5 / 10
1章 婚約破棄
005 奇跡
しおりを挟む
「なに…これ…綺麗…」
思わず言葉が漏れる。マリウス様の放った光が収まると、淡い蒼の光が人の形に収束していた。
『よぅ、マリウス。って…そっちはもしかしてカイザルの坊主か!?ちょっと見ない内にジジイになったなぁ』
「おぉ…クロノス様…お久しゅうございます」
「急に呼び出して悪かったねクロノス。ちょっと頼みがあるんだよ。カイザルと…リリアンって覚えてる?2人の時間を50年くらい巻き戻して欲しいんだけどさ。お願い出来る?」
『あたぼうよ!俺を誰だと思ってるんだ?50年で良いんだな?カイザルはここにいるジジイだとしてリリアン…リリアンっと…おい、リリアンのヤツの気配探ったけど、アイツ結構ギリギリじゃねーか。次から時間戻せって命令する時はもっと余裕もって呼び出せよ。死んだヤツの時間戻すのってハデスの機嫌取らなきゃいけねーから面倒くせーんだよ』
「ゴメンゴメン。ちょっとぼーっとしてたらアッと言う間に50年くらい経っちゃっててさ。それじゃあお願いね」
コクリと人型の光…マリウス様がクロノスと呼んでいた存在が頷いた様に見えた。と同時にカイザル殿下の身体が光に包まれる。
「おっ…おお…身体が…身体に力がみなぎって来る…」
『リリアンの方も戻しといたぜ。そんじゃ俺は帰るからまた何か有ったら呼べよ。じゃあな』
「うん。ありがとうねクロノス。それじゃまた」
人型の光が霧散して消える。今のは一体何だったのだろう。
「ち!?父上!?一体そのお姿は!?」
「ふぅ…やはり若さとは良い物じゃのぅ…思い通りに身体が動くわい」
シーシャル国王陛下が驚きの声を上げる。それもその筈だ。カイザル先王陛下は若い青年の姿になっていた。
「良かったね。あっ、忘れてたけど今日は君のお孫さんの婚約パーティーに来たんだった。けど…何かそんな雰囲気でもなくなっちゃったね…」
皆のマリウス様を見る目が先程までとは全然違う。ある者は恐れる目で、またある者は羨望の目で、そしてある者は媚びる様な目でマリウス様を見つめていた。
「マ!マリウス様!お願いで御座います!私も!私めも30年…いや10年ほど若返らせていただけませんか!?」
「おい貴様!男爵風情がおこがましいぞ!マリウス様!私はこの国の公爵家の家長で御座います!若返えらせるなら私を!私を若返らせて下さい!」
「何言ってるの!貴方が公爵になれたのは私の婿になったからでしょ!マリウス様!私こそが公爵家の正当な血筋を引く者!私を若返らせて下さいまし!」
会場内が騒然となる。それはそうだ。人を若返らせる魔法なんて他では聞いた事も無い。この機を逃せば、若返る事が出来る次の機会など恐らく無いだろう。
「貴方達!見苦しいにも程があります!静粛になさい!」
思わず言葉が漏れる。マリウス様の放った光が収まると、淡い蒼の光が人の形に収束していた。
『よぅ、マリウス。って…そっちはもしかしてカイザルの坊主か!?ちょっと見ない内にジジイになったなぁ』
「おぉ…クロノス様…お久しゅうございます」
「急に呼び出して悪かったねクロノス。ちょっと頼みがあるんだよ。カイザルと…リリアンって覚えてる?2人の時間を50年くらい巻き戻して欲しいんだけどさ。お願い出来る?」
『あたぼうよ!俺を誰だと思ってるんだ?50年で良いんだな?カイザルはここにいるジジイだとしてリリアン…リリアンっと…おい、リリアンのヤツの気配探ったけど、アイツ結構ギリギリじゃねーか。次から時間戻せって命令する時はもっと余裕もって呼び出せよ。死んだヤツの時間戻すのってハデスの機嫌取らなきゃいけねーから面倒くせーんだよ』
「ゴメンゴメン。ちょっとぼーっとしてたらアッと言う間に50年くらい経っちゃっててさ。それじゃあお願いね」
コクリと人型の光…マリウス様がクロノスと呼んでいた存在が頷いた様に見えた。と同時にカイザル殿下の身体が光に包まれる。
「おっ…おお…身体が…身体に力がみなぎって来る…」
『リリアンの方も戻しといたぜ。そんじゃ俺は帰るからまた何か有ったら呼べよ。じゃあな』
「うん。ありがとうねクロノス。それじゃまた」
人型の光が霧散して消える。今のは一体何だったのだろう。
「ち!?父上!?一体そのお姿は!?」
「ふぅ…やはり若さとは良い物じゃのぅ…思い通りに身体が動くわい」
シーシャル国王陛下が驚きの声を上げる。それもその筈だ。カイザル先王陛下は若い青年の姿になっていた。
「良かったね。あっ、忘れてたけど今日は君のお孫さんの婚約パーティーに来たんだった。けど…何かそんな雰囲気でもなくなっちゃったね…」
皆のマリウス様を見る目が先程までとは全然違う。ある者は恐れる目で、またある者は羨望の目で、そしてある者は媚びる様な目でマリウス様を見つめていた。
「マ!マリウス様!お願いで御座います!私も!私めも30年…いや10年ほど若返らせていただけませんか!?」
「おい貴様!男爵風情がおこがましいぞ!マリウス様!私はこの国の公爵家の家長で御座います!若返えらせるなら私を!私を若返らせて下さい!」
「何言ってるの!貴方が公爵になれたのは私の婿になったからでしょ!マリウス様!私こそが公爵家の正当な血筋を引く者!私を若返らせて下さいまし!」
会場内が騒然となる。それはそうだ。人を若返らせる魔法なんて他では聞いた事も無い。この機を逃せば、若返る事が出来る次の機会など恐らく無いだろう。
「貴方達!見苦しいにも程があります!静粛になさい!」
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。
カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。
そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。
魔力は低く、派手な力もない。
王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
この国が長年繁栄してきた理由も、
魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、
すべて私一人に支えられていたことを。
私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。
一方、追放された先で出会ったのは、
私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。
これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。
※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり
※じっくり成り上がり系・長編
追放聖女ですが、辺境で愛されすぎて国ごと救ってしまいました』
鍛高譚
恋愛
婚約者である王太子から
「お前の力は不安定で使えない」と切り捨てられ、
聖女アニスは王都から追放された。
行き場を失った彼女を迎えたのは、
寡黙で誠実な辺境伯レオニール。
「ここでは、君の意思が最優先だ」
その一言に救われ、
アニスは初めて“自分のために生きる”日々を知っていく。
──だがその頃、王都では魔力が暴走し、魔物が溢れ出す最悪の事態に。
「アニスさえ戻れば国は救われる!」
手のひらを返した王太子と新聖女リリィは土下座で懇願するが……
「私はあなたがたの所有物ではありません」
アニスは冷静に突き放し、
自らの意思で国を救うために立ち上がる。
そして儀式の中で“真の聖女”として覚醒したアニスは、
暴走する魔力を鎮め、魔物を浄化し、国中に奇跡をもたらす。
暴走の原因を隠蔽していた王太子は失脚。
リリィは国外追放。
民衆はアニスを真の守護者として称える。
しかしアニスが選んだのは――
王都ではなく、静かで温かい辺境の地。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる