異世界を救った勇者ですが、現代日本で第二の人生を送っています。

ふるっかわ

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1章 勇者、現代日本の洗練を受ける

勇者、異世界で仲間を得る 2

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夜風に吹かれながらキラキラと輝く夜の街を眺めていると、下の階から人が近づいてくる気配を感じた。そして屋上の片隅に有るドアがカチャリと開いた。

「遅くなってごめんね。帰り際に店長にシフトの事で引き止められちゃってさ」

「お疲れ様でして。俺も今着いたばかりだから気にしないでくれ。それじゃあ帰ろうか?」

「あっ、ちょい待ち。良かったら今日はどこかでご飯を食べて帰らない?少し飲み直したい気分なのよね」

「俺は構わないけど良いのかい?情け無いけどほら、俺はお金を持って無い訳だし…」

「気にしなくて良いわよ。前から気になってたんだけど、エルって私にかなり気を遣っているわよね?」

「そりゃ色々とお世話になってるし、気を使わない訳にはいかないよ。アスカがいなければ俺は今頃どうなってたか分からない」

「えっとね?あまり気を使わないでくれた方が嬉しいかな…?エルは私の恩人だし、それに異世界の人と交流が有るのって、多分この世界で私1人だけだと思うの。それって凄く貴重な経験じゃない?私は自分でエルと一緒にいたいって思うから、エルにお願いして家にいてもらってるのよ。私はエルと対等でいたいの」

俺は今まで自分の存在がアスカの負担になっているとばかり考えていたが、それは俺の勝手な思い込みだった様だ。

少し酒に酔っているのだろうか?街の光に照らされるアスカの頬は紅く染まっている様に見える。

ーー対等な関係でいたい。

パロ・ブランジュで勇者として邪神から世界を救う使命を帯びていた俺に対し、大国の王族や貴族達でさえどこか遠慮をした様な、腫れ物を触る様な態度で接して来た。

彼らの態度に滅茶苦茶に嫌な気分になった訳ではないが、良い気分でも無かったのが正直なところだ。意図せずとは言え、俺もアスカにあの時の自分の様な気持ちにさせていたのかも知れない。

俺を1人の人間として見てくれるのは数名の仲間達だけだった。ナックル、ルーファス、リンファ、クリス、レイン…恐らくもう会う事が出来ない大切な仲間達。

この世界に来て孤独を感じていたがそれは間違いだった様だ。バカだな。俺の事を1人の人間としてちゃんと見てくれる人はこの世界にもいるって事に気付けて無かった。

「悪かった。確かに俺はアスカに対して負い目を感じていた。最近の俺は確かに少し卑屈だったと思う。勿論アスカへの感謝の気持ちを忘れるつもりは無いけど、これからは態度に気を付けるよ」

「分かればよろしい。さぁ、いつまでもこんな所にいないでさっさとご飯を食べに行きましょ」
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