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1章 婚約破棄
004 実在した伝説
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賢者マリウス。その名前を知らない者はこのティンバードール王国に…いや、世界中探しても居ないのではないだろうか。
100年前突如世界に姿を現した、魔物と呼ばれる異形の怪物。魔物達の力は凄まじく、1つ、また1つと国が滅ぼされ、やがて人類という種そのものが絶滅の危機に瀕する事になった。
しかし今から50年ほど前、当時滅亡の危機にあったティンバードール王国の王子…カイザル陛下の前にマリウスと言う名の賢者が現れ、ティンバードール王国に攻め入った魔物の群を打ち破った。
その後ティンバードール王国は世界中の国と力を合わせ、各地で魔物達の軍勢を打ち払い、世界には再び平穏が訪れた…この物語は貴族、平民、国を問わず世界中の人間が知っている話だ。
その伝説の賢者が目の前の青年?それにしては若すぎる。少なくとも50年以上生きているとは思えない。
「カイザル?ホントに君があのカイザルなのかい?あちゃ~こんなにヨボヨボになっちゃって…最後に会ったのは君の即位式だったかな?あれから何年経った?」
「45年で御座います…何度かマリウス先生にお便りをお送りしたのですが、お返事をいただけませんでしたのでもう見捨てられたとばかり思っておりました」
先王陛下の目から涙が滴り落ちる。救国王と賢者の再会…私は今とんでも無い伝説的な場面に立ち会っているのかもしれない。
「45年かぁ…あっ!?リリアンは!?君がこんなヨボヨボのお爺ちゃんになってるって事はもしかしてもう…」
「いえ、リリアンは、妻はまだ存命であります。辛うじて…と言った具合ではありますが…」
「そっか…ねぇ、カイザル?見たところ君も、もって後5年…ってトコだと思う。もっと2人で一緒にいたい?」
「正直…人として真っ当に死んでいく事が私達の運命…だと思います。ですが…ですが欲を捨てきれないのです…私とリリアンは王と王妃として一緒に生きて来ましたが、夫婦として共にいれたのは先生と過ごした数年間のみでした。出来るなら王と王妃では無く普通の夫婦としてもっと一緒に生きたかった」
リリアン陛下…カイザル陛下の妻にしてこの国の先代の王女陛下だ。若い頃は陛下や賢者様と共に剣を握って魔物と戦ったと語り継がれているが、最近は体調が悪く公の場に姿を現す事も無かった。
「君とリリアンには大変な役回りを押し付けてしまったもんね…分かった。君の願いを叶えよう…来い!クロノス!」
青年…マリウス様が宙に手をかざす。辺りは眩い光に包まれた。
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