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第一話 婚約者の浮気相手の婚約者
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「もし、お尋ねしたいのですが、ロッシー様はいらっしゃいますか?」
昼休み。
レティシアは婚約者であるロッシーの教室を訪ねていた。
「レティシア様! え、あ、その~・・・・・・ロッシー様は不在でして・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」
声を掛けた女子生徒がしどろもどろに答えると、レティシアの顔はどんどん翳っていった。
「ご不在、ということは──うっ! 胃が!」
「レティシア様!? 大丈夫ですか!?」
突然お腹を押さえて体をくの字に曲げたレティシアに、女子生徒が心配そうに声を掛ける。
「ご心配ありがとう。けれど、気にしないで。大丈夫だから。それより、早急にどこかに身を隠さなくては──」
「レティシア・ソルシェ────!!!!! また貴様の婚約者が俺の婚約者とどこぞへ消えたぞぉおお───────!!!!!」
「ぎゃああああ!!? 出たぁあああああああああああ!!!!!」
廊下の向こうから、物凄い勢いでレティシアへ向かってくる男子生徒にレティシアは悲鳴を上げて飛び上がった。
一目散に逃げようとしたレティシアだったが、男子生徒の足があまりにも速く、数メートル走っただけで捕まってしまう。
「ご、ごきげんよう、アレックス様」
口端をひくつかせながらも、何とか笑顔を作って挨拶をすると、アレックスと呼ばれた男子生徒は元々不機嫌そうだった顔にますます厳しい表情を浮かべた。
「何がごきげんようだ。こっちは不機嫌ようだぞ。今月入って五回目だぞ、五回目。まだ第一週だってのに、ふざけてんのか」
「私に言われましても──って、近い近い! 近いです!」
両肩を掴まれ、鼻と鼻の先がくっつきそうな程の至近距離で凄まれたレティシアは、大きな声で抗議した。
「ふんっ、とにかく探しに行くぞ。貴様も来い!」
「うぇええええ!?」
くいっと顎で着いて来いと命令したアレックスに、レティシアは不満の声を上げた。
レティシアの態度が気に入らないのか、アレックスはギロリと睨みつけると、こう言った。
「何が「うぇええええ!?」だ! 貴様の婚約者だろう。とっとと見つけて説教しろ、説教を。それで今回こそ説得しろ!」
「・・・・・・アレックス様だって、お説教しても説得は出来ていらっしゃらないのに」
「やかましい。俺だってやりたくないわ。けど、仕方ないだろう。あいつは俺の婚約者で、あいつと密会しているのは貴様の婚約者なのだから」
「はぁ~、メンドクサイ・・・・・・」
「それについては同感だ。とりあえず、裏庭辺りに行くぞ」
「はぁい」
レティシアは仕方なしにアレックスと並び、とぼとぼと背中を丸めて歩き始めた。
レティシアとアレックスは同学年であるものの、教室も別で数か月前までは何の関わりもない者同士であった。
しかし、今はこうして行動を共にしている。
何故か? 理由は至極簡単。
さっきアレックスが言っていた通り、レティシアの婚約者がアレックスの婚約者と浮気をしているからだ。
そしてアレックスはその度に、毎回毎回レティシアを引きずって二人を見つけ出し、それぞれの婚約者に説教をするのがここ最近の日課と化していた。最早、惰性と言ってもいい。
何度言っても別れようとしない婚約者たちに、レティシアはすでに諦めモードに入っていたが、真面目で頭が固く、融通の利かないアレックスは諦めることなく婚約者たちを説得しようとしている。それに毎回同行させられるのだから、レティシアはとうとうアレックスが来ると思うだけで胃痛を起こすレベルになってしまった。
勿論、一番悪いのは浮気をしている婚約者たちというのは分かっているが、それはそれ、これはこれ。婚約者共には勝手にしやがれと、諦めているレティシアにとっては毎度巻き込んでくるアレックスの方が厄介な存在であった。
一応、毎回最初は少し抵抗して見せるのだが、すぐに圧と勢いにやられてしまう。
そして例に漏れず、今回も同じパターンになってしまったレティシアはアレックスに気づかれないようにため息を溢した。
(はぁ~。もう放っておけばいいのに、ほんっと真面目ですよねぇ、この人)
横目でアレックスを見遣る。
銀髪に蒼い瞳。美白できめ細やかな肌。長身でしっかりした体つきで、顔立ちは童話に出てくる王子様のように女性が好みそうな麗しさがある。
黙っていれば、アレックスは文句のつけどころのない美青年だった。
アレックスに心を寄せる女子生徒は多いと聞く。しかし、残念ながら肝心の婚約者には刺さらなかったようだ。世の中とはままならないものである。
(まぁ、美人は三日で飽きるって言いますしね。けれど、アレックス様くらいの美人なら黙ってらっしゃればいくらでも見ていられると思うんですけどねぇ、黙ってらっしゃれば)
この後の展開を連日のやり取りで完璧に予測しきっているレティシアは、現実逃避がてらにアレックスで目の保養を行っていた。
「? おい、前を向かないと怪我するぞ」
じろじろと見てくる意図を掴めないアレックスは、不審そうな目を向けつつも、レティシアに注意を促すのであった。
昼休み。
レティシアは婚約者であるロッシーの教室を訪ねていた。
「レティシア様! え、あ、その~・・・・・・ロッシー様は不在でして・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」
声を掛けた女子生徒がしどろもどろに答えると、レティシアの顔はどんどん翳っていった。
「ご不在、ということは──うっ! 胃が!」
「レティシア様!? 大丈夫ですか!?」
突然お腹を押さえて体をくの字に曲げたレティシアに、女子生徒が心配そうに声を掛ける。
「ご心配ありがとう。けれど、気にしないで。大丈夫だから。それより、早急にどこかに身を隠さなくては──」
「レティシア・ソルシェ────!!!!! また貴様の婚約者が俺の婚約者とどこぞへ消えたぞぉおお───────!!!!!」
「ぎゃああああ!!? 出たぁあああああああああああ!!!!!」
廊下の向こうから、物凄い勢いでレティシアへ向かってくる男子生徒にレティシアは悲鳴を上げて飛び上がった。
一目散に逃げようとしたレティシアだったが、男子生徒の足があまりにも速く、数メートル走っただけで捕まってしまう。
「ご、ごきげんよう、アレックス様」
口端をひくつかせながらも、何とか笑顔を作って挨拶をすると、アレックスと呼ばれた男子生徒は元々不機嫌そうだった顔にますます厳しい表情を浮かべた。
「何がごきげんようだ。こっちは不機嫌ようだぞ。今月入って五回目だぞ、五回目。まだ第一週だってのに、ふざけてんのか」
「私に言われましても──って、近い近い! 近いです!」
両肩を掴まれ、鼻と鼻の先がくっつきそうな程の至近距離で凄まれたレティシアは、大きな声で抗議した。
「ふんっ、とにかく探しに行くぞ。貴様も来い!」
「うぇええええ!?」
くいっと顎で着いて来いと命令したアレックスに、レティシアは不満の声を上げた。
レティシアの態度が気に入らないのか、アレックスはギロリと睨みつけると、こう言った。
「何が「うぇええええ!?」だ! 貴様の婚約者だろう。とっとと見つけて説教しろ、説教を。それで今回こそ説得しろ!」
「・・・・・・アレックス様だって、お説教しても説得は出来ていらっしゃらないのに」
「やかましい。俺だってやりたくないわ。けど、仕方ないだろう。あいつは俺の婚約者で、あいつと密会しているのは貴様の婚約者なのだから」
「はぁ~、メンドクサイ・・・・・・」
「それについては同感だ。とりあえず、裏庭辺りに行くぞ」
「はぁい」
レティシアは仕方なしにアレックスと並び、とぼとぼと背中を丸めて歩き始めた。
レティシアとアレックスは同学年であるものの、教室も別で数か月前までは何の関わりもない者同士であった。
しかし、今はこうして行動を共にしている。
何故か? 理由は至極簡単。
さっきアレックスが言っていた通り、レティシアの婚約者がアレックスの婚約者と浮気をしているからだ。
そしてアレックスはその度に、毎回毎回レティシアを引きずって二人を見つけ出し、それぞれの婚約者に説教をするのがここ最近の日課と化していた。最早、惰性と言ってもいい。
何度言っても別れようとしない婚約者たちに、レティシアはすでに諦めモードに入っていたが、真面目で頭が固く、融通の利かないアレックスは諦めることなく婚約者たちを説得しようとしている。それに毎回同行させられるのだから、レティシアはとうとうアレックスが来ると思うだけで胃痛を起こすレベルになってしまった。
勿論、一番悪いのは浮気をしている婚約者たちというのは分かっているが、それはそれ、これはこれ。婚約者共には勝手にしやがれと、諦めているレティシアにとっては毎度巻き込んでくるアレックスの方が厄介な存在であった。
一応、毎回最初は少し抵抗して見せるのだが、すぐに圧と勢いにやられてしまう。
そして例に漏れず、今回も同じパターンになってしまったレティシアはアレックスに気づかれないようにため息を溢した。
(はぁ~。もう放っておけばいいのに、ほんっと真面目ですよねぇ、この人)
横目でアレックスを見遣る。
銀髪に蒼い瞳。美白できめ細やかな肌。長身でしっかりした体つきで、顔立ちは童話に出てくる王子様のように女性が好みそうな麗しさがある。
黙っていれば、アレックスは文句のつけどころのない美青年だった。
アレックスに心を寄せる女子生徒は多いと聞く。しかし、残念ながら肝心の婚約者には刺さらなかったようだ。世の中とはままならないものである。
(まぁ、美人は三日で飽きるって言いますしね。けれど、アレックス様くらいの美人なら黙ってらっしゃればいくらでも見ていられると思うんですけどねぇ、黙ってらっしゃれば)
この後の展開を連日のやり取りで完璧に予測しきっているレティシアは、現実逃避がてらにアレックスで目の保養を行っていた。
「? おい、前を向かないと怪我するぞ」
じろじろと見てくる意図を掴めないアレックスは、不審そうな目を向けつつも、レティシアに注意を促すのであった。
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