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14,令嬢は指先で頭領の黒布を剥ぎ取った
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「気づいてたってこと? 私が盗賊団の一味だって」
「そうですよ。私も、ソウ殿下も。そもそも、一番最初にお気づきになられたのはソウ殿下でしたから」
カタリの返答に、サキは納得いかなそうにギリッと歯軋りをした
「どうして? 私の演技は完璧だった筈よ!」
「確かに、本性を見てから思うと、信じられないくらい大人しくて、悪事なんか考えられなさそうな女に見えたな」
「だったら、どーして!?」
ソウの言葉から、自分の演技に不備はなかった。
なら、どうしてバレたのかがサキには分からない。
今まで、あの演技を不自然に思って指摘してきな標的などいなかったのだから。
ソウはずっとカタリへと向けていた甘やかな視線を鋭利に変え、サキへ向くと、その質問に答えた。
「お前の演技は完璧だったと思うぞ。演技事態は。ただ、最初から方向性を間違ってただけで」
「方向性?」
サキが訝しげにソウの台詞の一部を復唱すると、ソウはすうっと息を吸い込み、一気に答えた。
「何でも肯定してくれて、褒めてくれて、従順で奥ゆかしくて控えめな彼女? そんな都合のいい女が現実にいる訳ねーだろ。バーカ! って思ってた」
「という訳で、ソウ殿下はすぐにサキさんが怪しいと思ったようです」
「んなっ」
サキは絶句し、固まってしまったが、暫くしてからぷるぷると震え始めた。
ソウは今までずっと言うのを我慢していたことを言えてすっきりしたのか、満足そうにしている。
「元々、お前たちの動きが活発になってきた頃から警戒してたんだ。それで、盗賊団は金庫破りの方法じゃなくて、何らかの方法で鍵を入手して盗みを働いてるんじゃないかってカタリが気づいて」
「はい。盗賊団の話題が大々的に広がっていってるのに、犯行手口──どのようにして盗まれたかは全く公表されていないことに違和感を覚えて。それで考えたんです。もしかして、今まで被害にあった方々は鍵を盗まれたんじゃないかって」
宝物庫の鍵を壊されて盗まれたのなら、警備の不備と盗賊団にそれだけの技術があると言い訳出来るが、鍵を盗まれたとあっては自身の管理能力が低かったせいだと言われかねない。
被害者は皆、王侯貴族だ。そのような自分の顔に泥を塗るような事実をわざわざ公表する者はいないだろう。
そこまで考え至ったカタリは、自分の見解を婚約者であるソウに話したのだ。
「それで俺は思ったんだよ。あ、もしカタリの推測通りなら、盗賊団に鍵を狙われるのは俺だなーって。だから、警戒はしてた」
「そしたら想像よりも分かりやすいのが来て、危うく笑いそうになったわ」と続け、カタリは、
「ソウ殿下は嘘つくのとか不得意ですものね。それでも騙されたフリがバレなかったのなら上出来です」
「だろ? だからカタリー、ごほーび!」
「ですから、それは後日に」
「あああああ! 人の前でイチャつくんじゃないわよ! ほんっと、何なのアンタら!?」
「結局、お前のせいじゃないか」
「うるさい!」
呆れて嘆息する頭領に、サキはヒステリック気味に言い返す。
その時、檻の柵の間へカタリが腕を伸ばし、頭領の顔を隠している黒布を掴んだ。
「!」
驚く頭領を他所に、カタリはその黒布を引っ張って剥ぎ取った。
「そんなにサキさんばかり責めては気の毒ですよ? 私により強い確信を与えて下さったのは貴方なのですから──お久しぶりですね。お花、頂けなくて残念ですわ。ね? トーマさん」
「そうですよ。私も、ソウ殿下も。そもそも、一番最初にお気づきになられたのはソウ殿下でしたから」
カタリの返答に、サキは納得いかなそうにギリッと歯軋りをした
「どうして? 私の演技は完璧だった筈よ!」
「確かに、本性を見てから思うと、信じられないくらい大人しくて、悪事なんか考えられなさそうな女に見えたな」
「だったら、どーして!?」
ソウの言葉から、自分の演技に不備はなかった。
なら、どうしてバレたのかがサキには分からない。
今まで、あの演技を不自然に思って指摘してきな標的などいなかったのだから。
ソウはずっとカタリへと向けていた甘やかな視線を鋭利に変え、サキへ向くと、その質問に答えた。
「お前の演技は完璧だったと思うぞ。演技事態は。ただ、最初から方向性を間違ってただけで」
「方向性?」
サキが訝しげにソウの台詞の一部を復唱すると、ソウはすうっと息を吸い込み、一気に答えた。
「何でも肯定してくれて、褒めてくれて、従順で奥ゆかしくて控えめな彼女? そんな都合のいい女が現実にいる訳ねーだろ。バーカ! って思ってた」
「という訳で、ソウ殿下はすぐにサキさんが怪しいと思ったようです」
「んなっ」
サキは絶句し、固まってしまったが、暫くしてからぷるぷると震え始めた。
ソウは今までずっと言うのを我慢していたことを言えてすっきりしたのか、満足そうにしている。
「元々、お前たちの動きが活発になってきた頃から警戒してたんだ。それで、盗賊団は金庫破りの方法じゃなくて、何らかの方法で鍵を入手して盗みを働いてるんじゃないかってカタリが気づいて」
「はい。盗賊団の話題が大々的に広がっていってるのに、犯行手口──どのようにして盗まれたかは全く公表されていないことに違和感を覚えて。それで考えたんです。もしかして、今まで被害にあった方々は鍵を盗まれたんじゃないかって」
宝物庫の鍵を壊されて盗まれたのなら、警備の不備と盗賊団にそれだけの技術があると言い訳出来るが、鍵を盗まれたとあっては自身の管理能力が低かったせいだと言われかねない。
被害者は皆、王侯貴族だ。そのような自分の顔に泥を塗るような事実をわざわざ公表する者はいないだろう。
そこまで考え至ったカタリは、自分の見解を婚約者であるソウに話したのだ。
「それで俺は思ったんだよ。あ、もしカタリの推測通りなら、盗賊団に鍵を狙われるのは俺だなーって。だから、警戒はしてた」
「そしたら想像よりも分かりやすいのが来て、危うく笑いそうになったわ」と続け、カタリは、
「ソウ殿下は嘘つくのとか不得意ですものね。それでも騙されたフリがバレなかったのなら上出来です」
「だろ? だからカタリー、ごほーび!」
「ですから、それは後日に」
「あああああ! 人の前でイチャつくんじゃないわよ! ほんっと、何なのアンタら!?」
「結局、お前のせいじゃないか」
「うるさい!」
呆れて嘆息する頭領に、サキはヒステリック気味に言い返す。
その時、檻の柵の間へカタリが腕を伸ばし、頭領の顔を隠している黒布を掴んだ。
「!」
驚く頭領を他所に、カタリはその黒布を引っ張って剥ぎ取った。
「そんなにサキさんばかり責めては気の毒ですよ? 私により強い確信を与えて下さったのは貴方なのですから──お久しぶりですね。お花、頂けなくて残念ですわ。ね? トーマさん」
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