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13,王子は素を見せ、令嬢は仮面を脱いだ
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「ソウ王子! 助けて下さい! カタリ様が何か勘違いをされているようで、宝物庫に閉じ込められたんです! 早くここから出して下さい!」
サキはソウ好みの少女の皮を被って、ソウにここから出して欲しいと縋るように訴えた。
何故、ここにソウがいるのかまでは頭が回らなかった。
ただ、サキはあっさりとソウを篭絡し、部屋から鍵を盗めたことから、自分の言い分を信じ込ませることが出来るという自信があったのだ。
しかし──。
ソウはサキを一瞥しただけで、一瞬で視線を反らした。その眼差しは、ソウの部屋で過ごした時に向けられたものとは比べられない程、冷たく冷えきっている。
だが、カタリの隣まで歩み寄り、その胸ぐらを掴んでいるサキの手を叩き落とした途端に、その瞳は氷解した。
「──え?」
思いもよらないソウの行いにサキは唖然としてしまう。
そんな様子も構わず、ソウは今まで見たことが亡いほどに破顔してカタリに抱きつき、
「カタリ~♪ ちゃんと盗賊団捕まってるな! 俺も役に立っただろ? ご褒美くれ。ごほーび!」
まるで主人に撫でてとねだる子犬のように頬擦りするソウ。その腰に千切れんばかりに振られた尻尾の幻覚が見えそうだ。
「分かりました。分かりましたから。それは後日にして下さい。というか離れて──」
「やだ! だってここ数日、こいつらのせいで全っ然一緒に過ごせてないんだぞ! これ以上はカタリが欠乏して死んでしまう~」
子供っぽく意見を通そうとするソウの言動は、サキには信じがたいものだった。
元より、自分本位な発言はちらほら見受けられたが、これは──いや、そもそも───
「なんで、何で仲良さそうにしてんのよ、アンタら! 婚約破棄した筈でしょ!? それにそもそもそんな仲良くしてなかったじゃない! もっとこう、淡白っていうか、無関心っていうか──」
「・・・・・・」
仲睦まじそう──というよりは、あれほどカタリに対して無関心、時には邪険にしていたソウが溶けたチョコレートのように顔をデレデレにしてカタリにくっついている姿に、訳が分からず、サキは浮かんだ疑問を片っ端から口にした。
その隣では考え事をしているように首魁が黙り込んでいる。
取り乱したサキを見て、目を細めたカタリは答える。
「あら? もしかしてサキさんは嘘や人を騙すのが盗賊だけだとでも思ってたんですか? だとしたら残念でしたね。それは私たちの得意分野でもあるんですよ」
今まで、カタリが見せた微笑みは完璧で、完成された美しい仮面のようだった。しかし、それは同時に無機質で、どこか正体の掴めない不気味さがあった。
しかし、今カタリが浮かべている笑みは、美しさの中にも『悦』の混じった人間らしいものだった。
サキはソウ好みの少女の皮を被って、ソウにここから出して欲しいと縋るように訴えた。
何故、ここにソウがいるのかまでは頭が回らなかった。
ただ、サキはあっさりとソウを篭絡し、部屋から鍵を盗めたことから、自分の言い分を信じ込ませることが出来るという自信があったのだ。
しかし──。
ソウはサキを一瞥しただけで、一瞬で視線を反らした。その眼差しは、ソウの部屋で過ごした時に向けられたものとは比べられない程、冷たく冷えきっている。
だが、カタリの隣まで歩み寄り、その胸ぐらを掴んでいるサキの手を叩き落とした途端に、その瞳は氷解した。
「──え?」
思いもよらないソウの行いにサキは唖然としてしまう。
そんな様子も構わず、ソウは今まで見たことが亡いほどに破顔してカタリに抱きつき、
「カタリ~♪ ちゃんと盗賊団捕まってるな! 俺も役に立っただろ? ご褒美くれ。ごほーび!」
まるで主人に撫でてとねだる子犬のように頬擦りするソウ。その腰に千切れんばかりに振られた尻尾の幻覚が見えそうだ。
「分かりました。分かりましたから。それは後日にして下さい。というか離れて──」
「やだ! だってここ数日、こいつらのせいで全っ然一緒に過ごせてないんだぞ! これ以上はカタリが欠乏して死んでしまう~」
子供っぽく意見を通そうとするソウの言動は、サキには信じがたいものだった。
元より、自分本位な発言はちらほら見受けられたが、これは──いや、そもそも───
「なんで、何で仲良さそうにしてんのよ、アンタら! 婚約破棄した筈でしょ!? それにそもそもそんな仲良くしてなかったじゃない! もっとこう、淡白っていうか、無関心っていうか──」
「・・・・・・」
仲睦まじそう──というよりは、あれほどカタリに対して無関心、時には邪険にしていたソウが溶けたチョコレートのように顔をデレデレにしてカタリにくっついている姿に、訳が分からず、サキは浮かんだ疑問を片っ端から口にした。
その隣では考え事をしているように首魁が黙り込んでいる。
取り乱したサキを見て、目を細めたカタリは答える。
「あら? もしかしてサキさんは嘘や人を騙すのが盗賊だけだとでも思ってたんですか? だとしたら残念でしたね。それは私たちの得意分野でもあるんですよ」
今まで、カタリが見せた微笑みは完璧で、完成された美しい仮面のようだった。しかし、それは同時に無機質で、どこか正体の掴めない不気味さがあった。
しかし、今カタリが浮かべている笑みは、美しさの中にも『悦』の混じった人間らしいものだった。
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