7 / 11
予想外の言葉
しおりを挟む
利き手を怪我したとは言え、フォルテがしっかりと手当てをしてくれたおかげで授業は恙無くうけることが出来ました。
本日最後の終鈴の音を聞き終え、放課後。
「さぁ! 硝子仕込んだ犯人を探しに行くわよ!」
私よりも張り切っているユイナが拳を上へ突き上げ、意気軒昂と息巻いています。ですが。
「二人にはお昼休みの付き合って貰いましたし、放課後の時間までいただくのは申し訳ないので、私一人で聞き込みしてきますよ」
ユイナもフォルテも本当に親切ですが、二人にだって都合というものがあるでしょう?
私のせいで貴重な時間を潰させる訳にはいきません。
なので、放課後の協力は遠慮すると猛烈な反対に合いました。
「何言ってるの! 今犯人見つけること以上に大切なことなんてないでしょう!」
「そうだよ。それに今朝の出来事なんだから、あまり一人で行動しない方がいいと思うよ」
「心配してくれるのはありがたいのですが・・・・・・けれど、二人共宿題は大丈夫なのですか?」
「うっ」
二人が言葉に詰まり、気まずそうに視線を左右に逸らします。
フォルテは写生、ユイナは文章作成、それぞれ苦手分野がある宿題ですものね。
「だ、大丈夫(だ)よ・・・・・・」
「そんな冷や汗かいて言われましても、説得力ありませんよ?」
気持ちは嬉しいのですけれどね、学生の本分はお勉強です。
「待って頂戴、エレイン。来週が期限の写生が苦手がフォルテはともかく、私のは発表までに間に合えばいいんだから、私は手伝えるわ!」
「ちょ、ユイナずるい!」
「うーん・・・・・・」
どうしましょう。どちらも退いてくれません。
いっそ、今日の放課後は中止します?
いえいえ、目撃者の記憶が鮮明なうちに聞き込みはしておきたいですし──。
「なら、一時間だけお願いします。その後は二人共、自分のことを最優先に考えてくださいね。これ以上は一歩も譲歩しませんよ」
「・・・・・・」
「そんな顔をしても駄目なものは駄目です」
それぞれ何か言いたそうな顔をしていましたけれど、私が意外と頑固なのは二人がよく知っています。
なので、二人には放課後の一時間程手伝って貰うことになりました。
たかが一時間、されど一時間。
私のために、本当に申し訳ないです。
結局のところ、一時間ではそれらしい目撃者の発見には至らず、二人は直前になって食い下がりましたが、私が「約束は約束です」と笑顔で言うと、背中を丸めて各々中庭と図書館へ行きました。
さて、一人になってしまいましたが、頑張りましょう。
靴箱付近に控え、通りかかる生徒に声を掛けます。
「申し訳ありません、お時間よろしいですか? 少々お訊きしたいことがありまして──」
そのように数名に尋ねてみましたが、結果は芳しくありません。困りました。
「あら?」
ふと、視点を変えてみましょうかと辺りを見渡すと、向かいの校舎の階段の窓からこの靴箱がよく見えることに気づきました。
もしかしたら、昨日階段を通っていた方が何か見てるかもしれません。
そう思い、私は向かいの校舎へ向かいました。
「・・・・・・誰も来ませんね」
手摺に片手を預け、踊り場で通行人を待ち構えていますが、誰も通りません。
日も傾き、茜射す踊り場は自分の呼吸すら大きく聞こえるほどの静寂でした。
うーん、見誤りましたね。まさかこれ程人気がないとは・・・・・・。
仕方ありません。一度靴箱まで戻って──いえ、それよりもライの周りの女の子たちを調べた方が早いですね・・・・・・。
方法を練り直しながら階段を降りていると、後ろから女の子に声を掛けられました。
「カロミナさん」
名前を呼ばれ、振り返ります。
上段には三つ編みの女の子がいました。
見覚えのあるような、ないような。少なくともお名前は存じません。
「何でしょう?」
用件を尋ねましたが、返答がありません。
はて、どうしたのでしょう。
女の子は何か私に言いたそうなのですが、言葉が纏まらないのか、なかなか切り出しません。
なので、女の子の様子を見る時間が私には多分にありました。
まず、女の子は私をよく思っていないようです。
私より視線の高い位置にいるのに、睨め上げるような視線。爪を噛むように小刻みに動く唇。ほんの僅かに上がった肩。
どう見ても敵と認識されていますね。私。
とはいえ、私もずっと待ってる訳にはいきませんし、無視も出来ません。
「あの、ご用件がないのであれば、失礼してもよろしいでしょうか?」
仕方なく会話を切り上げようとすると、女の子がとうとう口火を切りました。
「貴女、いつまでヴェクオール君に迷惑を掛けるつもりですか?」
「え?」
言われたのは、予想もしなかった言葉でした。
私がライに、迷惑?
本日最後の終鈴の音を聞き終え、放課後。
「さぁ! 硝子仕込んだ犯人を探しに行くわよ!」
私よりも張り切っているユイナが拳を上へ突き上げ、意気軒昂と息巻いています。ですが。
「二人にはお昼休みの付き合って貰いましたし、放課後の時間までいただくのは申し訳ないので、私一人で聞き込みしてきますよ」
ユイナもフォルテも本当に親切ですが、二人にだって都合というものがあるでしょう?
私のせいで貴重な時間を潰させる訳にはいきません。
なので、放課後の協力は遠慮すると猛烈な反対に合いました。
「何言ってるの! 今犯人見つけること以上に大切なことなんてないでしょう!」
「そうだよ。それに今朝の出来事なんだから、あまり一人で行動しない方がいいと思うよ」
「心配してくれるのはありがたいのですが・・・・・・けれど、二人共宿題は大丈夫なのですか?」
「うっ」
二人が言葉に詰まり、気まずそうに視線を左右に逸らします。
フォルテは写生、ユイナは文章作成、それぞれ苦手分野がある宿題ですものね。
「だ、大丈夫(だ)よ・・・・・・」
「そんな冷や汗かいて言われましても、説得力ありませんよ?」
気持ちは嬉しいのですけれどね、学生の本分はお勉強です。
「待って頂戴、エレイン。来週が期限の写生が苦手がフォルテはともかく、私のは発表までに間に合えばいいんだから、私は手伝えるわ!」
「ちょ、ユイナずるい!」
「うーん・・・・・・」
どうしましょう。どちらも退いてくれません。
いっそ、今日の放課後は中止します?
いえいえ、目撃者の記憶が鮮明なうちに聞き込みはしておきたいですし──。
「なら、一時間だけお願いします。その後は二人共、自分のことを最優先に考えてくださいね。これ以上は一歩も譲歩しませんよ」
「・・・・・・」
「そんな顔をしても駄目なものは駄目です」
それぞれ何か言いたそうな顔をしていましたけれど、私が意外と頑固なのは二人がよく知っています。
なので、二人には放課後の一時間程手伝って貰うことになりました。
たかが一時間、されど一時間。
私のために、本当に申し訳ないです。
結局のところ、一時間ではそれらしい目撃者の発見には至らず、二人は直前になって食い下がりましたが、私が「約束は約束です」と笑顔で言うと、背中を丸めて各々中庭と図書館へ行きました。
さて、一人になってしまいましたが、頑張りましょう。
靴箱付近に控え、通りかかる生徒に声を掛けます。
「申し訳ありません、お時間よろしいですか? 少々お訊きしたいことがありまして──」
そのように数名に尋ねてみましたが、結果は芳しくありません。困りました。
「あら?」
ふと、視点を変えてみましょうかと辺りを見渡すと、向かいの校舎の階段の窓からこの靴箱がよく見えることに気づきました。
もしかしたら、昨日階段を通っていた方が何か見てるかもしれません。
そう思い、私は向かいの校舎へ向かいました。
「・・・・・・誰も来ませんね」
手摺に片手を預け、踊り場で通行人を待ち構えていますが、誰も通りません。
日も傾き、茜射す踊り場は自分の呼吸すら大きく聞こえるほどの静寂でした。
うーん、見誤りましたね。まさかこれ程人気がないとは・・・・・・。
仕方ありません。一度靴箱まで戻って──いえ、それよりもライの周りの女の子たちを調べた方が早いですね・・・・・・。
方法を練り直しながら階段を降りていると、後ろから女の子に声を掛けられました。
「カロミナさん」
名前を呼ばれ、振り返ります。
上段には三つ編みの女の子がいました。
見覚えのあるような、ないような。少なくともお名前は存じません。
「何でしょう?」
用件を尋ねましたが、返答がありません。
はて、どうしたのでしょう。
女の子は何か私に言いたそうなのですが、言葉が纏まらないのか、なかなか切り出しません。
なので、女の子の様子を見る時間が私には多分にありました。
まず、女の子は私をよく思っていないようです。
私より視線の高い位置にいるのに、睨め上げるような視線。爪を噛むように小刻みに動く唇。ほんの僅かに上がった肩。
どう見ても敵と認識されていますね。私。
とはいえ、私もずっと待ってる訳にはいきませんし、無視も出来ません。
「あの、ご用件がないのであれば、失礼してもよろしいでしょうか?」
仕方なく会話を切り上げようとすると、女の子がとうとう口火を切りました。
「貴女、いつまでヴェクオール君に迷惑を掛けるつもりですか?」
「え?」
言われたのは、予想もしなかった言葉でした。
私がライに、迷惑?
146
あなたにおすすめの小説
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
悪女の私を愛さないと言ったのはあなたでしょう?今さら口説かれても困るので、さっさと離縁して頂けますか?
輝く魔法
恋愛
システィーナ・エヴァンスは王太子のキース・ジルベルトの婚約者として日々王妃教育に勤しみ努力していた。だがある日、妹のリリーナに嵌められ身に覚えの無い罪で婚約破棄を申し込まれる。だが、あまりにも無能な王太子のおかげで(?)冤罪は晴れ、正式に婚約も破棄される。そんな時隣国の皇太子、ユージン・ステライトから縁談が申し込まれる。もしかしたら彼に愛されるかもしれないー。そんな淡い期待を抱いて嫁いだが、ユージンもシスティーナの悪い噂を信じているようでー?
「今さら口説かれても困るんですけど…。」
後半はがっつり口説いてくる皇太子ですが結ばれません⭐︎でも一応恋愛要素はあります!ざまぁメインのラブコメって感じかなぁ。そういうのはちょっと…とか嫌だなって人はブラウザバックをお願いします(o^^o)更新も遅めかもなので続きが気になるって方は気長に待っててください。なお、これが初作品ですエヘヘ(о´∀`о)
優しい感想待ってます♪
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
婚約者をないがしろにする人はいりません
にいるず
恋愛
公爵令嬢ナリス・レリフォルは、侯爵子息であるカリロン・サクストンと婚約している。カリロンは社交界でも有名な美男子だ。それに引き換えナリスは平凡でとりえは高い身分だけ。カリロンは、社交界で浮名を流しまくっていたものの今では、唯一の女性を見つけたらしい。子爵令嬢のライザ・フュームだ。
ナリスは今日の王家主催のパーティーで決意した。婚約破棄することを。侯爵家でもないがしろにされ婚約者からも冷たい仕打ちしか受けない。もう我慢できない。今でもカリロンとライザは誰はばかることなくいっしょにいる。そのせいで自分は周りに格好の話題を提供して、今日の陰の主役になってしまったというのに。
そう思っていると、昔からの幼馴染であるこの国の次期国王となるジョイナス王子が、ナリスのもとにやってきた。どうやらダンスを一緒に踊ってくれるようだ。この好奇の視線から助けてくれるらしい。彼には隣国に婚約者がいる。昔は彼と婚約するものだと思っていたのに。
本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
元婚約者は戻らない
基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。
人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。
カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。
そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。
見目は良いが気の強いナユリーナ。
彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。
二話完結+余談
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる