17 / 19
17.花愛づる者の欲
ぶつけた頭の痛みも引いてきた頃。
シェーラとハンスは大分打ち解けていた。
互いに植物好きという共通点があるから、話題は尽きない。
「では、グロウライツさんは新種のチャイルドローズについての論文を書かれてるんですね」
「はい。ですが、やはり資料が少なくて──まだ栽培法もはっきりと分かってませんし、流通もしてませんから、どこかの植物園で取り扱ってないか探しているところで──そうしたら、つい他の草花に目がいってしまって」
「分かります。つい、他の子たちも気になっちゃうんですよね。そうそう、チャイルドローズなら──」
共通の趣味を持つ者同士が集えば話題が尽きることはない。
特にずっと一人で自邸で植物と向き合ってきたシェーラは趣味の会話に飢えていた節がある。
親きょうだいやリサも話は聞いてくれるが、どうしても専門的な話題には首を傾げられてしまうし、トニーのような植物の栽培に携わる者とは引きこもり生活のために滅多に会う機会がない上、彼らにも仕事があるので長時間拘束しておく訳にもいかない。
その点、このハンスという青年は他にないくらい話し相手には持ってこいだった。
知識量はシェーラに劣るが、目新しい話題もすぐに理解する。
植物学者を目指しているため、シェーラが話したいことだけを話しても相手の利になる。
シェーラはついつい、あれもこれもと話題を出しては自身の見解を添えながら説明し、ハンスは合間合間に質問をしては懐から取り出した手帳にメモをとる。
そんな二人のやり取りはシェーラが喉の乾きを覚えるまで続いた。
「それで、ラフカ国から取り寄せた栄養剤とセノア地方の土で育てたマグノリアの花弁の枚数が──けほけほっ」
「大丈夫ですか!?」
「平気です。こんなに喋ったのは久しぶりだったので、喉が乾燥してしまったみたいです」
少しヒリヒリとする喉を擦りながら、シェーラが困り顔で答えると、ハンスは申し訳なさそうにしょんぼりと肩を落とした。
「申し訳ありません。俺が沢山質問をしてしまったせいですね。つい浮かれ過ぎてしまいました」
「いえ。グロウライツさんのせいではありませんよ。それに同年代でこれだけ植物の話を出来る相手は初めてで──私も少々はしゃいでしまったようです」
その言葉は気遣いからくるものではなく、事実だった。
自分の話に輝く瞳や、自分とは違った角度で物事を捉える思考から掛けられる鋭い質問、貪欲に知識を吸収しようとする情熱。
圧倒的な好奇心の熱量を真正面から浴びたシェーラは、ハンスにもっと色々なことを教えたい、自分の持つ知識を詰め込みたいと思った。
それはさながら、まだ誰も見たことがない新種の花の蕾に水を与えるように、シェーラの胸を高鳴らせる。
(グロウライツさんは『蕾』だわ)
日の光を浴びて、水を吸収して、栄養をたくさん蓄えていつか咲く時を今か今かと待ちわびている蕾。
蕾であれば、咲くところを見てみたいと思ってしまうのが植物を愛するシェーラの性分だった。
喉の痛みが煩わしい。もっともっと話したいのに、痛みがそれを邪魔してくる。完全なインドア派のシェーラだが、体育会系の人間が競技で怪我をしてもまだ出来ると食い下がる気持ちが初めてわかった。活力に溢れている心に体が着いていけていないことが、こんなにももどかしい。
「僕もアルトゥニス嬢に直接お話を聞けるなんて夢のようで、心が飛び上がりたいくらい大はしゃぎしてしまってます。見て下さい。アルトゥニス嬢のお言葉を一つも取り溢さないようにしっかりメモしました」
「わ! 凄いびっしりですね」
見せられた手帳のページはまるで、辞書のように端から端まで埋め尽くされていた。早筆のせいか文字の跳ねや払いが荒いが、参考文献に記号が振られていたり、簡略しつつも分かりやすい図が描かれていたりと後から見てもちゃんと内容を理解出来る見やすい文になっている。
「論文用に手帳を新調したのですが、もう半分以上埋まってしまいました。文房具屋の大安売りで二束三文で買った物なのですが、たった今、この手帳は金塊よりも価値のある宝物になりました。錬金術師もびっくりの大変身です! この手帳は家宝にしますね!」
「いや、家宝はちょっと……それは大袈裟ですよ。けど、お役に立てたなら嬉しいです。立派な学者になった暁には、私の研究にもご協力を。なぁんて──」
冗談ですよと言おうとした言葉は、手に触れた温もりに途切れてしまった。
「是非! アルトゥニス嬢と研究が出来るなんて光栄です。気候が違う他国の品種の栽培法の確立ですか? 冬野菜の種の凍結病の薬の開発にも着手していると窺いましたが本当ですか? それとも乾生植物の蒸散量の計算ですか? 算術であれば学生の頃から成績は一番だったのでお役に立てると思います! いつでも何なりとお声掛け下さい!」
「あ、あの……手……」
さっき名乗った時の様に自分よりも一回り大きな手で包まれた両手を見つめ、おずおずと困惑していることを視線で訴えた。
「え? ああ! 申し訳ありません! 僕、また──すみません。あまりの嬉しさに興奮してしまいました」
「いえ。それより私、軽い気持ちでご協力をなんて言ってしまって──私の方こそ、申し訳ありません。まさかそんなに喜んでいただけるとは思ってなくて」
「あのアルトゥニス嬢の研究に関われるなんて、植物学に携わる人間にとっては垂涎ものの体験ですから、むしろこちらからお金を払ってでもお願いしたいくらいです!」
(な、なんか知らないうちに過大評価を受けている……!)
憧憬の籠ったきらきらと輝く眼差しを受けながら、シェーラは自分と同じ分野にいる人々からどのように見られているのかを初めて知り、衝撃を受けた。
実際のところ、学問の研究において一番の障害になるのは資金繰りだ。人件費、資料や機材の購入費、研究所の賃料、講演会や実物を見るために国外や海外へ行くための旅費。植物学なら場合によっては栽培用の畑や温室を借りることもあるし、種や株も品種によっては高額なものもある。人間が生きるために出費を必要とするように、研究は維持だけでもお金が掛かる。研究者の中にはこの段階で躓いて自分の好きなことを思うままに探求出来ない者が多くいる。
その点で言えば、シェーラの環境は研究者にとって天国だ。
アルトゥニス侯爵家は貴族の中でも上から数えた方が早いくらい裕福なことに加え、両親や兄もシェーラのやりたいことに理解があり、元々植物園の経営をしていたこともあって成果によっては家の利益に繋がるからと惜しみなく予算を与えられた。
実際、シェーラはその資金で成果を出し、利益に還元しているため予算は年々増え続けている。
才能を十全に発揮出来る環境と、どこまでも探求を許されて自由に出来る環境によって蓄積されていった知識と経験。好循環はシェーラの才を葛の蔓のように際限なく成長させた。
そのため、ハンスの言ったことはあながち間違いでもないが、引きこもり生活を続けていたシェーラには知る由もない。
「お金は要りませんが、グロウライツさんがよろしいなら、機会があれば計算などをお願いしたいですね」
シェーラは算術があまり得意ではない。
この国では女性は学校に通わず家で家庭教師から授業を受ける。シェーラも例に漏れず、幼い頃から貴族令嬢としての教育を邸で受けていたので学校に通ったことはない。貴族令嬢にとって算術は然程重要とされておらず、植物の研究を始めるまではシェーラも簡単な四則演算くらいしか出来なかった。
しかし、研究の中で肥料や薬の分量や時間の計算が必要となったので、植物学と共に独学で勉強した。
シェーラにとって算術は食べるのは好きだが料理は苦手のような感じで、必要なものであって好きなものではなかった。全く出来ないことはないが、本音を言えば率先してやりたくはない。しかし、学問において算術は切っても切れない要所であるのも事実。
経験を積むことで計算にもある程度強くなったものの、今でも時々計算ミスをすることもあるシェーラとしては計算を委託出来るのはありがたいことだった。
「はい!」
力強く頷くハンスに、シェーラはふっと自然な笑みを溢した。
(ということは、また会えるのかしら?)
そうなったのなら、ジョウロで花に水を注ぐように、もっとたくさんの知識を与えたいとシェーラは思った。
アルトゥニス侯爵邸の書庫にあるシェーラが集めた古今東西の資料を見せて、研究室で今手掛けている研究を見せて意見を訊いて、シェーラが花を育てている庭でその美しさを語り合いたい。
シェーラは初めて、教えたいという欲求を抱いた。
自分の好きなことを追求する自身の性分に従い、シェーラは早速ハンスへ次へ繋げる約束をしようと口を開いた──その時。
──ガッシャ────ンッ! カンッ、カンッ、カラララ……。
何かが倒れて散乱し、転がる音がどこからか聞こえた。
「な、何事!?」
「お嬢様!」
まさか園内の植物に何かあったのかと、シェーラは立ち上がると直ぐに熱帯植物の区域から飛び出して廊下に出た。その後をリサ、トニー、それにハンスが追ってくる。
音はすでに止んでいたが、代わりに「何だ? 何だ?」という人の声が一方から聞こえ、そちらへ急いで向かう。辿り着いたのはさっき訪れた土産物売り場だった。
「ごめんなさい、ちょっと通して──何……これ……?」
集まった野次馬を掻き分けて中に一歩踏み込んだ瞬間、シェーラは室内の光景に絶句した。
倒れた木製の台、ひっくり返ったバスケット、そして砕けた硝子のように床に散らばったドライフラワー。色とりどりの花弁と一緒に転がっている割れたカプセル。
土産物売り場はまるで、花殺しの事件現場のような酷い有り様になっていた。
シェーラとハンスは大分打ち解けていた。
互いに植物好きという共通点があるから、話題は尽きない。
「では、グロウライツさんは新種のチャイルドローズについての論文を書かれてるんですね」
「はい。ですが、やはり資料が少なくて──まだ栽培法もはっきりと分かってませんし、流通もしてませんから、どこかの植物園で取り扱ってないか探しているところで──そうしたら、つい他の草花に目がいってしまって」
「分かります。つい、他の子たちも気になっちゃうんですよね。そうそう、チャイルドローズなら──」
共通の趣味を持つ者同士が集えば話題が尽きることはない。
特にずっと一人で自邸で植物と向き合ってきたシェーラは趣味の会話に飢えていた節がある。
親きょうだいやリサも話は聞いてくれるが、どうしても専門的な話題には首を傾げられてしまうし、トニーのような植物の栽培に携わる者とは引きこもり生活のために滅多に会う機会がない上、彼らにも仕事があるので長時間拘束しておく訳にもいかない。
その点、このハンスという青年は他にないくらい話し相手には持ってこいだった。
知識量はシェーラに劣るが、目新しい話題もすぐに理解する。
植物学者を目指しているため、シェーラが話したいことだけを話しても相手の利になる。
シェーラはついつい、あれもこれもと話題を出しては自身の見解を添えながら説明し、ハンスは合間合間に質問をしては懐から取り出した手帳にメモをとる。
そんな二人のやり取りはシェーラが喉の乾きを覚えるまで続いた。
「それで、ラフカ国から取り寄せた栄養剤とセノア地方の土で育てたマグノリアの花弁の枚数が──けほけほっ」
「大丈夫ですか!?」
「平気です。こんなに喋ったのは久しぶりだったので、喉が乾燥してしまったみたいです」
少しヒリヒリとする喉を擦りながら、シェーラが困り顔で答えると、ハンスは申し訳なさそうにしょんぼりと肩を落とした。
「申し訳ありません。俺が沢山質問をしてしまったせいですね。つい浮かれ過ぎてしまいました」
「いえ。グロウライツさんのせいではありませんよ。それに同年代でこれだけ植物の話を出来る相手は初めてで──私も少々はしゃいでしまったようです」
その言葉は気遣いからくるものではなく、事実だった。
自分の話に輝く瞳や、自分とは違った角度で物事を捉える思考から掛けられる鋭い質問、貪欲に知識を吸収しようとする情熱。
圧倒的な好奇心の熱量を真正面から浴びたシェーラは、ハンスにもっと色々なことを教えたい、自分の持つ知識を詰め込みたいと思った。
それはさながら、まだ誰も見たことがない新種の花の蕾に水を与えるように、シェーラの胸を高鳴らせる。
(グロウライツさんは『蕾』だわ)
日の光を浴びて、水を吸収して、栄養をたくさん蓄えていつか咲く時を今か今かと待ちわびている蕾。
蕾であれば、咲くところを見てみたいと思ってしまうのが植物を愛するシェーラの性分だった。
喉の痛みが煩わしい。もっともっと話したいのに、痛みがそれを邪魔してくる。完全なインドア派のシェーラだが、体育会系の人間が競技で怪我をしてもまだ出来ると食い下がる気持ちが初めてわかった。活力に溢れている心に体が着いていけていないことが、こんなにももどかしい。
「僕もアルトゥニス嬢に直接お話を聞けるなんて夢のようで、心が飛び上がりたいくらい大はしゃぎしてしまってます。見て下さい。アルトゥニス嬢のお言葉を一つも取り溢さないようにしっかりメモしました」
「わ! 凄いびっしりですね」
見せられた手帳のページはまるで、辞書のように端から端まで埋め尽くされていた。早筆のせいか文字の跳ねや払いが荒いが、参考文献に記号が振られていたり、簡略しつつも分かりやすい図が描かれていたりと後から見てもちゃんと内容を理解出来る見やすい文になっている。
「論文用に手帳を新調したのですが、もう半分以上埋まってしまいました。文房具屋の大安売りで二束三文で買った物なのですが、たった今、この手帳は金塊よりも価値のある宝物になりました。錬金術師もびっくりの大変身です! この手帳は家宝にしますね!」
「いや、家宝はちょっと……それは大袈裟ですよ。けど、お役に立てたなら嬉しいです。立派な学者になった暁には、私の研究にもご協力を。なぁんて──」
冗談ですよと言おうとした言葉は、手に触れた温もりに途切れてしまった。
「是非! アルトゥニス嬢と研究が出来るなんて光栄です。気候が違う他国の品種の栽培法の確立ですか? 冬野菜の種の凍結病の薬の開発にも着手していると窺いましたが本当ですか? それとも乾生植物の蒸散量の計算ですか? 算術であれば学生の頃から成績は一番だったのでお役に立てると思います! いつでも何なりとお声掛け下さい!」
「あ、あの……手……」
さっき名乗った時の様に自分よりも一回り大きな手で包まれた両手を見つめ、おずおずと困惑していることを視線で訴えた。
「え? ああ! 申し訳ありません! 僕、また──すみません。あまりの嬉しさに興奮してしまいました」
「いえ。それより私、軽い気持ちでご協力をなんて言ってしまって──私の方こそ、申し訳ありません。まさかそんなに喜んでいただけるとは思ってなくて」
「あのアルトゥニス嬢の研究に関われるなんて、植物学に携わる人間にとっては垂涎ものの体験ですから、むしろこちらからお金を払ってでもお願いしたいくらいです!」
(な、なんか知らないうちに過大評価を受けている……!)
憧憬の籠ったきらきらと輝く眼差しを受けながら、シェーラは自分と同じ分野にいる人々からどのように見られているのかを初めて知り、衝撃を受けた。
実際のところ、学問の研究において一番の障害になるのは資金繰りだ。人件費、資料や機材の購入費、研究所の賃料、講演会や実物を見るために国外や海外へ行くための旅費。植物学なら場合によっては栽培用の畑や温室を借りることもあるし、種や株も品種によっては高額なものもある。人間が生きるために出費を必要とするように、研究は維持だけでもお金が掛かる。研究者の中にはこの段階で躓いて自分の好きなことを思うままに探求出来ない者が多くいる。
その点で言えば、シェーラの環境は研究者にとって天国だ。
アルトゥニス侯爵家は貴族の中でも上から数えた方が早いくらい裕福なことに加え、両親や兄もシェーラのやりたいことに理解があり、元々植物園の経営をしていたこともあって成果によっては家の利益に繋がるからと惜しみなく予算を与えられた。
実際、シェーラはその資金で成果を出し、利益に還元しているため予算は年々増え続けている。
才能を十全に発揮出来る環境と、どこまでも探求を許されて自由に出来る環境によって蓄積されていった知識と経験。好循環はシェーラの才を葛の蔓のように際限なく成長させた。
そのため、ハンスの言ったことはあながち間違いでもないが、引きこもり生活を続けていたシェーラには知る由もない。
「お金は要りませんが、グロウライツさんがよろしいなら、機会があれば計算などをお願いしたいですね」
シェーラは算術があまり得意ではない。
この国では女性は学校に通わず家で家庭教師から授業を受ける。シェーラも例に漏れず、幼い頃から貴族令嬢としての教育を邸で受けていたので学校に通ったことはない。貴族令嬢にとって算術は然程重要とされておらず、植物の研究を始めるまではシェーラも簡単な四則演算くらいしか出来なかった。
しかし、研究の中で肥料や薬の分量や時間の計算が必要となったので、植物学と共に独学で勉強した。
シェーラにとって算術は食べるのは好きだが料理は苦手のような感じで、必要なものであって好きなものではなかった。全く出来ないことはないが、本音を言えば率先してやりたくはない。しかし、学問において算術は切っても切れない要所であるのも事実。
経験を積むことで計算にもある程度強くなったものの、今でも時々計算ミスをすることもあるシェーラとしては計算を委託出来るのはありがたいことだった。
「はい!」
力強く頷くハンスに、シェーラはふっと自然な笑みを溢した。
(ということは、また会えるのかしら?)
そうなったのなら、ジョウロで花に水を注ぐように、もっとたくさんの知識を与えたいとシェーラは思った。
アルトゥニス侯爵邸の書庫にあるシェーラが集めた古今東西の資料を見せて、研究室で今手掛けている研究を見せて意見を訊いて、シェーラが花を育てている庭でその美しさを語り合いたい。
シェーラは初めて、教えたいという欲求を抱いた。
自分の好きなことを追求する自身の性分に従い、シェーラは早速ハンスへ次へ繋げる約束をしようと口を開いた──その時。
──ガッシャ────ンッ! カンッ、カンッ、カラララ……。
何かが倒れて散乱し、転がる音がどこからか聞こえた。
「な、何事!?」
「お嬢様!」
まさか園内の植物に何かあったのかと、シェーラは立ち上がると直ぐに熱帯植物の区域から飛び出して廊下に出た。その後をリサ、トニー、それにハンスが追ってくる。
音はすでに止んでいたが、代わりに「何だ? 何だ?」という人の声が一方から聞こえ、そちらへ急いで向かう。辿り着いたのはさっき訪れた土産物売り場だった。
「ごめんなさい、ちょっと通して──何……これ……?」
集まった野次馬を掻き分けて中に一歩踏み込んだ瞬間、シェーラは室内の光景に絶句した。
倒れた木製の台、ひっくり返ったバスケット、そして砕けた硝子のように床に散らばったドライフラワー。色とりどりの花弁と一緒に転がっている割れたカプセル。
土産物売り場はまるで、花殺しの事件現場のような酷い有り様になっていた。
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
〖完結〗旦那様が私を殺そうとしました。
藍川みいな
恋愛
私は今、この世でたった一人の愛する旦那様に殺されそうになっている。いや……もう私は殺されるだろう。
どうして、こんなことになってしまったんだろう……。
私はただ、旦那様を愛していただけなのに……。
そして私は旦那様の手で、首を絞められ意識を手放した……
はずだった。
目を覚ますと、何故か15歳の姿に戻っていた。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全11話で完結になります。
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・
二人は正反対の反応をした。