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海編
47.練習航海!
しおりを挟む出港準備が整ったとの報告が入ったのでさっそく船は動くかと思いきや大きな問題があった。
それは現代艦の動力となる主機と呼ばれる車で言うところのエンジンを始動させなければならないことだった。
車であればキーをさして回せばエンジンが動くのだが、この大型艦ではそうはいかない、何故なら蒸気タービンと呼ばれる内燃機関を動かさなければいけないからだ。
それを動かすのにざっと説明すると、まず水蒸気を発生させる為にボイラーの中の水を重油が燃えた熱で沸騰させこの水蒸気の圧力を上げ、その高圧の水蒸気をタービンと呼ばれる大きな扇風機みたいなものに吹き付けそれを回転させそれでやっと動くわけである。
しかし、そのすべてが動くまでに時間がかかる、大和のような大型艦ならなおさらだ。
機関長からの報告だと完全停止状態の機関を始動から行うとなると約一日はかかるそうだ。
それを聞いて一同唖然としていた、だがそれもそうだろうコンダート王国海軍の主力艦艇は帆船なので風をうまく操れれば動いていたのであるから当然の反応だ。
ワタは今まで戦車やハンヴィーしか乗ってこなかったのですぐに動くものだと思っていたその期待を易々と粉砕された。
しかし、そんなことで止まっていては仕方がないので艦の首脳を会議室に集め作戦会議を行うことにした。
会議室には海軍大臣のガンダルシア・ヴィアラと練習艦隊司令長官のキーレ・ミサ中将、艦長のガンダルシア・エミリア大佐をはじめ大和の幹部は以下の通り。
副長 エレン中佐(艦長補佐)
船務長 (通信・電子装備の指揮運用)
航海長 (操舵や航法・見張りの指揮運用)
砲術長 (主砲・副砲・対空砲と弾火薬庫の指揮運用)
機関長 (機関・発電機の指揮運用)
主計長 (給食・経理)
軍医長 (軍医と衛生兵の指揮)
運用長 (ダメージコントロール(応急班)と艦の補修や点検の指揮運用)
このメンバー達は長い机が3列ぐらいならび、その前には黒板があり教壇のようなものはないがまるで教室のようなところに集まっていた。
緊張からくる重苦しくピリピリとした空気の中、まず俺からの発言から行われた。
「まず、諸君らにはこれから慣れないこの艦を運用してもらっていることに感謝する、謝辞はここまでにして集まってもらったのは他でもない今後についてだ、先に予定を大臣から」
「はい、今後はまず各種機器の試験運用と練習航海及び周辺海域の哨戒活動を目的としていく、次に行動予定を順を追って説明すると、明日1000に砲撃演習をするための標的としてキーレ港より約10海里(かいり)(1海里は約1852mのことで10海里は約19㎞、船の速度もこれに元に1時間を一海里進むノットで表す、(例:40kt=約74.1km/h))先にある演習海域内の小島を使用する、その目標に対して20㎞先から主砲と副砲にて射撃を二隻同時に行う、射撃訓練が終わり次第練習航海も兼ねてキーレ港より沖合200㎞先まで向かい同時に哨戒任務につく、その後は帰投し着任してくる他の艦長を迎える、以上だ」
「次に敵の動きについて司令長官から」
「はい、海軍情報部よりもたらされた情報によると二週間前に残存していた西部方面艦隊所属艦がバーグ沖にて帝国側の艦隊を発見した模様、その数はおよそ100隻以上で帝国海軍オイレンベルガ大将率いる第三艦隊の可能性ありとのことです、このままいくと第三艦隊の位置はおそらく明日か遅くても明後日にはキーレ沖150㎞の海域に到達するはずです」
この帝国海軍第三艦隊は王国側の艦隊を次々に撃破してきたいわば“無敵艦隊”だ、さらに王国にとって厄介なのはこの艦隊所属の海兵隊によって民間の船や港などを破壊し、沿岸の町を燃やし、人をさらい、殺し、悪逆無道の行為を繰り返している。
それを聞いたその場のすべての者が怒りや悲しみ悔しさなどのそれぞれ複雑な表情をしていた、それもそのはずでほとんどが家族や友人をこの第三艦隊によって殺されたか連れ去られたりしていたからだ。
つまりここにいるメンバーたちにとって直接的な憎き敵(かたき)なのだ。
しばしの沈黙の後、意を決した
「皆聞いたな?これは好機だ陛下より賜りし巨大で強大なこれらの艦(ふね)によってあの憎き帝国の艦隊に対して一矢報いようではないか、そしてできる限り戦力を削ぐのだ、覚悟はいいな?」
皆その言葉を聞いた瞬間全員が立ちあがり真剣な面持ちで敬礼をしていた。
それに対してヴィアラやエミリア、リサ達も立ち答礼をしていた。
「会議は以上だ、解散!」
その日の深夜、機関員たちの頑張りもあってか無事機関始動し艦内の電気も使えるようになった、時を同じくして僚艦の武蔵も無事動けるようになったようだった。
艦内用電源が確保されたことによって、ハミルトンでの戦車戦にも用いた戦術データリンクシステム(略称 TDLS)も機能させることに成功し僚艦である武蔵との通信や情報共有が可能になっていた。
ただこの時思いもよらぬアクシデントに両方の艦で起きていた。
それは普段ここの世界の夜は街灯のようなものがあっても淡い光しかなく量もそんなにないので薄暗いか完全に真っ暗なはずなので、艦内にいた兵たちにとって蛍光灯の明るい光は目がくらむような光で、ただでさえさっきまで使える光はランタンしかなかったのでよっぽどだったため、一時艦内中がパニックに陥っていた。
しかし、これを予想していた俺は艦内放送を使って混乱を沈めさせた。
この状態に流石のヴィアラもびっくりしていたと同時に自身も軽く混乱していたのもあって動けずにいた。
「し、失礼しました、陛下の手を煩わせてしまい……」
そう言うエミリア艦長は情けなさと恥ずかしさからなのか顔をうつむけながら俺に謝ってきていた。
「いいんだ、皆慣れてないことなんだからしょうがないさ、それに少しの騒ぎで済んだのだから、そんなことよりできるだけ早く出港しないと敵が沿岸近くまで来てしまうだろ?」
これを聞いてエミリアは言葉より先に伝令兵に指示を出し各部署に対して伝声管によって素早く出港を促した。
なおも混乱から脱却できていなかったリザとヴィアラはその動きにあっけにとられ固まっていた。
そんな二人を放置して兵や各部隊長はせわしなく動き始めた。
「陛下ただいまより出港いたします!…………出港準備!!」
「抜錨!」
「もやい解け!」
「抜錨完了です!」
「右舷最微速!」
「右舷最微速」
「とーりかーじ! 20度ヨーソロー」
「とーりかーじ! 20度ヨーソロー!」
「船体離岸しました!」
「了解」
「舵戻せ」
「舵戻せ!」
「両舷微速前進」
「両舷微速前進ヨーソロー!」
ようやく出港できた艦隊はまだ夜も明けぬ中ひっそりとキーレの港を後にした
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