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第一章 カースドナイト
第二話 悪魔出現
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「・・・・・・どーしても?」
「祖父の形見ですので」
要求を断られたエミーリアは、そこを何とかとおねだりするように上目遣いでクローシィを見上げて訊ねたが、クローシィはやんわりと首を横に振った。
「まぁ、そりゃそうよね。いきなりこんなこと言われても困るわよね・・・・・・」
エミーリア自身もすんなりと要求が通るとは思っていなかったようで、肩を落としつつも、表情はそこまで落ち込んでおらず、苦笑いを浮かべていた。
「申し訳ありません。あの、エミーリア殿下には武器の収集のご趣味があったのでしょうか?」
「え? いえ、生憎とペーパーナイフより大きい刃物すら持ったことはないわ」
身分の高い人間の中には骨董品として武具を集める蒐集家も少なくない。例のルビーの剣は、共に保存されていた証書からアンティークとしてもかなり価値があるらしく、クローシィはてっきりエミーリアもその手の理由から剣を求めているのだと思ったが、検討違いのようだった。
「では、王女殿下は何故剣を──」
エミーリアは剣を求める理由を言いたくないらしく、目的は全く明かそうとしなかったが、趣味でなければもしかしたら逼迫した理由があるのやもと斬り込もうとしたその時。
『おいおい、エミリー! そんなうだうだやってねーで、王女の権限とか何かそーゆーあれでとっとと差し出させろよ! 『ルビーハート』じゃねぇんなら別にいらねぇんだから!』
「ちょっと!?」
突如、頭上から若い男の声がして、クローシィは身構えた。
エミーリアは声の主を知っているようだが、その顔には焦りが見える。
そうこうしているうちにエミーリアの身体には煤のような黒い霧が立ち込め、それらは一気に渦巻き、エミーリアの頭上背後で人型を造り上げた。
「っ!?」
周囲の自然由来の魔力のざわめきを感じ、一瞬吹き荒れた突風にクローシィは腕で目を覆う。
空気が落ち着き、クローシィが瞼を開くと、宙にはクローシィと年端も変わらない青年が悠然と浮かんでいた。
端がボロボロになった黒いマントを靡かせ、血のように紅い瞳を三日月のように細めた耽美な青年。
青年からはおよそ人間ではあり得ない魔力を感じ、クローシィは即座に臨戦態勢を取った。
「──何者だ」
静電気のように空気がピリつく。
クローシィの誰何の声に青年は泰然と口端を吊り上げ、答える。
「俺様か? わはは! 聞いておののけ! 俺様は超がつくほど強くて凄い大悪魔! その名もシン様だ! おののいたらお前の持ってるルビーの剣を差し出しやがれ!」
「・・・・・・ばか」
シンと名乗った悪魔の堂々とした強気の自己紹介に、エミーリアは小さく呟き片手で目を覆う。
クローシィは魔力から確かに悪魔と判断した瞬間、助走をつけてシン目掛けて飛び膝蹴りを繰り出した。
「祖父の形見ですので」
要求を断られたエミーリアは、そこを何とかとおねだりするように上目遣いでクローシィを見上げて訊ねたが、クローシィはやんわりと首を横に振った。
「まぁ、そりゃそうよね。いきなりこんなこと言われても困るわよね・・・・・・」
エミーリア自身もすんなりと要求が通るとは思っていなかったようで、肩を落としつつも、表情はそこまで落ち込んでおらず、苦笑いを浮かべていた。
「申し訳ありません。あの、エミーリア殿下には武器の収集のご趣味があったのでしょうか?」
「え? いえ、生憎とペーパーナイフより大きい刃物すら持ったことはないわ」
身分の高い人間の中には骨董品として武具を集める蒐集家も少なくない。例のルビーの剣は、共に保存されていた証書からアンティークとしてもかなり価値があるらしく、クローシィはてっきりエミーリアもその手の理由から剣を求めているのだと思ったが、検討違いのようだった。
「では、王女殿下は何故剣を──」
エミーリアは剣を求める理由を言いたくないらしく、目的は全く明かそうとしなかったが、趣味でなければもしかしたら逼迫した理由があるのやもと斬り込もうとしたその時。
『おいおい、エミリー! そんなうだうだやってねーで、王女の権限とか何かそーゆーあれでとっとと差し出させろよ! 『ルビーハート』じゃねぇんなら別にいらねぇんだから!』
「ちょっと!?」
突如、頭上から若い男の声がして、クローシィは身構えた。
エミーリアは声の主を知っているようだが、その顔には焦りが見える。
そうこうしているうちにエミーリアの身体には煤のような黒い霧が立ち込め、それらは一気に渦巻き、エミーリアの頭上背後で人型を造り上げた。
「っ!?」
周囲の自然由来の魔力のざわめきを感じ、一瞬吹き荒れた突風にクローシィは腕で目を覆う。
空気が落ち着き、クローシィが瞼を開くと、宙にはクローシィと年端も変わらない青年が悠然と浮かんでいた。
端がボロボロになった黒いマントを靡かせ、血のように紅い瞳を三日月のように細めた耽美な青年。
青年からはおよそ人間ではあり得ない魔力を感じ、クローシィは即座に臨戦態勢を取った。
「──何者だ」
静電気のように空気がピリつく。
クローシィの誰何の声に青年は泰然と口端を吊り上げ、答える。
「俺様か? わはは! 聞いておののけ! 俺様は超がつくほど強くて凄い大悪魔! その名もシン様だ! おののいたらお前の持ってるルビーの剣を差し出しやがれ!」
「・・・・・・ばか」
シンと名乗った悪魔の堂々とした強気の自己紹介に、エミーリアは小さく呟き片手で目を覆う。
クローシィは魔力から確かに悪魔と判断した瞬間、助走をつけてシン目掛けて飛び膝蹴りを繰り出した。
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