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第二話 流石にアウト
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「全く、どこにいるんだ? あいつら!」
「さぁ~?」
肩を怒らせながら廊下をずんずん進んでいくアレックスの後に続きながら、レティシアは生返事をした。
よく婚約者たちがいる裏庭には二人はおらず、今は校内を探し回っているところだ。
「おい、そこの。キャサリンを見かけなかったか?」
「ひっ!? い、いえ、見てません!」
突然アレックスに声を掛けられた男子生徒が、びくりとしながら顔をぶんぶん振って答える。
「そうか。悪かったな」
「何で、あんなに怯えられたんだ?」
「顔が怖いからでは?」
首を捻って不思議そうな顔をしているアレックスに、レティシアが返答した。
元々アレックスはにこやかな方ではないが、今は浮気中の婚約者の捜索中であるため、険相が出ており、大分怖い顔をしている。そのため、周囲の生徒はおっかなびっくりして廊下の端に寄っている。
アレックス自身はいくら機嫌が悪くても、無関係の人間に当たり散らすような真似はしないので、何故自分が怯えられているのか分からなかった。
だから、レティシアの指摘に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「そんなに怖いか? 俺の顔」
自身の頬を撫でて、レティシアに尋ねる。
「綺麗なお顔ですよ。ただ、表情が怖いです」
思ったままを伝えると、アレックスは僅かに面食らったような顔をしてから、またむすっとした。
「それは仕方ないだろう。この状況でにこにこ出来るか」
「なら、仮面でも被ってればいいんじゃないですか?」
「白昼堂々と仮面の男が校舎を練り歩いていたら、その方が不気味だろう!」
そんなやり取りをしながら人通りの少ない廊下まで来ると、ふと、アレックスが足を止めた。
「アレックス様?」
「何か聞こえないか?」
そう言われ耳を澄ませると、どこからか密やかな声が聞こえてくる。
「ふっ、ふふ・・・・・・っ、くすぐったぁい!」
「そう? じゃあ、ここは?」
男女の、甘ったるい声だった。
ついでに言うと、とても聞き覚えのある声だ。
「「・・・・・・」」
レティシアとアレックスは、暫し硬直して遠くを眺めていたが、はっとしたアレックスがレティシアの腕を引っ張って声のする教室を探り当てた。今は使われていない旧準備室だった。
アレックスがドアノブに手を掛けると、二人は一度視線を合わせて頷き合う。
そして、勢いよく扉を開くと、二人は旧準備室へと押し入った。
「「何やってんだっ!? お前らああああああああ!!!?」」
「あっ!」
「あー、レティにアレックス様ー!」
「っ!!!?」
「はいアウトォオオオオオ────ッ!!!!!」
旧準備室の奥の出窓の縁に向かい合い、絡まり合うようにしてくっついている男女を見、アレックスは目を見開いて絶句し、レティシアは自身の額に掌低を打って叫んだ。
肌色だった。
二人の精神を追い込んだものはそれに尽きる。
レティシアとアレックスのそれぞれの婚約者であるロッシーとキャサリンは、各々上着もベストもタイも脱ぎ捨てて、胸元の開いたシャツ一枚でくっついていた。
キャサリンの両手はロッシーの胸に添えられているし、ロッシーの右手はキャサリンの腰の際どいところに添えられている。
その光景だけでゴリッゴリに精神を削られ、アレックスは頭を抱えて片膝をつき、レティシアも全力疾走のあとのように両膝に両手をついて前屈みになっている。二人の頭上にはどんよりとした空気が渦巻いていた。
しかし、このままずっとこうしている訳にもいかない。そう思い、先に行動したのはアレックスだった。
「気でも狂ったのか、貴様ら!!? 神聖な学び舎で何をやっている!!!?」
「何って──」「「仲良し?」」
きょとん顔の二人が、声を揃えて答える。この態度にアレックスはこめかみにビキリと青筋を浮かべた。
「ロッシー様、流石にこれは・・・・・・ナイです」
レティシアもエグいものを見たようなどん引きの表情で、ロッシーに苦言を呈した。
「よくここが分かったね? 結構穴場だと思ったんだけどなー」
「・・・・・・声、外に漏れてましたよ?」
「うそっ! はずかしーっ!」
「まず服を着んか貴様ら」
頬を染めて下着姿の上半身を晒している婚約者に、虚無の視線を送ってアレックスが促す。
流石にこれ以上続けるつもりはないらしく、ロッシーとキャサリンは床に落ちているそれぞれの制服を拾い上げ、いそいそとそれを着た。
その間、レティシアはひたすら明後日の方角を見つめ、アレックスは髪の毛が逆立ちそうなほどの怒りの表情を浮かべ仁王立ちしていた。
着替え終わった二人は、先程まで行儀悪く乗っかっていた出窓の縁に腰掛け、人心地ついたと言わんばかりに息を吐き出して悪気なく言った。
「で? 何の用?」
この状況と顔ぶれを見て、そう訊ける図太さにレティシアはいっそ関心した。──隣のアレックスの額には青筋が更に増えたが。
それでも、怒鳴り散らしても意味がないと、一度深呼吸をしたアレックスは、努めて冷静に言った。
「訊かずとも分かるだろう。貴様らはそれぞれ婚約者がいる身だというのに、いつまでこのような道義に反するような真似を続ける気だ?」
アレックスにそう言われた瞬間、ロッシーとキャサリンは親に叱られた幼子のような顔をして唇を尖らせた。
「ええー、またその話ー?」
聞き飽きたんだけど、とロッシーがそっぽを向いた瞬間、ブツリと何かが切れる音がした気がした。
「・・・・・・っ!!!」
「あ、アレックス様! 落ち着いて!」
完全にキレたアレックスが、何をするかも分からないままロッシーたちの方へ踏み出したので、レティシアはその体に抱きついて必死で抑え込んだ。
(あー! もー! 結局こうなるのねっ!? だから来たくなかったんですよ──!!!)
喧嘩沙汰に巻き込まれるのは御免だし、騒ぎになった後で「止めなかったの?」と責められるのも嫌だった。
結果的に貧乏くじを引かされたレティシアの心の叫びを聞くものは、残念ながらいなかった。
「さぁ~?」
肩を怒らせながら廊下をずんずん進んでいくアレックスの後に続きながら、レティシアは生返事をした。
よく婚約者たちがいる裏庭には二人はおらず、今は校内を探し回っているところだ。
「おい、そこの。キャサリンを見かけなかったか?」
「ひっ!? い、いえ、見てません!」
突然アレックスに声を掛けられた男子生徒が、びくりとしながら顔をぶんぶん振って答える。
「そうか。悪かったな」
「何で、あんなに怯えられたんだ?」
「顔が怖いからでは?」
首を捻って不思議そうな顔をしているアレックスに、レティシアが返答した。
元々アレックスはにこやかな方ではないが、今は浮気中の婚約者の捜索中であるため、険相が出ており、大分怖い顔をしている。そのため、周囲の生徒はおっかなびっくりして廊下の端に寄っている。
アレックス自身はいくら機嫌が悪くても、無関係の人間に当たり散らすような真似はしないので、何故自分が怯えられているのか分からなかった。
だから、レティシアの指摘に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「そんなに怖いか? 俺の顔」
自身の頬を撫でて、レティシアに尋ねる。
「綺麗なお顔ですよ。ただ、表情が怖いです」
思ったままを伝えると、アレックスは僅かに面食らったような顔をしてから、またむすっとした。
「それは仕方ないだろう。この状況でにこにこ出来るか」
「なら、仮面でも被ってればいいんじゃないですか?」
「白昼堂々と仮面の男が校舎を練り歩いていたら、その方が不気味だろう!」
そんなやり取りをしながら人通りの少ない廊下まで来ると、ふと、アレックスが足を止めた。
「アレックス様?」
「何か聞こえないか?」
そう言われ耳を澄ませると、どこからか密やかな声が聞こえてくる。
「ふっ、ふふ・・・・・・っ、くすぐったぁい!」
「そう? じゃあ、ここは?」
男女の、甘ったるい声だった。
ついでに言うと、とても聞き覚えのある声だ。
「「・・・・・・」」
レティシアとアレックスは、暫し硬直して遠くを眺めていたが、はっとしたアレックスがレティシアの腕を引っ張って声のする教室を探り当てた。今は使われていない旧準備室だった。
アレックスがドアノブに手を掛けると、二人は一度視線を合わせて頷き合う。
そして、勢いよく扉を開くと、二人は旧準備室へと押し入った。
「「何やってんだっ!? お前らああああああああ!!!?」」
「あっ!」
「あー、レティにアレックス様ー!」
「っ!!!?」
「はいアウトォオオオオオ────ッ!!!!!」
旧準備室の奥の出窓の縁に向かい合い、絡まり合うようにしてくっついている男女を見、アレックスは目を見開いて絶句し、レティシアは自身の額に掌低を打って叫んだ。
肌色だった。
二人の精神を追い込んだものはそれに尽きる。
レティシアとアレックスのそれぞれの婚約者であるロッシーとキャサリンは、各々上着もベストもタイも脱ぎ捨てて、胸元の開いたシャツ一枚でくっついていた。
キャサリンの両手はロッシーの胸に添えられているし、ロッシーの右手はキャサリンの腰の際どいところに添えられている。
その光景だけでゴリッゴリに精神を削られ、アレックスは頭を抱えて片膝をつき、レティシアも全力疾走のあとのように両膝に両手をついて前屈みになっている。二人の頭上にはどんよりとした空気が渦巻いていた。
しかし、このままずっとこうしている訳にもいかない。そう思い、先に行動したのはアレックスだった。
「気でも狂ったのか、貴様ら!!? 神聖な学び舎で何をやっている!!!?」
「何って──」「「仲良し?」」
きょとん顔の二人が、声を揃えて答える。この態度にアレックスはこめかみにビキリと青筋を浮かべた。
「ロッシー様、流石にこれは・・・・・・ナイです」
レティシアもエグいものを見たようなどん引きの表情で、ロッシーに苦言を呈した。
「よくここが分かったね? 結構穴場だと思ったんだけどなー」
「・・・・・・声、外に漏れてましたよ?」
「うそっ! はずかしーっ!」
「まず服を着んか貴様ら」
頬を染めて下着姿の上半身を晒している婚約者に、虚無の視線を送ってアレックスが促す。
流石にこれ以上続けるつもりはないらしく、ロッシーとキャサリンは床に落ちているそれぞれの制服を拾い上げ、いそいそとそれを着た。
その間、レティシアはひたすら明後日の方角を見つめ、アレックスは髪の毛が逆立ちそうなほどの怒りの表情を浮かべ仁王立ちしていた。
着替え終わった二人は、先程まで行儀悪く乗っかっていた出窓の縁に腰掛け、人心地ついたと言わんばかりに息を吐き出して悪気なく言った。
「で? 何の用?」
この状況と顔ぶれを見て、そう訊ける図太さにレティシアはいっそ関心した。──隣のアレックスの額には青筋が更に増えたが。
それでも、怒鳴り散らしても意味がないと、一度深呼吸をしたアレックスは、努めて冷静に言った。
「訊かずとも分かるだろう。貴様らはそれぞれ婚約者がいる身だというのに、いつまでこのような道義に反するような真似を続ける気だ?」
アレックスにそう言われた瞬間、ロッシーとキャサリンは親に叱られた幼子のような顔をして唇を尖らせた。
「ええー、またその話ー?」
聞き飽きたんだけど、とロッシーがそっぽを向いた瞬間、ブツリと何かが切れる音がした気がした。
「・・・・・・っ!!!」
「あ、アレックス様! 落ち着いて!」
完全にキレたアレックスが、何をするかも分からないままロッシーたちの方へ踏み出したので、レティシアはその体に抱きついて必死で抑え込んだ。
(あー! もー! 結局こうなるのねっ!? だから来たくなかったんですよ──!!!)
喧嘩沙汰に巻き込まれるのは御免だし、騒ぎになった後で「止めなかったの?」と責められるのも嫌だった。
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