めて声を上げる。
「じゃあ、とりあえずアイデアのアイデアレベルでいいから、一人1つ企画案を考えてきてくれ。期限は1週間後だ、解散!!」
――そして1週間後。
「はい、じゃあ順番に聞いていこうか……安保、考えてきたか?」
「考えてきましたよー。せっかくなので資料作りました、配りますねー」
「わ、安保さん提案書まで仕上げたなんて! すごいです!」
安保が全員に配っていく資料、体裁はきっちり整っているのだが、タイトルが――
「では、私、安保から提案させていただきますのは、こちら、『SUGUTORE猫カフェの開店』に向けての企画で――」
「だから猫から離れろ却下だ!!!!」
「いや、でも安保さんすごいです! ちゃんと猫カフェの開店までのビジネスフローが現実的な規模でまとめられてます…」
「惜しむらくは、うちが資格学校であることですね」
安保の完璧な猫カフェ提案書は、営業係内だけで回し読みするということで落ち着いた。
「じゃあ次は僕ですね! 僕からはえーっと、最新のAIを使って生徒さんに最もマッチする資格を選ぶシステムの構築と、それを使った新規生徒獲得の企画です」
「……まともだ」
「普通っスね」
「いいと思いますよ」
「ちゃんと考えてきたのに反応が薄い……」
土師はちょっと泣きそうになったが、なんだかんだで企画の実現可能な部分が評価され、この後の馬路の案と併せて検討することになった。
「最後は私ですね。提案書の形にまでまとめきれず、ベタ打ちのままとなってしまっていて恐縮ですが、資料を配らせていただきます」
「まてまてまて、その紙の束はなんだ、単行本くらい分厚さがあるぞ!?」
「やば、これ読み切るの3時間くらいかかりますよ」
「ひえええ、これ何文字くらいあるんでしょう……?」
「申し訳ない、色々考えていたら止まらなくなってしまいまして……」
馬路の配った資料は厚さが3センチもあり、中には企画がぎっしりと詰まっていた。目次までついており、それによると企画数は20もあった。
うっすらと目の下にクマができている馬路の熱意を思うと、適当に読み飛ばすこともできず、全員しっかりと読み込んでそれぞれの企画について検討を重ねていった。
ただ、出てきた意見は(安保の提案を除いて)どれも素晴らしく、なかなか絞れずに時間が過ぎていった。
「うううん、どれもこれもやってみたい企画ばかり……」
「私は土師さんの企画も興味がひかれます」
「やっぱ猫カフェしましょーよ、現代社会人が最も求めてるものですって。フクロウでも可」
うだうだと悩む3人を見て、澤山はため息をついて助け舟をだした。
「じゃあ、こういうのはどうだ?」
澤山が3人に提案したのは、
・土師が提案した企画をもとに
・馬路が実際にビジネスに落とし込めるよう詳細を詰め
・安保が提案書の形にまとめる
・澤山は相談役として全体管理を行う
という役割分担だった。
土師と馬路は、「「それで行きます!」」と嬉々として作業に移り、安保も資料を作ることは好きなほうなので、渋々ながらも二人と一緒に作業を始めた。
時に紙が舞い、時にプリンターインクが舞い、時には椅子が舞った。
様々な苦難を乗り越え、営業係は一丸となって企画を作り上げた。
そして社内コンペの結果発表の日。
「優秀賞は―――営業係の皆さんの企画です!」
「「「「ぃよっしゃあああーー!」」」」
4人はガッツポーズを決め、手を取り合って喜んだ。
「優秀賞の皆様には、今後、受賞企画のプロジェクトの中心メンバーとなって取り組んでいただきます!」
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そして、今後の業務が増えることが確定し、上げた手と肩をがっくりと落とした。
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