婚約破棄は承るので、後はもう巻き込まないでください。

夢草 蝶

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第三十五話 リディア・マクベール

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「か、かしこまりました!」

「慌てなくていいですよー」

 女子生徒はお辞儀をすると、ぱたぱたとお菓子のテーブルへと駆けて行った。

「彼女、一年生ですよね?」

「リディアさん? ええ、後輩ですわ」

「リディア嬢とおっしゃるの」

「ええ。リディア・マクベールさん。マクベール男爵家のご令嬢ですわ」

「──へぇ」

 リディア・マクベール嬢ね。
 私は彼女の方を見た。
 お皿を手にどのお菓子を取ろうか迷っているようだ。
 控えめというか、気弱そうな感じの子だ。
 私は席を立った。

「エルシカ様?」

「やっぱり、自分で選んで来ますね!」

「──そうですか」

 そう言って、私はお菓子のテーブルへと向かった。

「マクベール嬢」

「ひゃあ! え、エルシカ様! どうしてこちらに?」

 声を掛けると、マクベール嬢はこっちがびっくりするくらい驚いた。
 おどおどしながら、こちらを振り向いてくる。
 私は、警戒されないように人の良い笑みを浮かべて、マクベール嬢に話し掛けた。

「ちょっと、貴女とお話したくて」

「私と・・・・・・ですか・・・・・・? あの、どうして私の名前──」

「ロードレス嬢から伺いました」

「そうですか。それで、その、私にお話とは──?」

「うーん、そうね。何からお話ししましょうか? ・・・・・・んー、あ、ダメだ。やっぱり、私ってこういうの向かないみたい」

「はい?」

 性格的に駆け引きや探りを入れるのが性に合わないんだよねぇ。そもそも苦手。
 こう、ガーンっといって、えいやって感じの単純明快なのが好き。
 何事も正面切ってやれば、手っ取り早く解決すると思うのに、何で人って遠回りしたがるのかしら?
 こんな思考の私なので、話術で訊きたいことを引き出すという作戦は早々に諦め、マクベール嬢に言った。

「ねぇ、マクベール嬢。貴女、例の毒入りクッキーのことで、何か知ってることがあるんじゃありませんか?」

 被害者の会の令嬢たちに、昼休みに毒を盛ったのは貴女たちかと訊いた時、確かに見たのだ。
 このマクベール嬢が尋常ではない程、怯えていたのを。本人が気弱な気性というのを差し引いても、あの怯え方は普通じゃない。死人のように顔を真っ白にして、何かがバレるのを恐れていた。

「・・・・・・え・・・・・・?」

 みるみると、マクベール嬢の顔に恐怖が滲み、広がる。
 手が震え、持っている食器がカタカタと音を立てていた。
 やっぱり、何か知ってるっぽい。けれど、こんな子が毒を盛った犯人なのかしら?
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