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お茶会編 Re:start
16.これはこれで想定外
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「あ、いたいた。マーカス、ルドルフ、エイミー」
「よぉ、オウル。久しぶりだな。いつぶりだ?」
「二ヶ月くらいかな。ルドルフとエイミーとはそれこそ半年ぶりだっけ? 元気にしてた?」
「元気元気! ようやく地方での仕事が終わって帰って来れたんだよ。あ、土産渡したいから今度時間作ってくんない? すっごい面白い形の土人形見つけたんだよ。翼のある羊頭の獅子でさー」
「オウルはそういうの興味ないでしょ。大丈夫よ、ちゃんとオウルが好きそうな名産のお菓子と茶葉を買ってきたから」
「ありがとう。お菓子と茶葉だけ貰うね」
「ルドルフは相変わらず変な趣味してるよな。婚約者のエイミーに感謝しとけよ」
「えー、カッコいいじゃん。それはそうと、愛してるよ♪ エイミー」
「はいはい」
「皆相変わらずそうで何よりだよ。ところで、もう耳にしてると思うから詳細は省くけど、紹介したい人がいるんだ。婚約者のジゼルだよ」
「初めまして。この度、オウル様と婚約しました。ジゼル・アーモンドと申します。お見知りおきを」
オウル様からご紹介に預り、旋毛から爪先まで意識を張り巡らせて礼を取りました。
オウル様のご友人方──オウル様の仰ったように、婚約の件は把握されているでしょう。
ラピスフィール公爵家での最初の日も夫人や使用人たちに警戒されてしまいましたし、恐らくここでもそうなるでしょう。
無理もありません。不貞の末にその相手と一緒になりたいという一方的な理由で婚約破棄をした令嬢の姉。オウル様に近しい方にとっては私は胡乱に見えているはずです。
だからこそ、第一印象がとても大切です。まずは礼節。当たり前のことですけど、その当たり前の礼節を弁えた人間であると認識してもらわなくてはならないくらいの入江に立たされているのですから、手抜かりはあってはなりません。
礼を尽くして義を重んじれば、活路は開けます。最初の顰蹙は覚悟の上、必ずや今後に繋がる良い関係を築いてみせます。
ほんの僅かでも不信感を与える素振りを見せてはならないと、少し唇を引き結び、顔を上げました。
「おう、俺はマーカス・ゼルフェン。オウルとは幼なじみっつーか、まぁ腐れ縁だな。よろしく」
「オウルの婚約者かー。なぁなぁ、うさぎは好き? 腹筋が六つに割れたうさぎの土人形があるんだけど、お近づきの印にあげよっか?」
「そんなもの貰っても困るでしょ。ごめんなさいね、馴れ馴れしい人で。私はオウルの友人でエイミー・ハーレイよ。こっちはルドルフ・ブラウン。よろしくね」
「よろしくー。あっ、ちなみに俺とエイミーは君らと同じ婚約者同士だよ。ラブラブだからおすすめのデートスポットとか知りたかったら教えるよ」
「誰と誰がラブラブなのよ」
「俺とエイミーだよ!? んもう、わざわざ仕事先にまで着いてきてくれたくせに、照れ屋さん」
「出発前に一緒じゃないと行きたくないって駄々捏ねたの誰だか忘れたの……?」
「お前ら夫婦漫才はその辺にしとけ。ほら見ろ、初見の奴は反応に困るだろ」
──なんだか、凄く賑やかです。
私の予想ではこう、オウル様を案じてどういう相手か見極めてやろう──といった感じの反応が返ってくるものと思っていたのですが、全く違う展開です。
警戒、疑心、不信──肌感ですが、そういったものは見受けられません。それどころか心なしか好意的に受け入れられているような……?
いえ、都合よく捉えてはいけません。そんなことあるはずありませんよね。では、これは一体──。
「ジゼル? どうかした?」
「ルドルフとエイミーがうるさいから喋るタイミング見失ったんだろ」
「ちょっと、私は別にうるさくないでしょ。騒々しいのはルドルフだけよ」
「えー、俺そんなにうるさくないし」
「「それはない」」
「ちょっと! マーカス、エイミーと息合わせないで! ジェラシー!」
「ジゼル、この三人が僕の友人たちだよ。三者三様に癖が強くて騒々しくて疲れることもあるけど、そういう時はスルーしても大丈夫だから、まぁまぁ適当に仲良くしてあげて」
「「「説明が雑」」」
ご友人方の前だからか、オウル様も少し砕けた喋り方をしてらっしゃいます。
気心の知れない会話に、この四人がとても親しい関係なのがわかります。だからこそ、わかりません。
仲の良い相手に私のような背景のある婚約者が出来れば、もっとこう──違った態度になると思うのですが。
「癖が強いのは俺以外の三人だっつーの。つか、ホントに喋んないな。あんた、ひょっとして具合でも悪いのか?」
「いえ、そういう訳では──あの、変なことをお訊ねしますけど……皆様は私がオウル様の婚約者であることに疑問はないのですか?」
続け様に予想が外れたせいで、何が最適解かを再度計算し始めた頭が情報を求めだしたのか、私は単刀直入に質問を放ってしまっていました。
「よぉ、オウル。久しぶりだな。いつぶりだ?」
「二ヶ月くらいかな。ルドルフとエイミーとはそれこそ半年ぶりだっけ? 元気にしてた?」
「元気元気! ようやく地方での仕事が終わって帰って来れたんだよ。あ、土産渡したいから今度時間作ってくんない? すっごい面白い形の土人形見つけたんだよ。翼のある羊頭の獅子でさー」
「オウルはそういうの興味ないでしょ。大丈夫よ、ちゃんとオウルが好きそうな名産のお菓子と茶葉を買ってきたから」
「ありがとう。お菓子と茶葉だけ貰うね」
「ルドルフは相変わらず変な趣味してるよな。婚約者のエイミーに感謝しとけよ」
「えー、カッコいいじゃん。それはそうと、愛してるよ♪ エイミー」
「はいはい」
「皆相変わらずそうで何よりだよ。ところで、もう耳にしてると思うから詳細は省くけど、紹介したい人がいるんだ。婚約者のジゼルだよ」
「初めまして。この度、オウル様と婚約しました。ジゼル・アーモンドと申します。お見知りおきを」
オウル様からご紹介に預り、旋毛から爪先まで意識を張り巡らせて礼を取りました。
オウル様のご友人方──オウル様の仰ったように、婚約の件は把握されているでしょう。
ラピスフィール公爵家での最初の日も夫人や使用人たちに警戒されてしまいましたし、恐らくここでもそうなるでしょう。
無理もありません。不貞の末にその相手と一緒になりたいという一方的な理由で婚約破棄をした令嬢の姉。オウル様に近しい方にとっては私は胡乱に見えているはずです。
だからこそ、第一印象がとても大切です。まずは礼節。当たり前のことですけど、その当たり前の礼節を弁えた人間であると認識してもらわなくてはならないくらいの入江に立たされているのですから、手抜かりはあってはなりません。
礼を尽くして義を重んじれば、活路は開けます。最初の顰蹙は覚悟の上、必ずや今後に繋がる良い関係を築いてみせます。
ほんの僅かでも不信感を与える素振りを見せてはならないと、少し唇を引き結び、顔を上げました。
「おう、俺はマーカス・ゼルフェン。オウルとは幼なじみっつーか、まぁ腐れ縁だな。よろしく」
「オウルの婚約者かー。なぁなぁ、うさぎは好き? 腹筋が六つに割れたうさぎの土人形があるんだけど、お近づきの印にあげよっか?」
「そんなもの貰っても困るでしょ。ごめんなさいね、馴れ馴れしい人で。私はオウルの友人でエイミー・ハーレイよ。こっちはルドルフ・ブラウン。よろしくね」
「よろしくー。あっ、ちなみに俺とエイミーは君らと同じ婚約者同士だよ。ラブラブだからおすすめのデートスポットとか知りたかったら教えるよ」
「誰と誰がラブラブなのよ」
「俺とエイミーだよ!? んもう、わざわざ仕事先にまで着いてきてくれたくせに、照れ屋さん」
「出発前に一緒じゃないと行きたくないって駄々捏ねたの誰だか忘れたの……?」
「お前ら夫婦漫才はその辺にしとけ。ほら見ろ、初見の奴は反応に困るだろ」
──なんだか、凄く賑やかです。
私の予想ではこう、オウル様を案じてどういう相手か見極めてやろう──といった感じの反応が返ってくるものと思っていたのですが、全く違う展開です。
警戒、疑心、不信──肌感ですが、そういったものは見受けられません。それどころか心なしか好意的に受け入れられているような……?
いえ、都合よく捉えてはいけません。そんなことあるはずありませんよね。では、これは一体──。
「ジゼル? どうかした?」
「ルドルフとエイミーがうるさいから喋るタイミング見失ったんだろ」
「ちょっと、私は別にうるさくないでしょ。騒々しいのはルドルフだけよ」
「えー、俺そんなにうるさくないし」
「「それはない」」
「ちょっと! マーカス、エイミーと息合わせないで! ジェラシー!」
「ジゼル、この三人が僕の友人たちだよ。三者三様に癖が強くて騒々しくて疲れることもあるけど、そういう時はスルーしても大丈夫だから、まぁまぁ適当に仲良くしてあげて」
「「「説明が雑」」」
ご友人方の前だからか、オウル様も少し砕けた喋り方をしてらっしゃいます。
気心の知れない会話に、この四人がとても親しい関係なのがわかります。だからこそ、わかりません。
仲の良い相手に私のような背景のある婚約者が出来れば、もっとこう──違った態度になると思うのですが。
「癖が強いのは俺以外の三人だっつーの。つか、ホントに喋んないな。あんた、ひょっとして具合でも悪いのか?」
「いえ、そういう訳では──あの、変なことをお訊ねしますけど……皆様は私がオウル様の婚約者であることに疑問はないのですか?」
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