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木上の恋バナ①

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「クリスお姉ちゃーん!」

「だ、大丈夫なの? そんな高いとこっ」

「平気ー」

「ロックは木登り一番上手だから、大丈夫だよ」

 今日は子供たちに連れられ、雑木林に来た。
 件の空き地は整地後、辺境伯様が芝を敷くことを決められたので、それが終わるまで立ち入り禁止になっている。
 雑木林は鬱蒼とした日影で、肌寒いくらい。
 あちこちに木々が生えているから、走ることは出来ないが、代わりに子供たちはその幹にしがみつき、ひょいひょいっとまるで小猿のように上っていく。

「皆、よく登れるわねぇ。私は怖くて無理だわ」

「コツ、掴めばできるよ。クリスおねぇちゃんも、この木なら登れると思う」

 そう言ってリアちゃんに手を引かれて連れてこられたのは、根本から二股に別れた木の前。そういう種類なのか、下の方にも足を引っ掛けられそうな枝がある。
 ヴィクトに引っ張って貰いながらだけど、屋根になら登ったことあるし、この木なら──

「よし! じゃあ、登ってみるね!」

「がんばってー」

「よいしょっと、んしょんしょ」

 まず、二股になっているところに足を掛ける。それから近くの枝に手を伸ばして──
 ぐっと、自身の重みを感じながら枝から枝へと乗り移る。
 途中、何度かうっかり落ちそうになってヒヤッとしたけれど、何とかそれなりに高いところまで行くことが出来た。
 太めの枝に腰を下ろして、人心地つく。

「ふーっ、肌寒かったのに、ちょっと汗かいちゃった」

 汗ばんだ肌を手で扇いで風を送り冷やしていると、私とは全く違って危うげなく登ってきたリアちゃんが隣に座る。
 リアちゃん、大人しそうな子なのに運動神経いいなぁ。

「木登り、上手だねぇ」

「これくらいなら、皆ヴィクトおにぃちゃんに教えて貰ったから出来るよ」

「あー、ヴィクト運動神経も常人離れしてるからねー。案外高いところ好きだし、気づいたら屋根の上とか登ってて何度驚かされたことか──」

 昔から何でも得意で、何でも出来ちゃうの。
 勉強でも運動でも、ヴィクトが躓いているところなんて見たことがない。

「クリスおねぇちゃんとヴィクトおにぃちゃんは仲良しさんなの?」

 突然そんなことを訊かれて驚いた。
 仲良し、仲良しかぁ。
 まぁ、改めると照れるけど、昔から仲は良い方よね。口喧嘩とかはしょっちゅうだけど、これと言って大きな喧嘩とかもしたことないし。

「え? うーん、まぁ、昔からずっと一緒だし、仲良しかなぁ」

「そうなの。じゃあ──」

 リアちゃんがもじもじしながらも、そろりと、何かを探るような上目遣いで見上げてきて、数秒言葉に詰まったように黙りこんでから、こんなことを訊ねてきた。

「クリスおねぇちゃんは、ヴィクトおにぃちゃんのこと、好きなの?」

「え!?」
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