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1章 婚約破棄
008 聖女認定?
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「そ…そんな…私は決してその様な…」
「やっぱり君って頭の回転が早いや。次は泣いて周りの同情をひこうって思ってるね。確かに君は美人だし、美人の涙って場の空気を変える力があるから有効だとは思うよ?でもねぇ…人の婚約者を権力にモノを言わせて略奪して、挙句の果てにその元婚約者をこんなパーティーに呼んで笑い者にしようとするなんて…そんな悪女の涙なんて見せられても僕は何も思えない」
ッ!?なんでマリウス様が私の婚約破棄の事を?全く関係無い第三者として佇んでいた私に会場中の視線が集まる。
「やぁ。はじめまして。君がその…あの…婚約破棄された女の子だね?僕はマリウス。良かったら名前を教えてくれないかい?」
「オ、オーロラ=バレンシアと申します…」
「オーロラさんね。あー、確かにそんな名前だった。うん…なるほどなるほど…確かに素質はありそうだ…」
値踏みするかの様に私を見つめるマリウス様。こんな事は想像すらしていなかった。
「あ、あの…マリウス様?私どもの娘に一体何か…」
「確かにお淑やかとは言えませんし、侯爵家の令嬢としては不出来な娘ですがオーロラはとても優しい娘なんです。何卒、何卒ご容赦を…」
「あぁ、君達がオーロラさんのお父さんとお母さん?何も取って喰おうって訳じゃないから安心してよ。ただ『聖女』の素質の有る女の子がいるって話を聞いていたから、どんな子なんだろうって気になってさ」
聖女?私が?一体マリウス様は何を言っているのだろう?
聖女とは伝説の中の存在だ。遥か昔、己の命を犠牲にして魔物達を地中奥深くへ封印した聖女イーリアス様。聖女の存在は神と等しく、イーリアス教と言う世界最大の宗教の信仰対象になっている。
「マリウス様?婚約を破棄され、国中から憐れみを受けている私に同情してその様な嘘を吐いていらっしゃるのですか?」
「嘘なんかじゃないよ。君にはイーリアスと同じ力が有る。今はまだイーリアスとは比べ物にならない程弱い力だけど…素質が有る事は間違いじゃない。この後少し僕に時間をくれないかい?」
「聖女の…素質…?」
話の展開に付いていけず、ただ呆然としていたその時不意に誰かに肩を叩かれた。
「この度はウチの孫が…レイスがとんだ無礼を働いた様で申し訳無い。こんな事をお願い出来た立場では無いが、マリウス様の話を聞いてほしい。この通りだ」
「お願い。バカ孫には後でキツく言っておくから…貴女や貴女の家族…いえ、この世界の未来に関する大切な事なの…」
振り返るとカイザル陛下とリリアン様が私の退路を塞ぐ様に、深々と頭を下げていた。
「やっぱり君って頭の回転が早いや。次は泣いて周りの同情をひこうって思ってるね。確かに君は美人だし、美人の涙って場の空気を変える力があるから有効だとは思うよ?でもねぇ…人の婚約者を権力にモノを言わせて略奪して、挙句の果てにその元婚約者をこんなパーティーに呼んで笑い者にしようとするなんて…そんな悪女の涙なんて見せられても僕は何も思えない」
ッ!?なんでマリウス様が私の婚約破棄の事を?全く関係無い第三者として佇んでいた私に会場中の視線が集まる。
「やぁ。はじめまして。君がその…あの…婚約破棄された女の子だね?僕はマリウス。良かったら名前を教えてくれないかい?」
「オ、オーロラ=バレンシアと申します…」
「オーロラさんね。あー、確かにそんな名前だった。うん…なるほどなるほど…確かに素質はありそうだ…」
値踏みするかの様に私を見つめるマリウス様。こんな事は想像すらしていなかった。
「あ、あの…マリウス様?私どもの娘に一体何か…」
「確かにお淑やかとは言えませんし、侯爵家の令嬢としては不出来な娘ですがオーロラはとても優しい娘なんです。何卒、何卒ご容赦を…」
「あぁ、君達がオーロラさんのお父さんとお母さん?何も取って喰おうって訳じゃないから安心してよ。ただ『聖女』の素質の有る女の子がいるって話を聞いていたから、どんな子なんだろうって気になってさ」
聖女?私が?一体マリウス様は何を言っているのだろう?
聖女とは伝説の中の存在だ。遥か昔、己の命を犠牲にして魔物達を地中奥深くへ封印した聖女イーリアス様。聖女の存在は神と等しく、イーリアス教と言う世界最大の宗教の信仰対象になっている。
「マリウス様?婚約を破棄され、国中から憐れみを受けている私に同情してその様な嘘を吐いていらっしゃるのですか?」
「嘘なんかじゃないよ。君にはイーリアスと同じ力が有る。今はまだイーリアスとは比べ物にならない程弱い力だけど…素質が有る事は間違いじゃない。この後少し僕に時間をくれないかい?」
「聖女の…素質…?」
話の展開に付いていけず、ただ呆然としていたその時不意に誰かに肩を叩かれた。
「この度はウチの孫が…レイスがとんだ無礼を働いた様で申し訳無い。こんな事をお願い出来た立場では無いが、マリウス様の話を聞いてほしい。この通りだ」
「お願い。バカ孫には後でキツく言っておくから…貴女や貴女の家族…いえ、この世界の未来に関する大切な事なの…」
振り返るとカイザル陛下とリリアン様が私の退路を塞ぐ様に、深々と頭を下げていた。
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